エド・シーランは「2010年代のレッド・ツェッペリン」 その凄さをサウンドや歌詞から分析!

J-WAVEで放送中の番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。ゲストを迎え、1組の「レジェンド・ミュージシャン」をテーマに音楽談義を繰り広げるこの番組。3月16日(土)のオンエアでは、4月に東京と大阪で公演を控えているエド・シーランを特集。シンガーソングライターのAnlyさん、音楽評論家の田中宗一郎さんとその魅力を探りました。

現在22歳のAnlyさんは、高校時代にYouTubeで観た『The A Team』の和訳と白黒のMVにグッと来たのがエド・シーランを聴くきっかけでした。Anlyさんもアコースティックギターを演奏するので、ミュート音や「親近感があるけれどなかなかない不思議な声」に魅力を感じていると話します。

一方、田中さんも「彼の声って倍音が凄く豊かなんです」と声について触れつつ、「ギターは打楽器でもあって、ミュートしたり、右手のタッチで音の感じが変わるんです。エド・シーランはストロークしたときに“ガシャ”っていう、ウエハースを歯でバリって噛んだときのようなジュワっと変化のある音が出る」と解説しました。


■エド・シーランは2010年代のレッド・ツェッペリン

田中さんは、2ndアルバムに収録された『Sing』を耳にしてエド・シーランに注目。ファレル・ウィリアムスがプロデュースした曲で、「ポップソングで久々に良いギターの音聴いたな」という印象を持ったとか。そして、3rdアルバムの多彩な音楽性に触れたときに「この人本当にすごいんだ」と実感したといいます。

田中:当時はトロピカル・ハウスのトレンドがきていたので「それなのかな?」と思っていたら、アルバムを聴くとすごく色んなバリエーションがある。リズミカルな曲を聴いた時に「これはアイリッシュ・フォークの向こう側にあるケルティック・フォークがルーツだ」とか、「北アフリカとか西アフリカのサウンドを取り込んでるんだ」みたいなことがわかってきて。「生粋のフォークシンガーだ」と。

さらに、『Shape of You』を聴いたときには、「2010年代のレッド・ツェッペリンだ」とまで感じたと明かします。

田中:『Shape of You』ってすごくモダンで、アフリカのサウンドも入っていて、メロディも7、8種類出てきます。でも、ずっと4つのコードの繰り返しで、フォーク・ミュージックの一番新しい形だと。「エド・シーランは2010年代のレッド・ツェッペリンなんだ!」と思いました。ブルースのルーツがあるけれど、一番強いのはフォークの部分なんです。50年代、60年代のブリティッシュ・フォークの多様さをツェッペリンが新しくしたように、『Shape of You』はフォークの多様性を担保した一番新しいサウンドなんです。


■情けなさもグッとこらえて歌う魅力

続いて、エド・シーランの歌詞について触れました。Anlyさんは、人生を見せてくれる歌詞や、情けなさが好きだといいます。

Anly:私に全然関係ない彼の友だちとか、家族の名前とか出てくるんですけど、物語を見せてくれてるようなところがすごく好きです。でも、私たちの日常とリンクする部分、ロマンティックなことを言ってたりとか、誰かのことが嫌だとか、葛藤みたいなものがところどころ共感させてくれるのがすごい好きです。人に嫉妬している曲とか多いんですよね。そういうことって歌いにくいじゃないですか。情けないじゃないですか。でもそれをグッとこらえて「俺が言わなきゃ」と(笑)。
田中:それもフォークの伝統で「人の愚かなところを歌ってあげることで笑い飛ばす」みたいな。今はラップにはそういう部分があるんですけど、ポップスにはあまりないんですよ。今の時代って、正しさが良い意味でも悪い意味でも重要視される。その中で「人間って大したこと無いよね」っていうのをやってる数少ないアーティストが、エド・シーランだったりしますね。


■『Shape of You』は「本当にとんでもない」

オンエア後半では、田中さんが選ぶ「音楽史に残るエド・シーラン曲TOP3」を発表しました。

『Nancy Mulligan』(3位)
田中:彼のアイリッシュのルーツが見えてて、尚且つお爺ちゃんとお婆ちゃんの話なんです。今ってポップソングがいい意味で政治的になったので、マイノリティの人がメッセージを発し易いんですが、割と恵まれてた白人の男性はどういうメッセージを歌ったらよいか難しい時代なんです。でもエド・シーランは物語を通してメッセージを出そうと。アイルランド人であったが故にUK全体から決してよい扱いはされなかったお爺ちゃんとお婆ちゃんは、立場の違う男女だったので結婚するまですごく大変でロミオとジュリエットみたいだった。「うちのお爺ちゃんとお婆ちゃんは助け合ったんだよ」ってことを歌うことでメッセージを伝えてるんです。

『Bibia Be Ye Ye』(2位)
田中:今のイギリスの音楽の面白さってガーナとかナイジェリアからの移民の2世、3世が加わって、UKのラップとかに影響を与えてるんですけど、その西アフリカのアーティストと作ったのがこの曲なんです。そこが自分のフォークシンガーとしての役割だと分かって作ってる。リズミカルですごい楽しい曲です。

『Shape of You』(1位)
田中:現代的なフォーク・ミュージックであり、現代的な西アフリカのサウンドのバージョンであり、尚且つトロピカル・ハウスと言われてたEDM経由のトレンドみたいなものを取り込んでいる。しっかりとした音響システムで大音量で聴くと、本当にとんでもないです。音の1つ1つがハッキリと別れてる。曲の半分ぐらいまで全くビートが出てこないんですよ。その間で3連符のフレーズとか綺麗に聴こえるんですけど、そこから入ってくるビートが凄い! ブレイクのとこのギターとか。

まだまだ話し足りないエド・シーランの魅力。次回3月23日のPart2もお楽しみに!

