「溶連菌感染症」は皮膚科での正しい診察が重要!
渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。7月11日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症について解説しました。
松田:今日は、最近、報道が増えている病気で通称「人食いバクテリア」と呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症」のお話です。6月21日付の山梨新報で書いた、山梨大学医学部付属病院の皮膚科教授で副病院長の川村龍吉さんのインタビュー記事からポイントを解説します。
麻耶: 確かに最近、テレビなどで取り上げられていますよね。改めてどんな病気なのでしょうか。
松田:この感染症は未解明な部分もあるのですが、傷口など皮膚から「溶連菌」という細菌――喉にもいる菌ですが、これが皮膚→皮下組織を通り、筋肉を覆う「筋膜」へ侵入、赤く腫れ壊死した患部が、1~2日で手足から胴体へ広がり死に至ることも、という疾患です。
報道が増えている背景は2つ。感染者の急増と30%という致死率の高さ。死に至らなくとも手足の切断につながりうる恐ろしい感染症でもあります。厚生労働省によると、半年(1~6月)の国内感染者は977人で、山梨県感染症対策センターによると感染者9人のうち2人が死亡。国も県も感染者数は過去最高で、増加要因は諸説あるが分かりません。
麻耶:なるほど。実際にはどんな治療がされるのですか。
松田:在京キー局の報道やYouTubeなどでは、感染症科や外科など“専門外”の大学病院医師などが出演し、「壊死が広がれば手足の切断もやむを得ない」などと説明し、私もいくつかの番組でこれを確認し、その前提で取材に臨みました。
ところが先生は冒頭から「それは誤った治療」とキッパリ否定された上で、「そもそも、この疾患は、皮膚科で最も重篤な疾患で、新手の感染症ではない。昭和の時代から治療法が確立されていった『壊死性筋膜炎』で、皮膚科の先生ならみな知っている。壊死が広がる前に、救急で手術ができる皮膚科のある大きな病院へ入院、検査し、壊死性筋膜炎と判明すれば、手足を切らずとも皮膚の移植で治せる」というのです。実際に、川村先生は30年間で50人の患者を治療され、一人も手足の切断はしていません。
麻耶:えーっ。それって衝撃的。怪しいと思ってすぐに皮膚科へ行けば、皮膚の移植で治せるものを、外科に行って手足の切断にまで至ることもあるということですか。天と地の差ですよね。
松田:まさに天国と地獄。補足すると、傷から手足の先に菌が入って化膿することは日常よくあることですよね。ひどければ、赤黒く腫れ痛い。ただ、化膿しただけなら、軟膏を塗って数日で腫れは引きます。ここまでは、「壊死性筋膜炎」と見分けがつかない。だから、外科など専門外の診療科だと、「抗生物質をあげるから、様子を見ましょう」などとなります。
ところが、壊死性筋膜炎の場合、抗生物質が効きません。筋肉には血流が乏しいからです。たとえば、朝、指が腫れ始めた。数時間後に腫れが手のひら全体に広がり、腕に上がってきた―などとなるから、様子見では手遅れになりかねない。「急速に壊死が広がっている」と疑ったら、最寄りの皮膚科クリニック経由か、直接、救急車を呼んで、山梨大学医学部付属病院の皮膚科に入院、検査。皮膚と皮下脂肪除去、筋膜の細菌洗浄を経て患者本人の皮膚を移植という手術になります。
麻耶:「手足を切らずとも皮膚移植で治せる」なら、もっと広く周知してほしいですよね。国や県、それと私たちメディアにも課題がありそうです。松田さんはどうお感じですか。
松田:厚労省のホームページ(HP)にも、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の説明はあるのですが、どこにも「壊死性筋膜炎」という病名の記載・説明はありません。感染症対策課に質すと、「医療現場で判断いただくもの」と見解を避けました。県HPにも、「壊死性筋膜炎」の記述はない。厚労省が情報発信しない以上、仕方ない面もありますが、今回、このようなことが取材で分かったのだから、「川村先生からお話を聞き、県民への正確な情報発信を望みたい」と県担当者には伝えました。また、メディアの報道も、私が確認した範囲ですが、皮膚科の医師の取材は皆無。手足の切断の話ばかりで、皮膚移植に言及する報道は見当たりません。報道機関には治療法の是非を判断する能力はありません。しかし、治療法として多様な選択肢を県民に示す役割と責任はあります。取材を通じて強くそう感じました。
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