現代美術家・加賀美健が語る「答えのない現代アートの難しさ」
青文字系ファッション誌を中心に活躍中のモデルの田中里奈が、InterFM897で土曜の夜にお届けする『Feel the moment』。2月15日のゲストは、初対面!現代美術アーティスト加賀美健さんをお迎えしました。
一人で出来ることを考えた時、美術なら100%出せるかもと思った
田中里奈(以下、田中):現代美術アーティストとして世界で活躍する加賀美健さんをお呼びしました。こんばんは。
加賀美健(以下、加賀美):こんばんは。
田中:お会いするのは初めてで、実はちょっと前に春日ちゃん(アートギャラリー「VOILLD」ディレクター/キュレーター、伊勢春日:前週の番組ゲスト)がやっていたアートバザールの方で、加賀美さんがブースを出していらっしゃって、それでチラ見をしたんです。今日はいろいろお話伺っていきたいと思います。
加賀美:よろしくお願いします。
田中:もともとはスタイリストのアシスタントだったんですね。ファッション畑だったんですか!
加賀美:そうなんです。19から25までやってたので。
田中:めちゃくちゃオシャレですよね。
加賀美:そうですか?パジャマみたいなもんですよ。
田中:パジャマみたいなものを着こなすのがオシャレなんですよ。
加賀美:そう言われると嬉しいです。最初はアシスタントやってて。普通は美大を出て美術の世界に入るでしょ?僕は美術の教育を全く受けてないので。文化服装学院(東京・渋谷区の服飾専門学校)を出たんです。それで、学生の時からアシスタントについてて、卒業してからも続けて6年ぐらいやってたんですよ。全然スタイリストはしてないっていう。
田中:しなかったんですか!
加賀美:してないです。たまに仕事でスタイリストみたいなことはするんですけどね。だから異色です。
田中:いつアートの世界に?
加賀美:もともと幼少期から作るのは好きだったんですけど、絵がそんなに上手じゃないので技術も特になくて。貼り出されたりすることはなかったんですけど。貼り出されてる作品をみて「なんでこれなんだよ」って思ってる子どもでした。いまだにそういうのがあります。逆にそういうコンプレックスがあったから良かったのかなとも思います。上手かったら、その技術に頼っちゃうのかなという気がしますね。
田中:確かに。何にでも言える話ですよね。もともとアートには思うところがあって、でファッションの道に行って。26歳での転機ってなんだったんですか?
加賀美:アシスタント3年目ぐらいからスタイリストになる気はなかったんですけど、師匠が面白い人で。楽しく勉強させてもらうみたいな感じでした。落語家みたいな感じですよね。ファッションというか、師匠を見ていろいろ勉強させてもらって。アートにもそれが生かされてるので。
田中:でもエイヤー!って行かないとアートの道へは行けないじゃないですか。何があったのかなと思って。
加賀美:スタイリストはいろんな人が関わるでしょ。カメラマン、編集、モデル。で、みんなで話し合って作るじゃないですか。でもそれが自分に向いてなくて。難しくないですか?それで自分の頭の中を表現するとなると。で、1人でできることってなんだろうって考えたら美術は、100%頭の中を出せる気がしたんですよね。
田中:やりたいように。
加賀美:やりたいように、です。すごく難しいんですけど、すごく性に合うなって。それが理由ですかね。
田中:最初は何から始めたんですか?
加賀美:サンフランシスコに語学留学したんですけど、ほとんど学校いかなくて。あっちの中古のおもちゃとかを売ってるスリフトストア(thrift store:リサイクルショップ)っていうのがあったんですね。そこに毎日行って、1ドルとか50セントで売ってるゴミみたいなおもちゃを買ってきて、それを組み合わせたりして作品を作ってたんですね。それがルーツです。絵も描いていたりしたんですけど、それよりはゴミみたいなものを持ち帰ってきて、違うものを組み合わせて作品にするみたいなのをやってましたね。
田中:思考回路が全然違うって思いました。人間って、このためにこれをしに行ってとかあるじゃないですか。このため、とかじゃなくて行為が先にあるというか。
加賀美:割と直感で動いてるからね。計画性はあるんですけど。
田中:大きい決めつけがなさそうな。直感で動いてるのかなって。
加賀美:なんでも直感ですね。すごい考えてるんですけどね。朝起きて寝るまで面白いこと考えてます(笑)。テレビ見ても面白くないでしょ?昔はわかんないけど今は、見ててワーッてなる人たちがあんまりいないから。YouTubeで昔の番組見てます。意外と勉強になるんだよね。今と言ってること変わってないみたいな。テレビ面白くないなら、自分で考えるしかないから。
田中:(笑)。それは自分の中で完結するような面白いことなのか、どういう面白いことですか?
加賀美:最終的には自分の仕事につながるように持っていってます。
田中:日々のニュースとかはチェックします?
加賀美:それは見ます。ネットだったりで。見すぎてどんどんググっていっちゃう。
田中:ほじくっちゃうタイプですか。
加賀美:意外とそういうのから作品に転換してる気はしますね。
田中:どこかに見たものの要素が。
加賀美:あると思うんですけど。難しいですよね。今はすぐニュースになっちゃうでしょ。変なのあげると。友達は面白いし、誰も傷つけたりしてないからパンチのあることあげてもセーフじゃんとか言ってくれるからいいですけど。そういう感覚が麻痺っちゃって、自分はいいと思っててもやりすぎと思われたりしたら考えますよ。
田中:なるほど。加賀美さんのことを知れば知るほど、実態が掴めないというか。よく言われませんか?
加賀美:本当ですか?多分なんなんだこの人は、とか思われてるんでしょうね。この人働いてんのかな?みたいな。
田中:色んなことされてますもんね。お会いした方にはなんて言われるんですか?
加賀美:話しやすい。怖いイメージがあるみたいなんですよ。お店もやってるんですけど、お客さんは僕がお店に立ってるとは思わないみたいで。一回面白かったのが、お客さんが入ってきて。お客さんが来たら僕は喋るようにしてるんですけど、なんで来たんですかって聞いたら「加賀美さんのファンで」って。僕が加賀美健ってわかってなくて。5分ぐらい喋ってから僕、加賀美健ですって言ったらびっくりしてて。
田中:それは嬉しいびっくりですね。