アフターコロナの恐怖~スペイン風邪の10年後に起こった大恐慌

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。飲食店の取引先などに支給する最大40万円の中小事業者向け一時金の概要を経産省が発表したニュースについて解説した。

2021年1月13日、発言する菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202101/13corona.html)

タクシーや旅館、飲食店の納入業者などにも最大40万円の一時金を支給へ

新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言を受け、経済産業省は1月14日、飲食店の取引先などに支給する最大40万円の中小事業者向け一時金の概要を発表した。食品や割り箸などを飲食業に提供する事業者と、農家や漁業者の他、人の流れが減少したことで影響を受けた事業者も対象とし、旅館や土産物店、観光施設、タクシー会社などを想定している。

飯田)2021年1月、または2月の売り上げが、前年の同じ時期と比べて半分以上減ったことが条件になるということです。

宮家)私は専門家ではありませんが、対象を拡大したということは評価すべきだと思います。しかし、おそらくこれだけだと十分ではないですよね。1990年代辺りから経済のサービス化ということが言われて、製造業よりサービスの比重が増えて来て、いまのサービス産業があるわけですが、コロナというのは、サービスを徹底的に叩きましたよね。

【東京都らが緊急事態宣言を要請】面談後、報道陣の取材に応じる小池百合子都知事(右)、西村康稔経済再生担当相=2021年1月2日午後、東京都千代田区 ©産経新聞社

痛手を受けるサービス業~経済格差がさらに広がる可能性も

宮家)私が心配するのは、もちろん感染の拡大、患者さんの増加というような問題もありますが、どれくらい続くかわからないコロナ禍が経済に与える影響、特に、経済格差が広がる可能性を心配しています。こんな状況なのに株はいま2万8000円なのでしょう。素人なので「なぜなのか」と思ってしまうのです。ということは、ここで儲かる人は儲かっていて、そうでない人との差がどんどん広がっているということです。

飯田)株価は上がっていますね。

宮家)トランプ現象というのも、「忘れ去られた白人労働者層の怒り」が爆発した結果なのです。日本は幸いなことに、ヨーロッパやアメリカと違って、それほど格差が広がっているわけではない。しかし、不満がないわけではないと思います。やはり苦しい生活をされている方がたくさんいて、それが確実に増えているのです。それを考えると、サービスが痛手を受けているときに、何らかのことをしなくてはいけないというのは、正しい。しかし、これでどのくらい回復できるかというのは、私にはよくわかりません。

飯田)確かに、雇用の受け皿の部分でも、サービス業、特に飲食や宿泊が大きな比重を占めていて、そこが大打撃を受けたということは、かなり影響を与えますよね。

宮家)日本の社会はどちらかと言うと安定している方だし、民度も高いし、それほど深刻に考えていませんが、全体的な流れを見ると、コロナが一巡したところで大きな経済のダメージが全国で起きたならば、必ずドロップアウトしてしまう人たちが出て来るはずなのです。そのような人たちをどのようにして少なくするか、救うか、ということが日本社会の将来の安定に関わって来ると思い、私は非常に心配しています。

新型コロナウイルスの変異種発生を受け、欧州から到着した旅客に防護服で対応する検疫担当の職員 撮影::2020年12月28日午前、成田空港 ©共同通信社

スペイン風邪流行の10年後に起こった大恐慌

飯田)宮家さんは、以前から外交や安全保障の面で、1930年代に近いのではないかというお話をされています。あの時代は確かに経済の面で言うと、例の「暗黒の木曜日」という大恐慌が起こった。その部分にも近づいて行っているのではないかという嫌な予感がしますね。

宮家)あのときも、その10年くらい前にスペイン風邪があったのですよね。

飯田)そうですね。

宮家)そのスペイン風邪が大恐慌に直接つながったわけではないのですけれども、第一次世界大戦をやっているときにスペイン風邪があって、大きな傷ができたのだと思います。それが大恐慌という形で追い討ちをかけられた。そこで不満が出て来て……という流れは、完全に同じことが繰り返されるわけではないけれども、歴史は韻を踏むわけです。同じことが繰り返されるということを心配しているわけではありませんが、人間はそれほど変わりませんからね。そこが心配ではあります。

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朴槿恵前大統領の実刑確定~なぜ韓国では大統領がまともに引退できないのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。韓国の朴槿恵前大統領に懲役20年の実刑が確定したニュースについて解説した。

