愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「揺れ動く“選挙と株式市場の関係”と“石破政権の経済政策”」を解説

本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

今回の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「揺れ動く“選挙と株式市場の関係”と“石破政権の経済政策”」というテーマでお話を伺いました。


(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保


◆石破茂新総裁、就任後の株の取引初日は1,900円超の下げ幅

浜崎:それでは今回、宗さまには「揺れ動く“選挙と株式市場の関係”と“石破政権の経済政策”」についてお話しいただきます。

やしろ:本当にいろいろと聞きたいことがあるのですが、自民党の石破茂新総裁、決まった直後から日本のマーケットは円高・株安の方向に大きく動きました。これはどうしてなのでしょうか。

宗正:先月9月30日の月曜日、この日の日経平均株価は、わずか1日で1,900円を超える下げ幅でした。これは与党の総裁選後の株の取引初日としては、1990年以降で最大の下げ幅。「石破ショック」なんて言われています。

やしろ:ネット上にものすごく飛び交っていましたね、「石破ショック」という単語。

宗正:これだけ下げ幅が大きくなった最大の理由は、シンプルに前の週の株価が大きく上がったからなんです。与党・自民党の新総裁、つまり日本の内閣総理大臣が事実上決まったのが、9月30日の前の週の週末、9月27日の金曜日だったんですね。

この日の自民党総裁選の1回目の投票では、高市早苗候補がトップに立って、しかも想定以上の票数が集まりました。円安・株高の政策を推進していたのが高市候補でしたから、一気に日経平均株価が上がったんですね。

やしろ:そんなに素早くマーケットって動くんですね。

宗正:はい。高市新総裁誕生の期待感で日経平均株価は2日間で約2,000円以上上昇していました、4万円台の直前まで上がっていたんですね。為替も1ドル146円台まで円安が進んだところで、今度は想定外に石破さんの逆転勝利となりました。

石破さんは高市さんとは正反対の円高推進派で、要は利上げした方が良いと。円高への動きは、輸出関連企業の割合の高い日経平均株価にとっては逆風です。その結果、高市さんへの期待感で上がっていた約2,000円の分だけ、石破さんに決まった翌週の週明け月曜日に下げたということなんです。

やしろ:期待感からの落差ということですね。そして10月1日に石破新内閣が発足しましたが、新内閣の発足時には株価が上がりやすいとか下がりやすいとか、そうした傾向はあるものなんでしょうか。

宗正:過去の新内閣発足のとき、どれくらいの期間でその株価の上がり下がりを見るかによって、当然これは変わってきますが、半年から1年程度の期間で見ると、上がったときもあれば下がったときもあります。

やしろ:つまり、どちらもあるんですね。

宗正:やはり、その時々の経済情勢や金融情勢に株式市場は引っ張られるということです。ところが、それよりももっと短い期間で見ると、これは上がったときの方が多い。

やしろ:期待感があるということですね。

宗正:そうなんです。期待感があるのと同時に、内閣が交代するということは、1つ前の内閣の人気や状況がどん底のときなんですよね。

やしろ:なぜ、新内閣が発足したのかって話ですもんね。

宗正:人気が下がるだけ下がって、それ以上は下がらないというところからの期待感。内閣が最も大きく変化するのは政権がそれまでの与党から野党に交代したときですよね。日本では過去に4回ありましたが、このときは4回全てにおいて短中期的に日経平均株価は上がっています。

やしろ:それだけ期待感が高いということですね。先ほども話に出ましたけど、為替も130円台に届くんじゃないかっていうタイミングもありましたよね。それが今では148円台の辺りで推移。これは何故ですか?

宗正:為替市場も株式市場もそうですが、様々な要因が複合的に重なり合って動きます。石破さんが総理総裁になって、利上げは必要だと自民党総裁選のときには言っていたけど、まだそんな状況じゃないかもしれない、みたいな発言に転じました。他にはアメリカの雇用統計の発表があって、割と米国景気は堅調といった数字が出ました。だからこれ以上、金利を下げなくてもいいんじゃないかということで、ドル高・円安に向かったんです。

◆投票日までの期間、日経平均株価は上昇する?

