プリントでは出せない伝統工芸「東京本染注染」の魅力とは? ユージ「最初からヴィンテージ加工されているような感じでいい」

モデル・タレントのユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。10月の火曜日は、10月17日(金)から30日(木)まで開催される「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK 2025」に注目します。10月14日(火)にピックアップしたのは、東京都の伝統的工芸品「東京本染注染(とうきょう・ほんぞめちゅうせん)」です。


「東京和晒」のカラフルな手ぬぐいを手にする吉田明世(左)とユージ



◆150年以上の歴史を誇る染色技法「注染」

「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK(ジャパン トラディショナル クラフツ ウィーク)」は、日本各地で作られる「伝統的工芸品」を東京都内のライフスタイルショップで紹介・販売する14日間のイベントです。創り手と売り手、そして使い手をつなぎ、工芸品の産地を応援していくもので、今年は30の伝統的工芸品と、都内のライフスタイルショップ30店舗の参加が決定しています。

このコーナーでは、参加している伝統的工芸品の中から毎週1つずつピックアップして、その歴史や特徴、作り手の思いなどにフォーカスしていきます。まずは今回紹介する、東京都の伝統的工芸品「東京本染注染」の歴史や特徴について、創業明治22年「東京和晒 (とうきょうわざらし) 株式会社」代表取締役社長の瀧澤一郎(たきざわ・いちろう)さんにお話を伺いました。

注染(ちゅうせん)とは、染料を生地に染める染色技法で、幾重にも重ねた生地の上に染料を注いで染める独自の手法で、「注ぎ染める」工程から名付けられました。その特徴は、生地の裏表両面が均一に染め上がることで、主に浴衣や手ぬぐいの染色に取り入れられ、関東地方で染め上げたものは「東京本染注染」と呼ばれています。特に一枚の型を使い分けながら、何色も染める「差し分け染め」は、世界でも類を見ない染め技法です。

注染の歴史は150年以上前に遡ります。江戸時代末期に江戸の染工場で考案された手ぬぐいの「注ぎ染め」という染め方にあります。「それが明治時代になって技術が確立されていき、最初は手ぬぐいに使用されていましたが、次第に浴衣などにも応用されて全国に広がっていきました」と瀧澤さんは変遷を解説します。

東京本染注染の最大の特徴は、染料を布に直接注ぐことによって生まれる独特の「にじみ」や「ぼかし」、そして布の両面を均一に染め上げる「両面染め」のやわらかな風合いにあります。

瀧澤さんは「もともと東京で普及していた長板染という浴衣の染め方の代替技術として注染が発達していきました。細かな柄の緻密さと繊細なゆらぎ感こそが「東京本染注染」の浴衣・手ぬぐいの特徴となっております」と語ります。

注目してもらいたい点としては、プリント手法との明確な違い。「プリントは輪郭もはっきりしていて綺麗に染まってはいるのですが、東京本染注染は輪郭が少し曖昧であったり、ぼやけていたり、かすれていたり、そのときの染める場の条件で少しずつ変わってくる味わいのある染め方をしております。毎回の微妙な変化を手ぬぐいを含む製品から感じ取っていただければ、より楽しめるのではないかと思っております」

これを受けて「最初からヴィンテージ加工されているような感じでいいですね!」とユージも興味を示します。

◆「東京本染ストール」と「手ぬぐい」に注目

今年の「ジャパン トラディショナル クラフツ ウィーク 2025」では、「東京本染注染」の製品が、銀座のお煎餅屋さん「MATSUZAKI SHOTEN」(銀座 松崎煎餅 本店)で展示・販売されます。今回は、首に巻く「東京本染ストール」1種類と「手ぬぐい」10種類がラインナップ予定です。

東京本染ストールは独自に開発された綿二重ガーゼを使用しているのが特徴で、2枚の薄いガーゼ生地を袋状にする特殊構造によって立体感が生まれ、通気性、吸水性、保温性に加えて、やさしい風合いを実現しています。特に「雨傘くるり」というストールは、注染特有のぼかし染めが印象的です。

手ぬぐいは、市松模様やバラ柄、卯の月、猫づくしなど、注染の特徴である差し分け染めやぼかし染めを取り入れたバラエティ豊かな柄に出会えます。

「東京和晒」の手ぬぐいを実際に手にした吉田は、「よく見かけるネイビーっぽいものもあれば、鮮やかなピンク色や黄色とピンクのカラーの組み合わせなんかもあってすごくおしゃれ」と意外な色彩の豊かさに驚きます。一方でユージは「とにかく発色がいい。使い込んでいくうちに、なんかまた違った風合いが出てきそう」と注染ならではの独特な味にも言及していました。



「ジャパン トラディショナル クラフツ ウィーク2025」の詳細は、公式サイトでご確認ください。


----------------------------------------------------
この日の放送をradikoタイムフリーで聴く
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
番組公式X:@ONEMORNING_1

