【ラジオな人】浜松から全国へ!K-mix の大人気番組『ピンソバ』バカボン鬼塚さん、高橋茉奈さんにインタビュ ー!【後編】

番組開始から僅か1年半にして、今や全国にファンを持つ番組『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』。番組の魅力について、バカボン鬼塚さんと高橋茉奈アナウンサーにお聞きしました。今回は後編の模様をお届けします。

――前編はこちら

――『ピンソバ』で繰り広げられるトークは、一度聴き始めるとずっと聴き続けてしまうのですが、FMの番組としてはオープニングが長めですよね。

バカボン鬼塚(以下:バカボン):オープニングは16分あるんです。

高橋茉奈(以下:高橋):それも、長いから短くしてくれって言われたんですよね。

バカボン:最初の頃は30分ぐらい喋ってたんですよ。昔、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)で喋ってたことがあるんですけど、オールナイトは25時台の、最後のCMを入れる時間さえ間違えなければ大丈夫なので、オープニングで長く喋って25時台の後半でまとめてCMを流していました。コッチでは決まりがあって、その限界が16分なんです。

――ギリギリを攻めてるわけですね。

高橋:一応、時間は確認してるんですよ(笑)。

バカボン:だから、CMが明けてからまた喋って、もう1回CMを入れてまた喋ったりして、19時台はあっという間に終わります。

高橋:私は『ピンソバ』が始まる前に担当していた『K-mix みんなの19HR!』は、オープニングで話す内容を簡単に打ち合わせしてたんです。それが『ピンソバ』になってから、打ち合わせは一切ないし、放送が始まる直前まで、もらったお菓子とかを食べてたりして(笑)。

バカボン:『パペポ TV』(読売テレビ)(※1)の時、上岡さんと鶴瓶さんは本番で出て行くまで、楽屋もスタジオに入るところも別々で、本番が始まってカメラの前に出て行って初めて顔を合わせてたんです。僕はそれに憧れていて、『おに魂』(NACK5)(※2)の時も、その日に話す内容は一切事前に言いませんでした。始まってから仕掛けるほうが面白いから、聴き始めると離れられなくなる“中毒性”が生まれるんです。何が出てくるか分からないから。

高橋:今、放送直前ですけど、今日も何を喋るか決めてませんから。

――番組を聴いていると、2人が突然叫ぶことがあって、「何をやってるんだろう?」と思います。 

高橋:笑ったり泣いたり、叫んだり愚痴を言ったりしてますから、情緒が安定しないように聞こえるかもしれません(笑)。

バカボン:あれは、ラジオに耳を向けさせる目的もあって、急に叫んだり、急にテンションが上がったり、急に歌い出したり、全く似てないものまねをし始めたりとか、そういうことをちょくちょくと入れてみたら、それまで聴き流してた人が「ん?」ってなるわけです。この効果を狙ってますね(笑)。

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オンエアする曲へのこだわり

――『ピンソバ』は、放送される曲にも定評がありますよね。

バカボン:番組を始めるにあたって、かける曲の趣旨を決めました。何をかけてもいいけど、基本的に普通の番組でかからないような曲や、センスのいい曲をかけようということにしました。簡単に言うと「聴いていて気持ちがいい曲」です。 最初に僕が『ピンソバ』用にオムニバスのCD「ピンソバクラシック」を何枚か作りまして、ディレクターに「こういう曲がかかる番組がいいな」っていう思いを込めて配りました。

――トークの時はワイワイ喋って、話が脱線してても、良い曲がかかると「この番組、良い番組だな」と思いますよね。

バカボン:まさにそうなんです。おしゃれで耳馴染みの良い洋楽を中心にかけています。フュージョンとかインストルメンタルとか、BGMになるような曲も関係なくかけます。とんでもなくレアな曲をかけることもありますよ。(※3

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バカボン気持ちがいい曲と脱線トークがあるのが理想で、僕が聴きたいラジオの真骨頂なんです。昔、たくさんの人がラジオの深夜放送を楽しんでいた時代があって、あの時間帯がどんどん浅い時間になってるんです。だから今の19時なんて、僕らから言わせると深夜です。

