日本学術会議問題における2つのポイント

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月26日放送)に慶應義塾大学教授・国際政治学者の神保謙が出演。国会での争点となることが予想される日本学術会議の問題について解説した。

総理就任後初の国会を前に心境を語る菅義偉首相=2020年10月26日午前、首相官邸 ©産経新聞社

臨時国会召集~菅総理初の国会論戦

臨時国会が10月26日に召集され、菅義偉総理は就任後初の所信表明演説を行った。携帯電話の料金引き下げや、デジタル庁の創設、不妊治療の公的医療保険適用などの看板政策に言及。また、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という宣言や、新型コロナウイルス対策、外交・安全保障等についての考えも示した。

学術会議人事問題 「ついに敬意捨て去った」  日本学術会議の総会後、取材に応じる梶田隆章会長(左端)=2020年10月2日、東京都内 ©共同通信社

日本学術会議問題

飯田)今回は新規の法案条約10本に絞っているということで、手堅い運営をしようと政府側はしており、野党は日本学術会議の話をメインに据えようとしているという構図です。神保さんは学者でもいらっしゃいますが、学術会議の問題についてはどうお考えですか?

神保)政府からすれば、思わぬ形で争点になってしまったというところでしょう。杓子定規に言えば、日本学術会議は総理大臣が所轄して、国の経費を使っているのだから、「人事を管理できないということはどういうことか」という発想だと思います。学術会議側からすれば、活動は政府から独立しているのだということ。そして、今回任命を拒否された6名の学者は、私から見ても、学術的に尊敬すべき方々で、「このような扱いを受けるべきか」ということに関しては、私も思うところはあります。

菅義偉首相との会談を終え記者団の取材に応じる日本学術会議梶田隆章会長=2020年10月16日午後、首相官邸 ©産経新聞社

日本学術会議問題における2つのポイント~政権が変わっても組織は継続する

神保)これまで論点になっていないポイントを2つ提起します。1つは、学術会議の委員自体は非常勤の国家公務員であるわけです。税金を使って活動するということをどう考えるかなのですが、我々は民主主義であるということですので、民主主義のもとで、政権交代があるということです。10年後は違う政権かも知れない。けれども、組織は継続するということが大きなポイントだと思います。

学術会議任命拒否問題・野党合同ヒアリングで発言する元文科事務次官の前川喜平氏=2020年10月13日午後、国会内 ©産経新聞社

「税金を使って政府批判をするべきではない」ということは議会制民主主義に反する

神保)2つ目は、政府に反対する人も、等しく納税者なわけです。これはシステムから言えば、公共サービスを受益する権利があります。野党は政権批判をしていますけれども、その給料や歳費は税金から出ているのです。「税金を使って政権批判をすることがいけない」という論理は、議会制民主主義にはそぐいません。そこは広い懐を持つべきだし、そもそも学術会議は行政執行機関ではないから、民主主義のために広い基盤を使うということを踏まえるべきだと思います。

自民党役員会に臨む二階俊博幹事長(左)と菅義偉首相=2020年10月6日午前、東京・永田町の自民党本部 ©産経新聞社

学者が政治的な立場を取るには、それなりの覚悟は必要

神保)ただ、2つ目は、だからと言って、学者が政治的な見解を表明して、政府との関わりにおいて、まったくダメージがないと考えるのも、問題です。現在、米大統領選挙の最中ですが、どちらの大統領が勝つかということは、それを支持する学者やシンクタンクにとって死活的な問題で、これはまさに別当して4年間の生活を決めるという覚悟のもとに、政治的な立場を決めます。日本は大統領選挙のようなシステムではないですが、政治的に立場を取るということは、そのくらいの緊張感を持ってするべきだということを、踏まえなければいけないと思います。

飯田)学術会議そのものの運営や、推薦者をどうやって決めていたのかという話まで及んでいますが、そもそもの部分が置き去りになっているかも知れないですね。

神保)そうですね。学術ということは、日本の文化的、知的水準をサポートしなければいけなくて、これに対して政府が支援するということ自体は担保すべきですが、政府の政策形成や、戦略にどのように役立てて行くかという視点に関しては、また別途設定するべきでしょう。「総合科学技術会議」や、今度改変されましたが、「未来投資会議」などで役立てて行けばいいので、「日本学術会議」は少し距離を持って組織すべきものではないかと思います。

