南佳孝と松本隆 レジェンドによる対談が実現

作詞家・松本隆が、絶大な信頼をおくシンガー南佳孝。
ジャパニーズポップスの黎明期を支えた同い年の二人が、作業を共にした作品を語り合うスペシャルな対談が実現した。

ふたりの出会いは1972年、デモテープ制作中の南の元へ松本隆を友達が連れてきたことから始まる。

松本 「72年にはっぴいえんど解散が決まって、メンバーひとり1アルバムをプロデュースするように、歌い手がいない場合は自分で探すように、って言われたんだよね。困ったなと思っていたら、友達から“歌のうまいやつがいるよ”と紹介してもらったのが佳孝で」

南 「当時フォークソングや大きな流れだった歌謡界を、壊したいって気持ちがあった気がする。若かったからね。」

松本 「そのころ自分が書きたい詞があったの。キーワードは摩天楼。ジャズっぽさのある佳孝には合うと思った。都会的な世界観ができるかもしれない、って。」

そうして完成したのが南のデビューアルバム『摩天楼のヒロイン』。松本隆プロデュースによる1枚でレコードジャケットのアイディアも松本によるものだった。

ふたりが再びタッグを組むことになったのは南4作目のアルバム『SPEAK LOW』(1979年)。収録曲のほとんどが松本隆の作詞曲だ。

松本 「久しぶりに再会して“いい世界が広がってるな“って思った。」

松本 「このアルバムで佳孝と作った海辺のビーチサイドのストーリーを、その後拡げたのが 『A LONG VACATION』(1981年/大瀧詠一)」

南 「避暑地から帰るバスを待つシーンとか、よくわかるんだよね。それって共通に持ってるなにかだよね。」

松本 「同じ世代で都会っ子で。リゾートが終わるときの寂しさ、そういうのは知ってるよね。」

続く 『MONTAGE』(1980年)、『SILKSCREEN』(1981年)でも、松本は収録曲の半数以上に作詞で参加。『SILKSCREEN』に収録された大ヒットシングルの誕生秘話も飛び出した。

松本 「佳孝から、一度だけ珍しく歌詞の注文があったのは 「スローなブギにしてくれ(I Want You)」」

南 「え、俺なんか言ったっけ?」

松本 「"今おれは恋をしてるから、熱い歌を作ってくれ"って。だからストレートに"Want you"ではじめた。」

松本 「これで時代が変わるな、って思ったの。みんなは「木綿のハンカチーフ(1975年)」で始まったっていうけど、そうじゃない。自分のやりたいことをやりだしたのはこの曲なの。」

盟友ともいえる二人は、その後も共同プロデュースアルバム『冒険王(1984年)』や『LAST PICTURE SHOW(1986年)』を制作。

松本 「僕が好きなのは「COOL」(アルバム『SEVENTH AVENUE SOUTH』(1982年)収録)と「PEACE」(アルバム『冒険王』(1984年)収録)の詞。僕にこんな歌詞を書かせるのは佳孝しかいない。だから僕にとって彼はとても大事な歌手。」

南 「松本隆は、稀有なプロデューサーですよ。最初からトータルアルバムの話をしていた。1枚のアルバムを作るにあたって最初から最後まですべてがストーリーになっている。そのプロデューサーが歌詞を書いているんだもの。強い味方を持ちましたよ。」

この対談の模様は8月11日に放送した「FM COCOLO Holiday Special CITY POP SUMMER 2022」12時台・13時台で紹介された。番組は8月18日(木)までradikoタイムフリーで聴くことができる。

FM COCOLO Holiday Special CITY POP SUMMER 2022 SONG LIST
・DOWN TOWN  SUGAR BABE
・ODORO! (feat.MIHO FUKUHARA)  PYRAMID
・二人のバカンス 竹内まりや
・黄昏のBAY CITY 八神純子
・Traffic Jam  SPiCYSOL
・CATCH YOUR WAY 杉 真理
・I CAN'T WAIT 佐藤 博
・ピストル 南佳孝 
・Simple Song 南佳孝
・スローなブギにしてくれ(I WANT YOU)  南佳孝
・恋するカレン 大滝詠一
・ネバー エンディング サマー1 杉山清貴
・恋の横顔 国分友里恵
・PEACE 南佳孝
・微熱少年 鈴木茂
・Blind Curve 菊池桃子
・真夜中のドア/STAY WITH ME 松原みき
・FASCINATION 門 あさ美
・One On One 芳野藤丸
・アイリーン 安部恭弘
・So Long, Mrs 村田和人
・サブタレニアン二人ぼっち 佐藤奈々子
・Sparkle 山下達郎
・ラブ・コンペティション 当山ひとみ
・優しい手~Gentle Hands  Original Love & TENDRE
・プラスティック・ラブ 竹内まりや
・Fantasy 中原めいこ
・Summer Touches You 東北新幹線
・Midnight Pretenders 亜蘭知子
・Magic  Dick St. Nicklaus
・月夜の晩には 南佳孝
・ヘミングウェイに逢える海 カルロス・トシキ&オメガトライブ
・Wonderland 夕闇 City 二名敦子
・Give It All  Ratt
・Feels Like Tonight  Daughtry
・MOON CHILD  ICE
・中央フリーウェイ 荒井由実
・Summer Blue ブレッド & バター
・土曜の夜はパラダイス EPO
・TAKE YOU TO THE SKY HIGH 角松敏生
・夜風のインフォメーション 濱田金吾
・オリビアを聴きながら 杏里
・夢は波に乗って 山本達彦

