保育所なのに、幼児用トイレがない!? 「企業主導型保育所」ずさんな実態と改善策

待機児童の解消などを目的に、政府が導入を進めてきた「企業主導型保育所」に、トラブルが相次ぎ批判の声が上がっています。先月、内閣府の有識者委員会が改善策を公表しました。

企業主導型保育所はどんな施設で、どのようなトラブルが起きているのか? 子どもたちや親の安全と安心を守るために必要なことは何なのか? 企業主導型保育所の実態に詳しい、ジャーナリストの小林美希さんと考えました。

【4月3日(水)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/水曜担当ニュースアドバイザー:安田菜津紀)】
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■乱立する企業主導型保育所…利用率は6割

企業主導型保育所は、2016年に内閣府が所管となってはじまった施設です。保育所は大体が厚生労働省の所管ですが、企業主導型保育所は特別に内閣府が待機児童の目玉対策として作った認可外保育所です。

安田:企業主導型保育所の運営費はどうやって賄われているんですか?
小林:一般的な認可保育所は補助がありませんが、企業主導型保育所は企業が支払う厚生年金保険の保険料が上乗せされ、それが運営費として賄われています。

企業主導型保育所は、企業が従業員のために作る場合もありますが、その定員の半分までは地域枠として一般の子どもも受け入れ可能なため、待機児童の目玉政策になっています。

この施設は、認可保育所と違って自由な裁量を持つので、従業員の働き方に応じた施設運営ができます。たとえば、7時より前から子どもを預かる早朝保育や22時以降も預かる夜間保育、日曜・祝日も保育所を開けるなど柔軟な運営を行っています。

安田:いま、全国でどのくらい企業主導型保育所があるのですか?
小林:すでに6万人分の施設が整備され、2500カ所くらいの保育所があります。加えて、現在1500カ所の保育所が作られようとしています。合計するとかなりの数にはなるのですが、実際の利用率は低い状況で、全体の6割程度しか利用されていません。
安田:企業主導型保育所はニーズと合ってないということでしょうか?
小林:その通りです。そのために、さまざまな問題が起こっています。象徴的なものとして、昨年11月に世田谷区の企業主導型保育所が突然休園したというニュースがありました。需要のない場所に作ってしまったので、なかなか子どもが集まらず、経営が苦しくなり、突然撤退してしまうなどのケースが後を絶たず問題になっています。


■保育について理解していない、ずさんな運営

企業主導型保育所の質にも多くの問題があるようで、施設に監査が入るとその7割に問題があったといいます。

小林:必要な保育士の人数に達していない、食物アレルギーにきちんと対応していない、保育計画をつくっていない、幼児用のトイレがないなど、保育が全くわかっていないような施設がたくさん見受けられました。素人が参入してしまい、質どころではないような状況なので、いつどこで事故などが起こるかという心配の声が各地であがっています。

企業主導型保育所は、年間で運営費として平均3000万円ほど、最初の施設整備費に1億円ほどの補助が出るといわれています。そのため、子どもたちの安心や安全を守るよりも、利益を目当てに参入する企業が多く生まれたのでは、と小林さんは分析しました。

では、企業主導型保育所を作る場合には、どのようなプロセスが必要なのでしょうか。

小林:内閣府から委託を受けた児童育成協会が、申請を受け付けて審査をします。しかし、その申請はパソコンで送れる電子申請で、本来あるような面談の審査もなく、実際に施設を訪れて建物をチェックするようなことも行われず審査が進んでしまう。実際に運営する人の姿が見えない状態で申請を受け、かなりゆるい基準で通してしまう状況があります。

また、通常の認可保育所であれば、市区町村が窓口となり、その地域のニーズを把握した上で設置しますが、企業主導型保育所は税金を財源にしておらず、市区町村の関与なく設置を進められるため、結果的に地域のニーズとのミスマッチが起こっています。

小林:企業主導型保育所の見直しとして、市区町村の関与を強めるべきだという声が非常に大きく、私もそれに同意です。しかし、あくまで企業に任せるということになってしまい、市区町村の関与の強度は弱まっています。


■改善策として「市区町村の関与を強めるべき」

先月、内閣府の有識者委員会が公表した企業主導型保育所の改善策はどんな内容だったのでしょうか。

小林:企業主導型保育所の監査や審査を自治体と連携することや、空き施設とのマッチングをするという内容もありました。大きなところでは、保育を専門としている企業が新設する条件を「実績5年以上」に限定すること。また、定員20人以上の保育事業者が運営する企業主導型保育所は、子どもに対しての保育士の割合が50パーセントでもいいとされていましたが、75パーセントに引き上げました。ただ、75パーセントでもどうかなと思います。その改善案の前に設置されたものはすでに稼働しているので、骨抜きの対応になってしまったと感じています。
安田:50パーセントでよかった、という基準があったこと自体が驚きです。
小林:かなり危険な状態だと各方面から声があがったのですが、今回の改善案は保育事業者に限られてしまいました。

