現代美術家・加賀美健が語る「答えのない現代アートの難しさ」

「意図が先にいかない」作品に心地よさを感じる
田中:本当に加賀美さんの作品って独特ですよね。加賀美さんの作品に意図ってあるんですか?
加賀美:なくはないんですけど、意図が先にいかないようにはしてます。説明がないものが好きですね。なんとなく見て面白い表現してたり、上っ面だけ調べて想像した方が面白いですよね。
田中:わかります。私も結構そっち派で。最近、文章でもアート作品でも、ウッてくるのは意図しか感じないもので。「こう動かしたいんだ、見た人を」みたいなものがダメになってきて。
加賀美:難しいよね。
田中:でも、数年前って私は意図の世界で生きてて。物づくりとかの裏方もするんですよ。意図をひっかけてストーリーに入れたら買う人がいいなって思うとか。でも今は、その意図が嫌になっちゃって。でも意図がなさすぎてもだし、その塩梅ってなんだろうって思ってて。加賀美さんの作品を見たときに心地良くて。意図が先にいかないっていうのを感じてるんだと思うんですけど。
加賀美:説明がないとわかってもらえないし。そのために批評家って人たちがいますからね。だから作家も話せなきゃいけないんだけど、現代美術では批評家が重要だったりしますね。
田中:批評っていうのは説明とは違うんですか?
加賀美:こういうことを言おうとしてるとか、それを今の社会とリンクさせたりして説明するんじゃないですかね。頭のいい人の仕事だと思うんですけど。
田中:ピカソという人はこうこうで、みたいなのを読むと「ほんまに?」とか思っちゃうんですよね。答えがないから。
加賀美:みんなわかんないと思うんですよ。本当のところは。本人もわからないし、批評してる人もわかったふりをしてるのかなって思うと面白くないですか?演じてるのかな?とか。本当に面白いと思ってる人は何人いるんだろうとか。だから面白いんですけど。みんなそういうのに振り回されちゃったり。
田中:振り回されたくないと思ってても、振り回されちゃったり。
加賀美:逃れられないですよね。
田中:意図と絵のいい向き合い方ってありますか?
加賀美:僕は天邪鬼なので、これいいよって言われるのに牙を剥くっていうか(笑)。素直に言えないんですよね。
田中:自分の中のいい悪いがはっきりしてるから、絶対左右されなくていいですね。
加賀美:それを持つのがいいんでしょうね。でも何がいいのか悪いのかはっきりしてないからわからないんですよね。みんな。
田中:日本にいると特にそう思いません?海外に行くと、他の人が評判の悪い店でも俺は好きだから行くよ、とか。日本だと評判悪いなら行かないみたいな。隠しちゃうじゃないですか。だから自分の好き嫌いって大事なのかなって思いました。
加賀美:大切だと思います。それをぶれずにしてるつもりですけどね。流されない。
田中:私にもそれが大事な気がしてきました。
加賀美:でも、流されちゃうでしょ。目を瞑るしかない。そうなると仕事にならないじゃないですか。流行ってるものを見たりはするんですけど、見て理解するようにはしてます。年取ったら頑固じじいみたいになりそうですね(笑)。
田中:そんなことないと思いますよ。柔軟性もありそうな感じがします。
加賀美:本当ですか。ありがとうございます。お店やってると小学生とかが来るんですよ。そういう子にファンですって言われるとすごく嬉しい。自分の子どもと同じ歳ぐらいの子が知ってるんだって。年配の人に面白いねって言われるよりは子どもに面白いって言われる方が嬉しいですね。
田中:子どもに面白いって言われるものは、絶対に面白いものだと思います。
加賀美:意味が分からなくても面白いなって思ってくれてるということなので、自分の思考回路が小学生なのかなって。良い意味で。

- Feel the moment
- 放送局:interfm
- 放送日時:毎週土曜 24時00分~24時30分
- 出演者:田中里奈
-
番組ホームページ
ハッシュタグ:#feel897
メール:feel897@interfm.jp
※該当回の聴取期間は終了しました。