乙武洋匡 20歳の誕生日に「父から言われて号泣した言葉」とは?

プロゴルファーの丸山茂樹がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「英語のアルク presents 丸山茂樹 MOVING SATURDAY」。9月12日(土)の放送は、作家の乙武洋匡さんが登場しました。


乙武洋匡さん(右)とパーソナリティの丸山茂樹



◆「親を恨む気持ちは1回たりともなかった」

丸山:簡単に乙武さんのプロフィール紹介を。1976年4月6日生まれ。大学在学中に出版した「五体不満足」がベストセラーに。卒業後、スポーツライターとして活動した後、小学校教諭を経て、2013年2月には東京都教育委員に就任。そのほか、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に参与、社会人サッカーチームのGMにも就任されていると。

乙武:はい。

丸山:いやぁ、いろいろなことをされていますね~。今回は乙武さんが伝えてきたスポーツの魅力や教育などについて伺っていきたいと思います。自身が成長するなかで、一番影響を受けたというご両親の教えとは?

乙武:みなさんから「明るいですね!」とか「強いですね!」って言っていただけるのは、やっぱり両親の育て方の影響がすごく大きいと思うんです。僕は根本的に自己肯定感が強い人間なんですね。

丸山:うん。

乙武:それは両親が、「こんな体に生んでしまって申し訳なかった」とか「この子の人生、お先真っ暗だな」っていう育て方をしていたとしたら、たぶん子どもである僕自身もそれを敏感に感じ取って、“あぁ、俺の人生って大変なんだな……”ってなっていたと思うんですよね。ところが、母はすごく楽天家なので“なんとかなるでしょ!”という思いで育てていたらしく、まぁなんとかなってきたと(笑)。

丸山:両親の力って大事だなって感じますよね。ご両親から言われて印象に残っている言葉とかはありますか?

乙武:20歳の誕生日に、父から「いつか思春期の頃に『なんでこんな体に生んだんだ!?』って、お前からどやされる日がくるんじゃないかってビクビクしていたんだけど、そんなこともなくここまで育ってくれてよかった」みたいなことを言われたときに号泣してしまって。

丸山:うん。

乙武:別に、こっちはそんなことを思っていないんですよ。本当に強がりでもなんでもなく、この体に生まれたことに対して、親を恨む気持ちは1回たりともなかった。

丸山:乙武さんって、反抗期は?

乙武:母が「おはよう」って言ってきても「うるせぇ!」って返すくらいの反抗期はありましたけど(苦笑)。だけど、手足がなく僕を生んだことを責めたことは1回もなかったし、我慢していたわけでもなく、別になんとも思っていなかったんです。

丸山:なるほどね~。

乙武:でも、父は“そう思っていたんだ!?”っていうのが、けっこうショックで。

丸山:いつかそうやって言ってくるときがくるんじゃないかと。

乙武:全然そんな風に思っていないのに、なんで気にしていたのって。

丸山:それは親心だと思いますよ。男として、いろいろなことをさせてあげたかったなとか。

乙武:うん、そうですよね。

◆“ONコンビ”の意外な振る舞いに感激

丸山:乙武さんって、スポーツは一番なにが好きなんですか?

乙武:やっぱり、小さい頃から一番親しんできたのは、野球ですかね。僕が子どもの頃は、まだJリーグもなかった時代でしたから。

丸山:なるほど。どこのチームのファンでした?

乙武:当時は熱狂的な(阪神)タイガースファンだったんですよ。

丸山:あら!? 東京都出身ですよね?