やしろ:そして、今月の10月27日に衆議院議員選挙があります。投開票日までの間、日本の株式市場の動きも一波乱、二波乱ありそうでしょうか?

宗正:あるかもしれないですね。マーケット参加者の間では、昔から「選挙は買い」という言葉があります。つまり選挙の時期になると株価は上がる傾向があるということなんですが、実際にはどうだったのか。

衆議院の解散前日から選挙の投開票日前日までの株価の動きを見てみると、1969年以降の過去17回、全てにおいて日経平均株価は上がっています。何故なんだろう? って思いますよね。

私が思うに、この期間って本当に選挙戦の真っ只中ですから、日々、私たちは選挙公約を見たり聞いたりします。政治と経済は車の両輪で、経済と株式市場は一心同体ですからね。選挙公約は、基本的には耳障りの良いことしか言わない。特に経済政策的な公約っていうのは、今から良くなるとしか言わない。そこで期待感からの株価上昇っていう流れなんじゃないかなと思います。

やしろ:では、今このタイミングは狙い目?

宗正:あくまでも過去の例で言えばですよ(笑)。

やしろ:でも、過去17回の全てがというお話ですよね?

宗正:過去17回に限って言えばという話です(笑)。今回はイレギュラーなことが多いですからね。新内閣が発足してこれ程の短期間で解散っていうのも戦後最短ですし、何と言っても、私たちはまだ個別具体的な政策の話を聞いていないですからね。

やしろ:ここからですね。

宗正:全てはここからなんですよ。

やしろ:そして石破政権の経済政策ですが、自民党総裁選のときもテレビにたくさん出ていて、政策や公約を耳にしたり目にしたりしましたが、そのときとはニュアンスが変わったような感じがあります。これはどういうことなんでしょうか。

宗正:石破新総理は、これまで与党・自民党にいながらも党内野党って言われてきた人なんですよね。つまり内閣や党の重要ポストから一定の距離を置いて理想的な話をしてきた。それがある意味、国民にも受けていましたが、政権は森山幹事長がトップの自民党、林官房長官がトップにいる官邸、そして石破総理がトップの内閣。この3つで構成されています。

実際に石破さんも内閣総理大臣に就任して、それぞれの声や意見を聞きながら、いわゆる理想と現実の狭間で揺れている、そんな状況なのかなと思います。多分、石破さんも自分が100%総理になるとは確信していなかったと思いますし、決選投票の一つ前の1回目の投票のときには、高市さんが石破さんにかなり差を付けていた訳ですから。

ご参考までにということで言えば、自民党の総裁選で石破さんが訴えていた経済政策は、金融所得課税の強化、法人税の引き上げ。そして脱アベノミクス、つまり利上げ。その他は積極財政の正反対の財政の立て直し。これら全ては株式市場にとっては逆風なんです。そんなことを言っていたから株式市場が下がった訳ですよ。岸田内閣が誕生したときも似たような動きがありましたが、下がる株式市場を見て、これはまずいぞと。それで少しずつトーンダウンして、ニュアンスも変わったというのが実際のところだと思います。

やしろ:そうなると石破政権の経済政策の主軸っていうのは、何になるんですか?