高橋:だから時々下ネタが……(笑)。

バカボン面白いと思うのは、下ネタを使わずに、“下ネタっぽいことを言ったこと”を面白がる番組です。下ネタを言って盛り上がっても、引かれてしまう部分があるので、そこに品を持たせてます。別に避けてるわけじゃないけど、子どもが聴いているというのもあるし、この番組に合うのはふんわりとした下ネタ。だから、下ネタとは関係なさそうなトークをしていて、どちらかが「これ下ネタですよね」って言って「ん?」っていう(笑)。このやりとりが良いんです。そういうのでふんわり包むと、聴いている人も安心して楽しめます。奥の奥に含む意味を汲み取り、子ども達は“おしり”や“おっぱい”で喜ぶっていうことです。

高橋:そういうことなんです。下ネタを正当化できて満足です(笑)。

バカボン:もちろん、下ネタばかり言ってるわけではないから、「品のある下ネタ」も話している番組、ということです(笑)。品格って大事だから。以前、茉奈ちゃんが「“のどちんこ”って言うのが恥ずかしい」って言って、“のどおちんちん”って言ったんです。「そっちの方が下ネタっぽい」って言ったら、「赤ちゃんのおちんちんは可愛いから、“のどおちんちん”でいいんじゃないですか」って言ってきて(笑)。「逆に生々しいから、“のどちんこ”でいいんじゃない」という論争が起きたんですけど、こういう感じで19時台は特に上品にしているわけです!

高橋:21時を過ぎたあたりからフリーダムですよ。

バカボン:いや、21時を過ぎたら2人とも疲れ切って、普通にしてるからね。オープニングの19時台が一番毒々しいっていう(笑)。

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「高橋茉奈」は“二重人格”!?

――以前は、バカボンさんが高橋さんの手綱をさばいていたように思ったんですけど、いつしかその手綱が切れて、今は高橋さんが自由に走っているような気がします。

バカボン:そうそう(笑)。

高橋でも、Bluetoothで繋がってますからね

バカボン:まさか手綱をBluetoothで表現するなんて!(笑)僕は子どもが自転車の練習をする時に、子どもに「持っててよ、持っててよ!」とか言われながら、そっと手を離すイメージだったのに。例えがBluetoothって!

高橋:スイマセン、平成生まれで(笑)。でも『ピンソバ』は“ホーム”っていう感じで、バカボンさんが何を言っても返してくれるので安心感があるんですけど、最近はイベントが増えてきて『ピンソバ』として2人で行く時もあれば、私がひとりで行くこともあるから、そういう時に「私、自分ひとりじゃ何もできないんだ」って思ってしまいます……。

バカボン:でも、そこから上がっていけばいいから。伸びしろがある証拠ですよ。

――ニュースをきちんと読めていれば、大丈夫ですよ。15時から放送されるニュースは、高橋アナウンサーが読んでいますよね。“『ピンソバ』で壊れている人”と同一人物とは思えないほど、丁寧に読んでいます。

バカボン:“二重人格”と呼ばれていて、高橋茉奈は2人いるんじゃないかって思われてます。

高橋:サイコパスですよ。

バカボン:そういう部分は本当に必要なんですよ。僕は、色々な放送局でやってきたんですが、局アナが担当してる番組って、基本的にそこまではハネないんですよ。なぜかというと、そこに限界を迎えるからなんです。局アナは会社員なので、パーソナリティとは相容れない。パーソナリティは、自分のパーソナルな部分を出してなんぼ。局アナは会社の方針に従わないといけないから、そんな中で面白いことが喋れる人は、自分の中で線引きがしっかりできる人、心の中で会社員が捨てられる人です。ただし、ニュースを読む時に会社員(アナウンサー)に戻れる人は生き残りますね。ラジオの中ではハチャメチャでも、ニュース原稿はしっかり読むと、茉奈ちゃんみたいになるわけです。だから“二重人格”みたいという評価を聞いて「やった!」って思いました。それほど、茉奈ちゃんの落差が生まれてるわけですから、大成功ですよ。

高橋:(ニヤニヤ)

