有機フッ素化合物「PFAS」現状の規制の問題点は

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。2月13日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、有機フッ素化合物「PFAS」について解説しました。
麻耶:今回はどんな話題でしょうか?
松田:はい。今日は先月の放送でお送りした化学物質「PFAS」(有機フッ素化合物=ピーファス)の2回目です。昨年12月20日付の山梨新報の記事の解説で、1回目は発がん性などが疑われるPFASが、全国の井戸水や水道から検出され問題になっているというお話でした。今日は、PFASが県外だけではなく、山梨県内でも相次いで検出されているというお話です。
麻耶:水道水からの検出ということで、リスナーの関心も高いと思われます。前回放送を聞かれていない方もおられると思うので、改めて「PFASとは何か」から伺えますか。
松田:発がん性やコレステロールの上昇など健康影響が疑われる化学物質で、その数は約1万種。環境中への残留性が高く、PFASの中でも「PFOS」(ピ―フォス)とPFOA(ピーフォア)の2物質は、影響の大きさから、国際条約で廃絶が決まっており、日本では2010年にPFOSが、2021年にPFOAの製造・輸入がそれぞれ原則禁止となりました。さらに、国は「できるだけそれ以下が望ましい」という暫定目標値を設定、「水1リットル当たりPFOSとPFOAの合計で50ナノグラム以下」となっています。ナノは10億分の1という単位です。
麻耶:この目標値に対して、全国と山梨県ではどのくらいの濃度が出ているのですか。
松田:この3~4年で、米軍や自衛隊基地の周辺の地下水などから、1000ナノ、2000ナノ、中には万単位という高濃度の汚染が判明し、他県では住民の血液検査まで行う自治体が出てきています。一方、山梨県の状況は、県大気水質保全課によると、甲州市上於曽の民間の井戸から21年度130ナノグラム、24年度100ナノグラムにやや減少。笛吹市一宮町の井戸からは23年度に130ナノグラム、24年度は49ナノグラムに減りました。いずれも発生源は不明で、飲料用には使われていません。一方、北杜市明野町の閉鎖中の産業廃棄物の最終処分場では、昨年5月、産廃に降り注いだ雨水から320ナノグラムが検出され、県はこの雨水を集めて処理施設で処理後、近隣の河川に放流しています。現在も監視は継続中です。
麻耶:産廃処分場はやはり産廃が発生源ですか。
松田:はい。これは明確ですが、北杜市にはもう一つ白州町鳥沢で、暫定目標値の50ナノグラムは下回ったがPFASが出ました。近隣には飲料や食品工場があり、濃度が目標値以下とはいえ気になります。なぜ、こんな山奥からPFASが出たのか――。取材によると、PFOSは半導体製造、金属加工、米軍・自衛隊基地の消火訓練で使われた「泡消火剤」など、また、PFOAは油や水をはじくようにと、フライパンに施したフッ素コーテンイングや食品包装、衣類の防水加工・スプレーなどに利用されてきました。現在は、PFOS、PFOAの製造・輸入が禁止されていますが、過去に売られた製品・商品が今も使われていたり、明野処分場のように産廃に形を変えて環境中に残留しています。だから、山奥から検出されることもありうるし、発生源不明というケースも多いといいます。
麻耶:大変、難しい問題ですね。私たちはPFASとこれからどう向き合っていけば良いのでしょうか。
松田:取材では、複数の県の担当者から、「暫定目標値という遵守義務のない規制ではなく、遵守義務のある水道法上の『水質基準』に規制を引き上げてほしい」という声が聞かれました。暫定目標という緩い規制では、行政の規制権限に限界があるからです。山梨新報の記事掲載後、偶然でしょうけれど、環境省が2026年から、PFASを水質基準に加えると発表しました。そうなると、自治体や水道事業者などに定期検査と、基準値を超えた場合の改善が義務付けられます。飲料水の安全を守ることですから歓迎すべきことです。50ナノグラムという数値目標は変わりませんが、遵守義務のあるなしではまったく意味が変わってきます。ただ、県担当者の中には「数値の引き下げも含め検討の余地があるのでは」との意見もありました。米国では昨年春から、水1リットル中のPFOS、PFOAそれぞれを4ナノグラム以下に規制。ドイツは28年から、この2物質に2物質を加えた4物質の合計で20ナノグラム以下にします。国際動向も見ながら日本の規制を考えていく必要があると思います。
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