乙武:東京生まれ東京育ちで、両親ともジャイアンツ(読売巨人軍)ファンだったんですけど、小さい頃からあまのじゃくだったのか物心がついたあたりからテレビに(ユニフォームの)縦じまが映ると喜んでいたみたいで。

丸山:へぇ~。

乙武:母がぶっ飛んだ人で、空気が読めないんですよ。僕が野球好きだったので、母が多摩川にあるジャイアンツの練習場に連れて行ってくれたんです。フェンスの外から見ていたら、当時監督が王(貞治)さんだったんですよ。

丸山:うん。

乙武:王さんってものすごく丁寧でファンサービスを熱心にされる方で、こんな体の不自由な少年が見に来てくれていると気づいてくださって、わざわざ僕のところまで歩んできて「今日は見に来てくれたんだね」って声をかけてくださったんです。

丸山:素晴らしい。さすがホームラン王。

乙武:当時、タイガースファンではありましたけど、世界の王さんが声をかけてくださったことにすごく感激するじゃないですか。

丸山:もちろん。

乙武:そこで母が、僕のことを車いすから抱き上げて、フェンスの上に顔を出して、王さんのもとに差し出して、「この子、タイガースファンなんですぅ!」って。その一言はいらねぇだろっていう(笑)。

丸山:ハハハハハ! そのとき王さんはどんな顔を?

乙武:大人の対応で(笑)。一瞬、面食らった顔でしたけど、「タイガースもいいけど、ジャイアンツも応援してね」って。

丸山:さすが、やさしい! 長嶋(茂雄)さんだったらなんて言ったのか、聞きたかったな(笑)。

乙武:スポーツライターになってから、長嶋さんともお会いする機会があったんですよ。

丸山:うん。

乙武:ブルペンを見に行こうと思って移動していたんですけど、ブルペンまでの道が車いすだとちょっと難しくて、スタッフが僕のことを車いすから抱え上げて、抱っこのような状態になったタイミングだったんです。ちょうどそこに長嶋さんがやって来て、僕がいつもの電動車いすに乗っていないことに気づいて、「あぁ、いつもの戦力はどうしたんですか?」って(笑)。僕、何百人、何千人と会ってきましたけど、僕の電動車いすを「戦力」と呼んだ人は初めてでしたね。

丸山:最高ですね(笑)! 長嶋さん、半端ないな。

乙武:ワードセンスがすごいですね。

次回9月19日(土)の放送も、引き続き乙武さんをゲストに迎え、お届けします。お楽しみに!

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<番組概要>
番組名:英語のアルク presents 丸山茂樹 MOVING SATURDAY
放送日時:毎週土曜 7:00~7:25
パーソナリティ:丸山茂樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/moving/
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村上春樹「秋の夜長にしっとりと味わえるジャズを…」自身のラジオ番組「村上RADIO」で“ジャズの大吟醸”をお届け

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。10月25日(日)の放送は「村上RADIO~秋のジャズ大吟醸~」と題して、村上さんが所有するアナログ・レコードのなかから、まさに“大吟醸”の名にふさわしいジャズをセレクト。村上さんが愛聴してきたレコードや、「大好きなジャズ・ミュージシャン」と語るアーティストの曲など、秋に似合うさまざまなジャズをお届けしました。この記事では、前半2曲についてお話された概要を紹介します。


<オープニングテーマ>
Donald Fagen with Jeff Young & the Youngsters「Madison Time」

こんばんは、村上春樹です。村上RADIO、今日は「秋のジャズ大吟醸」と銘打って、秋の夜長にしっとりと味わえるジャズをお届けします。というわけで、今夜かけるのは全曲アナログ・レコードになります。

うちにある古いレコードなので、途中で少しぶつぶつ入るかもしれませんが、秋の夜長、お酒のグラスでも傾けながら、骨太なジャズのサウンドを気楽に楽しんでください。いや、べつに無理して飲む必要はありませんけど……。
    


うちにあるレコードは、だいたい7割がジャズ、2割がクラシック、1割がロック、ポピュラー音楽という感じになっています。CDに関しては、かなり事情は変わってきますが、アナログに関しては、そういう比率になります。