ONE MORNING
放送局:TOKYO FM
放送日時:2025年10月14日 火曜日 6時00分~9時00分
公式X

※放送情報は変更となる場合があります。

タグ

自動車修理工場の女性社長が「自動販売機のハンバーガー」を開発

トラックなどのドライバーさんのなかには、昭和の頃は、よく幹線道路沿いにあった自動販売機のハンバーガーで、お腹を満たした経験がある方もいらっしゃることでしょう。じつは最近、令和版の「自動販売機のハンバーガー」がじわりじわりと増えているんです。今回は、この自動販売機のハンバーガーを手掛けている自動車修理工場の方のお話です。

ハンバーガー自販機と小林さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

東京・新宿から中央道の高速バス、または新幹線と飯田線の特急「伊那路」を乗り継いで、およそ4時間の長野県飯田市に「ガレージいじりや」という自動車修理工場があります。敷地内には、トヨタ・パプリカ、マツダ・シャンテをはじめ、昭和の車がズラリ。しかも、工場の前にある懐かしい自動販売機コーナーが目を引きます。

お店の代表・小林由季さんは、埼玉県出身の41歳。小さい頃、ちょうどミニ四駆が大人気だったこともあって、クルマに興味を持ちました。19歳でオートマチック車限定の運転免許を取ると、街を颯爽と駆け抜けていった、白い「マツダ・RX7」に心躍ります。

『カッコいい!あのクルマに乗りたい!!』

そう思った小林さんは、知り合いの自動車関係者に相談すると、軽くあしらわれました。「RX7? アンタ、あのクルマ、マニュアルだし、ロータリーエンジンって知ってるの? 乗りたいなら、自分で自動車が整備出来ないと、まず無理だよ」

愛車のマツダ・シャンテと小林さん

マニュアルもロータリーエンジンも、全くチンプンカンプンだった小林さんですが、乗りたい思いが高まって、マニュアルで免許を取り直し、自動車整備士を目指します。男社会の自動車修理工場で、厳しい試練を乗り越えて、見事、整備士資格を取得。縁あって信州に移り住むと、趣味で借りたガレージで、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えを請け負ったことをきっかけに、2010年、自ら自動車修理工場を立ち上げました。

やがて、工場のスタッフが昭和43年製・スバル360の修復を成し遂げたことから、小林さんも古い車に興味を持ち、旧車が続々持ち込まれて、車雑誌にも注目されます。あれよあれよと、旧車好きならまず知らない人はいない工場に成長。小林さんは雑誌連載企画で、旧車でレトロな自動販売機巡りをすることになりました。

ところが、ここで小林さんは大変なことが起きていたことに気付くんです。

『大きな道路沿いにたくさんあったハンバーガーやうどん・そばの自動販売機コーナーがどんどん無くなっている……』

24時間営業のコンビニエンスストアが増えた一方で、自動販売機は経年劣化、オーナーさんの高齢化も進んで、自動販売機コーナーは次々と姿を消していたんです。そんな折、小林さんはお祖父さまを亡くしたことで、小さい頃、自動販売機のハンバーガーをなかなか買ってもらえなかった記憶がよみがえりました。

『あの思い出の、自動販売機のハンバーガーを残したい。ならば、ハンバーガーを作っている食品メーカーを助けよう!』

自動販売機コーナー

そうひらめいた小林さんは、さっそく自動販売機用のハンバーガーを仕入れます。自動車工場の前に冷蔵機能付きの自動販売機と電子レンジを設置して販売を始めると、ちょうどコロナ禍と重なったことで、テイクアウトのニーズをつかんで大繁盛。各地のレトロ自動販売機で売れたハンバーガーのおよそ4倍を1台で売り上げました。

小林さんはもうイケイケドンドン、自動販売機を増やして各地で大人気となりますが、あまりの売れ行きにハンバーガーメーカーのほうが悲鳴を上げてしまいます。安定した納品が出来ないので、もう勘弁してくれませんか、と言われてしまったのです。代わる製造業者も無く、困り果てた小林さん、思い切りました。

『ハンバーガーを作ってくれる会社が無いなら、自分の会社で作ってしまおう!』

もちろん、小林さんは自動車整備士ではありますが、食品の知識は全くゼロ。体当たりで、様々な食品製造に関する許可や食品衛生を、片っ端から学んでいきます。食品部門の「いじりやフードサービス」も立ち上げ、ハンバーガーを作ってみましたが、パンはパサつき、肉の脂は溶け出し、レタスなどの生野菜は安全性の面で使えません。しかも、自動車修理工場と食品工場の二刀流で、睡眠時間3時間の日々が続きました。

ふんわりバンズのチーズバーガー

それでも試行錯誤を繰り返し、味やソースにもこだわったチーズバーガーに辿り着いて、安定した製造、出荷も出来るようになりました。今は、全国で39台の自動販売機が元気に稼働中。自動車修理工場生まれの自動販売機とハンバーガーは、各地域で話題になっています。

「気合と根性でやってきました」と笑う小林さんですが、やりたいことはいっぱいです。

「レストランもやってみたいですし、クルマのテーマパークがあっても面白いですよね。ハンバーガー片手にみんなに巡ってもらって。夢は大きく持てば、きっと叶います!」

「RX7に乗りたい」から始まった小林さんの夢、今はまだ、その途中です。

Facebook

ページトップへ