では、企業主導型保育所で子どもたちの安心・安全を保つために、これから何が必要なのでしょうか。

小林:先ほども言いましたが、やはり地域の保育を理解する市区町村の関与を強めるべきだと思います。また、認可するにも厳しいハードルを設けることも必要です。待機児童を解消したいという官邸の手柄のために、急ピッチで進められたという見方ができるものになっています。親は認可保育所に子どもを預けたいという声が非常に大きいので、企業主導型保育所を作ったとしても認可保育所に移行していけるような道筋をつくることが必要。認可保育所を最低ラインとするような基準で安心して子どもを預けられる仕組みを整備することがいちばんではないかと思います。

安田は「官邸の都合が主眼ではなく、子どもの安心・安全が全ての中心であり、それを踏まえてどう整備すべきかを考える必要がある」と考えを述べました。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

筒香嘉智「ベイスターズのために必死で頑張るだけです」 復帰したDeNAをどんな位置に導くのか

2020年からのMLB挑戦を経て、古巣の横浜DeNAベイスターズに5年ぶりに復帰した筒香嘉智選手の入団会見が、18日夜、ベイスターズの本拠地横浜スタジアムで、ファンを無料招待した一般公開の形で行われた。雨が降る中、約1万人の熱狂的なファンが詰めかけたこの会見について、現地取材したニッポン放送・大泉健斗アナウンサーがレポートする。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手

午後4時過ぎから、この筒香選手の会見を見ようと多くのファンの方が入場ゲートの前に長い列を作っていました。午後5時前から雨が降り始めまして、会見は強い雨の中で行われました。

会見が行われた場所は横浜スタジアムのグラウンド内でした。ホームベースとピッチャーズマウンドの間に記者会見用のステージが設置されまして、そのステージの手前には報道陣も40~50人集いました。今日は一般公開もされているということで、横浜スタジアムのバックネット裏から1塁側・3塁側のスタンドに、なんと約1万人ものファンが集まって選手の会見の模様を見守りました。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手

午後6時になりますと会見がスタートしたのですが、1塁側ベンチから筒香選手が入場してくる前、スタンドのファンの方から筒香選手の応援歌の演奏が行われまして、その応援歌の演奏の途中に筒香選手がピシッと引き締まった表情、上下紺色のスーツで1塁側ベンチから歩いて、ステージに上がりました。応援歌が流れているスタンドの様子を、余韻をかみしめるようにじっと見渡すと、応援歌終了後、記者からコメントを求められた筒香選手は、「かなり鳥肌が立っています」と久しぶりの横浜スタジアムの感触を確かめている、そんな印象でした。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手

アメリカでの日々については、「かけがえのない財産ですが、過去を振り返る時間もないですし、今は、ベイスターズのために必死で頑張るだけです。勝負の世界に『はい、ポジションどうぞ』ということは無いですので、自分のパフォーマンスでポジションを獲りに行くだけです」と話していました。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手と三浦大輔監督

そして途中、三浦大輔監督がサプライズゲストとして登場したのですが、最初、三浦監督とステージ上で話した時に、がっちりと握手をしまして、三浦監督から「お帰り」と声をかけられて、笑顔がこぼれていましたが、その後、司会の方からコメントを求められまして、「三浦監督以上に横浜スタジアムが似合う男になれるように頑張ります」と語りました。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手と三浦大輔監督

約30分ほどの会見が終わって、筒香選手が一塁側ベンチに下がっていくときも、ファンの方からはまた応援歌の大合唱。今日は筒香選手の応援歌が3回ほど演奏されまして、平日の夜の雨の中にもかかわらず、スタンドからは熱気が伝わってきました。

横浜DeNAベイスターズ・筒香嘉智選手

この会見を通して、筒香選手のベイスターズファンからの人気ぶり、皆が待ち望んでいたということを、すごく感じました。タオルを掲げているファンの方もいましたし、会見中に泣いている女性ファンの方もいらっしゃったくらいです。皆が待ちわびていた筒香のベイスターズ入団ということで、ホームに帰ってきた筒香嘉智が、シーズン途中の加入ではありますが、今年どんな成績を残して、チームをどんな位置に導くのかすごく楽しみです。

(ニッポン放送 大泉健斗アナウンサー)

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