ラジオ日本「わたしの図書室」で武田麟太郎の「雪の話」を紹介。 親しかった作家・織田作之助が「巧い、巧い、巧すぎる」と称賛した名作。
猛吹雪に阻まれ婚家にたどりつけず、
思いがけず宿の主人の息子に嫁ぐことになる雪国の花嫁。
周囲に阻まれ愛する人を追って行けず、
大雪の日に別の男と愛のない結婚をした都会の女。
これでよかったのか?
相似形でありながら、まったく違うエンディングを迎える
2組の夫婦の、雪にまつわる物語……
日本テレビアナウンサーの井田由美が情感豊かに朗読する。
【武田麟太郎の人生と作品】
ラジオ日本「わたしの図書室」では2月6日(木)、武田麟太郎の「雪の話」を紹介する。1904年(明治37年)、大阪に生まれた武田麟太郎は、中学時代から小説家を志し、京都の第三高等学校(現在の京都大学)で梶井基次郎と交流を深める。東京帝国大学仏文科を中退した後、昭和4年に「文藝春秋」に「暴力」を発表。プロレタリア作家としてデビューした。その後、方向性を変え、井原西鶴の浮世草子に学んだ<市井事もの>と呼ばれる独自のスタイルを確立。庶民の生活をリアルに描き出した。1933年には川端康成、林房雄、小林秀雄らと「文學界」を創刊して文壇をリードする。太平洋戦争中は、陸軍報道班員としてジャワに島に滞在するが無事に帰還。1946年(昭和21年)、41歳で急病のため他界した。代表作には、「日本三文オペラ」「井原西鶴」「銀座八丁」「ひとで」などがある。
【「雪の話」の話】
今回、「わたしの図書室」で紹介する「雪の話」は昭和15年に発表された作品。豪雪に阻まれて嫁ぎ先までたどり着けずに、偶然出会った他の男とそのまま結婚する娘と、成り行きに流された挙句、愛した人の親友と結婚することになった都会の娘。2人の女性は、それぞれに劇的な展開の中で、最初に思った人とは違う人と結婚する。そして、その結婚生活はまったく違う結末を迎えようとしている。運命をすんなり受け入れる生き方、運命にあらがう生き方。武田麟太郎はそれをこの2つ結婚の物語に織り込み、あざやかな手際でさらりと描き出した。
同じ大阪生まれで京都の第三高等学校の9年後輩にあたる作家・織田作之助は、武田麟太郎の追悼文の中で、この「雪の話」を「小説の中の小説であった」と言い、「巧い、巧い、巧すぎるほどの」作品だと絶賛している。
- わたしの図書室
- 放送局:ラジオ日本
- 放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
- 出演者:井田由美(日本テレビアナウンサー)
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