その7割のなかから、僕が昔から愛好している曲と演奏を厳選しました。古い時代のものが中心になりますが、気に入っていただけると嬉しいです。

◆Sir Charles Thompson+Coleman Hawkins「It's a Talk Of The Town」
最初はサー・チャールズ・トンプソンというピアニスト。1940年から1950年代に活躍したピアニストで、なかなか趣味の良い黒人ピアニストです。

この人は、チャーリー・パーカーやマイルズ・デイヴィスとも共演しましたが、本来もっと古い時代の音楽をやっていた「中間派」と呼ばれるミュージシャンで、バップ以前の音楽が肌にあっていたみたいです。

スウィング時代に活躍したミュージシャンが、ビバップのあとで、ちょっと古いスタイルの演奏をするのを「中間派」と呼んでいました。コールマン・ホーキンズなんかはそういうタイプのミュージシャン。つまり50年代、60年代というのは、ビバップとかハードバップになっているんだけど、その時代にあっても、古いスタイルのジャズでやっていた人ということですね。このへんの時代の音楽は今では聴く人が少ないみたいです。残念ですけど。

テナーサックスの巨匠コールマン・ホーキンズと共演した素敵なバラード、“It's The Talk Of The Town”「街の噂」を聴いてください。でも「街の噂」になると嫌ですね、最近はSNSとかあるから(笑)。



このレコードは昔からの僕の愛聴盤で、水道橋のジャズ喫茶でアルバイトをしていたころ、よくこれを聴いてました。サー・チャールズ・トンプソンという人は、日本が好きで、日本の女性と結婚して、晩年は日本に住んでいたんです。日本でよく演奏をしていて、長生きして、最近亡くなったんですよね。

◆Stan Getz「Bronx Blues」
次は僕の大好きなスタン・ゲッツです。去年僕は、スタン・ゲッツの伝記を翻訳して出版しました。翻訳はけっこう大変でした。今日かけるのは、スタン・ゲッツがオスカー・ピーターソンのトリオをバックに、自作のブルーズ曲を演奏したものです。スタン・ゲッツは、自分で曲をつくって演奏するということはあんまりないんです。だいたいありものの曲をとてもうまく演奏するというのが持ち味の人なんだけど、これは珍しく自作のブルーズを演奏しています。

タイトルは「ブロンクス・ブルーズ」。彼はニューヨーク市のブロンクス地区で生まれて、貧しい家庭で少年時代を送りました。音楽が少年時代の彼にとってほとんど唯一の喜びだったんです。

僕の訳した本のなかに、このセッションについて回想している一節がありますので紹介します。

「ここには素晴らしい雰囲気が満ちている。ぼくがこれまでおこなった中では、いちばん楽しめる録音だったね。一流のプロと演奏するのは、実に心地の良いものだ。ドラムは入っていないが、そんなものは不要だった。ぜんぜん気にならなかった」

昔なじみのミュージシャンが集まって、気軽にジャムっているような、温かい雰囲気の気楽なセッションだったんですね。ブルーズというのは、ミュージシャンがみんなで集まって、適当にセッションをやっているうちにメロディができちゃったみたいなことが多いから、そういうものかもしれない。

メンバーはピアノがオスカー・ピーターソン、ベースのレイ・ブラウン、ギターのハーブ・エリス。

このブルーズで、最初にスタン・ゲッツがすごくリラックスした、いいソロを吹くんですよ。それからオスカー・ピーターソンのソロが入って、次にベースのレイ・ブラウン。このベースソロがめちゃめちゃかっこいい。派手なことはやってないんだけど、レイ・ブラウンのベースが沁みるんですよね。なかなかこんな演奏はできないです。「おお」と、うなりたくなるようなソロで、スタン・ゲッツはそれを聴いて燃えるんですね。そのあとのゲッツのソロときたら、もう絶妙の一言です。ジャズって、「どう燃えるか」、お互いをインスパイアして高めていく過程がいちばん面白いところなんです。

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聴取期限:2020年11月2日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~秋のジャズ大吟醸~
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:10月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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