日本アニメの「そっくり動画」が拡散、政府も対応要請…ホンモノと見分けがつかない!? 生成AI動画『Sora2』がもたらす著作権の危機…専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2025年10月9日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「イメージが本物と見分けがつかない動画になるOpenAI社の動画生成AI『Sora2(ソラ2)』とは?」。情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです



◆動画生成AI「Sora」進化の一方で…

アメリカのOpenAI社が9月30日、新たな動画生成AI「Sora2」と、Sora2を利用して動画を生成し共有できるiOS用SNSアプリ「Sora」を公開しました。利用者が文章で指示を与えれば、まるで本物のような動画を簡単に生成し、拡散することができます。

ユージ:塚越さん、まず動画生成AI「Sora2」は、どんなことができるんですか?

塚越:OpenAIは去年2月に「Sora」という動画生成AIを発表しました。一般公開を昨年の12月にしています。今回は、その進化版である「Sora2」を発表して、初めてアプリ化もしました。名前は「Sora」のままであるものの、事実上は進化版の「Sora 2」となっています。

テキストを書くだけで動画を生成できるのですが、レベルがすごすぎです。あまりにもレベルが高く、自然になっているので、世の中に出回る動画がAI生成されたものなのか現実なのか、見分けがつきません。実際、見分けるのは無理です。そういうレベルになりました。

セリフや環境音も生成できるほか、特徴として「カメオ機能」というものがあります。これはユーザー自身の顔や声をAIに読み込ませて、動画のなかに登場させることができるものです。もちろん、他人が勝手に自分の顔を使えないようにする機能があるのですが、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、自分のカメオ機能を誰でも使える「公開設定」にしています。すると、ネット上ではアルトマンCEOの顔を自由に使えるので、アルトマンCEOの顔を使ったフェイク動画をたくさん使って拡散しています。アルトマンCEOもこの状況をわりと肯定的に受け止めていて、自らの「ミーム化」、コラージュ大喜利のようなものを推し進めています。

◆日本のアニメキャラをそのまま出力…著作権侵害の問題も

吉田:では、著作権に関して、どんな問題があったのでしょうか?

塚越:著作権については、一番問題になっています。「Sora 2」が発表されると(日本のアニメの)ドラゴンボールの孫悟空やポケモン(ポケットモンスター)のピカチュウ、エヴァンゲリオン、となりのトトロ、鬼滅の刃などのキャラを使って、まるで本物のアニメのワンシーンのように見える動画が作られ、SNS上などにアップされました。当然、「これ大丈夫?」と思いますよね。

これについてOpenAIは、そもそも権利者が「Sora」でのキャラの使用を拒否しない限り、誰でも著作物が利用できる「オプトアウト」(※「不参加」や「脱退」を意味し、ユーザーが自らの意思で情報配信やサービス利用を拒否する仕組み)という方式を採用していました。簡単に言うと、権利者が「使わないで!」「ダメ!」と申請するまでは使えてしまうものです。「それはダメでは?」ということで批判が殺到しました。

ユージ:普通は、「使っていいですか?」と聞いてから使用しますからね。

塚越:一方で、OpenAIはディズニーやマーベルに対しては事前に接触していたようで、最初からディズニー関連の動画は生成できないようにしているといった報道があり、実際にはそうしたコンテンツを利用した動画は生成できません。

確かに日本のコンテンツは二次創作、つまり同人誌など、ユーザーがある程度キャラクターを自由に使って発展してきた歴史はありますが、とはいえ何も知らせずに日本のコンテンツ動画をどんどん生成するのはおかしいので、日本のアニメ制作会社などから批判がありました。

一部報道だと、OpenAIは事前に「オプトアウト」の手続きを通知していたわけですが、英語での発表だと見落としもあるでしょうし、日本の反発を見る限り、かなり雑な対応だったのだと思います。もちろんアメリカでもそういう批判はあります。

ユージ:先ほども言いましたが、本来なら「使っていいですか?」「いいですよ」というやり取りがあるべきですよね。オプトアウト方式を採用するなら、事前に日本の企業にも丁寧に教えてほしいなと思います。

塚越:そうですね。そのためこうした批判も受けて、その後、アルトマンCEOは著作権に配慮する方針を表明。クリエイターや権利者からのOKが出されてから使う「オプトイン」に近い管理機能を提供すると表明しました。

また、制作物を「AI学習に使用しても良い」と言った権利者には、動画生成AIから生まれる収益の一部を分配する方針も示しました。個人的には、初期のYouTubeに近いやり方だと思います。初期のYouTubeは違法の動画だらけでした。批判の声が上がってから、現在のように「動画を残す代わりに広告収益を受け取る」か「動画を削除する」か、権利者が選べるようになりました。こうした仕組みをYouTubeは作りました。

一度楽しさをユーザーが覚えてしまうと、ユーザーが勝手に利用してしまうので、後に引けずに権利者が半ば同意する。YouTubeもそういうものだったのですが、アルトマンCEOも同じように、生成AIツール自体の人気を高めてから、なし崩し的に権利者に同意させる方式を取ろうとしているのではないかと。それは、悪い意味で策士だなと思いました。

◆今後の日本の対応は?

吉田:フェイク動画対策も気になるところですね。

塚越:「Sora」を使って作ったものには、「ウォーターマーク」(=透かし)を付ける機能があります。一方で、このウォーターマークを外した動画をアップしている人もいます。SNS上のこういう動画やフェイクの問題は、いたちごっこですよね。これはずっと続くと思います。

ユージ:技術の進化の速さに法整備が追いついてない状況だと思いますが、これどう思いますか?

