甲子園球児たちを70年近く泊める宿~「甲子園ホテル夕立荘」の歴史

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今年(2019年)は履正社の優勝で幕を閉じた、夏の全国高校野球。ドラマの陰には大会を支えている人たちが大勢いますが、きょうは70年近くにわたって、甲子園に出場する球児たちを泊めて来た「宿」のストーリーをご紹介します。負けて帰って来た球児たちに、宿のご主人がかけた言葉とは?

【第101回全国高校野球】決勝戦 履正社(大阪)-星稜(石川)幕切れ。優勝を決め喜ぶ履正社ナイン=2019年8月22日 甲子園球場 写真提供:産経新聞社

今年も全国49代表が甲子園球場で熱戦を繰り広げた、夏の風物詩・全国高校野球。地方からやって来る球児たちを、戦後間もないころから70年近く、ずっと泊めている宿があります。

甲子園球場の目と鼻の先にある、「甲子園ホテル夕立荘」。2代目のご主人が、34年前に先代から宿を引き継いだ、島田昭一さん・77歳です。

「うちの宿が最初に球児を泊めたのは、1951年の春のセンバツでした」と言う島田さん。終戦からわずか6年後、泊めたのは地元の鳴尾高校でした。

兵庫県立鳴尾高等学校-Wikipediaより

当時、島田さんはまだ小学生。宿も昔ながらの和風旅館でした。鳴尾高校は快進撃を見せ、決勝戦に進出。1点リードのまま最終回を迎えます。優勝はもう目前。宿のおかみさんで、球場へ応援に行っていた島田さんのお母さんは、「祝勝会の準備をせなあかん!」と、試合の途中で宿に戻って来ました。ところが……。

9回ウラにエラーなどが出て、鳴尾高校は逆転サヨナラ負け。寸前で優勝を逃してしまいます。「目を真っ赤に泣きはらして帰って来た球児たちの姿は、いまも忘れられません」と言う島田さん。これをきっかけに「夕立荘」は毎年、全国の球児たちを泊めるようになり、島田さんもその姿をずっと見守って来ました。

球児を泊めるときは、決勝まで残ることを前提に予約を受けるので、途中で負けた場合、その後の予約はすべてキャンセル。宿はそのリスクを承知の上で球児たちを受け入れています。

「泊まっている高校の試合は、必ず球場へ行って、応援団と一緒に声援を送っています。高校野球が好きじゃないと球児の宿はできません」と言う島田さん。

※画像はイメージです

1964年、島田さんは、東京オリンピックに合わせて開業した東京のホテルニューオータニに就職。宿泊業の基礎を学び、その後は関西に帰って地元のホテルで働いていましたが、お父さんが亡くなった1985年、「夕立荘」の2代目を継ぎました。9年後の1994年、建物の老朽化が進み、島田さんは「夕立荘」の建て替えを決意します。

木造の宿は鉄筋の近代的なホテルに生まれ変わりましたが、すべて個室や2人部屋にせず、4~5人で泊まれる大きめの部屋を残したのも、球児たちのためでした。

「建て替えて半年後に、阪神・淡路大震災が起こったんです。前の建物のままだったら、間違いなくペチャンコになってましたね。我ながらファインプレーでした」

國學院大學久我山中学校・高等学校-Wikipediaより

島田さんが宿を受け継いでから、球児の宿は都道府県別の割り当て制になり、夏の大会の場合、夕立荘は東東京と西東京の代表を、毎年交互に受け入れることになりました。2001年、島田さんに初めて優勝の喜びを味あわせてくれた日大三高は、2011年にも優勝。

「孫のようなものです。ずっと準優勝止まりが続いていたので、この2度の優勝は本当に嬉しかったですね」

今年の夏の大会では、28年ぶりに出場した西東京代表の國學院久我山高校・35名が宿泊しました。

「驚いたのは野球道具だけでなく、勉強道具を持って来ていたんです。さすがは文武両道がモットーの進学校だなと思いました」。

※画像はイメージです

風邪を引いた選手が1人いましたが、他の選手にうつさないための個室もちゃんと用意してあります。ベストコンディションで大事な試合に臨んでもらうため、食事と健康状態には常に気を遣う島田さん。万全の状態で送り出し、アルプススタンドへ応援に行きましたが、國學院久我山は残念ながら2回戦で敗れてしまいました。

一行が宿を発つとき、島田さんは球児たちにこんな話をしたそうです。

「負けたのは残念だけれど、あなたたちは1回戦で勝つという歴史を作った。ちゃんと勉強もしながら甲子園で勝ったのは胸を張っていい。また、うちの宿に泊まりに来てください」

八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50

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