バカボン:だいたい、みんな悩むんです。ラジオでもっとはじけたいけど、アナウンサーだからそれができないって。壁を越えられずに、なんとなくハネないまま終わっていく。その点、茉奈ちゃんは好例です。バラエティの時とニュースを読む時とで、自分の中で棲み分けられる人が、番組で振り切れますね

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高橋アナの才能、まだまだ開花中

――高橋さんご自身が作った曲「ラジオって」が好評ですよね! 制作に至ったいきさつを教えてください。

バカボン:出会った頃、K-mixのサイトの茉奈ちゃんのプロフィールに「バイオリン」って書いてあったんです。聞いてみたら「浜松のバイオリン教室に通いたい」と「思って」いるだけで、まだ「通ってないと」(笑)。

高橋:母がピアノと声楽をやっていて、バイオリンを持っていたので、「趣味でバイオリンをやろうかな」と思ってたんです。グループレッスンを申し込んでいて、グループの人数が集まったら開始されるんですけど、未だに集まらないからレッスンが開かれないんです。

バカボン:「弦楽器をやりたい」と言っていたから「じゃあ、ギターでもいいんじゃない?」って言ったら「ギター、良いですね」と。ディレクターの村上くんが「かかし」(※4)のギタリストなんですけど、一緒に「かかしギター」を作って、販売したことがありました。その時、作ってくれた韓国のメーカーにインタビューに行ったら「なんでも1本持って行っていいよ」と言われて。その時もらったセミアコのカッコいいギターが、倉庫に眠ってたんです。そこで茉奈ちゃんに「ギターをあげるから、やってみない?」って言ったら、この子が素直な子で……。普通はもらったとしても、心の中では「やっぱり、バイオリンでしょ」って思ってやらないだろうと思ってたら、速攻でバイオリン教室を断りにいって、ギターを始めたんです(笑)。

高橋:そうなんです(笑)。

バカボン:早速、コードを教えてあげたら、ちょっとだけ弾けるようになったんです。そこから3ヶ月くらい、ずっとギターの虜。一番最初は「地上の星」とか「ハッピーバースデー・トゥー・ ユー」とかを演奏していました。

高橋:ある程度、コードを覚えたんで、バカボンさんに「知ってるコードで作ってみれば?」って言われて、作ってきたのが「ラジオって」という曲でした。それを「マインシュロス」(※5)で開催された『ピンソバ』のイベントで披露したんです。

バカボン:そしたら意外と好評で。「何か形にしようという話になって、B.O.K.(※6)を作ってるスタジオで音をつけて「ラジオって」が出来上がりました。

高橋:私のプロフィール欄に「趣味:バイオリン」って書いてあったのは、線で消されています。(笑)

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――初めての作詞・作曲は、いかがでしたか?

高橋:実は、使ったコードは6つぐらいしかないんです(笑)。

バカボン:普通は教本とかを買って、コピーするとことから練習し始めると思うんですけど、茉奈ちゃんは完全に自分の耳だけです。「ココとココを押さえたら、どんな音が出るんだろう」っていう感じで、“鳴り”だけでコードを見つけてくるんです。

高橋:「鳴りが気持ちいいです。このコード何ですか?」って聞く感じで。

バカボン:「それに近いのはこれ」って教えてたんです。だから「コードを覚えよう」という気が全くなくて。

高橋:感覚でやってます。

バカボン:コード表が書いてある中に、「?」って書いてあるところがあるんです。

高橋:あとでバカボンさんに聞こうと思って。

バカボン:「かかし」も最初はそういう感じだったんです。楽譜はなくてコード表しかありません。余談だけど、僕らは「かかし」は 97年にデビューしたから、スガシカオともTRICERATOPSとも同期です(笑)。その後、何枚か発売させていただきました。今はB.O.K.の方の活動が中心になっています。せっかく地元に帰ってきたんで、今後はB.O.K.でグイグイいきます。地元の清水を舞台にした曲が多いし、基本的に静岡をメインに着想しているので。

浜松を“ラジオの首都”へ!