塚越:10月7日、平将明デジタル大臣が、OpenAIに対し「自主的な対応をしてください」と言っています。「ダメだったら、日本としても対応を考えます」と言っています。現状の日本は、AIの学習をしやすい法律の国ではあるのですが、AIが作ったものが著作権法に触れるならアウトということになっているので、ここは対応してほしいです。やっぱりアメリカはスピード感を持って作っているので、日本としても対応を考えながら、うまいこと着地をするのが一番大事かなと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
番組公式X:@ONEMORNING_1

ONE MORNING
放送局:TOKYO FM
放送日時:2025年10月9日 木曜日 6時00分~9時00分
公式X

※該当回の聴取期間は終了しました。

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自動車修理工場の女性社長が「自動販売機のハンバーガー」を開発

トラックなどのドライバーさんのなかには、昭和の頃は、よく幹線道路沿いにあった自動販売機のハンバーガーで、お腹を満たした経験がある方もいらっしゃることでしょう。じつは最近、令和版の「自動販売機のハンバーガー」がじわりじわりと増えているんです。今回は、この自動販売機のハンバーガーを手掛けている自動車修理工場の方のお話です。

ハンバーガー自販機と小林さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

東京・新宿から中央道の高速バス、または新幹線と飯田線の特急「伊那路」を乗り継いで、およそ4時間の長野県飯田市に「ガレージいじりや」という自動車修理工場があります。敷地内には、トヨタ・パプリカ、マツダ・シャンテをはじめ、昭和の車がズラリ。しかも、工場の前にある懐かしい自動販売機コーナーが目を引きます。

お店の代表・小林由季さんは、埼玉県出身の41歳。小さい頃、ちょうどミニ四駆が大人気だったこともあって、クルマに興味を持ちました。19歳でオートマチック車限定の運転免許を取ると、街を颯爽と駆け抜けていった、白い「マツダ・RX7」に心躍ります。

『カッコいい!あのクルマに乗りたい!!』

そう思った小林さんは、知り合いの自動車関係者に相談すると、軽くあしらわれました。「RX7? アンタ、あのクルマ、マニュアルだし、ロータリーエンジンって知ってるの? 乗りたいなら、自分で自動車が整備出来ないと、まず無理だよ」

愛車のマツダ・シャンテと小林さん

マニュアルもロータリーエンジンも、全くチンプンカンプンだった小林さんですが、乗りたい思いが高まって、マニュアルで免許を取り直し、自動車整備士を目指します。男社会の自動車修理工場で、厳しい試練を乗り越えて、見事、整備士資格を取得。縁あって信州に移り住むと、趣味で借りたガレージで、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えを請け負ったことをきっかけに、2010年、自ら自動車修理工場を立ち上げました。

やがて、工場のスタッフが昭和43年製・スバル360の修復を成し遂げたことから、小林さんも古い車に興味を持ち、旧車が続々持ち込まれて、車雑誌にも注目されます。あれよあれよと、旧車好きならまず知らない人はいない工場に成長。小林さんは雑誌連載企画で、旧車でレトロな自動販売機巡りをすることになりました。

ところが、ここで小林さんは大変なことが起きていたことに気付くんです。

『大きな道路沿いにたくさんあったハンバーガーやうどん・そばの自動販売機コーナーがどんどん無くなっている……』

24時間営業のコンビニエンスストアが増えた一方で、自動販売機は経年劣化、オーナーさんの高齢化も進んで、自動販売機コーナーは次々と姿を消していたんです。そんな折、小林さんはお祖父さまを亡くしたことで、小さい頃、自動販売機のハンバーガーをなかなか買ってもらえなかった記憶がよみがえりました。

『あの思い出の、自動販売機のハンバーガーを残したい。ならば、ハンバーガーを作っている食品メーカーを助けよう!』

自動販売機コーナー

そうひらめいた小林さんは、さっそく自動販売機用のハンバーガーを仕入れます。自動車工場の前に冷蔵機能付きの自動販売機と電子レンジを設置して販売を始めると、ちょうどコロナ禍と重なったことで、テイクアウトのニーズをつかんで大繁盛。各地のレトロ自動販売機で売れたハンバーガーのおよそ4倍を1台で売り上げました。

小林さんはもうイケイケドンドン、自動販売機を増やして各地で大人気となりますが、あまりの売れ行きにハンバーガーメーカーのほうが悲鳴を上げてしまいます。安定した納品が出来ないので、もう勘弁してくれませんか、と言われてしまったのです。代わる製造業者も無く、困り果てた小林さん、思い切りました。

『ハンバーガーを作ってくれる会社が無いなら、自分の会社で作ってしまおう!』

もちろん、小林さんは自動車整備士ではありますが、食品の知識は全くゼロ。体当たりで、様々な食品製造に関する許可や食品衛生を、片っ端から学んでいきます。食品部門の「いじりやフードサービス」も立ち上げ、ハンバーガーを作ってみましたが、パンはパサつき、肉の脂は溶け出し、レタスなどの生野菜は安全性の面で使えません。しかも、自動車修理工場と食品工場の二刀流で、睡眠時間3時間の日々が続きました。

ふんわりバンズのチーズバーガー

それでも試行錯誤を繰り返し、味やソースにもこだわったチーズバーガーに辿り着いて、安定した製造、出荷も出来るようになりました。今は、全国で39台の自動販売機が元気に稼働中。自動車修理工場生まれの自動販売機とハンバーガーは、各地域で話題になっています。

「気合と根性でやってきました」と笑う小林さんですが、やりたいことはいっぱいです。

「レストランもやってみたいですし、クルマのテーマパークがあっても面白いですよね。ハンバーガー片手にみんなに巡ってもらって。夢は大きく持てば、きっと叶います!」

「RX7に乗りたい」から始まった小林さんの夢、今はまだ、その途中です。

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