みうらじゅん「NOと言わないBEAMS、なんて素敵なところなんだろうって」

BEAMS TOKYO CULTURE STORY ©InterFM897

BEAMSのコミュニケーションディレクター・土井地博が、様々な分野で活躍しているゲストを迎え、その人の未来のクリエイションを共有していくInterFM897の月~金トーク番組『BEAMS TOKYO CULTURE STORY』。3月2日から6日にかけては、BEAMSと長い付き合いのある、みうらじゅんに話をききました。

NOと言わないBEAMS、なんて素敵なところなんだろうって

土井地博(以下、土井地):今週のゲストは僕の中では伝説の方になってます、みうらじゅんさんです。よろしくお願いします。

みうらじゅん(以下、みうら):よろしくお願いします。

土井地:BEAMSとは20年ぐらいのお付き合いですね。

みうら:友達のデザイナーの安齋(肇:イラストレーター)さんて人、「空耳アワー」(タモリ倶楽部:テレビ番組)の人。その人に本の装丁を10冊ぐらいやってもらってるんですよ。自分のイベントをする時に安齋さんに聞いたら「BEAMSがやってくれると思いますよ」って軽く言うんですよ。必ず。大木こだま・ひびき(漫才コンビ)さんていう人たちを関西から東京に呼んでやってたイベントがあるんですけど、その時も安齋さんのツテで紹介してもらって。BEAMSに大木こだま・ひびきさんの顔が入ったアロハシャツ作ってもらおうと思って、マイク・スミス(米国)って人がデザインしてくれたんですけど。BEAMSの人に頼んだら即答で作ってくれるんですよ。

土井地:うちのキュレーターで永井というディレクターいますけど。

みうら:永井さんね。ノーと絶対言わないですよね。

土井地:ノーということを知らないですね。

みうら:その人頼って、なんでもやっていただけるんで、なんてBEAMSって素敵なとこなんだろうって。

土井地:僕は逆の印象があって、いつもお仕事とかで面白いことをって、みうらじゅんさん、安齋さんにご協力いただきましたけど、入社してですね、BEAMSに社内報っていうのがあったんですよ。「ジャーナル」という。当時は今みたいなメールとかない時代なので店に回ってくるんですよ。でパッと見たら「あのみうらじゅんと安齋肇がタイトルやってて、なんて面白い会社なんだ」って思いましたよ。

みうら:多分それも最初は軽く頼まれたんですよ。永井さんと同じ主義だったんですかね、僕が。

土井地:懐かしい話ですけれども。今でもそういった話があったら、していただけるんですかね。

みうら:やりますよ!でも、頼まなくなってることは確かですよね。お互い(笑)。今回を機に良くないぞって言おうと思ってたんですけど。

土井地:昔の話で思い出深いのは、みうらじゅんさん原作で安齋肇さんが監督の(映画)『変態だ』の劇中に出てくる、架空のロックフェスグッズ、これをBEAMSで担当したっていう。

みうら:原作書いた俺が悪いんですけど、原作の中に「スノーロッジ・フェス」っていう雪がバンバン降ってる山の中でライブをやるんだけど、そこに妻と愛人がバッティングするっていう設定で。安齋さんが、Tシャツがあった方がいいって言って。でも結局、間に合わなくてTシャツは映画には出てこないんですよ。映画が出来上がって上映した後に安齋さんがBEAMSに「作りたいんだけど」って言い出して。遅いし誰も買わないだろうと思ったんですけど。BEAMSの原宿のとこでやった、『変態だ』の展覧会には並んでたんですよ。

土井地:リスナーの方が気になっているかもしれないですが、タイトルが『変態だ』ですからね。

みうら:変態映画ではないんですよ。変態だという自分の意識が芽生えるまでの話なので。僕は、人は変態になるべきだと思うんで、強い意志を持って変態になっていく主人公の様を見ていただければなと。