――全国のラジオ関係者で『ピンソバ』を聴いている人は多いらしく、高橋さんは羨ましがられることがあるそうですね。

バカボン:『ピンソバ』は僕らがやりたいような番組をやってるので、例えば噛んだとしても 「今、噛んだ」みたいなことをあまり気にしないようにやっています。もしも変なことを言っちゃたらマイクの前で「ごめんなさい」って言えばいいし、間違えた情報を言っちゃったら「先程の話は間違いです」って言えばいい。ラジオはそういうメディアだと思うんです。今は間違えたらいけなくて、正しいことしか言っちゃいけない風潮が、それぞれを追い詰めて檻に閉じ込めてしまう……そういう意味で、ボーダーラインのない番組にしたいと思っています

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――『ピンソバ』は各地にファンがいて、浜松を“ラジオの首都”と呼んでいるのも、すごくいいですよね。

バカボン:「浜松は“ラジオの首都”です」って言い出したのは僕なんです(笑)。僕はK-mixを1位、2位を争うような放送局にしたいと思ってます。例えば、ラジオ関係者の中には、NACK5の業績を羨ましい目で見ている人もいるけど、僕がNACK5で喋り始めた頃は、バラエティ的な内容の番組はあまりやっていませんでした。「音楽を知らない人は、パーソナリティじゃない」みたいな感じもありましたから。そんな中で、僕が敢えてバラエティをやり続けていったら、ある時期からバラエティ要素のある番組が増えていって、今では僕が音楽を紹介する番組をやる側になってます(笑)。

――バカボンさんは、現在は地元の静岡に拠点を移したこともあり、番組では静岡の話題がよく出ますが、地元の話題を取り上げることは、放送で意識されていますか?

バカボン:静岡の県民性として、良い部分は何でも受け入れるところがあるから、静岡のものも美味しいけど、他の地域のもので美味しいものがあったら、そちらも紹介するという感じで放送しています。静岡は僕の故郷だから、地元のトークをしやすいけど、必ずしも常に地元トークをしようとはあまり思っていません。茉奈ちゃんは北海道出身だし、目線は全国区にしているところもあって、他の都道府県のことであろうと話題にします。そうすることで、逆に静岡が際立ってくれるといいなと思います。

――ますますたくさんの人に愛されて、スタジオ前に遊びにくる人も増えそうですね。

バカボン:色々な人が浜松に遊びに来てるから、『ピンソバ』が経済を動かしてますよね。

高橋:そうですね(ニヤニヤ)。

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浜松への突撃取材でお送りした、今回の【ラジオな人】インタビュー。お2人の魅力、お伝えできたでしょうか? 浜松からうねりをあげ、まだまだ熱く盛り上がる K-mix『ピンソバ』。全国のみなさん、“リスナー”もとい“バナナー”になるなら、今ですよ!

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※1:『鶴瓶・上岡 パペポ TV』。1987年4月から1998年3月まで放送された人気トーク番組。

※2:バカボン鬼塚と玉川美沙のコンビで『The Nutty Radio Show 鬼玉』として 2003年にスタートした番組。(その後『おに魂』に改題)。

※3:放送された曲目は、K-mixのサイトと、番組のTwitterで確認できる。

※4:バカボンさんが活動しているバンドのひとつ。

※5:浜松にあるビールレストラン。2017年8月に初めて『ピンソバ』の公開生放送を行って以来、番組の公開イベントの会場として使用している。

※6:「かかし」、「YOUNGER GENERATION」とともに、バカボンさんが活動しているバンドのひとつ。B.O.K は“バカボン.鬼塚.公仁”の頭文字。

番組概要

20180109145448

■放送局:K-MIX SHIZUOKA
■番組名:『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』
■放送日時:月曜日~木曜日 19時~22時
■番組サイト:https://www.k-mix.co.jp/pinsoba/

インタビュー

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やきそばかおる

小学5年生以来のラジオっ子。ライター・構成作家・コラムニスト。

「BRUTUS」「ケトル」などのラジオ特集の構成・インタビュー・執筆を担当するほか、radiko.jp、シナプス「I LOVE RADIO」(ビデオリサーチ社)/ J-WAVEコラム「やきそばかおるのEar!Ear!Ear!」/otoCoto「ラジオのかくし味」/水道橋博士のメルマ旬報など連載や、番組出演を通じて、ラジオ番組の楽しさを発信。

