「演者の生き方や主張で見え方が全然違います」能楽師・宝生和英が語る“能の魅力”とは?
提供:TOKYO FM

山崎怜奈(れなち)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。(ダレハナ)」(毎週月曜~木曜13:00~14:55)。今回の放送は、シテ方宝生流20代宗家で能楽師の宝生和英(ほうしょう・かずふさ)さんが登場! 宝生流のことや能の魅力などについて伺いました。
◆“シテ方宝生流”とは?
れなち:“シテ方宝生流”とはどんな流派なんでしょうか?
宝生:能楽というのは分業制になっていまして、“シテ”というのは舞台の主人公のことです。また、シテの助演をする役を“ツレ”、ほかにも“地謡(じうたい)”というコーラスをする役割などがあります。現在は5つの流儀がありまして、そのうちの1つが宝生流でございます。
れなち:能楽の名門に生まれ育った宝生さんですが、いつ頃から(能を)意識されましたか?
宝生:自分のなかでは特別なことをやっている感覚はなく、人生の1つでしかなかったですね。唯一(他の人と)違うとしたら、やはり稽古というものがありますので。
れなち:お稽古は何歳ぐらいから始まりましたか?
宝生:5歳ぐらいです。歩けるようになってきたら、すぐ足袋を履いて歩いていた感じでした。
れなち:反抗期とかはなかったですか?
宝生:私の場合はちょっと特殊でして、(幼い頃から)父親が舞台をできなくなったり、母親が亡くなったりしたので、反抗期をしている場合ではなく、生きていくのに精一杯でしたね。
◆能は“動く美術館”
れなち:今、能は海外からも注目が集まっているとお聞きましたが、今後、伝統芸能を広げていく、つなげていくにあたってどのような発信をされているのですか?
宝生:私はちょっとひねくれていまして、そもそも、能を普及しようと思ったことはなくて。というのも、今の人たちに必要とされれば勝手に普及するだろうって考えたんです。
れなち:なるほど。
宝生:さらに言えば、自分が家元になったときは“家元って必要なのかな?”というところから考え、“能楽は今の時代に本当に必要なのか?”みたいなことも哲学しました。自分がやっていることにどんな価値があるのか、そこに納得しないままやるのが嫌だったんです。家元を継ぐにあたって、自分がなぜやるのかを明確にしないと続けていけないなと思って。
れなち:その理由は見つかりましたか?
宝生:私のなかでは1つの答えが出ました。今のエンターテインメントは心を高揚させることに終始していて、そのために新しい仕掛けをしていく。一方、これに疲れが生じてしまったときに、変わらないもの、静かに心を落ち着かせるコンテンツの重要性を感じました。
れなち:確かに、日本の伝統芸能って静寂のなかで起きる情緒に浸ることができますよね。
宝生:そうですね。なので、私は(能楽のことを)“動く美術館である”と形容したり、海外で紹介する際には“自分を振り返る時間にする”といった意味で“ミサ”に近いのものとして話しています。
◆能を初めて触れる人へ
れなち:最近ではドラマ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス)の第6話の能のシーンや「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の漫画「シテの花 ー能楽師・葉賀琥太朗の咲き方ー」の監修をされていますが、能を観に行きたいと思ったとき、まずどうしたらいいですか?
宝生:私のオススメは、演目より演者さんに注目すべきだと思っています。同じ演目でも、演者さんの生き方や主張で見え方が全然違いますので。
れなち:その演者さんを、どのように見つけていったらいいですか?
宝生:今の時代ですと、皆さんSNSやブログで情報を発信しているので、そこで生き方に共感したり、惹かれる方を探すのがいいと思います。
私の場合は悲しい経験が多かったので、常に舞台に憂いや悲しみを入れたいというスタンスを持っています。後は体をしっかり鍛えて美しいものを見せたいとか、そういった主義主張が舞台に落とし込まれていたりするので、まずは、その人のアイデンティティを知ることで、より楽しくなると思います。
<番組概要>
番組名:山崎怜奈の誰かに話したかったこと。
放送日時:毎週月~木曜 13:00~14:55
パーソナリティ:山崎怜奈
(左から)パーソナリティの山崎怜奈、宝生和英さん
◆“シテ方宝生流”とは?
