ゴーン被告会見への日本からの反論

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月9日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。ゴーン被告が行ったレバノンでの会見について解説した。

逃亡先のベイルートで記者会見するカルロス・ゴーン被告=2020年1月8日(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

ゴーン被告~会見で日本の司法制度を批判、無罪を主張

中東レバノンに逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が、日本時間の8日午後10時に首都ベイルートで記者会見を開いた。会見のなかでゴーン被告は日本の司法制度を批判した上で、「身の潔白を確信している」と完全無罪を主張。また自らの逮捕、起訴に関しては日産の一部の人間が事件を仕組み検察と共謀したとし、事件には日本政府も関与していると訴えた。

飯田)日産の関係者に対しては実名で挙げていますが、政府関係者に関しては、レバノン政府にも配慮をして挙げなかったということです。

鈴木)誰の名前が出るのだろうかということで、永田町でも話題でした。かなり注目をしていましたが、結局は名前を出しませんでした。この問題は日本の司法制度のあり方や、ゴーン被告が逃亡してしまったということなど、問題点がさまざまにあります。私はこの問題には、政治的な要素が最初からあったと思います。

飯田)根っこの部分でということですね。

【日産、ルノー、三菱自が共同記者会見】記念撮影に臨む(左から)ルノーのボロレCEO、スナール会長、日産の西川広人社長、三菱自動車の益子修会長=2019年3月12日午後、横浜市西区 写真提供:産経新聞社

そもそもフランスが政治的に動いた経緯がある

鈴木)はい。ルノーから日産と合併、吸収という動きが出て来たことに、私は端を発していると思っています。ご存じの通り、ルノーはフランスの国営企業と言ってもいい存在です。

飯田)筆頭株主はフランス政府です。

鈴木)つまりルノーが動くということは、フランス政府が動くということになります。

飯田)そういうことですよね。

鈴木)特に大統領とゴーン被告の関係などもあり、どのように合併吸収を進めて行くのかという話もありました。こういう動きはすぐに出たわけではなく、1年や2年というスパンで動きが出て来ました。まずフランスが政治的に動いて来たわけです。

飯田)そうですよね。現在のマクロン大統領がオランダ政権の閣僚だった時代から、手を突っ込んでいました。

鈴木)政治的と言うならば、まずフランスが動きました。一方で日本の場合、日産は民間企業です。そうなると国対民間という構図になります。

飯田)それは少しいびつですよね。

鈴木)そうして動いて来たときに、日産としては、政治的な後ろ盾がなければ丁々発止は行えないということで、日本政府がどういう形で日産の後ろに立つのか。建前も含めてズブズブな関係では行えませんが、日本政府も動いたところはあります。しかし、建前としてはあくまで「民間企業の話なので、日本は政府としては動きませんよ」という態度を取って来ました。ですから、ゴーンさんが言っていることもわかりますが、ちょっと待ってくれと。日本の政府関係者や政治家が動いたと言うのであれば、この問題をそもそも政府レベルで仕掛けて来たのは、まずフランスです。「その前提はどうなったのですか?」と。世界に向けて「自分が被害者だ」という会見を開くことには違和感があります。

飯田)何が被害者だということはありますよね。

フランスの自動車大手ルノーの新会長に指名されたジャンドミニク・スナール氏(左)と新最高経営責任者(CEO)に指名されたティエリー・ボロレ氏(フランス・パリ近郊)=2019年1月24日 写真提供:時事通信

世界はこの会見に反応し日本への逆風となる~日本の反論のポイント

鈴木)ですが、世界は反応しますよね。すると日本にそういう波が来て、日本がどういう立場に置かれるのか。ましてや、政治家の名前が出るとなると、日本の政治家に対する話もセットで逆風になってしまいます。なかなか難しいところだなと思います。これは政治的な問題なのです。実は、日本政府も建前を通しながら、日産をバックアップするための知恵を使って動いていた…これは間違いのないことです。ですが、そもそも政治的なテーマとして仕掛けて来たのはどこですか? ここがポイントなのですよ。

飯田)それは反論のポイントになりますよね。

鈴木)私はなると思います。

飯田)「あなたは大統領ぐるみでやったではないか」と。なぜ個人の被害者のような面を下げているのだと。

東京拘置所を出る日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告=2019年3月6日午後、東京都葛飾区 写真提供:産経新聞社

