「落語は古典芸能というより“大衆芸能”」笑福亭鉄瓶が“落語の楽しみ方”を指南!「頭を空っぽにして聞いてもらえたらいいんです」

山崎怜奈(れなち)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。(ダレハナ)」(毎週月曜~木曜13:00~14:55)。10月2日(水)の放送では、ゲストに落語家の笑福亭鉄瓶(しょうふくてい・てっぺい)さんを迎え、10月19日(土)に催される「笑福亭鉄瓶 独演会」について伺いました。


(左から)パーソナリティの山崎怜奈、笑福亭鉄瓶さん



◆人生を落語化する“ノンフィクション落語”

2021年から“ノンフィクション落語”というオリジナル落語をおこなっている笑福亭鉄瓶さん。これは「一般の方の人生を落語化したもの」だそうで、インターネットで見つけたある一般の方のエピソードを読んで、「有名人や著名人だったら、書籍化されたり、ドラマ化、映画化されたりするかもしれないけど、“一般の人にはスポットライトが当たらんのか”と思ったのが始まりです」と明かします。

題材は、ネットや新聞、ニュースなどから見つけてくるそうですが、鉄瓶さんのなかで“ルール”があると言い、「まずは(当事者に)お手紙を書いて、お返事をもらったら必ず現場に行き、ご本人の目を見て話を聞きます。そこでメモ書きをいっぱいして、自分で構成を考えて落語にする。できあがったら、まずはその方の前で披露して、間違いがないかどうか確認していただいてから、初めて高座にかけています」とのこと。

このエピソードを聞いたれなちは、「当事者とのやりとりが丁寧で、題材にされた方はうれしいだろうなぁと感じました」と素直に語ると、鉄瓶さんは「それこそ、1作目の方なんて、目の前でやったら泣きはって。(落語を聞いていたら)当時のことを思い出したんですって」としみじみ語ります。

また、ノンフィクション落語を披露するにあたって気を付けていることとして、「僕らは2人、3人と(登場人物を)出しながら、そこに感情を乗せて伝えるので、その温度が伝わればいいかなと思ってやっています」と話していました。

◆独演会は1年間の集大成

そんな鉄瓶さんは10月11日(金)から「笑福亭鉄瓶独演会 東名阪ツアー」を開催。こちらは東京、大阪、名古屋で年に一度おこなっていているもので、名古屋公演は昨年に引き続き2回目ではあるものの、東京公演では10回目、大阪公演は今回で15回目になります。

この独演会について、「私は落語家になりたくてなったわけじゃなくて、私の師匠・笑福亭鶴瓶は入門当時ほとんど落語をしてなくて、スタンダップでトークをする「鶴瓶噺」に憧れて入ったんです。なので、そのリスペクトとして私も“鉄瓶トーク”として、スタンダップで20~30分しゃべらせていただいて、その後にノンフィクション落語、古典落語をやっています」説明します。

また、「いつもの寄席や落語会というのは普段の自分を見ていただく。一方で独演会は、どちらかというと“自分は1年間、こんだけ頑張ってきたんですけど、どうでしょうか?”みたいな(ものを披露する場)。だから、毎年ドキドキするようなことを持ってこなあかんのでね」とも。

そこで、れなちが「行ったことがない人に向けて“落語や独演会の楽しみ方”みたいなことはありますか?」と聞いてみると、鉄瓶さんは「まずね、落語を観に行くときに『予備知識はいりますか?』とか『どんな服を着ていけばいいですか?』とか、そんなのはいらないんです! パジャマで来てもろうてもいいぐらいです」と明言。

そして、「これは僕の気持ちですけど、落語は古典芸能というより大衆芸能やと思っていて、長屋のみんなの生活習慣をしゃべっているわけですから、ノー知識で頭を空っぽにして来てもろうて、聞いてもらえたらいいんです」と話していました。

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10月2日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年10月10日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:山崎怜奈の誰かに話したかったこと。
放送日時:毎週月~木曜 13:00~14:55
パーソナリティ:山崎怜奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/darehana/
山崎怜奈の誰かに話したかったこと。
放送局:TOKYO FM
放送日時:2024年10月2日 水曜日 13時00分~14時55分
公式X

※該当回の聴取期間は終了しました。

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映画監督・黒沢清×[Alexandros]川上洋平 映画館で鳴り響く“音の怖さ”に言及

ロックバンド[Alexandros]の川上洋平がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「おと、をかし」。この番組は川上が毎週、その日の空気感、季節感、そして世の中の雰囲気を加味して、洋邦ジャンルを問わず“今の気分”で極上の音楽をセレクトしていきます。

9月21日(土)、28日(土)の放送では、ゲストに映画監督・黒沢清さんが登場。ここでは、28日の模様をお届けします。映画を撮るようになったきっかけ、今後の目標について語ってくれました。


(写真左から)黒沢清さん、パーソナリティの川上洋平



黒沢さんは高校時代から自主映画を制作し、立教大学在学中に蓮實重彦(はすみ・しげひこ)氏に学ぶ。長谷川和彦(はせがわ・かずひこ)監督、相米慎二(そうまい・しんじ)監督らの助監督を経て、1983年に商業映画デビューを果たします。

1997年に映画「CURE」で世界の注目を集め、「回路」「アカルイミライ」などがカンヌ国際映画祭に出品。数多くのジャンル映画を撮るなか、ホームドラマという新境地に挑戦した「トウキョウソナタ」でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞。2024年9月27日(金)から監督の最新作「Cloud クラウド」が上映されています。


映画では、ネット社会でつながる現代にしのびよる日常と隣あわせの恐怖が描かれています。[Alexandros]は作品のインスパイアソング「Boy Fearless」を書き下ろし、9月18日にリリースしました(シングル「SINGLE 2」収録曲)。

◆怪獣映画から受けた影響は大きい

川上:今回はざっくばらんに黒沢監督のことをお話ししていただければと思います。まず、映画を撮り始めたきっかけは?