FM COCOLO Holiday Feature CITY POP SUMMER 2022
放送局:FM COCOLO
放送日時:2022年8月11日 木曜日 11時00分~17時00分
出演者:南佳孝、松本隆、林哲司、meme、池田なみ子

※該当回の聴取期間は終了しました。

「日本の役に立つなら住んでもいい」意識は間違い? 外国籍の人と入管に今なにが起きているのか

ヘウレーカから発売されている『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること』を著した、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが4月19日の『大竹まことゴールデンラジオ』に出演。本に書かれた内容について伺った。

大竹「安田菜津紀さんがこの本を書くことになった理由はなんですか?」

安田「副題にも入っているので、皆さんお察しかと思うんですけれども、この本のテーマは日本の入管政策なんです。入管は読んで字のごとく、出入国を管理して、入管庁としては監視によって治安を守っているということを打ち出してます。それは必要な仕事ではあるんですけれども、一方で生活者の視点とか、あるいは人権の主体を考えた時に、外国籍の人たちは必ずしもその権利が守られていないという現状があって、私たちの隣人のことのはずなのに、私たちはどこまでそれを知っているのだろうか、ということが出発点です」

室井「ウィシュマさんのあの事件、ほんとに泣いちゃった」

室井「2021年に名古屋入管で、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことですよね」

室井「なんか怖いんだよね。管理してる人たちが『頑張れ』とかって。ウィシュマさんはすごい辛そうなのに、普通に明るく声かけちゃってんだよね」

安田「ウィシュマさんは体が弱って動かせない状態に追い詰められて亡くなったわけですけれども、『私たちも頑張って体を動かすけど、あなたも自分の体頑張って動かすのよ』っていう風に呼びかけていたりするんですよね」

室井「明らかな悪意じゃないところが余計怖いと思っちゃうんですよね」

安田「これはウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった後に出された調査報告書でも指摘をされているんですけれど、ウィシュマさんが体調を悪そうにしているのは、外に出たいから病気ですと偽っているんじゃないかと最後まで疑っていた職員がいました。外国人は嘘をつくんじゃないかとか、ごまかすんじゃないかとか、そういう視点が組織の中で暗黙の了解のように共有されるようなことがあったのではないでしょうか」

室井「でもそれはおかしいよね。ナニ人でもあっても嘘つく人は嘘つくもんね」

安田「そうなんですよね。だから国籍とか外国人だからといって分けるのは間違ってるということも、この本の中では大事にしていたところです」

大竹「安田菜津紀さんは、この本の中で大切にしていることが2つあるとおっしゃってます。それは何ですか?」

安田「1つは今、室井さんがご指摘くださったことに重なるんですけれども、例えばナニナニ国籍の人が犯罪をしたというニュースが流れたとします。日本のニュースって国籍と一緒にそういう情報を流しがちなんですけれど、じゃあ『ナニナニ人は危険なの?』と大きな主語でくくって危険視したり排除するのは間違っているということ。もう1つは、今たくさんの外国人労働者たちに、私たちの生活は支えられていますよね。私はよく牛丼屋さんに入ったりするんですけれども、店員さんが外国ルーツの方なのかなっていうことも多いですし、目に見えているところだけではなくて、工場で働いている人もいるでしょう。でも『そうやって日本社会を支えてくれている人なんだ。だからその権利守ってあげなきゃね』って、上から目線ではなく…」

室井「今この時代に一緒に生きてる人たちだよね?仲間だよね」

安田「そうなんです。だから、上から目線で『日本を助けてくれるんだったら住んでもいいよ』ではない方向で、社会を築けないだろうかと。日本に役に立つ人だから守ろうという視点はすぐ、役に立たない人は追い出そうという視点に切り替わってしまう、表裏一体のものだと思います。でも人権ってそういうものではなくない?っていうところが出発点ですね」

大竹「本の中で紹介している、日本で暮らす外国の方は、色々な…なんて言うんだろうね。不具合って言ったらいいかね? 大変な目に遭ってます」

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