【ラジオな人】鹿児島の魅力を発信する岩﨑弘志アナウンサー 人気番組やイベント成功の秘訣を語る

きっかけは母親からの突然の一言

ーー そもそも、岩﨑さんがアナウンサーになろうと思ったきっかけは何ですか?

大学時代は広島でアナウンサーとは関係ないような、土木系を専門に学んでいました。環境の勉強をしたり、コンクリートを作ったり、測量をしたりと勉強をしてたんですけど、どうもそれが自分には向いていないことに気付いて。単位がとれないほどセンスがなかったんです。

アナウンサーになろうと思ったきっかけは、母親の何気ない一言でした。

3、4年生の頃、僕がなんとなくダラダラ過ごしていて、就職活動に身が入らなくて「どうしよう」と焦り始めていた矢先に、正月の親戚の集まりで母が急に「やりたいことがないんだったら、アナウンサーになれば」と言い出したんです。突然のことで「まさか」と思ったけど、喋ることは嫌いではいないし、むしろ好きなほう。それに、若い頃って一度はテレビやラジオで憧れるじゃないですか。やってみる価値はあると思って、RCC(中国放送)のアナウンススクールに通ったんです。

今、朝のワイド番組を担当している本名正憲アナウンサーにも教えていただいて勉強するうちに、だんだんと気持ちが固まってきました。ただし、僕は既に就職活動の時期を逃していたので、大学院に行きながらバイトをして費用を賄っていました。

ーー お母様は、なぜ急に「アナウンサーに」とおっしゃったんでしょうか?

多分、アナウンサーという職業は、何をやっているのか分かりやすくて、イメージが良かったんだと思います。

あとは、僕が喋ることが嫌いじゃないことを分かっていたことが大きいと思います。とはいえ、ノリで言ったのではないかと(笑)。

ーー 就職活動はいかがでしたか?

お金がなかったのと、広島に住んでたから主に西日本の地域でしか受けてないので、50社は受けるのが当たり前の時代に、20社くらいしかエントリシートを出しませんでした。

ただ、MBCの一次面接は東京で受けました。それも在京のラジオ局を受けていて、その二次試験と日程が近かったのがMBCの一次試験だったんです。とにかくお金がなかったから、在京のラジオ局を受けて、そのまま東京でMBCを受けてしまえば交通費が安くて済むと思って(笑)。それでキャリーケースを引っ張って会場に入ったんです。

その光景をMBCの方が偶然みていて、それが印象残ってたみたいで。しかも、わざわざ広島から東京まで受けに来たっていう(笑)

ーー この時点では、鹿児島を訪れたことはなかったんですよね。

そうなんです。鹿児島には二次面接の時に初めて訪れたんですけど、鹿児島中央駅からタクシーで5分くらいの道ですら、タクシーの運転手さんの方言が全く分からなかったんです。断片的に分かったことを推測すると「自分には年ごろの娘がいるけど、なかなか結婚しなくて困っている」というようなことを言っているような気はするけど、うまく聞き取れなくて、「大丈夫かな? 自信がない」という不安がありました。

面接を受ける時も、漠然とした不安は消えませんでした。それに私が入社した2009年は何年かぶりにドカ灰といって、桜島が噴火して上空からコショウが降ってくるみたいな灰が降ってきました。更に過去にさかのぼると、多い時は市電がショートして止まるほどだったんです。外で話していると口の中がジャリジャリするし、街を歩いている人が、雨でもないのに傘をさしている姿を見て「とんでもないところに来た」と思ったのが、鹿児島に引っ越した当時の印象でした。

それから10年間、方言と桜島の事を叩き込まれたという感じです。でも、未だに分からないことが多いから、それが逆に面白いんですよね(笑)

ーー 岩﨑さんはラジオとテレビの両方に出演していますが、話す時の心構えの違いはありますか?

テレビはラジオに比べると圧倒的に喋る余裕が少ないから、かゆいところに手が届くコメントとか、短い単語でつっこむようにして、みんなが話せるようにしてます。さらに、画面をみて分かることはあまり言わないようにして、映っていること以外で言うことはないかを考えます。

例えば、鹿児島実業高校の男子新体操部の皆さんは、ユニークな演技でYouTubeなどでも話題になってるんですけど、番組でメンバーのみんなとコラボして文化祭でサプライズのパフォーマンスをしたんです。テレビではその舞台裏も公開しました。

逆に、ラジオは脱線話も入れて、生放送を生かせるように意識しています。高校生が突拍子もないことを言った場合は、そこを掘り下げていくとか。実は、ラジオで話すことは非常に大切で、ラジオで鍛えておかないと、テレビでうまく喋れないんです。テレビの場合は引き算が大事なので、ラジオから引き算をして、意味のあることをチョイスしています。