日本から反論を発信しなくてはいけない

鈴木)私は8日の記者会見で、どのような質問があったのかすべては見られていません。しかし、例えば私がゴーン被告の会見場にいて、日本のプレスにどうぞと言われたら、「おっしゃることはわかりますが、そもそも政治問題として動いたのはフランスでしたよね。ゴーンさんは大統領とも親しかったですよね。首を切る切らないとか、いろいろとありましたよね。これはどうなのですか? 政治的な動きはフランスではどうだったのですか?」と聞いたでしょう。

飯田)そちらも実名を挙げていただいてけっこうですよと。

鈴木)会見というのは一方的なものですので、冷静に見なければいけません。反論があるならば、私たち日本が発信をして行かなければならないという気がします。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

radikoのタイムフリーを聴く

IR汚職が及ぼす2つの大きな問題

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月9日に放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。IR汚職について解説した。

元政策秘書と元私設秘書の自宅などが東京地検特捜部の家宅捜索を受け記者団から質問される自民党・秋元司衆議院議員=2019年12月9日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

野党がIR汚職をめぐり集中審議の開催を要求

IR(統合型リゾート施設)をめぐる汚職事件を受け8日、衆議院内閣委員会の理事懇談会が開かれた。野党側は真相解明のため集中審議の開催や、逮捕された秋元司衆議院議員の副大臣時代の出張記録の提出などを与党側に求めた。

飯田)国民民主党の大島副代表は「捜査、取り調べが終わり、真実が明らかになるまでカジノ管理委員会は動かさないのが筋だ」と記者団に発言をし、事業の凍結を求めております。

鈴木)やはり予定通り、大きく動き始めましたね。このIRの問題は、2つに分けて考えなければなりません。1つは、事件と捜査そのものがどうなのかということ。もう1つは政治的なテーマとして、「IRはどうなるのか」という2つがあると思います。捜査の面から見ると、私が取材しているかぎりでは贈賄側がかなり話しています。

飯田)中国企業がですか?

鈴木)すべてを話していると言ってもいいくらいです。

飯田)いわゆる完落ちのような。

鈴木)そうですね。司法取引のようなものがあるのではないか、という話が出るほどです。つまりは、贈賄側が多くを話しているので、議員の名前が出ていたり、証拠のメモの有無が前提としてあると見た方がいいと思います。検察も当然、立件できるものは着手して行きます。反対に、話は間違いなさそうだけれど、立件は難しそうだなというものは情報として、ある議員の名前を出してみたりする。そのように事件は広がっていると思います。

秋元司衆院議員の事務所からダンボール箱を運び出す捜査関係者ら=2019年12月19日午後、東京都江東区 写真提供:産経新聞社

秋元容疑者の上の政治家の名前も出て来る可能性も

鈴木)事件そのものの面からみると、検察には近くに大きな人事があるため、そこに絡めた官邸との駆け引きのようなもので、政界ルートに着手しているのではないかと言う人もいます。そこのリアリズムについては、私はわかりません。しかし、秋元容疑者の上の存在である政治家の名前が出る可能性もあるので、事件そのものは横ではなく縦に広がっています。

自民党・二階俊博幹事長 IR事業を巡る汚職事件「捜査静かに見守る」と述べる=2020年01月07日午後、東京・永田町の自民党本部 写真提供:産経新聞社

「利権」という問題からもスケジュールが遅れるIR

鈴木)もう1つは、IRはどうなるのかということです。IRは安倍政権の目玉ですので、何とか3ヵ所を選び、可能な限り早急に進めて行きたい。しかし国会でも議論になっていますが、少しスケジュール感が遅れそうです。IRについては各自治体が手を挙げていますよね。

飯田)そういう立て付けになっていますね。

鈴木)そうなると国会というよりも、手を挙げている自治体の住民の方々が、ギャンブルなどについては議論ができます。

飯田)依存症対策だとか。

鈴木)はい。ですが利権の問題となると、印象は異なります。利権の場合は「こんなことでまた政治家は金を取っているのではないか?」という、違うステージに反感が移っていると思います。地域住民の反対の声が出て来ると、挙手している自治体そのものが悩んで、ブレーキがかかる可能性があります。どちらにしてもIRそのもののスケジュール感は遅れて来ます。

飯田)少しダーティなイメージになってしまうと。

鈴木)そういうことで、今後も見守って行かなければならないテーマですよね。

飯田)北海道や千葉県は降りると表明していますので、そういった検討を行う自治体が他にも出ることは考えられますね。

鈴木)可能性はあります。北海道や千葉はまた他にも理由があるのですが、今回の利権ということで撤退をしようかというところはあるかもしれません。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

radikoのタイムフリーを聴く

Facebook

ページトップへ