6月20日は世界難民の日...ヨルダン難民キャンプを実際に見て感じたことは

FM FUJI『Bumpy』のコーナー「CLOSE UP TODAY」(木曜17:35~)の6月9日のオンエアに国連UNHCR協会 国連難民サポーターの武村貴世子さんが出演。ヨルダンにあるシリア難民の難民キャンプを訪れて感じたことや6月20日の「世界難民の日」について語りました。

麻耶:武村さんは以前、ヨルダンの難民キャンプに実際に行かれたんですね。 

武村:はい。2016年の3月から4月にかけてシリアの人達が避難しているヨルダンにあるザータリ難民キャンプと、アズラック難民キャンプを訪問しました。実はこれ、難民キャンプに行くというのが最初の目的ではなかったんです。たまたまヨルダンに知り合いがいまして、そのご家族がぜひヨルダンに来てくださいと言ってくれて、そのことを国連UNHCR協会に報告した時に、この機会に難民キャンプの訪問の許可を取りましょう、ということになって行けることになりました。 

麻耶:なかなか現地に行くのも難しいんじゃないかなと思っていたのですが、そういうきっかけがあったんですね。キャンプに行く前はどんな苦労や、どんな心配事がありましたか? 

武村:難民キャンプってもともと避難してきたかたが生活している場ですよね。そこで職員やスタッフの方は毎日忙しくされています。その中に受け入れていただくっていうことは、スタッフの日々の業務のお時間をいただいて、いろいろ教えていただけると言うことですので、本当に貴重な機会をいただきました。ですので、私自身の苦労や心配事というよりも、調整していただいた方々への感謝の気持ちの方が大きいです。 

麻耶:お知り合いの方は実際に会うことができたんですか? 

武村:知り合いはいわゆる「都市難民」と言われているヨルダンの中でアパートを借りたりして避難をされている方々の支援をしていたんですね。その方と一緒にヨルダンではシリア難民の家庭訪問などもしました。 

難民という言葉を使いたくないって思った

麻耶:実際に行ってみて、印象的なことはどういったことがありましたか? 

武村:実際に行ってみて、一番大きな変化は、「難民という言葉を使いたくない」って思ったんですね。一緒にご飯食べたり遊んだり、家庭訪問ではお宅に泊めていただいて一緒に寝たり、女の子と恋愛の話をしたりとか、本当色んなことを経験したんですよ。それと、私がヨルダンに行くなら一緒に行きたいってことで、LUNA SEA・X JAPANのギターのSUGIZOさんも一緒に来てくれたんですね。SUGIZOさんの演奏で一緒に歌ったり、踊ったりする時間もたくさんあって、そういう時間を過ごすと、本当に私たちと何も変わらない人たちだなと言うことをすごく実感したんですね。その現実を見て、この人達って、たまたま自分が生まれた国から自分の意思と関係なく避難せざるを得ない状況になってしまっているっていうことを本当に実感したんですね。なので、帰国してから私は「難民という状況に置かれている人」というような表現でお話する事が圧倒的に増えました。分かりやすく言うと、例えば「浪人生」って言葉があるじゃないですか。でも「浪人生」はその人の名前じゃなくて、たまたま今そういう状況に置かれてしまっているっていうことですよね?これと変わらないっていうことなんです。難民という状況にたまたま置かれている。でも、この人たちはわたしたちと全然変わらない人なんだなって言うことが実際に接してみて私が感じたことでした。 

麻耶:そうですね。やっぱりお話を聞いてると、みんな同じ、心がつながるときも一緒。たまたま環境が難民として生活しなくてはいけなくなってしまったっていう。本人の意思ではないですもんね。だからこそ、私たちも手を取り合う支援が必要なんですね。 

6月20日は「世界難民の日」

麻耶:今月20日、「世界難民の日」ということで、今年はどんな事が行われるんでしょうか? 

