人口減少 企業の対策はトップの意識が鍵

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。4月10日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、人口減少問題について解説しました。
松田:前回放送で、山梨県の人口が昨年12月、47年ぶりに79万人を下回ったとお伝えしました。要因は少子高齢化を背景に、高齢者数などの死亡者数が、出生数を大きく上回る「自然減」ということでした。
麻耶:はい。この「自然減」とは別に、転入者と転出者の差の「社会増減」という要因もあって、山梨県は若干の「社会増」なのに、「自然減」を補うには遠く及ばないと。現在、78万人台の県人口は、2050年には61万人まで減っていくという予測もあるとのお話でした。
松田:人口減少が続くと、社会や経済が縮小する「県全体の活力低下」が大問題なのです。そこで役割や機能が期待されるひとつが地域の企業。出生数を増やすカギは20~30代から40代前半の社員で、若年社員の定着に企業がどう取り組んでいるのか事例を3つ紹介します。まず、ジュエリー製造・販売の「光・彩」(こうさい、甲斐市)で、従業員数142人。約7年前から「働き方改革」を社長のトップダウンで本格化し、時間外労働時間(月間)を17年の28時間から23年には8時間まで激減させました。
麻耶:どのようにして達成したのですか。
松田:業務ごとに要した時間を「日報」に入力し、伝票作成なら最も処理が速い社員の処理時間以下を全員社員が目指します。また、一人の社員しかできない仕事をなくし、2~3人が交代でできる体制を構築、休めるようにしました。AI(人工知能)や自動化装置などの設備投資も加え、生産性を飛躍的に上げた結果、女性社員の産休育休取得率は100%、また社員の定着率は、人事考課制度の見直しと時短で約90%と約9年で倍増しました。
麻耶:多様な取り組みを積み重ねているのですね。他の2社はどのような取り組みですか。
松田:半導体製造装置部品加工などの「山陽精工」(大月市)という従業員131人の会社は、大月なので東京通勤圏の地域。地元に残る人は育児中の女性社員や東京からUターンしたシニア層なので、女性やシニアを含む多様性(ダイバーシティ)を考え「働きやすい制度」を導入。時短勤務では、子どもが小学校卒業まで1日6時間勤務が可能なほか、時間単位の有給休暇制度もあり、PTAの所用や病院、市役所などに活用でき評判も上々とか。
もう1社は、県内IT大手の「YSK e-com」(従業員数260人、甲府市)。育児休業の第一号社員は平成の初めごろ。フレックスタイムは導入から25年以上です。出産後に職場復帰する女性社員の約9割は1日6時間の「時短復帰」のほか、「ノー残業デー」は週に水、金の2日間。出社の際、好きなデスクに着席できる「フリーアドレス」を導入しています。社員に会社を好きになってもらうような仕組みを講じ、離職率は約2%とかなり低いです。
麻耶:働き方改革により、結婚、出産、子育てを支援し、人材流出を抑制していく取り組みに奮闘されている姿がよく分かりました。今後の課題はどうお考えですか。
松田:県の県人口減少調査研究グループは、1年ほど前に県内企業に「働き方改革等意識調査」を実施しました。回答数は435社で、「経営課題として人口減少の影響を感じる」と答えた企業は86%と高い数字でした。理由は「人手不足」「社員年齢構成のゆがみ」が多く、柔軟な働き方を重視している企業は91%。しかし、4割は「取り組み不十分」でした。
この結果について、県の担当者は「企業の意識改革と行動変容が求められる」と強調していました。私もここが肝要だと思います。危機意識は共有しているのだから、あとは、実践・実行あるのみだからです。もちろん、コストのかかる話ではありますが。
今回、取材した3社に共通することは、社長の危機意識の強さと、だからこそ「何としてもやるぞ」という気概と実行力でした。そうしたトップの意識が社員の意識や職場の雰囲気にも広がっていくようです。取材に答えていただいた、ある女性社員は「妊娠中は体調を崩し、突然、休むことが付き物ですが、それでも嫌な顔をされない会社の雰囲気がとてもありがたかった」と話していました。働き方改革はコストのかかる問題だからこそ、トップが主導せねばならず、今、企業には「やるかやらないか」が問われていると思います。