このところ、毎週のように、各地で豪雨による被害が出ていますが、こうした激しい雨や線状降水帯の発生は、温暖化の影響が大きいと言われます。
温暖化の対策はCO2の排出を抑える取組みをよく目にしますが、今日は、温室効果がCO2の28倍と言われる、メタンガスの削減についてのお話。
銀杏を食べさせて、牛のゲップを減らせ!
まずは、メタンガス削減のために、新しい牛のエサを開発中という、愛知県畜産課の武田然也さんにお話を伺いました。
愛知県畜産課 武田然也さん
「愛知県、ご存知かと思うんですけれども、トヨタ自動車がございます。で、二酸化炭素を大量に出す県ということで、温暖化の対策っていうのを積極的に実施しているところなんですけれども、これをですね、畜産分野でも貢献できないかということで、牛のゲップから出るメタンガスを減らす取り組みを開始しております。
そこで着目したのが、牛が食べるエサなんですけれども、愛知県の独自の『メタン削減の効果をもたらす飼料』が開発できないか、ということで、注目したのが銀杏なんですね。
一般的に食べてる銀杏っていうのは種子、種の部分なんですね。で、種を覆っているブヨブヨした、くさいところなんですけど、そのブヨブヨした黄色いところの中に、メタン削減に効果のある成分っていうのが含まれているのが分かったので、それをエサにするっていう取組みを今、開発しているところです。愛知県の祖父江町という地域が、銀杏の生産量が日本一ということで、そうなんです、今までは捨てているという状況で、もし捨てることなく使えれば、一石二鳥なようなところですね。」
日本の農業で出るメタンガスの約3割は牛のゲップからといわれ、水田で発生するメタンガスと並び、非常に多い。そこで、それを削減するため、メタンガス削減効果のある成分入りの牛のエサを開発中なのです。
今までは、メタンガス削減成分としては、カシューナッツの殻の抽出液が有名で定番。しかし、買うのにちょっと高い。そんな中、銀杏の黄色いブヨブヨしたところに同じ効果の成分がある、という研究発表があり、銀杏生産日本一の町を抱える愛知県は、これだ!!と。安く近くで手に入る!しかも、廃棄する手間もお金も減らせて、メタンガス削減も叶う新しい牛のエサになる、ということで、これでしっかりと温暖化対策をしたい、と話していました。
<エサを食べながら搾乳できる装置で、ゲップの中のメタンガスの量を測定>
牛のゲップは、自動車の2倍の温室効果源!?
とはいえ、牛のゲップ。それって、正直、そんなに大きなものなの?という純粋な疑問が・・・。
そこで、牛メタン削減プロジェクトとして、長らく牛のゲップのメタン削減の研究をしている、北海道大学大学院農学研究院の小池聡教授に率直に聞いてみました。
北海道大学大学院農学研究院 小池聡教授
「牛というのは非常におっきな体でたくさんエサを食べて、お腹の中でたくさんの微生物が発酵して栄養を摂るという生き方をしてるんですけれども、その過程でメタンガスが大量にでてしまうと。
量で言うと、一般的な牛で、乗用車の2台分くらい出すと言われているので、たくさん出てしまって、なおかつ温室効果も高いということで、メタン減らさなきゃいけないという流れになっているということです。
これはたまたまなんですけれども、世界的に見て、牛って15億頭いるんですけど、世界の自動車の台数もだいたい15億台で、同じ台数になってますので、かなり概算ですけど、単純計算で自動車の2倍の温室効果排出源になってしまってるというのが今の問題ということです。非常に貴重な食糧供給源であるというところは、私たち、ずっと牛を飼って牛の恩恵にあずかっているわけですので、そこは維持しなきゃいけないと思うんですけれども、一方で、やっぱりそういった気候変動の急激な変化を見ると、一刻も早く減らさなきゃいけないというのはすごく痛感する部分でもありますね。」
自動車の2倍の温室効果排出源って言われると、すごいですよね。
とはいえ、牛は8000年も家畜として飼われ、私たちに食料を供給してくれている。人が生きていくために、牛は飼い続けたい、だからこそ環境対策と両立しなければならない、というわけなのです。
そもそも、牛のゲップで出るメタンガスは、牛のお腹の中で起こる発酵の副産物だそうです。
胃の中で出る水素が余って、外に出さないと発酵が止まってしまう。その水素を効率よく出すのがメタン。だからメタンが出来るのは理に適っているのです。
でも、実は、牛はエサの中の炭水化物を発酵して別のモノに変えてそれをエネルギーにしているのに、それがメタンになって、ゲップとして外に出てしまうことになるので、牛が得るエネルギーは減ってしまうんです!
せっかく発酵して取り入れようとしたのに、もったいない!牛も損しているんです。専門家の間では、メタンは税金、と言われているそうで、だから節税が必要なんです。
そこで、お腹の中で発生するメタンガスを減らす、牛のエサが重要になるのです。
牛の腸活?胃活?で めざせ!2050年までに牛メタン80%削減!
現在、カシューナッツの殻の抽出液を使って30%のメタン削減ができるというところまでは来ましたが、小池先生は、減らせるだけ減らしたいと言いつつ、簡単ではないともおっしゃいます。
北海道大学大学院農学研究院 小池聡教授
「やはり、牛という生き物が長い時間かけて作り上げた生き物の仕組みですので、これを外からコントロールするというのは非常に難しいですね。なかなか上手くコントロールするというのは、簡単ではないです。
ただ、一方で、今、人間でも腸活だとかっていうキーワードで、お腹の中の状況を良くすると健康につながるっていうような認識も広まってると思うんですけれども、あれも同じように、消化管の中に住んでる微生物を上手くコントロールして良いことにつなげましょうという考え方なので、牛も同じように私たちは考えていて、お腹の中の状態を整えてやって最適化してやろうっていうのが私たちの狙いですね。
そうです、2050年までに80%削減をしたいと思ってます。かなり難しいチャレンジングなことではあるんですけども、それが実現できれば、牛を悪者にせずに、環境も悪くせずに、みんながハッピーになる方法が見つかるんじゃないかと思ってます。」
メタンガスの発生を80%削減できるようになると、メタンになって失ってしまっていた、”税金”のエネルギーを節税できるので、牛乳や肉の生産性も10%あがると試算していて、牛にも、環境にも、生産にもいいことばかり。
牛の腸活、正確には胃で消化するので胃活だそうですが、がんばってほしいですね!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)