韓国の朴槿恵大統領(韓国・ソウル)=2016年11月29日 AFP=時事 ©時事通信社

懲役20年の実刑が確定した韓国・朴槿恵前大統領

収賄などの罪に問われた韓国の朴槿恵前大統領に14日、懲役20年の実刑が確定した。前任の李明博元大統領に続き、長期の服役となる。韓国の政界では2022年3月の大統領選を見据えて、早くも赦免、恩赦の是非が議論されているということだ。

飯田)朴さんは懲役20年、いま68歳でいらっしゃるということですので、88歳までですか。

演説する文大統領=2020年09月19日 YONHAP NEWS/ニューズコム/共同通信イメージズ ©共同通信社

まともに引退した大統領がいない韓国~健全な政治の姿ではない

宮家)私と同じ歳ですからね、あと20年入っているというのは普通考えられないですよ。前大統領ですよ。世の中には大統領で自分に恩赦を出す人もいるかも知れませんが、それは置いておいて、韓国の大統領の任期が5年になって、一期になってしまったので、レームダック化が激しくなっています。民主主義がうまく機能しているという言い方もあるかも知れませんが、韓国にはまともに引退した大統領がいないではないですか。捕まるか、いなくなってしまうか、どちらかでしょう。

飯田)そうですよね。

宮家)それは健全ではないですよね。やはり恩赦はやらなくてはいけないと思いますが、もう1度前大統領を安易に訴追するようなやり方を考えないといけないのではないでしょうか。こんなことをやっていて、エネルギーがすべてその政争の方に向いてしまっている。でも大統領には国民のためにやらなくてはいけないことが他にあると思います。

飯田)分断がより進むという方向に行ってしまう。

宮家)こんなことを繰り返していて、健全な民主主義が定着するのだろうかと思います。もちろん、悪いことをしたならば仕方ありません。しかし、こういうお金の問題は、日本もそうですが、透明性が大事です。政治家はお金が必要ですから、お金を献金するのは、当然なのです。政治家がお金をもらうのが、すべて悪いということではない。アメリカでも多くのお金を集めていますよ。

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた、新型コロナウイルスに関する記者会見でのトランプ米大統領 2020年5月11日 ワシントン (Photo by Brendan Smialowski / AFP) AFP時事 ©時事通信社

アメリカでは「どの業界の誰がいくら払ったか」を公表

飯田)スーパーPAC(パック)など、いろいろな方法で。

宮家)アメリカが他国と違うところは、「どの業界の誰がいくら払ったか」がすべてわかるところです。公表するわけです。お金を貰っていますから、議員も議会のなかで、特定の業界を徹底的に擁護します。お金を貰って擁護して、それを公表して、あとは選挙民が判断するのです。日本の場合、韓国の場合も同じかも知れませんが、秘密にやってしまったら、それはフェアではない。それをすべて公表して、最終的に「それがおかしいお金なのかどうかを選挙民が判断する」というのが、本来民主主義の正しい姿だと思います。そうしないと、お金を集めること、もらうことがすべてダメになってしまう。そうなれば、韓国ではみんなアウトですよ。

飯田)そうですよね。そうでなければ、もうすべて公費でと。「公務員なのか」という話になってしまいますよね。

「三・一独立運動」を再現(さいげん)した行進に参加した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(だいとうりょう)(中央左)=2018年3月1日、ソウル(共同) ©共同通信社

透明性を確保するような法律をつくるべき

宮家)アメリカでは、大統領選を公費でやることもトライしたけれど、現実にはそんなに簡単ではないですよね。政治とお金の話は永遠の問題、課題ではあります。しかし、私は透明性がいちばん大事だと思います。真の透明性を確保するような法律をつくることによって、すべて曝け出して、その上で、この人はいい政治家だったのかどうかを選挙民が次の選挙で決める、というのが筋だと思います。

飯田)そういう仕組みをつくらないと、再発防止にならないですよね。ずっと繰り返されているわけですものね。

宮家)そして、怨念だけが残るわけですから、必ず次はやり返します。そうすると、この報復の連鎖は絶対に止まらないではないですか。

飯田)文在寅政権はやり返せないようにするために、検察改革とか、司法の方を改革しようとしていますね。

宮家)あれもいかがなものですかね。法治国家とはとても思えないし、その弊害というのは変なところで日本にも悪影響が出て来ています。最近も変な裁判の判決が出て来たわけですから。ということは、やはりそこは何十年か試行錯誤をやって、韓国の民主主義も見直すべきところは見直して、少し成熟して行かれたらいいのではないかと思います。

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