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【ラジオな人】浜松から全国へ!K-mix の大人気番組『ピンソバ』バカボン鬼塚さん、高橋茉奈さんにインタビュ ー!【前編】

数あるローカル制作の番組の中で、「この2人にインタビューをしてほしい!」という要望が特に多かった番組『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』。ラジオファンに人気のバカボン鬼塚さんと、K-mixの若手アナウンサー・高橋茉奈さんがタッグを組み、月曜日から木曜日の19時から、約3時間の生放送を行なっています。お2人にじっくりとお互いの魅力や、『ピンソバ』の魅力についてお聞きしました。前後編にわけてお送りします。

――本日はお会いできて光栄です。『ピンソバ』は2017年4月にスタートして以来、バカボンさんと高橋さんの、楽しくて奇妙なコンビが噂で広まり、今やラジコで全国から聞かれる番組になっています。そこでまずは、バカボンさんから見た、高橋さんの第一印象をお訊きしたいんですが。

高橋茉奈(以下:高橋):え~!? 何を言われるんだろう? こわい! こわいです!

バカボン鬼塚(以下:バカボン):僕は今は故郷の静岡に住んでるけど、5年くらい前、東京に住んでいた時からK-mixで特別番組を担当していました。その2~3回目くらいの時に、茉奈ちゃんがニュースを読むことになっていて、先輩のアナウンサーが「新人の高橋茉奈です」って紹介してくれました。そしたら茉奈ちゃんが「ニヤニヤ」と笑ったんです。

高橋:(笑)。

バカボン:まだ茉奈ちゃんが入社して3~4ヶ月ぐらいの頃のことで、普通は緊張して固い笑顔で挨拶するものだけど、あまりにもニヤニヤしてたから、新人だと思わなくて。「ベテランで、こんな子いたかな?」って思ったんですよ。「K-mixの方はだいたい紹介していただいたはずなんだけど。こんな子いなかったな。外のニュースキャスターの方かな」と思ったんです。というのも、ニュースの読み方がものすごく落ち着いていたので。ところがニュースを読み終わったら、再び「ニヤニヤ」しながら去っていったんです。

高橋:(笑)。

バカボン:今だから言うけど「いずれレギュラー番組を始めるなら、この子がいいかな」と思っていました。そのあとで何度か、特番を一緒にやりました。

――その頃、高橋さんはどんな様子でした?

高橋:暴走するに任せて、右も左も分からない状況でした。初めてバカボンさんと一緒に特番をさせていただいた時は、“バラエティのキング”みたいな人とやらせてもらえるなんて思ってもみなかったので、アシスタントみたいな立場でいこうと思ってたんです。でも、初めての特番でいきなり、元カレの話をすることになって

バカボン:早速、トークが暴走してました(笑)。特番とレギュラーの違いがあって、レギュラーをやるんだったら個性を出させないといけないけど、特番は瞬発力が重要だから、とにかく聞いた人にインパクトさえ与えられれば成功なんです。元カレの話以外に、お酒の話もしてたからね。やさぐれて、家でワンカップ飲んでたっていうんで。

高橋キャラクターを全開にされちゃったって感じですね。出す気はなかったんですよ。

バカボン:いや、出す気満々だったよ(笑)。

――高橋さんから見た、バカボンさんの第一印象は?

