今、JR秋葉原駅の駅前広場で、次世代型太陽光発電の実証実験が行われています。この実証実験は、千代田区と建材設備大手のYKKAP、そして、Akiba.TVが連携して行っている実験で、広場にはトレーラーハウスが設置されています。
次世代型太陽光発電は、発電する窓!?
まずは、次世代型太陽光発電とは、どんなものなのか。YKKAP株式会社新規事業開拓部の石井琢磨さんに伺いました。
YKKAP株式会社新規事業開拓部 石井琢磨さん
「ペロブスカイト型太陽光発電という、非常に難しい名前のものなんですけど、簡単に言いますと、真っ黒の板ではなくてガラスに一部透過性を持たせたもの、これの状態で発電が出来るという新しい技術になります。YKKAPとしては、窓として建物に取り付ける技術を、いま、開発しているところになります。
窓の内側に、太陽光発電の発電する窓っていうのを、もう一枚設置して、室内に入る太陽っていうのは、そこでかなりカットされますし、窓際の暑い空気も二重窓のような形でシャットアウトされるので、部屋の断熱性とか遮音性とか、もともとの内窓としてのメリットっていうのは最大限活かした上で、さらに発電という三つ目の機能をつけました。やはり真っ黒いパネルというものから、ガラスの形で半透過型で景色が見える、これがものすごい大きなターニングポイントだと思っています。」
ペロブスカイト太陽電池は、小さな結晶の集合体が膜になっているものなので、軽量性や柔軟性を確保しやすく、必要な場所に塗布したり印刷することができる。YKKAPは、その技術を使った窓を作って、太陽光発電のできる内窓を開発しています。
内窓は、断熱性や遮音性という意味で、注目されている施工ですが、そこに3つ目の機能をつけたわけですが、その太陽光発電できる窓を、もともとの窓に取り付けたビルに見立てたトレーラーハウスで、実証実験をしている、ということなのです。
太陽光発電のパネルの入った窓越しの景色は・・・
トレーラーハウスには大きな窓が7枚あり、その内の6枚に太陽光発電窓が取り付けてあります。石井さんと一緒に、中に入ってみました。
「(近堂)では、中に入ってみたいと思います。わ~涼しい~クーラーがついてますね。太陽光で賄ってるのでしょうか? そして、この窓が太陽光発電なんですか?これですよね?普通のガラス窓みたいですね。
(石井)はい、近づいていただくとシマシマの部分がよりはっきり見えると思うんですけれども、二枚のガラスを接着してまして、その間に発電する層が挟み込まれている構造、という風になっております。
(近堂)太陽光発電のパネルの入った窓越しに、私はいま景色を見ていますけれども、あっちに走ってる車のナンバーも見えますし、ポスターの字も読めますし、歩いている方のチェックのシャツの柄も結構しっかり見えますし。もっと暗くなっちゃうかな、と思ったんですけど、網戸が窓の内側にあるくらいの感じに見えますね。」
網戸がある窓、くらいの見え方でした。
(トレーラーハウスの中からの見え方は、こんな感じ。秋葉原駅の表示の少し上の隙間が、何もない窓。)
窓に寄ってみると、目の細かい櫛?バーコード?のようなシマシマがあって、その一つ一つが太陽光発電する部分。そこでできた電気を集めて蓄電池に貯めて、室内にある、クーラー、モニター画面、LED照明、パソコンなどの電気を賄っていました。
トレーラーハウスは秋葉原のインフォメーションセンターとして設置されているので、営業中は誰でも入れますし、外国人観光客のための対面液晶翻訳機も太陽光の電気で稼働していました。
そして、山手線が行きかう秋葉原の駅前なのに、電車の音はほとんど聞こえませんでした。確かに遮音性も高かったですし、日の光も入って明るいし、外の景色も十分見えました。
内窓タイプなので、今ある建物にも取り付けやすく、また、新しく取り換えるのも簡単。まさに、次世代型太陽光発電です。
面積は狭い、でもビルの窓はたくさんある千代田区にピッタリ!
そして、まさにこれを待っていたのが、2025年に向け、実質、二酸化炭素の排出量をゼロにしていこうという宣言をしている千代田区です。千代田区環境政策課長の山﨑崇さんのお話です。
千代田区環境政策課長 山﨑崇さん
「広い土地がある所ですと、太陽光発電を並べてメガソーラーみたいな形で出来るんですけど、千代田区、非常に小さいものですからそういう場所がないと。で、その割には非常に電気を使うと。
やっぱり地球温暖化対策というところからもですね、こういった再生エネルギーにどんどん切り替えて二酸化炭素の排出を抑えるようなことが望まれてると思うんですけど、屋上ですと、高層ビルになればなるほど、屋上も色々、機器を置かなければいけないと、やっぱり面積がなかなか無いんですよね。
で、窓ですと、高~い建物で、ガラス張りみたいなですね、ビルがたくさんありますんで、これだけの面積もったいないですよね。ですので、そこで太陽光発電ができれば、ホントに今までに無い世の中に繋がるのかなと考えてますけれども。(見上げると窓窓窓ですもんね)そうですね、期待できますね。」
従来の黒いパネルを使った太陽光発電は、面積の小さい千代田区には難しい。でも、その割には電気を使う区でもあり、その対策に頭を悩ませていました。
意識して歩いてみると、本当に高いビルが建ち並んでいますが、その多くのビルの側面はガラス窓のような作り。この面積で発電ができるようになるのは、確かに画期的!
今回の実証実験、思ったよりもたくさんの人が来てくれている、ということですが、他の自治体からの問い合わせも多いそうで、必要とする人の多さを感じます。
窓ならば、企業のビルや一般住宅にもあるので、この技術で、太陽光発電のできる建物が大きく増える可能性も高いですね。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)