れなち:“シテ方宝生流”とはどんな流派なんでしょうか?
宝生:能楽というのは分業制になっていまして、“シテ”というのは舞台の主人公のことです。また、シテの助演をする役を“ツレ”、ほかにも“地謡(じうたい)”というコーラスをする役割などがあります。現在は5つの流儀がありまして、そのうちの1つが宝生流でございます。
れなち:能楽の名門に生まれ育った宝生さんですが、いつ頃から(能を)意識されましたか?
宝生:自分のなかでは特別なことをやっている感覚はなく、人生の1つでしかなかったですね。唯一(他の人と)違うとしたら、やはり稽古というものがありますので。
れなち:お稽古は何歳ぐらいから始まりましたか?
宝生:5歳ぐらいです。歩けるようになってきたら、すぐ足袋を履いて歩いていた感じでした。
れなち:反抗期とかはなかったですか?
宝生:私の場合はちょっと特殊でして、(幼い頃から)父親が舞台をできなくなったり、母親が亡くなったりしたので、反抗期をしている場合ではなく、生きていくのに精一杯でしたね。
◆能は“動く美術館”
れなち:今、能は海外からも注目が集まっているとお聞きましたが、今後、伝統芸能を広げていく、つなげていくにあたってどのような発信をされているのですか?
宝生:私はちょっとひねくれていまして、そもそも、能を普及しようと思ったことはなくて。というのも、今の人たちに必要とされれば勝手に普及するだろうって考えたんです。
れなち:なるほど。
宝生:さらに言えば、自分が家元になったときは“家元って必要なのかな?”というところから考え、“能楽は今の時代に本当に必要なのか?”みたいなことも哲学しました。自分がやっていることにどんな価値があるのか、そこに納得しないままやるのが嫌だったんです。家元を継ぐにあたって、自分がなぜやるのかを明確にしないと続けていけないなと思って。
れなち:その理由は見つかりましたか?
宝生:私のなかでは1つの答えが出ました。今のエンターテインメントは心を高揚させることに終始していて、そのために新しい仕掛けをしていく。一方、これに疲れが生じてしまったときに、変わらないもの、静かに心を落ち着かせるコンテンツの重要性を感じました。
れなち:確かに、日本の伝統芸能って静寂のなかで起きる情緒に浸ることができますよね。
宝生:そうですね。なので、私は(能楽のことを)“動く美術館である”と形容したり、海外で紹介する際には“自分を振り返る時間にする”といった意味で“ミサ”に近いのものとして話しています。
◆能を初めて触れる人へ
れなち:最近ではドラマ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス)の第6話の能のシーンや「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中の漫画「シテの花 ー能楽師・葉賀琥太朗の咲き方ー」の監修をされていますが、能を観に行きたいと思ったとき、まずどうしたらいいですか?
宝生:私のオススメは、演目より演者さんに注目すべきだと思っています。同じ演目でも、演者さんの生き方や主張で見え方が全然違いますので。
れなち:その演者さんを、どのように見つけていったらいいですか?
宝生:今の時代ですと、皆さんSNSやブログで情報を発信しているので、そこで生き方に共感したり、惹かれる方を探すのがいいと思います。
私の場合は悲しい経験が多かったので、常に舞台に憂いや悲しみを入れたいというスタンスを持っています。後は体をしっかり鍛えて美しいものを見せたいとか、そういった主義主張が舞台に落とし込まれていたりするので、まずは、その人のアイデンティティを知ることで、より楽しくなると思います。
<番組概要>
番組名:山崎怜奈の誰かに話したかったこと。
放送日時:毎週月~木曜 13:00~14:55
パーソナリティ:山崎怜奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/darehana/