山梨で誕生した工芸「卵殻モザイク」とは
渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。11月13日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、卵殻モザイクについて解説しました。
松田:今日は山梨で誕生し、間もなく100年という工芸の「卵殻モザイク」を紹介します。日本画の絵の具で着色した卵の殻を、指先で小さく割り「特殊な糊」で素地―べニア、厚紙、皮、竹などの天然素材、金物や陶磁器―などに貼る、美術工芸です。12月5日付の山梨新報で掲載した記事の解説をします。立ち寄った、県立美術館のそばにある「甲府ミュージアムハウス」の展示で見かけ、その美しさに魅かれて記事にしました。
麻耶:そうやって記事になることもあるのですね。卵殻モザイクとはどのような工芸ですか。
松田:発祥は95年前の1930(昭和5)年で、卵殻接着用の「特殊な糊」を、山梨男子師範学校(現山梨大学)教諭だった矢崎好幸さんが考案し、この糊によって確立した工芸です。インタビューに応じていただいた工芸作家の安藤彩子さんは、卵殻モザイクで現在、ただ一人の伝承者。安藤さんは、生涯で1000点以上の作品を残したという、矢崎さんの愛弟子だった祖母より、この技術を幼少のころから受け継ぎました。一子相伝のような工芸です。
麻耶:作品の魅力について伺えますか。
松田:私は美術に造詣はなく、あくまで、素人の印象ですが、放浪の天才画家と言われた山下清の「貼り絵」に通じる美しさを感じました。貼り絵は、色紙などをちぎって貼るのですが、卵殻モザイクは色紙の代わりに、卵の殻を貼っていきます。数百点に及ぶ安藤さんの作品モチーフは、花、里山、富士山、神社の稚児の舞、子どもと鯉のぼり・七夕など。メルヘンの世界では、靴屋と小人、シンデレラ、赤ずきん…。これを絵の具で色とりどりに着色した「卵の殻」を割って、貼り詰めて表現します。
麻耶:特殊な糊とはどんな糊ですか。
松田:牛乳のたんぱく質を原料とする「カゼックス」と呼ばれる糊です。この糊は塗って乾くと塗布部分の接着剤の厚みが薄くなっていくのが特徴です。ボンドなどでは、厚みが薄くならず、デコボコ感がでてきますが、カゼックスだとそうならないそうです。安藤さんによると、「この糊がもしなかったら、『卵殻モザイク』という工芸は成立していなかったと思います」というお話でした。
麻耶:作品の制作工程を伺えますか。
松田:まず、下絵を描きます。たとえば、りんごひとつを描く場合、大きさ、色、絵全体の中の位置、影を描きます。次に「素地」。つまり「何に書くか」ですが、べニアや厚紙、天然素材、金物、陶磁器などから選びます。ただ、大半は額縁入りの絵です。そして、半分ぐらいに割った卵殻は、殻の内側の薄い膜を取り除き、絵の具で着色。乾かして透明ツヤ出しのニスを塗り、カラフルな卵殻を10~60個準備し、指で小さく割って貼ります。貼り詰めた卵殻は、お城の「石垣」のイメージで、貼り絵とは違った独特の世界観があります。
麻耶:技術の伝承へ、安藤さんはどう活動されていますか。
松田:約20年前から、山梨文化学園で「卵殻モザイク講座」を始め、このほかの講座や自宅の教室の生徒さんを含めると、生徒総数は現在、約30人。技術の伝承は、簡単なことではないですが、安藤さんは「技術を伝えられる人を県内外で育てたい。その土地土地に『この人に習えば技術が習得できる』水準の創作技術を持ち、教えられる人が増えていくことが理想です」と話していました。
麻耶:観に行きたいです。来年の展示の予定を伺えますか。
松田:一部、ご紹介すると、甲府市貢川の県立美術館で4月15日から一週間、「第49回玖人(くにん)展」。北杜市大泉のギャラリー麓人舎(ろくじんしゃ)で、5月5日から23日、「卵殻モザイク作品展」。甲府市貢川の甲府ミュージアムハウスでは11月4~8日、笛吹市石和町の笛吹市スコレーセンターで開催の「笛吹音楽祭ロビー展示」が11月21~23日などとなっています。それから、東京でも「卵殻モザイク・安藤彩子作品展」が、丸善日本橋店で9月30日から1週間、開催予定です。
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