アウシュビッツ収容所を直接描くことなく、戦争の、ナチスの残虐さが見える映画 『関心領域』

ニッポン放送「ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町」(日曜朝5時~)で、おススメの最新映画をご紹介しているコーナー『サンデー早起キネマ』。5月19日は、とんでもなく素晴らしい演技が紡ぐ感動作3本をご紹介しました。

その1本は、ホラーではないのに、残虐なシーンは全くないのに、これほど怖い……一生忘れられない映画体験、スタジオA24が送る『関心領域』。

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

原作は、イギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説です。監督・脚本は、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー。10年の歳月をかけて映画化しました。

初お披露目となった第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞して以来、各地の映画賞を席巻し、第96回アカデミー賞では国際長編映画賞と音響賞の2冠に輝きました。音響賞……“音”にこれほど衝撃を受け、納得した作品はありませんでした。

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

『関心領域(The Zone of Interest)』とは、第二次世界大戦中、ナチス親衛隊が使った言葉で、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所群を囲む40平方キロメートルの地域を指しています。

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

時は1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘートヴィヒは、5人の子供達と共に、煉瓦塀で囲われた収容所の隣で、それはそれは幸せに暮らしていました。

青い空のもと、緑の芝生にプール、色とりどりの花が咲き乱れる美しい花壇や温室、庭で催されるパーティー……スクリーンに映し出されるのは、とても穏やかな上流階級の家族の日常。誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてきます。

しかし、煉瓦塀の向こう側のアウシュビッツ収容所の存在が、着実に伝わってくるのです。大きな建物からあがる黒い煙、収容所から聞こえてくるあらゆる音、家族が交わす何気ない会話や視線、そして気配から。

壁を隔てたふたつの世界にはどんな違いがあるのでしょうか?

平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのでしょうか?

そして、あなたと彼らとの違いは?

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

ルドルフ・ヘスには、クリスティアン・フリーデル。妻ヘートヴィヒ役は、『落下の解剖学』でも話題をさらったザンドラ・ヒュラー。2人の演技が物語の重要性を明らかにしてくれます。

壁を隔てて収容所の隣で、こんな生活をしていた家族が本当に存在していたなんて。

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

こんな戦争映画を今まで見たことがありません。なんという手法でしょう。

アウシュビッツ収容所を直接描くことなく、塀を隔てた所に住む裕福な家族の平和の中に、確かに戦争の……ナチスの残虐さが見えるのです。

音が、ずっと怖いんです。常にゴーっと稼働しているガス室の音、容赦ない怒鳴り声、銃声、悲鳴、列車の音、けたたましい犬の鳴き声……見えないけれど、そこにある事実を音が証明しているのです。

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

シンシンと降り積もる雪のように心に積もっていく恐怖。どんなホラー映画より怖いかもしれません。アウシュビッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長とその家族の暮らしは、あなたに何をもたらすのでしょうか?

『関心領域』  (C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

『関心領域』
5月24日(金)より新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

監督・脚本:ジョナサン・グレイザー
原作:マーティン・エイミス「関心領域」(早川書房刊)
撮影監督:ウカシュ・ジャル 音楽:ミカ・レヴィ
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原題:The Zone of Interest|2023年|アメリカ・イギリス・ポーランド映画|

公式サイト:https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/

(C)Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町
放送局:ニッポン放送
放送日時:2024年5月19日 日曜日 5時00分~5時30分

※該当回の聴取期間は終了しました。

実は暑い!パリ五輪は史上最も暑い大会になる可能性も…

まもなく開催されるパリオリンピック・パラリンピック。しかし最近のフランスは夏の猛暑が深刻化しているという。716長野智子アップデート(文化放送)」は、ハフポスト日本版編集長の泉谷由梨子にパリの猛暑について伺った。

長野「パリも暑いんですよね」 

泉谷「暑いんです。開幕が7月26日ということで間近に迫っているんですけど、猛暑の影響が心配されています。前回は2021年の東京大会でしたけれど、この時は気温34℃、湿度70%で史上最も暑い大会になったと言われているんです。しかし今年、また更新してしまうのではないかと言われているんです」 

長野「えっー!」 

泉谷「フランスでも最近は夏の記録的な猛暑が深刻化していまして、2022年にはフランス史上最も暑い夏になっていて、2023年には5000人が暑さによって死亡したんです」 

長野「フランスで?」 

泉谷「気温も40℃以上になる日が増えていて、日本は暑いと思いきや、実はフランスも熱波の影響が深刻になっているんです。ヨーロッパってそもそも涼しいイメージがありますけれども、フランスは気候変動による影響を最も受けやすい地域で欧州の中で一番酷暑で死亡する確率が高い地域というふうに言われているんです」 

長野「それは知らなかったな~」 

泉谷「元々涼しい地域が多いからなのか冷房の普及率も日本ほど高くない」 

長野「選手村も冷房がないんですよね。なんか床を冷やすんでしょう?」 

泉谷「そうなんです。地下水を汲み上げて冷却するんですけど、それは涼しいからというよりも史上最も持続可能な大会というコンセプトがありますので、二酸化炭素排出量を削減することで温室効果ガスの量もこれまでの大会から半減というのを明確に目標に掲げているからなんですね。ただ猛暑が選手のコンディションに影響を与えかねないということで、各国がエアコンを選手村に持ち込んでしまって結局エコになっていないという状況にもなってしまっているんです」 

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