ラジオ日本『わたしの図書室』では2月27日(木)と3月6日(木)の2週にわたり、童話作家・新美南吉の「花のき村と盗人たち」を紹介する。登場する5人の盗人に加え、老いた村役人、謎の少年まで、声優の羽佐間道夫がひとりで演じて大奮闘。笑って泣いての物語。必聴!
「こんな村にはお金やいい着物を持った家があるに違いない!」
若竹が初々しい芽を伸ばし始めるころ、平和でのどかな花のき村に5人の盗人がやってくる。しかし、ちょっと前までごくふつうの職人だった盗人たちは、つい元の商売のクセが出て、盗人としてはぜんぜん役立たず。釜師だった男は、うっかり壊れた鍋を直してやろうと預かってくる。錠前屋だった男は、家や倉の錠前がゆるんでいるのが気になるばかりで、何も盗んでこない。越後から来た角兵衛獅子は、トンボ返りを披露して村人を喜ばせてしまう。大工のせがれは、下見に入った家の天井板の見事さに目を奪われただけ。唯一プロの盗人である親方は嘆いた。
「盗人のかしらというものも、案外、楽な商売ではないて…」。
そんなとき、小さい草鞋を履いたひとりの少年が、牛の子を連れてやってきた。
「おじさん、この牛、持っていてね」。
なにもしないうちに牛の子を盗んだも同然。赤い手綱を握って親方は笑い出す。しかし、その笑いはなぜかしだいに涙に変わっていくのだった……。