武村:毎年、「世界難民の日」にはテーマがあります。今年のテーマは「安全を求める権利」です。その人が誰でも・出身がどこでも、避難を強いられたら、全ての人は安全を求める権利があります。現在、ウクライナから避難している人たちのことって、本当に皆さんニュースでもよく見ていると思うんですが、シリアやミャンマーなど世界中で多くの人が避難を強いられています。そんな全ての人が安全に暮らせることを、今年はぜひさらにじっくりと考えていただきたいです。イベントも色々あるんですけれども。まず、日本から難民支援の連帯として、全国およそ40カ所のランドマークがUNHCRブルーにライトアップされます。是非お近くで見られる場所があればご覧いただきたいなと思っています。ぜひ写真や感想、SNSなどで発信していただきたいですし、ライトアップが見れないけども参加したいという方は身の回りのブルーを撮影して参加する事も出来ます。 

もう一つは音楽をお好きなかたに6月19日(日)には音楽を通じて難民の人々の生き抜く意思を伝える「UNHCR WILL2LIVE Music 2022」が国連UNHCR協会公式YouTubeチャンネルで無料でご覧いただけます。こちら、豪華ラインナップですので、ぜひ注目してください。 

麻耶:イベントとか、ブルーのライトアップとか、色んなところで気持ちがこの「世界難民の日」に繋がるといいですよね。 

世界難民の日(2022年) – UNHCR Japan

麻耶:では今回のまとめとして、リスナーのみなさんにメッセージをお願いできますか? 

武村:前回出演した一ヶ月前に世界で家を追われた人たちの数を、およそ8240万人、第二次世界大戦後、最も多い数字という話をしました。実は、この数字がもうすでに大きく変わっていまして、ウクライナ、世界各地の紛争により強制労働の数が史上初の1億人を超えました。この発表も含めて世界難民の日にはいろんなニュースが出てくると思います。UNHCRはもちろん、世界中さまざまなNGOや民間の方々なども、世界難民の日に合わせてアクションを起こします。今日初めて6月20日が「世界難民の日」って知ったかたも多いと思うんですね。この機会にほんのひと言でもいいので、SNSで発信したり、身近な人と話したり、寄付をしたりと、一人でも多くの人が行動することで、確実に変わる未来はあります。ぜひ、ラジオ聴いているあなたも、一緒に、「世界難民の日」にアクションを起こしたり思いを馳せていただけたら嬉しいです。一緒に未来を変えていきましょう、と伝えたいです。 

麻耶:武村さんが実際に現場に行かれて、(難民の方たちが)何も私たちと変わらないっていうことが、すごく響きました。その思いをみんなにも理解してもらって、「世界難民の日」6月20日、自分ができることから取り組むということを実践していただきたいですね。 

武村:そうですね。 

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:渡辺麻耶
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※放送情報は変更となる場合があります。

「観光客」だけでなく「地域住民」の満足度も目標値に オーバーツーリズム対策と課題

ジャーナリストの佐々木俊尚が10月4日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。オーバーツーリズム対策について解説した。

※画像はイメージです

オーバーツーリズム対策、宮島では訪問税がスタート

世界遺産・厳島神社で知られる宮島(広島県)を訪れる観光客らから、廿日市市が1人100円を徴収する「宮島訪問税」が10月から始まった。観光客が過剰に訪れ、環境や住民生活に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」対策に役立てられる。

新行)「宮島訪問税」は市が制定した条例に基づく地方税で、島に渡るフェリーの乗船料に上乗せされます。市は年間で約3億円の税収を見込んでおり、公衆トイレや旅客ターミナルの維持管理、電柱の地中化などにあてられるそうです。

佐々木)ある程度対策しないと成り立たないぐらい、観光客がたくさん来てしまっている状況ですよね。海外からの観光客は、これまでだと2000万人台ぐらいでしょうか。コロナ禍から復活してきていますが、中国人はまだそれほど来ていないので、中国からの観光客が全面的に回復すると3000万人くらいになるかも知れません。

新行)そうですね。

佐々木)外国からの観光客が世界一多いのはフランスで、ヨーロッパ大陸内だからというのもあるけれど、6000万人~7000万人くらいだと言われています。日本もその数字を狙っていますが、日本人の半数ぐらいの人口が来たらどうなるのか。

特定の観光地に偏りすぎている ~「何を魅力として打ち出すか」を考える

佐々木)ただ、数を見るとすごく偏っています。山だったら富士山しか行かないとか、京都や宮島、東京であれば銀座など、特定の場所に集中してしまう問題がある。まずはこれを分散させることですよね。

新行)分散させる。

佐々木)そのためには「何を魅力として打ち出すか」を、もう少し考えた方がいいのではないでしょうか。

観光名所に行っても人が多すぎて楽しめない

佐々木)昔、キューバのハバナへ旅行に行ったことがあります。ハバナにはヘミングウェイが通っていたバーがあるのです。カウンターで「渋い夕暮れを眺めながらモヒートを飲みたい」と思って行ってみたら、「100人いるか」と思うほど多くの観光客がいました。