高橋:初めて担当させて頂く時に、「バカボンさんってどういう方なのかな」と調べたんです。YouTubeとかも端から端まで見てたら、バンドをやってることとか、あとは『おに魂』(NACK5)(※1) のことも知りました。

バカボン:掘ると、いろいろ出てくるからね(苦笑)。

高橋:ライブ映像とかを見てると、格好いい帽子とか被って、凄くダンディ系のイメージでした。でも初めてお会いした時、寒い日だったのにずっとTシャツ姿だったんです。バンドの時のイメージと全然違って、ラフな感じで「おはよう」って言ってもらえたから、緊張がほぐれました。

バカボン:Tシャツになったのには理由があるんですよ。テンションを上げて喋る芸で始めちゃったんで、アクションが凄くて、長袖を着てても途中でまくる癖があるんです。あと、暑いからまくり上げて喋ってて、うっすらと汗をかいた状態で戻すと気持ち悪いから、袖もいらないと思って。それで、一年中Tシャツでいいかなって思ったんです。スーツみたいなもんです。この姿が一番ラクで(笑)。

――『ピンソバ』オリジナルTシャツも、半袖で格好いいですよね。

バカボン:僕が自腹で見本を10枚ぐらい作って、スタッフに配って着てもらったんです。それを直接“上の人”に「こういうTシャツを作りましたけど、予算はいかがでしょう」という感じで予算を出していただきました。ありがたいことに、販売すると完売する状況です。「B.O.K.」は僕のアーティストのマーク。「東京スカパラダイスオーケストラ」のグッズが好きで、スカパラはデザインを変えずに Tシャツの色だけを変えていて、それが「なかなかいいな」と思って取り入れました。何か広告を入れたい時は背中に入れてます。このデザインだったら普通に街を歩けるし、声をかけられるから、歩く広告塔です。無言でも分かっちゃうし、喋ってても分かっちゃうし、むしろバレたくて(笑)。

人気コーナーは、悪ふざけから誕生

――確かにバレてなんぼですね。高橋さんは『ピンソバ』がスタートしてどうでした?

高橋:特番は何度か一緒にやらせて頂いてたので「バカボンさんは、こういうのが好きなんだ」っていうのがなんとなく自分の中でもあったんですけど、私もバカボンさんも帯番組は初めてだったから、特番とは違ってましたね。4日間あるから体力的なこともあるし、「リスナーさんはどういうバランスで聞きたいんだろう」とか、そういうのも考えたんですけど、始まったら考える暇がなくて、とにかく必死でした。『ピンソバ』は台本が真っ白で、始まった当初はコーナーもほとんどなくて。今は2人で悪ふざけをする中で「キューちゃんリクエスト」(※2)や「お風呂コント」(※3)が始まったり、色々なスポンサーがついてくださるようになりました。

バカボン:「キューちゃんリクエスト」は、完全に茉奈ちゃん発だったんですよ。

高橋:ちょうど9時にかかっていたBGMに乗せて「キュッキュキュキュー」って言い始めたんです。確か、バカボンさんはメッセージをさばいてたりして、かまってくれなくてヒマだったから歌ったんだと思います(笑)。

バカボン:それがきっかけで始まったコーナーです。ウチの番組は作家がいないので、最初から細かくコーナーを作っちゃうと、それに縛られちゃって楽しんでもらえないんです。まずは更地にしておいて、そこに後からいろいろな家を建てようと思いました。何も決まってない状態でメールを読んで、ひたすら脱線したり、トークを膨らませることから始めました。2人で喋るのはラジオの基本中の基本だし、それだけで十分楽しくなります。それに、茉奈ちゃんは間がすごくいいんです。

高橋:(ニヤニヤ)

バカボン:茉奈ちゃんは、歌ったり叫んだり、話が脱線することで、いろいろなことが生まれてくる、ということを感じ始めたみたいです。面白いラジオって、間と掛け合いのリズムや、タイミングだったりするじゃないですか。そういった点を、茉奈ちゃんは最初に体に入れられたのがよかった。そうなったら怖いものがない。3時間を制することができるので「どうしよう」という迷いはなくなります 。自分の間とリズムをもってすれば、どんな大物タレントも掌握することができます。

作ったキャラクターは、ラジオだとバレちゃいます

――実は、初めて高橋さんにお会いするにあたって、高橋さんは普段から『ピンソバ』の時のように明るいのか、放送時はあくまでも仮の姿であって、普段は大人しいのか……どっちなんだろうと思っていました。お会いした瞬間からラジオのままで、安心しました。