知らないことには助け船が入る

MBCラジオは自社制作番組が多いです。私は以前、MBCラジオの全ての自社制作番組の分布図を作ったことがあります。

改めてみると、そのバラエティさがよく分かります。県内各地の話題をカバーしており、コミュニティFMでも放送されている番組もあります。

ーー 岩﨑さんも地域情報の番組を担当していますが、鹿児島は広いし、離島もありますし、把握するのが大変そうですね。

まだまだ勉強中です。分からない方言もありますし、理解できている部分の方が少ないと思います。

ーー しかも、MBCラジオの番組は、電話で鹿児島県内各地の人に話を伺う番組が多いですよね。

たまにですけど、電話でしゃべっていて、分からなさすぎて笑ってることもあります(笑)すると先方の方が「今のは伝わらなかったのでは」と気を使って、もう一度分かりやすく言い直してくださることがあるんです。

鹿児島の皆さんは親切な方が多くて助かっています。「これってどういうことなんでしょう?」と問いかけると、いろいろな方から回答が寄せられます。

例えば、「今の旬は?」「どこが何の産地なのか」といったことを教えていただいたのはワイド番組の『城山スズメ』(※)の影響が大きいですね。

 

例えば僕は“むかご”を知らなかったんです。山芋の子どもみたいなちっちゃい粒で、それも野菜だということをリスナーの方に教えていただきました。MBCラジオの番組はリスナーの皆さんの思いやりで成り立っているところがあります。番組宛のメッセージも、丁寧な文章が多いです。だから、僕のように他の県から引っ越してきたアナウンサーでも、アナウンサーとしてやっていけるんだと思います。これで誰も教えて下さらなかったら、知らない、ただの痛い人のままですから(笑)

ーー 鹿児島は偉人や自然、特産物など、特徴がハッキリしているというか、それぞれのパワーが強い気がします。

そうなんですよ。ただし、“県内の皆さんにとっては当たり前のことでも、よく考えたらすごいこと”も多いので、それを掘り起こすことも大事です。

例えば、水産高校で子どもたちがカツオなどの魚をさばいて缶詰にしていますが、そうしたことを、新鮮味を持たせて伝えることも役割だと思っています。てっきり全国的なことかと思ったら鹿児島だけだった……なんていうこともよくありますからね。

今はradikoプレミアムで全国で聴いていただける時代になったからこそ、県外の皆さんに「鹿児島っていいところなんだよ」と自慢するチャンスです。地名が出てきた時は、大体どのエリアにあるのかという説明を、さりげなくつけるようにして、想像しやすいようにしています。

ーー まさに使命ですね。

“地元らしさを後世に残す”と申しましょうか。先述のように、地域に関するあらゆる話題を伝えることに意味があると思うんです。

例えば『てゲてゲハイスクール』では、ほかの学校の取り組みを知って、自分の学校だったら何かできるか、と考えるきっかけになってもらえればと。それが積み重なっていくと、“今を超える何か”が生まれるかもしれないので、おこがましくも、そうなれたらという気持ちです。

ーー なるほど!  本日はありがとうございました。番組のますますの発展と「てゲてゲハイスクールフェスティバル」の成功をお祈りいたします。

(※)『城山スズメ』 MBCラジオの午後のワイド番組。出演は采野吉洋アナウンサー、笹田美樹。ラジオカーのレポーター「ポニーメイツ」。リクエストや曜日別のコーナーでは采野アナによる懐かしいアニソンを紹介するコーナーや、川柳のコーナなどバラエティに富んでいる。開局以来続く看板番組。

岩﨑弘志のてゲてゲハイスクール
放送局:MBCラジオ
放送日時:毎週日曜 13時00分~14時00分
出演者:岩﨑弘志
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

#てゲてゲハウス
放送局:MBCラジオ
放送日時:毎週日曜 15時00分~16時50分
出演者:岩﨑弘志
番組ホームページ

※放送情報は変更となる場合があります。

この記事を書いた人

やきそばかおる

小学5年生以来のラジオっ子。ライター・構成作家・コラムニスト。

「BRUTUS」「ケトル」などのラジオ特集の構成・インタビュー・執筆を担当するほか、radiko.jp、シナプス「I LOVE RADIO」(ビデオリサーチ社)/ J-WAVEコラム「やきそばかおるのEar!Ear!Ear!」/otoCoto「ラジオのかくし味」/水道橋博士のメルマ旬報など連載や、番組出演を通じて、ラジオ番組の楽しさを発信。

ラジコプレミアムを駆使しながら、全国のユニークな番組を紹介するツイキャス番組「ラジオ情報センター」(水曜21時〜22時)も放送。全てを合わせると、年間でのべ800本のラジオ番組を紹介している。

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