【衝撃】ジェネリック医薬品の4割で製造過程に不備……その要因と改善策は?

政策アナリストの石川和男が12月14日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。11月21日、業界団体の調査でジェネリック医薬品の約4割で製造販売承認書と異なる製造があったとの結果が明らかになったことについて専門家と議論した。

医薬品

日本製薬団体連合会(日薬連)は11月21日までに、ジェネリック医薬品を扱う全172社が実施した製造実態に関する自主点検の結果を公表。8734品目中、4割を超える3796品目で製造販売承認書と異なる製造があったことが判明した。日薬連は厚生労働省の会議で速報値として報告し「品質や安全性に影響はない」としたが、会議構成員からは「衝撃的な数字だ」として再発防止を強く求める声が上がった。

処方薬全体の約8割(金額ベース)を占めるジェネリック医薬品を巡っては品質不正が相次いで発覚し、2021年以降、小林化工(福井県)や日医工(富山県)など21社が業務停止などの行政処分を受けており、医薬品の供給不足の一因ともなっている。

これらの背景について番組にゲスト出演した神奈川県立保健福祉大学シニアフォローで一般社団法人医薬政策企画 P-Cubed代表理事の坂巻弘之氏は「理由は色々あるが、一例として国がジェネリック医薬品の使用促進を訴えてきた背景がある。(ジェネリック医薬品を)今まで年間10万錠作っていた会社が、1000万錠作らなきゃいけないとスケールアップする時に、(製造販売承認書に従った)今までと作り方を変えてしまう会社があった」と指摘。

一方で「日本の基準は厳しすぎる部分がある」とも述べ、「例えば薬を製造するタンクに原料を入れていく際、一度にまとめて入れるのか、少しずつ分けて入れるのかが製造販売承認書には書かれている。今回の調査結果でも、そういった部分で誤りがあった事例が見られたが、薬の専門家から見れば薬の有効性には影響しないよねということがある」と言及。「(原材料を)どのくらい分けて入れるのかなどは、アメリカやヨーロッパでは基準に入れていない」として、日本の製薬基準が厳しすぎる点を明かした。また、「日本の規制が厳しすぎて、外資系企業のなかには実質的に日本から撤退する会社も結構出てきている」とも語った。

その上で、直近でも医療現場が必要とする薬の約2割が供給されていない問題の解決策として「いろんな要因が絡んでいるが、例えば海外の状況を見ると人体に対する影響がどのくらいあるのか。元々届け出た手順書(製造販売承認書)と実際には異なった工程で作っていたとしても、人体に対する影響を評価した上で安定供給の方を優先するというような意思決定の仕方もある」と指摘。

さらに「現実に供給不足を起こしている多くの薬は値段が安いもの。そのあたりのデータもきちんと見て、安いものに関しては採算が取れるように、あるいは増産するインセンティブになるような価格政策を国がとっていくべき」とも述べた。

石川は「国には価格と供給安定、両方のバランスが取れた政策をやってもらいたい。規制の合理化や、ルールの見直しなどを進めてもらいたい」と注文をつけた。

医療保険大手CEO銃殺事件 SNSで容疑者支持の声 アメリカの医療保険に対する市民の怒りも背景に?

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。

12月11日(水)のテーマは「なぜ狙撃犯はヒーローになったのか? NYの大企業トップ暗殺でアメリカ人の怒りが爆発」。アメリカ最大手の医療保険会社「ユナイテッド・ヘルスケア」のCEO銃撃事件について、「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が意見交換しました。

※写真はイメージです



◆銃弾に込められたのは“医療保険会社への怒り”か?

12月4日、ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンにあるヒルトンホテル前の路上で、アメリカ最大手の医療保険会社ユナイテッド・ヘルスケアのCEOブライアン・トンプソンさんが銃撃に遭い死亡しました。銃社会のアメリカといえど、マンハッタンの中心部での銃撃は珍しく、さらには明確に彼を狙った犯行として世間に大きな衝撃を与えています。

犯人は9日にペンシルベニア州で拘束されましたが、放送日時点では逃走中の身でした。動機も判明しないなか、銃撃事件で明るみになったのは、アメリカの医療保険に対する市民の怒りの感情でした。まずは、ニューヨークのZ世代で構成されたラボメンバーが、事件をどう受け止めたのか聞いてみましょう。

ノエ:いやあ、クレイジーだったね。あんなニューヨークのど真ん中で暗殺されるなんて。

メアリー:6番街と55丁目の角あたり。実は、私の職場から角を曲がってすぐのところだったんだ。

ミクア:ビデオを観たけど、絶対プロの仕事だと思った。

ノエ:サイレンサーとかも使っていたしね。

ミクア:警察は絶対に犯人を見つけられないと思うよ。

ノエ:弾丸の薬莢(やっきょう)には“deny,defend,depose”(否認、弁護、追放)というメッセージが書かれてあったんだよね。

メアリー:はっきり覚えてはいないけど、アメリカの健康保険制度に関する本からの引用だったみたい。保険会社があなたからお金を奪うみたいな、そういう内容。要するに、反保険会社的な内容だった。