黒沢:もちろん映画を観るのが好きで、小さい頃から親に連れられて映画館に行ったりしていました。結果として大きかったと思うのは、僕らの世代ですと小さい頃に観る映画って怪獣映画なんですよね。

最初に観たのは『モスラ』(1961年)だと思うんですけど、普通に怖いわけですよ。映画館のなかが暗くなると低めの音楽がグワーっと鳴って、ゴジラが上陸してくると人々が逃げ回って家々が踏み潰されていく。それを幼稚園ぐらいの子が観るのって強烈な経験なんですね。

映画って楽しくもあるんですけど、映画館が暗くなるとどこかで「怖いものが来るんじゃないか?」ということにワクワクしていましたね。だから、「映画というのはどこか怖くないとつまらない」っていうことを刷り込まれちゃっているのかもしれないですね。

川上:たしかに映画館って暗いから、ホラーやサスペンスにはピッタリですしね。

黒沢:映画館は逃げ場がないですから。それこそ、ホラー映画を観る人によく言うんですけど、映っているものは目を伏せれば逃れられますけど、音からは逃れられないんですよ。

映画館で巨大な音が鳴り響いてくるのは、どうやったって逃げ場がないんです。どうしても怖さから逃げたいのなら、目を伏せるのではなく耳を塞いだほうがまだいいんですけどね。

川上:そうなんだ!

黒沢:映っているものだけ観たら、案外そこまで怖くはないんですよ。それぐらい音って強烈なんですよね。怪獣映画を音で怖がっていたのは一番大きいことだなと思っています。

川上:ホラー・サスペンスの巨匠から、ホラーが苦手な人へのアドバイスが出ましたね。自分も音を扱う人間ですが、目から鱗が落ちました。音を重要視される黒沢監督にインスパイアソングを書かせていただいたことは光栄でございます。

黒沢:こちらこそ! まさか書いてくださるとは思ってもいなかったので嬉しいです。

◆これまでやっていないことを挑戦したい

川上:現在公開中の「Cloud クラウド」、そして今年出た2作品を含めて、黒沢監督はどんどん新しい作品を生み出しています。これからはどんな作品作りにチャレンジしていきたいですか?

黒沢:この歳になってもまだ声をかけていただけるのは本当に嬉しいことですので、何でもやりたいです。今年、たまたまですけど「蛇の道」「Chime」「Cloud クラウド」とどれもバタバタと人が死ぬ映画でした。そういう映画が続いたので、次は誰も死なないような映画も久々に撮ってみたいです(笑)。

次に何をやるのかとよく聞かれるんですけど、いつも「これまでにやっていないものをやりたいです」と答えています。

川上:そうなんですね。

黒沢:音楽でもそうなのかな。作る人って2パターンいるそうですね。1つは、ある年齢になると自分のテーマやスタイルが決まって、あるものを繰り返し、掘り下げて、深いものにしていく方。

もう1つは多方面にいろいろなことをやっていく方で、僕は後者みたいですね。1つのことに決められないんです。

川上:僕は「Cloud クラウド」を観て、黒沢監督の新しい一面が見えたなと思ったんです。ファンとして次の作品も楽しみです。

◆「CURE」の当初のタイトルは「伝道師」

川上:「Cloud クラウド」ってタイトルからして怖いですよね。いろんな意味合いがあると思いますが、気味が悪いものを感じました。

黒沢:いわゆる「雲」を意味する言葉ですけど、コンピューター用語としても使いますし、いろんなニュアンスが含まれると思います。うがっていない簡単なタイトルにしたつもりです。

川上:たしか、最初は仮タイトルだったんですよね?

黒沢:そうなんですよ。僕があまり深く考えず、コンピューター用語としてあるなと思って「クラウド」と付けていたんです。

川上:カタカナだったんですね!

黒沢:それで「英語表記にします」とプロデューサーが言ってきたから、いいですよと。だけど調べたら、クラウドファンディングの「crowd(群衆を意味する英語)」とコンピューター用語の「cloud」は綴りも意味も違うんですよね。

最初は不特定多数の意味も含んでいたんですけど、結局「cloud」にしたんです。なので、海外の方から「なんで雲なんですか?」と聞かれそうで今から怖いです(笑)。

川上:いやいや、すごくいいタイトルだと思いますよ! 毎回黒沢さんのタイトルってすごくカッコいいじゃないですか。

黒沢:ちなみに、「CURE」を考えたのは僕じゃないんですよ。

川上:そうなんですか!?

黒沢:最初は「伝道師」というタイトルだったんですけど、かなり宗教的なニュアンスが出過ぎるので、他のタイトルにしたいと。映画を撮り終わってから、プロデューサーから「CUREはどうですか?」と言われました。

「治療」を意味する言葉で、最初は全然意味がわからなくて抵抗を示したんですけど、「たぶんそのほうが海外も含めて、この映画に合っていると思う」と強く言われたんです。そういうものなんですよね。

川上:そうだったんですね! あの映画のタイトルが「CURE」だからこそ、さらに不気味さが増すと思います。

黒沢:たまたまですけど、Cで始まるタイトルが多いですね。

川上:「Cloud クラウド」も、雲というふわっとしたものを映画のタイトルにしたことで、さらに不気味さが増したと思います。みなさんもぜひ、劇場でご覧いただければと思います!

<番組概要>
番組名:おと、をかし
放送日時:毎週土曜日15:00~15:25
パーソナリティ:[Alexandros] 川上洋平
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/okashi/

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