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【番組情報】
番組名:『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』
放送日時:毎週土曜 17時−17時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/musicology/

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ピエール瀧も…不祥事を起こした芸能人の「作品を封印」するのは妥当なのか?

俳優やミュージシャンとして活動していたピエール瀧容疑者がコカイン使用の疑いで逮捕されたことを受け、滝容疑者が関わったドラマ、映画、CDなどが自粛や取り下げられ、物議を醸しています。近年、犯罪や不祥事を起こした芸能人の作品が封印される、というケースが多く、「作品に罪はないのに」といった声も聞かれます。なぜ、封印されるのでしょうか。妥当なのでしょうか。コンテンツ産業に詳しい、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員の境 真良さんに訊きました。

【3月18日(月)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/月曜担当ニュースアドバイザー:津田大介)
http://radiko.jp/#!/ts/FMJ/20190318202138


■封印しなくてはならない基準やルールはない

ピエール瀧容疑の逮捕によって、ソニー・ミュージックレーベルズは、電気グルーヴのCDや映像の出荷を停止と回収、及びデジタル配信の停止を発表。NHKは連続テレビ小説『あまちゃん』や大河ドラマ『龍馬伝』など、過去の出演作品の配信を当面停止。セガゲームスはゲームソフト『JUDGE EYES:死神の遺言』の販売自粛を決定するなど、多くの作品に影響が出ています。芸能人の不祥事による作品の封印を、境さんはどう捉えているのでしょうか。

:そもそも、封印をしなくてはならない基準やルールはありません。不祥事を受けて、関係者が自身で「出さない方がいい」と判断したことが連鎖しています。当然、不祥事を起こした人は身柄を拘束されることもあるので、これから作品に出演することは難しい。そのため、代役を立てたり役柄が変わたったりすることは、しかたがないと誰しもが納得します。では、過去作品についてはでどうでしょうか。たとえば脇役だったのに作品自体を扱わないとか、音楽ではすでに販売しているものを回収するとか。そのような過去作品の封印と、これからの作品の封印とは、違ったものとして考える必要があります。

インターネット時代だからこその問題もあると、境さんは続けます。

:これまではテレビ番組をDVDなどにして販売していました。それだと、売ったあとなので、レンタルでどう使われようがコントロールできなかった。ところが、いまはインターネットを使って日々刻々と新たな配信行為をしているので、過去作品を停止する判断をすることもありえます。さらにひどい例として、「この事件があったため、過去作品の(その容疑者の)顔を変えてしまえ」というような差し替えも技術的には可能になります。そうなると、過去に放送した作品とは違うものが、あたかも当初の作品であるかのように書き変えられてしまう。この問題は過去を記録するというアーカイブの問題とも絡んできます。

出演広告の場合は、どのような対応が妥当なのでしょうか。

:かつてあった広告はアーカイブ的な意味も含まれるため、封印することはやや行き過ぎかとも思います。しかし、いま放送中の広告においては、広告主の明確な判断があれば(封印は)しかたないと思います。
津田:永遠に封印しようとすることが無理やりだし、文化にとって本当に正しいことなのか、という疑問もありますよね。
:そうですね。広告の場合、将来の研究や利活用の点も含めて、アーカイブしておくこと自体は必要だと思うし、そこまでは変えたくない。しかし、現在進行中のものに対しての差し替えはあり得ると考えます。

音楽やテレビ、ラジオなど、どんなチャンネルであってもたくさんの情報が流れてきますが、それらを見たり聴き続けたりする必要はありません。「嫌だ」と思う人がチャンネルやサイトを変えることで自己防衛ができるかどうかも、判断の基準に入れるべきだと、境さんは述べました。


■妥当な基準を模索するタイミングにきている

津田は「ミュージシャンの不祥事は作品が回収されてもまた復活する可能性が見えるけど、映画の場合は脇役で出演していても作品自体が見られなくなることは誰のためにもならないような気がする」と指摘します。

:タイミングをずらすとビジネスは壊れてしまいますし、作品がお蔵入りになると関係者全員が大きなショックを受けますからね。
津田:また、もちろんその原因は不祥事を起こした芸能人ですけど、ピエール瀧容疑者はこの逮捕で違約金が10億円とも30億円とも言われ、そんな金額を彼や所属事務所が払いきれるのかという問題もある。法律で裁かれる社会的な処罰以上のことを過剰に受けなくてはならないことが、果たして正しいことなのでしょうか。
:その前に、そもそも妥当な損害額ってどこまでなんでしょうか。そう考えると、違約金が何十億円など言われますけど、その責任を全て取れるわけではありません。ただ、大事なことは、妥当な基準を模索するタイミングにきていると思います。

最後に境さんは、ピエール瀧容疑者の逮捕を受けた一連の問題において、ネット内外で消費者自身が「今回の封印はちょっと過剰ではないか」という反応を示していることから、「そもそも『消費者のために』封印の話をしているので、消費者自身がいいんじゃないかと言うのであれば、いまよりは封印を緩めることが妥当な判断ではないか」と考えを述べました。

日々、コンテンツが多様化するなか、芸能人の不祥事による対応の明確化も求められているのかもしれません。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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