ノエ:おそらく保険会社は、見えないところで酷いことをたくさんやっているんだろうな。そういう疑惑を否定して、自分たちを守っている。それを容疑者は伝えたかったんじゃないかな。

興味深いことがある。最初にニュースで見たときは、今までの詳細を報道しているだけだった。犯人は見つかっていないとか、銃弾のケースにはこう書かれていたとかね。つまり、報道は彼を“冷酷な暗殺者”のように描こうとしていたんだよ。

ところが、SNSではミームで溢れかえっていた。一般人の目から見ると、まるで彼が英雄か何かのように、自分たちの代表者みたいに称えているんだ。

ノエが指摘したメッセージについてですが、現場で発見された9mm口径の薬莢には、「deny(否認)」「defend(弁護)」「depose(追放)」と刻まれていました。これは、保険業界の支払い拒否を非難する「delay(遅延)」「deny(否認)」「defend(防御)」というフレーズに極めて似ています。

銃弾の薬莢に医療保険会社の不正を訴えるようなメッセージが書かれていたことで、アメリカ人が一斉に反応し、この暗殺者が悪者を成敗した英雄のように見られているのです。

その背景には、アメリカの保険制度の厳しい現実があります。日本や他の多くの先進国が、国民皆保険制度なのに対し、アメリカでは医療保険に加入するかどうかは、あくまで個人の自由です。アメリカは医療費自体が日本に比べて数倍高いため、国民は民間の保険に高い保険料を払って加入しなければなりません。月平均は1人10万円と言われています。

また、受けられるサービスは保険の種類や保険料により大きく異なります「支払いを拒否されることも珍しくなく、高額の手術が受けられないこともあります。そのため、がん患者などが多額の借金を背負うことになり、無事に退院できても自己破産するケースもあります。実にアメリカ人の自己破産の7割近くが、医療費が原因という数字があるほどです」と、Z世代専門家のシェリーはアメリカの保険制度の現状を説明しました。


(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab



◆アメリカ国民が医療保険会社に持つイメージは?

保険会社のCEOの命が狙われた今回の事件。保険会社の実態に不満や怒りを感じていた人々が、一斉に自分の体験などを投稿しています。ラボのZ世代たちは、噴出した社会のひずみをどう感じているのでしょうか?

ノエ:保険会社は悪だからね。

メアリー:まったくね。こういう話を聞くたびに仕事を変えたくなるよ。

ノエ:そうか、メアリーは保険の仕事をしているんだよね。

メアリー:そう。すごく嫌なんだけどね。

ノエ:どんな仕事なの?

メアリー:私の仕事は保険料の計算だけど、何の決定権もないよ。誰に何が支払われるかは決められない。ニュースで見た限り、ユナイテッド・ヘルスケアは最大手だけど、保険料請求の支払いをよく拒否する、典型的で最大の保険会社みたいね。たしか、全請求の3分の1が拒否されていると書かれていたよ。

他の会社のことは知らないけど、この会社はAIの技術を導入し、診療を承認するか拒否するかをAIが決めているんだよ。AIを使うことで、より多くの案件を拒否することができるようになったらしい。

つまり、保険金を支払わなくてもいいってこと。払わなければ払わないほど、会社の利益になるってことだよ。

ノエ:他の保険会社のこともニュースで見たよ。ある大きな保険会社だと、手術が長引いた場合、超過した分の麻酔の料金は保険から支払わず、自己負担にしてもらうと決めたらしい。

メアリー:そのことなんだけど、この暗殺のニュースのあとすぐにとり下げられたよ。

ノエ:そうなんだ!? つまり僕たちはまだ生きていられるってことだね!

暗殺されたCEOの保険会社では、保険申請された医療の全体の3分の1を却下しており、他社と比べても極めて高い数字です。こうしたデータを各保険会社は公にしておらず、調査会社が独自に収集した資料を元にしています。

こうした保険会社の力は本当に強く、アメリカで誰がどんな医療を受けられるかどうかを決めるのは、本人でも医師でもなく保険会社だと言われるほどです。今回、暗殺されたCEOの年俸は15億円だったのも、保険会社への怒りを加速させる要因だったのかもしれません。

どんな理由であれ、殺人は正当化されるものではありません。一方で、今回の事件をきっかけに、くすぶっていた問題が表面化したのは間違いなさそうです。「これが、これから大人になるアメリカZ世代が生きていかなければならない社会だということでもあります」とシェリーはコメントし、話題を締めくくりました。

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12月11日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年12月19日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/

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