政治 与野党国対委員長会談 日本学術会議新会員候補6人の任命拒否問題で会談=2020年10月6日午後、国会内 ©産経新聞社

学者が軍民に関わる技術開発に携わることに圧力をかけるのは行き過ぎ

飯田)他方、今回の議論の論点の1つとして、2017年に出された安全保障関係の研究に関する見解など、いろいろ指針が出ました。一概に禁止してはいないのですが、事実上は防衛省からお金が出た研究はやるべきではないということになっているようですが、この辺りがかえって学問の自由を縛っているのではないかという議論があります。その意思決定が、学者さん全体の意見ではなかったのではないかということです。

神保)私も安全保障を専門にしているので、学術会議が安全保障に関する研究や、デュアルユースという、軍民に関わる技術開発に携わることをディスカレッジする、やらないようにするという圧力をかけるということがあるとすれば、これは行き過ぎだと思います。学術会議が一定の経緯を示すことは、もちろんやっていいことだと思いますが、それが研究者の研究活動を縛るのは行き過ぎだと思います。

飯田)運用上の部分というのが行き過ぎたかも知れないし、それがあるとすれば是正するべきだということですね。

神保)そうです。安全保障の考え方というのは多角的なものであり、それは「戦争目的」、「平和目的」というように、純然と区分けするような領域ではないとするなら、具体的な論点に絞って判断して行くことを妨げるべきではない。学術会議の問題は、その議論の入り口を閉ざすような声明を出してしまったということだと思います。

飯田)あの文言であれば、どうとでも解釈できてしまうところもあります。

神保)それで各大学に指針を設定するというのは、明らかにやり過ぎだと思います。

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海自ヘリ2機墜落事故はなぜ起きた?

伊豆諸島東方の太平洋で海上自衛隊の哨戒ヘリコプター2機墜落した。423「くにまる食堂(文化放送)」元NEWS ZEROのキャスター村尾信尚さんが、なぜ墜落したのか?そもそもこの訓練はどういったものなのかを解説した。 

村尾「そもそもどういう訓練をやってきたのか。海上自衛隊出身で元海将補だった佐々木孝博さんにお聞きしたんです」

邦丸「はい、はい、はい」

村尾「まず日本という国は島国で日本の周辺海域は各国の潜水艦の脅威が増大しているというんです。いかに潜水艦を素早く見つけて追跡するということが大事なんですけれども、ここで重要なのは潜水艦って海の中を潜ってますから昼も夜もない。だから夜もずっと動き続けている。そうなると潜水艦を見つけるための訓練というのは夜間もやらなくちゃいけない」

邦丸「はい、はい、はい」

村尾「夜間に捜索するというのは目に見える範囲が著しく低下するらしんですね。ライトを付けたとしても昼に比べると全く視界がきかず危険なんだそうです。もう1つは潜水艦を探知するにはソナーという音波を出す装置を紐みたいなものを出して海の中に入れる。そうやって探すんですが、複数のヘリコプターで探したほうが精度が高くなりますからヘリコプター同士なるべく高度を変えながら飛ぶんですけど、それでも今回の場合は接触してしまったのではないかと言われてるんです」

邦丸「今、現在報道されている中でいうと、近づいちゃったヘリ同士が“危険だよ”っていうシグナルが出るはずだったんだけど、そのシステムが作動しなかった」

村尾「そういう報道がありますけど、まだ真相はわからない。この訓練の重要性なんですけれども、第2次世界大戦後、潜水艦の脅威がますます増している。さらに潜水艦の原子力化が進み、しかも静かに動く。だから探知されず素早く動ける。これは海の上からだとなかなか探索できない。そうなるとヘリコプターからソナーを海中に入れて探索するのが一番効果的ということで今、各国ヘリコプターを搭載できる船をどんどん建造している。そんな中で起きた事故だったんです」

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