写真左から土井地博、みうらじゅん ©InterFM897

寄せ集めを編集するのが僕の仕事なんですよね

土井地:ちょうど2年前に還暦を迎えられて。

みうら:そうですね。もう62ですよ、今。

土井地:還暦の時にお祝いのロングコートを作らせていただいたのは、覚えてますけど。

みうら:いとうせいこうさんでしょ、渡辺祐さん、山田五郎さん、安齋肇さんの4人で集まってお金出し合ってくれて。僕は60すぎたら美魔女になりたかったんですよ。正しい親父になれなかったというか、それこそ「LEON」(ファッション誌)とかが言ってる「ちょいワルおやじ」というのになれなかったんですよ。フィットしなくて、おやじって言葉にも反応しなかったもんで。そのうち安齋さんと旅行番組で夜お風呂入ってたら、後で入ってきた客から「混浴かよ」って言われることがあって。もう背中を見たら、おばさんなんだと思って。これだったら熟女のほうが向いてるなと思って。熟女を磨き上げるには美魔女じゃなきゃダメじゃないですか、そのために赤いロングコートが欲しかったんですよ。あとは(映画)『女囚サソリ』みたいなツバの長い帽子。それで萬田久子さんになろうと思ってたのを誕生日のプレゼントにもらったんですよ。横浜の舞台の上で。中の生地は豹柄でしたよ。ロックは忘れるなという気持ちだと思うんですけど。そしてみんなの寄せ書きのサインがしてあるんですよ。そこに安齋さんが、いらないのにボブ・ディランのサインを真似て書いてて。なんの意味があるのかわかんないのが入ってるから転売できないですよ。ここ一番って時にはこのコートと帽子で、萬田久子さんで行きたいと思ってるんです。

土井地:なるほど(笑)。ボブ・ディランの話が出ましたけど4月に東京、大阪公演ありますよね。

みうら:9度目ですね。僕は初来日から全部観てますので。

土井地:2018年のフジロックでも来てましたし、僕も観ましたけど。僕、今ちょうど仕事で記事を書いていることがありまして。ボブ・ディランを振り返って考えていく中で、みうらじゅんとボブ・ディランって印象が強くて。ボブ・ディランに関わる人の中でみうらじゅんさんもそうですし、アレン・ギンズバーグ(米詩人)もそうですし、なんか面白い方々、文豪、イラストレーターなどいろんな目線でボブ・ディランがあると思うんですが、みうらさんのボブ・ディランに対する偏愛みたいな面白い記事色々、読みましたね。

みうら:別にソニーから頼まれてやってるんじゃないんですよね。ディランさんからしても、しなくていいことを僕はやってるわけなんです。「アイデン&ティティ」って漫画、僕が描いて映画にもなって。それはボブ・ディランとされる人物が、主人公の男に困った時に何かメッセージを言うっていう、ロック版「ドラえもん」みたいなものを描こうと思ってたんですよ。ボブ・ディランが現れて、歌詞の一節を言うんですよ。映画では銀杏BOYZの峯田(和伸)くんがやってたんですけど、ロックについて考えるみたいなストーリーだったんです。映画化になった時にボブ・ディランさんの方に言わないとダメなんで、英訳した台本で映画化する数年前から送ってたんですけど、なかなか承諾が出なくて。最終的にはOKが出て、ED(エンディング)にも曲を使いたいとオファーしてたんですけど、原作を気に入ってくれたみたいで僕のどの曲でもいいから使っていいよって。「ライク・ア・ローリング・ストーン」を使いたくて。それは世界でどこも使えてないんですよ。CMではドクター・ジョンのバージョンとかは使われてたみたいですけど、正式な「ライク・ア・ローリング・ストーン」を使ったのは『アイデン&ティティ』が初なんですよ。

土井地:すごいことですね。『アイデン&ティティ』ってみうらじゅんさんの自伝作でもあるし。今もどこかで観られるんですか?

みうら:ビデオとかも出てますよ。

土井地:4月に向けて見ておきたいですね。

みうら:それから「色即ジェネレーション」っていう小説の映画化もあったんですけど、それもディランさんが絡んでくるストーリーだったので、その時もオファーして曲を頼みました。そういうことがあったので、ディランさんがくる時にソニーの人と組んでキャンペーンとかもやることになって、昨今では3回前の来日に時に、チロルチョコ(菓子メーカー)と組んでボブ・ディランさんのレコードジャケットのチョコレートを作ろうと思って。当然そんなのアウトだろって言われてたんだけど、言ってみたら即OKが出て。当時、来日された時は会場で売られてました。

土井地:何年ぐらい前ですか?

みうら:10年ぐらいかな。うちにまだそのチョコレートあるけど、腐ってると思います。

土井地:今ってお菓子パッケージって自分で作れますけど、当時ってそういうのはなかったですよね。

みうら:なかったんですよ。ディランさんもたくさんアルバム出されてるので、2セットで完結するので2つ買わないといけないんですけど、マニアからしたら残せないっていう。自分もモノ集め好きだから痛いことしたなと思うけど、当のディランさんは、喜んでらっしゃったみたいですね。

土井地:みうらさんのトレードマークのサングラスはボブ・ディランのオマージュ?

みうら:ボブ・ディランと野坂昭如のオマージュだと思います。

土井地:ロン毛は吉田拓郎さん?