高橋:さすがに普段は『ピンソバ』や「ニュース」の時ほどは脳みそを使っていませんが、普段の雰囲気と変わらないと思います。

バカボン:たまに、カフ(マイクのスイッチ)を下ろすと全く喋らないパーソナリティもいますが、僕が色々とやってきて分かったのは、マイクの前で自分を“作る”人はいるけど、それって絶対にバレるんです。ラジオで一番大事なのは、パーソナルな部分。普通にやってることをそのままラジオでやればいいのであって、マイクの前で作っちゃうとそういうキャラに寄せていくでしょ。プライベートとラジオでの自分を分けるのもいいけど、長く愛される番組は、いつもと同じ目線が良いと思います。『ピンソバ』は帯番組だし、自分を作ったところで一番きついのは体力なんです。でも、せっかくだから、そこもちょっとネタにしちゃおうかと。これもすごくラジオ的で、たとえば茉奈ちゃんが「蛍の光」のメロディーを歌い出すと「今、シャッターが下りてます」って僕が解説するんです(※4)。途中でシャッターの動きが止まったら、「シャッターが真ん中まで降りてるけど、まだ店内に電気がついていて人がいるから、シャッター越しに会話してます」って言うと、リスナーの皆さんに楽しんでもらえますね。

――1日3時間、週に4日も高めのテンションで放送しているのは、改めて考えると凄いですね。

バカボン:K-mixは年に1度、聴取率を調べる週間(レーティング)がありますけど、ウチの番組では「毎日がレーティングにしよう」というのを合言葉にしています。東京でやっていた時もその気持ちでした。「レーティングの時だけ特別なゲストを呼んだり、特別なプレゼントを出してどうするんだ」って思うんです。むしろ、「レーティングの時よりも、今週の方が面白い」っていうのを目指してやってきました。番組開始から1年が経って、ようやく体が慣れてきたかなと思います。

理想は“自分が聴きたい番組”

――『ピンソバ』はリスナーの番組への愛情も深いですよね。お2人のイラストを描いてきてくれる人がいたり、「番組プレゼントためのプレゼント」を送ってきたりする人がいたり。このノリの良さは、どこからくるんでしょうか?

バカボン:僕らはTシャツとステッカー以外のグッズを作ったことがないんです(笑)。

高橋:番組が始まる時に、バカボンさんが「番組はリスナーと企むもの」とおっしゃっていて、これは面白いと思いました。

バカボン:それは僕がずっと、ぼんやりと思ってたことなんです。確かラジオ関係者だったと思うけど、誰かがTwitterで「優れたラジオ番組は、パーソナリティとリスナーが企んでる」って書いてたの。僕は目標とする番組はあるけど、みんな70~80年代の番組で、今は無い番組だからどうしようと考えた時に、理想は「自分が聴きたい番組」だと思ったんです。そしたら、久米宏さんが全く同じことを言ってたの。「ラジオを始めた時に、目標が無いので、自分が一番聴きたい番組を作った」って。久米さんは「こういうレポーターがいたらいいな」と思って、永六輔さんの番組でレポーターをやっていたそうです。やっぱり、行き着くところは同じなんだなって思いました。

――スタジオでは、バカボンさんと高橋さんが向かい合って座っていてて、高橋さんは外を背にしていますが、この並びは最初からですか?

バカボン:まず、僕は「対面して喋りたい」て言ったんです。横に並ぶやり方もあるけど、横に並ぶとお互いが見合う感じになって、お客さんを無視して喋ってしまう可能性があります。それで、上岡龍太郎さんと笑福亭鶴瓶さんの『パペポ TV』(読売テレビ)(※5)のような感じで、お客さんを感じつつも、お互いの顔を見て喋るっていうのをやりたかったんです。茉奈ちゃんを窓側にしてるのは、茉奈ちゃんの顔をスタジオの外の皆さんに見せたくないからです。「茉奈ちゃんが可愛いから見に来る」っていう風にしたくなくて、あくまでもトークで勝負したかったんです。最初の頃は「少ししたら入れ替わろうかな」と思ったけど、見に来る人も理解してくれてるみたいだし、茉奈ちゃんもサービス精神が旺盛だから、たまに外を振り返るし。それが嬉しくて、みんなが喜ぶという感じになってます。この座り方がベストかな。リスナーの皆さんに見られつつ、トークでは集中したいし、対面だとお互いの呼吸も分かりますから。例えば僕が喋っていて、向かいの表情を見たら「この話、興味ないんだな」とかも分かるので(笑)。