宗正:一言で言えば、岸田政権の経済政策を引き継ぐ。と同時に安倍政権のときのアベノミクスからの脱却です。岸田政権の政策の中でも分かりやすいのは、物価高対策と賃上げですね。物価が上がると生活に困るじゃないですか。ただ物価っていうのは、上がらなければ景気も良くならない。

物価高が悪いのではなくて、物価高と連動して賃金が上がらないことが悪い。そこで石破さんは最低賃金を2020年代の間に時給換算で1,500円まで引き上げると発言しています。

やしろ:それに関しては、経済界からもハレーションが出ていますよね。

宗正:今年度の最低賃金の全国平均が1,055円ですからね。昨年と比べて51円上がっていますが、これは過去最大の引き上げ幅です。2020年代の間にとは言うものの、残りの数年間で毎年どれだけ上げる必要があるのかっていう話です。

やしろ:人件費の急な高騰で倒産してしまう会社なんかも出てくるかもしれませんし、賃上げのスピードやバランスも大事ですよね。

宗正:物価が上がらなければ企業の業績も良くならないし、企業の業績が良くならなければ賃金が増えない。賃金が増えなければ個人消費の拡大は見込めないので景気は良くならない。このサイクルにタイムラグが生じている今、確かにサイクルスピードの視点は重要ですね。

やしろ:そこは本当にそう思います。

◆石破新総理の人柄に迫る!

やしろ:ここまで経済のお話を中心にお聞きしてきましたが、ここから先は石破新総理の人柄や振る舞いなども。宗さま、個人的にはどのような印象ですか?

宗正:私のような昭和生まれの世代からすれば、昔から身近に1人か2人はいたようなタイプのおじさんですよね(笑)。

やしろ:身近にいそうな(笑)。

宗正:周りからは愛されキャラで、多分、ものすごく優しい人なんだろうなと。

やしろ:顔が怖いって言われていますけどね。面白さもあれば優しさもある方だと思います。

宗正:有名な話で言えばアニメ好きでしょ。

やしろ:魔人ブウの格好をしたりとか。

宗正:そしてアイドル好き(笑)。

やしろ:そう言えば鉄道も好きでしたっけ。

宗正:特に「乗り鉄」なんですよね。国会議員は週七日のうち、土日は地元に帰ることが多い。そんなときもわざわざ寝台特急ブルートレイン出雲に乗って、地元の鳥取まで帰ることもあったそうです。

やしろ:本当にお好きなんですね(笑)。

宗正:石破総理からは自民党総裁就任直後の会見でこんな発言もありました。人柄が色濃く出ているなと思うんですけど、「本当に困っておられる方々が納得していただけるような政策を優先したい」と。

この言葉には政治に必要な要素が全て詰まっていると思うんですね。当初から掲げてきた政策発言も右往左往したり、朝令暮改的な動きもありますけど、ぜひこの言葉通りの石破さんらしい政治を実現してほしいなと思いますね。

やしろ:本当ですね。宗さま、ありがとうございます。もっと宗さまのお話を聞きたいという方は「宗正彰の愛と経済と宗さまと」が、AuDeeにて毎月10日、20日、30日に配信中です。よろしくお願いします。

宗正:是非よろしくお願いします。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月曜~木曜17:00~20:00(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
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亡き親友との約束胸に「スタジアムを応援フラッグでいっぱいにしたい」

プロ野球をはじめ、先日のメジャーリーグ開幕戦、そしてサッカーのJリーグでもよく目立つのが、巨大なフラッグによる応援です。今回は、このスポーツ応援に欠かせないビッグフラッグを染め上げている男性のお話です。

影山洋さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

日本一小さな市・埼玉県蕨市に、一軒の工房があります。有限会社染太郎、スポーツの試合で現れる大きな旗を作る会社です。トップは、影山洋さん、昭和30年生まれの69歳です。

蕨出身の影山さんは、小さい頃は空き地で友達とサッカーボールを蹴ったり、お小遣いがたまると後楽園球場へ行って、王さん・長嶋さんの野球を見て育ちました。そして、百貨店で催事のお知らせをする巨大な垂れ幕を作る会社に勤めます。

仕事に脂がのってきた30代のある日、影山さんは小さい頃のサッカー仲間で、当時の読売クラブに在籍していた奥田卓良選手から、こんな話を聞きました。

「今度、日本でもサッカーのプロリーグが始まるんだ。絶対応援してくれよ!」

「だったら、ヨーロッパみたいに、おっきな応援フラッグを作って、応援するよ!」

影山さんがそう答えて迎えた1993年5月15日のJリーグ開幕の日。国立競技場の熱狂の渦のなかに、奥田さんの姿はありませんでした。奥田さんは不慮の交通事故で、Jリーグを見ることなくこの世を去っていたのです。