みうら:吉田拓郎さんの「御伽草子」っていうアルバムまでの髪型を。ご本人は、今は違いますからね。

土井地:ボブ・ディランの歴史を紐解いてもそうですけど、日本の昭和・平成・令和それぞれの時代のユニークなものをうまくミックスしてますね。

みうら:やってることは寄せ集めなので。寄せ集めを編集してるっていうのが仕事なんですよね。

土井地:今は情報がすごく多いので編集する人っていっぱいいますけど、その力がすごく求められてますよね。

みうら:オリジナルに特化する時代は過ぎたので、あるものとあるものをくっつけて、違うものにするってことですよね。自分がちっちゃいことからやってたのもそれだったので。僕の時代はオリジナリティありきだったので悩むことがあったんですが、そんなこと悩む必要はなかったんですよね。

BEAMS TOKYO CULTURE STORY
放送局:interfm
放送日時:毎週月曜~金曜 17時40分~17時55分
出演者:土井地博 (BEAMS)
番組ホームページ

メール:beams897@interfm.jp
ハッシュタグ:#beams897 #beamstokyoculturestory

※該当回の聴取期間は終了しました。

「日本の役に立つなら住んでもいい」意識は間違い? 外国籍の人と入管に今なにが起きているのか

ヘウレーカから発売されている『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること』を著した、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが4月19日の『大竹まことゴールデンラジオ』に出演。本に書かれた内容について伺った。

大竹「安田菜津紀さんがこの本を書くことになった理由はなんですか?」

安田「副題にも入っているので、皆さんお察しかと思うんですけれども、この本のテーマは日本の入管政策なんです。入管は読んで字のごとく、出入国を管理して、入管庁としては監視によって治安を守っているということを打ち出してます。それは必要な仕事ではあるんですけれども、一方で生活者の視点とか、あるいは人権の主体を考えた時に、外国籍の人たちは必ずしもその権利が守られていないという現状があって、私たちの隣人のことのはずなのに、私たちはどこまでそれを知っているのだろうか、ということが出発点です」

室井「ウィシュマさんのあの事件、ほんとに泣いちゃった」

室井「2021年に名古屋入管で、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことですよね」

室井「なんか怖いんだよね。管理してる人たちが『頑張れ』とかって。ウィシュマさんはすごい辛そうなのに、普通に明るく声かけちゃってんだよね」

安田「ウィシュマさんは体が弱って動かせない状態に追い詰められて亡くなったわけですけれども、『私たちも頑張って体を動かすけど、あなたも自分の体頑張って動かすのよ』っていう風に呼びかけていたりするんですよね」

室井「明らかな悪意じゃないところが余計怖いと思っちゃうんですよね」

安田「これはウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった後に出された調査報告書でも指摘をされているんですけれど、ウィシュマさんが体調を悪そうにしているのは、外に出たいから病気ですと偽っているんじゃないかと最後まで疑っていた職員がいました。外国人は嘘をつくんじゃないかとか、ごまかすんじゃないかとか、そういう視点が組織の中で暗黙の了解のように共有されるようなことがあったのではないでしょうか」

室井「でもそれはおかしいよね。ナニ人でもあっても嘘つく人は嘘つくもんね」

安田「そうなんですよね。だから国籍とか外国人だからといって分けるのは間違ってるということも、この本の中では大事にしていたところです」

大竹「安田菜津紀さんは、この本の中で大切にしていることが2つあるとおっしゃってます。それは何ですか?」

安田「1つは今、室井さんがご指摘くださったことに重なるんですけれども、例えばナニナニ国籍の人が犯罪をしたというニュースが流れたとします。日本のニュースって国籍と一緒にそういう情報を流しがちなんですけれど、じゃあ『ナニナニ人は危険なの?』と大きな主語でくくって危険視したり排除するのは間違っているということ。もう1つは、今たくさんの外国人労働者たちに、私たちの生活は支えられていますよね。私はよく牛丼屋さんに入ったりするんですけれども、店員さんが外国ルーツの方なのかなっていうことも多いですし、目に見えているところだけではなくて、工場で働いている人もいるでしょう。でも『そうやって日本社会を支えてくれている人なんだ。だからその権利守ってあげなきゃね』って、上から目線ではなく…」

室井「今この時代に一緒に生きてる人たちだよね?仲間だよね」

安田「そうなんです。だから、上から目線で『日本を助けてくれるんだったら住んでもいいよ』ではない方向で、社会を築けないだろうかと。日本に役に立つ人だから守ろうという視点はすぐ、役に立たない人は追い出そうという視点に切り替わってしまう、表裏一体のものだと思います。でも人権ってそういうものではなくない?っていうところが出発点ですね」

大竹「本の中で紹介している、日本で暮らす外国の方は、色々な…なんて言うんだろうね。不具合って言ったらいいかね? 大変な目に遭ってます」

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