高橋:ななめ下を見始めたりとか(笑)。

バカボン:「今日は疲れてるな」とかもすぐ分かるので、そういうのを突っ込むことで、キャラクターも膨らみます。

高橋:鼻水が出てる時もありますからね。外のガラスに向かってなくて良かったと思います(笑)。

“相方を生かす”番組に

――バカボンさんにとって、『ピンソバ 』での高橋さんは、どういう存在ですか?

バカボン:僕は基本的に、茉奈ちゃんをアシスタントにしたくなくて、やはり“相方”なんです。男女2人で喋る場合は、絶対に2人が際立っていかないといけない。むしろ、容姿以外のパーソナルな部分で、女性のほうにスポットが当たるようになると、番組はだいたい勝ちますね

高橋:名言きましたね!

バカボン:これは、長年ラジオをやらせていただいて、自分ですごく学んだことです。ラジオパーソナリティはひとりしゃべりが多いし、一番いいのはひとりでも面白く話せることだから「早いうちにやらなきゃいけない」と修行してた部分もあります。ですがその当時、タレントさん以外の“ラジオパーソナリティ”と呼ばれている人たちの2人しゃべりを聴いていて、「お互いに、相手の話をあまり聞いていない」と思いました。でも、僕が駆け出しの頃から聴いていた『吉田照美のやる気 MANMAN!』(文化放送)(※6)では、照美さんが目立っているように感じるけど、よく聞くと照美さんが小俣さんを際立たせているんです。そこで、「自分がやるなら基本はこれだ」と思い、下敷きにしました。それからは“相方を活かす”芸に、自分をシフトしました。

――私も『吉田照美のやる気 MANMAN!』を聞いてましたが、小俣さんと高橋さんは同じ路線にいる気がします。

高橋:えー! そうなんですか!? (ニヤニヤ)

まるで生放送の本番さながらに盛り上がるトーク! サービスたっぷりに答えてくださるお二人のインタビューは、後編に続きます。

―― 後編はこちら

※1:バカボン鬼塚と玉川美沙のコンビで『The Nutty Radio Show 鬼玉』として 2003年にスタートした番組。(その後『おに魂』に改題)。10代を中心に人気を博し、中でも大喜利をモチーフにしたメインコーナー『今日のマル決』は『マル決本』として書籍化された。

※2:キューちゃんリクエスト:ラテン調のリズムに乗せて、リスナーから寄せられたものまねや大喜利のような無茶振りに、即興でこたえるコーナー。

※3:お風呂コント:おじいさんとおばあさんが、入浴をしている設定で行われるコント

※4:高橋さんは疲れてくると、「蛍の光」のメロディーを口ずさみながら、手でシャッターを下ろすまねをすることがある。

※5:『鶴瓶・上岡 パペポ TV』1987年4月から1998年3月まで放送された人気トーク番組。

※6:1987年から2007年にわたり、20年間放送された午後のワイド番組。吉田照美と小俣雅子との夫婦漫才のようなかけあいが絶妙で、この番組のファンを公言していた福山雅治は最終回にサプライズ出演した。

番組概要

■放送局:K-MIX SHIZUOKA
■番組名:『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』
■放送日時:月曜日~木曜日 19時~22時
■番組サイト:https://www.k-mix.co.jp/pinsoba/

インタビュー

やきそばかおる

小学5年生以来のラジオっ子。ライター・構成作家・コラムニスト。

「BRUTUS」「ケトル」などのラジオ特集の構成・インタビュー・執筆を担当するほか、radiko.jp、シナプス「I LOVE RADIO」(ビデオリサーチ社)/ J-WAVEコラム「やきそばかおるのEar!Ear!Ear!」/otoCoto「ラジオのかくし味」/水道橋博士のメルマ旬報など連載や、番組出演を通じて、ラジオ番組の楽しさを発信。

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