新行)そうなのですね。

佐々木)大群衆になっていて、まったく楽しめませんでした。そんなところに行っても観光的な風情がないではないですか。

新行)ゆっくり楽しむという感じではなくなってきますよね。

佐々木)昔は観光地に行き、「観光地の名前が入った土産を買って帰る」というパターンが多かったと思いますが、現在はそういうものを求める人は減っていると思います。

観光客が少ない「自分だけが知っている店」に行きたい

佐々木)私の友人が「Airbnb(エアビーアンドビー)」という民泊の物件を持っているので、外国からの観光客がどんなことを言っているのか聞いたら、「観光客の来ないところを教えてくれ」と言われるそうです。

新行)なるほど。

佐々木)中国や台湾からの観光客も、何度も日本に来ていると、最初は富士山や銀座に行くけれど、「観光客が少ない自分だけが知っている店に行きたい」となってくる。渋谷の代々木上原は、あまり外国人に知られていない街だと思いますが、おしゃれな店が多いですよね。なぜか台湾人の観光客が、あの辺りの飲食店で食べているのです。

新行)そうなのですか?

佐々木)店の人たちにそれとなく「あの人たちは台湾から来ているようだけれど、なぜこんな店を見つけたの?」と聞いたら、「SNSの口コミで見つけた」と言っていたそうです。共有されている「密かな情報」があるらしいので、そういうものをうまく活用することが大事ではないかと思いますね。

「何もないけれど素晴らしい土地」が日本にはたくさんある ~富山県の素晴らしさをイギリスの記者が紹介

佐々木)『クーリエ・ジャポン』という海外メディアを紹介する日本のウェブサイトがあって、そこに英紙『デイリー・テレグラフ』の記事が紹介されていました。デイリー・テレグラフの記者が富山県に行くのですが、「富山はどんなところか?」と日本で周りの人に聞くと、「山があって海がある」しか答えないのです。

新行)そうですか。

佐々木)自分の周りでも、海外から来た観光客で富山に行った人は誰もいない。でも富山に行ってみたら、素晴らしくよかったそうです。北アルプスの雄姿が広がり、目の前には魚の旨い富山湾があって、素晴らしい水田が広がっている。昔からの板塀の日本家屋が並んでいて、「これぞ日本の極地」というような場所であり、「みんなここに行った方がいい」という記事を書いているわけです。

新行)なるほど。

佐々木)金沢や軽井沢は有名だけれど、同じ北陸新幹線でも富山にはあまり行きませんよね。日本人でさえ行く人は少ないのではないかと思います。でも、そういう「何もないけれど素晴らしい土地」が日本にはたくさんあるのです。

「住民なりきり旅行」のようなオーバーツーリズムにならない打ち出し方が必要

佐々木)私は最近、旅行に行くとホテルではなく民泊に泊まるのです。民泊だとキッチンがついているではないですか。料理するのが好きなので、地元の道の駅や農協の直売所、漁協などに行って魚や野菜を買い、地元住民になりきった気持ちで料理して食べるのです。

新行)いいですね。

佐々木)町を手ぶらで歩き、「この町にも長い間住んでいるな」と勝手に思い込むような、ロールプレイング的な「住民なりきり旅行」も楽しいです。そういうものはオーバーツーリズムにならない、別の打ち出し方ではないかと思います。

新行)観光名所だけを打ち出すのではなく。

「地元の人も満足できて観光客も満足できる」というところを最終的な目標地点にする

佐々木)観光が目指すべき目標値において、みんな「観光客の満足度」や「観光客の数」を言うではないですか。それだけではなく、ハワイが実施していますが、「地域住民の満足度」も目標値に入れようと動いています。

新行)住んでいる方々の環境なども考えなければいけないですよね。

佐々木)観光客の人も、地元住民から嫌われたくはないでしょう。でも、もはや京都の人は観光客を嫌っていると思います。バスも乗れないですし。それでは観光の目標値になっていない。「地元の人も満足できて、観光客も満足できる」というところを最終的な目標地点にすることが大事ではないでしょうか。

2024年から日帰り客への入域料を導入するベネチア

新行)読売新聞には、ベネチアの例が大きな記事で出ています。宿泊ベッドが人口を超えたそうです。

佐々木)すごいですね。

新行)ベネチアは来年(2024年)春から試験的に、日帰り客を対象に入域料を導入するそうです。

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