『奥田との約束を守るためにも、日本のスタジアムを応援フラッグでいっぱいにしたい!』

そう思った影山さんは、会社勤めを辞め、自ら応援フラッグを作る会社を興します。地元・埼玉の浦和レッズの熱いサポーターたちとつながると、話が盛り上がって、今までにない幅50メートルのビッグフラッグを作るプロジェクトが始まりました。

影山さんが手掛けたビッグフラッグの数々

参考になったのはもちろん、影山さんが長年培ってきたデパートの垂れ幕のノウハウ。パソコンもあまり普及していない時代、設計図を元に1枚1枚刷毛で塗る手作業でした。ただ、ビッグフラッグを作っても、出来栄えを確かめられる広いスペースもなければ、対応してもらえる競技場もありませんでした。

ようやく人前で披露できる環境が整ったのは、2001年のJリーグ・レッズ対マリノス戦。埼玉スタジアム2002のこけら落としの試合でした。影山さんたちがドキドキ見守る中、ピッチに大きく真っ赤なフラッグが広げられると、スタンドからは「オーッ!」と地鳴りのような歓声が沸き上がりました。

翌日から、影山さんの会社の電話は、様々なチームからの問い合わせで鳴りやまなくなりました。

「私たちもレッズみたいな、熱い応援をしたいんです!」

数ある問い合わせの中に、情熱のこもったメッセージを届けてくれた人がいました。それは、プロ野球・千葉ロッテマリーンズの応援団の方々でした。影山さんは、競技の違いを乗り越えて、新しい応援スタイルが広まっていくことに、喜びを感じながら、さらに大きい幅75メートルものビッグフラッグを作り上げました。

このフラッグが、千葉・幕張のスタジアムの応援席に広げられると、今度はプロ野球チームの関係者からの問い合わせが相次ぎました。こうしてサッカーではレッズ、野球はマリーンズから始まったビッグフラッグによる応援は、今や多くのスポーツに広まって、当たり前の存在になりました。

蕨市の盛り上げにも活躍する影山洋さん

そしてこの春、影山さんは、東京ドームで行われたメジャーリーグのカブス対ドジャースの開幕戦でも、大役を任されることになりました。それは、初めての国旗。試合開始前のセレモニーで使われる、幅30メートルの日の丸と星条旗の製作でした。

国のシンボル・国旗に汚れを付けたり、穴を開けたりすることは決して許されません。3月10日に納品した後も、影山さんは毎日毎日東京ドームに通って、抜かりのないように、細心の準備をしました。そして、メジャーリーグ機構の厳しいチェックもクリアして、開幕当日を迎えます。

ベーブ・ルースから大谷翔平まで、日米の野球・90年の歴史の映像が流れて、無事に大きな日の丸と星条旗が現れると、影山さんも胸が熱くなりました。

『あの王さん・長嶋さんが躍動した後楽園球場を継いだ東京ドームで行われる、かつてない野球の試合で、自分の本業で関わることが出来ているんだ!』

そして、このメジャーリーグ開幕戦の興奮も冷めやらぬなか、今度はサッカーの日本代表が、8大会連続のFIFAワールドカップ出場を決めました。実は影山さんには、まだまだ大きな夢があります。

「いつか、サッカー日本代表がワールドカップの決勝戦を迎えた日の朝、富士山の近くで、おっきな富士山をバックにおっきな日の丸を掲げて、選手にエールを送りたいんです!」

亡き親友への思いを胸に生まれた、日本におけるビッグフラッグによるスポーツ応援。その応援文化のパイオニア・影山さんの夢は、きっと叶う日が来ると信じて、さらに大きく膨らみ続けます。

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