全国初の画期的な内容も...山梨県の太陽光発電規制条例 規則改正のポイント

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。9月15日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、山梨県の「太陽光発電規制条例」の規則改正について解説しました。

松田:今日は行き過ぎた太陽光発電による開発を規制する山梨県の「太陽光発電規制条例」を今秋、規則改正するお話です。8月26日付の山梨新報で報じた記事の解説です。

麻耶:太陽光パネルは全国的に増えていて、目にする機会も多いですが、山梨県の太陽光発電規制条例の基本的な考え方はどのようなものでしょうか。

松田:太陽光パネルは、住宅やビル、工場の屋根に設置する「建物設置型」と、地面に敷き詰める「野立て」に分けられます。長崎知事は取材に対し、「建物設置は推進するが、野立て太陽光はこれ以上増やさない」と明言しました。現在、県内では出力10kW以上の稼働中の野立て太陽光は、1万1766件あり、問題は、森林伐採を伴う場合は環境破壊だけでなく、土砂災害リスクを増大させ、近隣住民の生命と財産を脅かしかねないことです。このため、昨年10月施行の「県太陽光発電規制条例」は「野立て太陽光」の抑制を目的としました。温室効果ガスのCO2排出が少ない再生可能エネルギーのひとつ、太陽光発電は「脱炭素社会」に必要ではありますが、設置して良い場所と、良くない場所があるということです。

麻耶:その仕分けは具体的にどうなっているのでしょうか。

松田:条例は県土の約8割を占める森林地域を「設置規制区域」、それ以外は、「規制区域外」とし、後者は森林の少ない平野部などです。設置規制区域内では事業者は県の許可がなければ、出力10kW以上の新規設置はできず、また、許可を得る際は、住民説明会の義務付けと住民理解を得る努力、環境への影響調査(環境アセス)など、高いハードルを越えねばなりません。これが抑止力になっています。さらに、新規、既存設備を問わず、10kW以上は「設備の維持管理計画」の策定と実施、計画の公表を義務付け、違反すれば、立ち入り検査、勧告、事業者名公表、最後は国へ通報し事業認定の取り消しを求めます。サラッと言いましたが、既存設備に遡って規制するのは大変なこと。また、今年4月には早くも条例改正し、新規、既存、出力、エリアを問わずすべての設備に「設置届け出」を義務付けました。これは小規模施設をつなげ大規模化を目論む悪徳業者の“規制逃れ”を封じるものです。

麻耶:県の条例からは、大切な森林を守ろうという気持ちが伝わってきますよね。それでは、今日のテーマである「条例の規則改正」とはどのようなものですか。

松田:条例は条例本体の改正には議会の議決が必要で、施行まで数カ月かかるのがデメリットですが、条例の下の「規則」の改正は、議決が要らず、県が記述を改訂すればすぐに実施ができスピードが速いのです。規則改正の狙いは、今後のすべての新規届け出の太陽光発電で、近隣住民への説明を事業者に義務付け、内容を住民が理解した「証」――ハンコやサイン――を事業者に提出させることです。事業者にはかなりハードルが高く実効性が高い。「森林地域の原則、設置禁止」と併せ、「住民理解の義務化」も全国初の画期的な対策です。

麻耶:住民本位の政策は県民にとって、本当にありがたいことだと思います。

「住民から理解を得たことの証明」を求める改正に至った背景は

麻耶:「住民説明の義務付け」にまで踏み込んだ背景には、きっかけがあったのでしょうか。

松田:ありました。7月中旬に東京の太陽光事業者が、北杜市内で開いた住民説明会で参加した市議会議員に対し、腕を掴む暴行事件を起こしたことです。県内27市町村では、太陽光発電規制条例があるのは北杜市だけ。これで住民への説明を義務付けているので、事業者はやりたくもない説明会を開きました。一方、長崎知事は事件を知ると激怒し、規則改正を指示しました。ただ、北杜市以外では太陽光発電の市町村条例がなく事業者に説明会の開催義務がないため、いつの間にか住宅が太陽光パネルで囲まれるというような、極めて“異常な日常”があります。規則改正により、今後、県内全域で、住民の知らぬ間に勝手に作られるというような暴挙は許されなくなります。

麻耶:山梨県の太陽光発電規制条例は内容の進化も速いと感じましたが、まだ、松田さんは課題があるとお考えですか。

松田:話を整理すると、県条例の柱は①森林地域の原則、設置禁止②住民説明と住民理解の「証」の報告義務化③新規、既存、出力、エリアを問わない届け出の義務化=太陽光発電設備の全数把握④充実した罰則規定――で、実効性の高い規制が多くの問題を改善しています。細かな課題は別の回の放送に譲りますが、私は最大の問題は日本全体で山梨のような規制がないことだと思います。太陽光発電を所管する主官庁は経済産業省資源エネルギー庁で、これに環境省、国土交通省、農林水産省を加えた関係省庁はこれまで、互いが連携せずに太陽光パネルが全国で引き起こしている問題を事実上、放置してきました。本来、国が法律改正で対応すべきだったところを、「国がやらないなら県がやる」として、山梨は知事が条例を制定して乗り越えようとしています。しかし、他都道府県の多くは一部の市を除き太陽光発電規制条例さえありません。よって、事業者は規制が緩い、規制がない都道府県へと流れ、日本全体としては改善されません。関係4省庁はやっと今年4月、「再生可能エネルギー適正導入・管理」検討会を立ち上げ、7月に提言案をまとめました。評価すべきことですが、遅きに失した。一刻も早く実行すべきです。環境保全を名目とした太陽光発電が森林を食い荒らし、環境破壊を続けてきた事実を4省庁はきちんと受け止め、県民、国民、報道機関は今後もその動向に目を光らせ、必要があれば、物言いを続けていく必要があります。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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