台湾有事の際の戦略がない日本 「台湾有事は日本有事である」ということを踏まえた議論が必要

ジャーナリストの須田慎一郎が8月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米議会の超党派による台湾訪問について解説した。

台湾の蔡英文総統(台湾・台北)=2020年8月12日 EPA=時事 ©時事通信

アメリカの超党派議員団が台湾を訪問

台湾外交部は8月14日夜、アメリカ議会の超党派の議員団が台湾に到着したと発表した。15日には蔡英文総統と会談し、安全保障などについて意見交換する予定。

飯田)8月上旬にはペロシ下院議長が台湾を訪問しました。矢継ぎ早な感じに見えますね。

須田)中国側の対応も的外れなものなのです。大統領府に対して抗議しているのですが、アメリカの場合は中国と違って明確に三権分立が成り立っていますから、行政府が議会に対してクレームをつけたり、「止めてくれ」とは100%言えないというような状況です。議会、あるいは議員が独自の行動を取っているということです。

中国への牽制の意図もある ~ペロシ氏訪台の際の軍事演習は以前から計画されていたもの

須田)とは言え、台湾を訪問することに対して、中国からの圧力あるいは挑発が目立ってきています。流れとしてはペロシ下院議長が台湾を訪問してから、あのような大きな軍事演習を行ったと言われていますけれども、軍事演習は「明日からやるぞ」と言ってできるものではありません。

飯田)準備もなくできるわけがないですものね。

須田)軍事演習を行うということは、戦争することと同義語なわけです。兵力や武器・弾薬などを調達しなくてはならないことを考えると、何ヵ月も前から準備しているはずです。それを察知しているからこそ、今回のような議会の動きが出てきている。ある意味で、中国への牽制(けんせい)と言えるのではないでしょうか。

日本は台湾に対して何ができるのか

飯田)ペロシさんも台湾を訪問したあと、韓国や日本に訪問して、各国に対しても「訪問すべきだ」と呼びかけていました。その辺り、日本からの動きは見えてこないですね。

須田)鈍いですよね。訪問しても日本が台湾に対して何かできるかと言うと、何の法律もないからできないのです。台湾に対して何かをやる、例えば武器などの軍事的な支援ではなく、それ以外のことでも、なかなかできないというのが実態ではないでしょうか。

台湾有事の際の戦略がない日本

飯田)アメリカの場合は、そもそも台湾関係法という法律があって、それにプラスする形でいろいろな法律をつくってきている実績があります。

須田)日本でも「日本版台湾関係法」をつくらないと、正式には動けないということになると思います。

飯田)何かあったときに日本人をどうやって逃がすかなど、オフィシャルな形で話そうと思っても、台湾と日本の行政府同士で話をすることは難しくなってしまうわけですよね。

須田)しかも台湾有事は日本有事と言われるように、南西諸島や沖縄に対して大きな影響を及ぼすわけです。その辺りをどう連携付けて対応していくのかという戦略が、日本にはまったくない状況だと思います。

北京の清華大学で講演するペロシ米下院議長 同議長は中国での人権問題に対する厳しい態度で知られている 撮影日:2009年05月28日 EPA/ANDY WONG/POOL EPA=時事

台湾と中国には明確なレッドラインがある ~米議会も大統領府もレッドラインの範囲のなかで行動

飯田)現地台湾の台北事務所、事実上の大使館ですけれども、ここにはいわゆる駐在武官、防衛駐在官がいます。しばらく前まではOBの方が行っていて、今回、初めて「背広組を出す、出さない」という話が報道されているくらいです。ここも意思疎通ができないですものね。

須田)弱腰ですよね。台湾と中国に関しては明確にレッドラインがあって、台湾独立派と関係を深めたりバックアップをしたりすると、中国サイドはいきり立って、場合によっては軍事攻撃をしかねないことは明確です。逆に考えると「できる範囲」はあるはずですから、そこはやっていくべきだと思います。

飯田)中国側は、いまの蔡英文政権なども独立派だと言おうとしていますけれども、蔡英文さんの発言を見ると、基本的には「現状維持」を言っていると思うのですが。

須田)しかも台湾のなかでも独立派とは連携していません。アメリカ議会、大統領府も独立派に対して何かメッセージを送るとか、支援をするということは一切やっていません。レッドラインの範囲のなかでの活動だと思います。

憲法9条を改正しない限り台湾に対して何もできない日本 ~台湾有事は日本有事であるということを踏まえて議論するべき

飯田)アメリカ議会ですけれども、上院で台湾に関する新しい法律である「2022年台湾政策法案」が上程され、いま審議中だということです。「台湾をNATO非加盟の主要な同盟地域に指定する」という、かなり踏み込んだ表現になっているという話もあります。

須田)日本はどういう立ち位置を取るのかということなのだけれども、そう考えていくと、やはり憲法改正を考えざるを得ないのだろうと思います。特に9条です。9条の交戦権の否定について、交戦権とは何も戦争する権利のことを言っているわけではなく、戦時下に認められている諸権利のところなのです。

飯田)諸権利。

須田)専守防衛の自衛のための範囲内でしか、日本の場合は諸権利が認められていないのですから、例えば臨検や相手国の領土への進出、占領などは、普通の国にはあるのです。交戦権のなかに含まれているのですけれども、日本にはありません。「交戦権の放棄」をどう捉えていくのか。いまはやれる範囲のギリギリのところまでいってしまっていますから、ここは「台湾有事が日本有事だということを踏まえて、どこまでやるべきか」を議論するべきだと思います。

集団的自衛権と個別的自衛権の区別がない日本

飯田)そう考えると集団的自衛権というか、アメリカも台湾に対して「アライ(ally)」という言葉を使うのは、ヨーロッパにおけるNATO的な複数の国で地域を安定させていくという仕組みが必要だと考えて、動き出していると見た方がいいですか?

須田)日本の場合は特殊な議論の立て方をしていて、世界的な標準で考えると、集団的自衛権と個別的自衛権の区別がないのです。

飯田)そもそも論として。

須田)すべて自衛権なのです。ただ日本の場合は、先ほど申し上げた交戦権の範囲のなかで個別的自衛権と認められるところしか選んでいないものですから、そこで差が出てきてしまう。これを見直していかないと、台湾との連携は取れないと思います。

飯田)逆にここが弱いから、「そこを突けばいいではないか」と相手に思わせてしまいますよね。

須田)対応できる範囲は極めて限定的です。日本の自衛隊も。

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馬場氏の対立候補が出てきた日本維新の会の「成熟度」 維新初の代表選

ジャーナリストの須田慎一郎が8月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。8月14日に告示された日本維新の会の代表選挙について解説した。

「日本維新の会代表選」立候補者による街頭演説会(右から)梅村みずほ氏、足立康史氏、馬場伸幸氏=2022年8月15日 大阪市中央区 ©産経新聞社

日本維新の会の代表選挙

松井一郎代表の後任を選ぶ日本維新の会の代表選挙が、8月14日に告示された。立候補したのは足立康史衆議院議員、馬場伸幸共同代表、梅村みずほ参議院議員の3人で、27日の臨時党大会で新たな代表が選ばれる。

飯田)代表選挙は結党以来、今回が初めてということです。松井さんが市長の任期で政界引退を表明していたため、それを受ける形になるわけですが。

須田)初の代表選挙ということなのですけれども、大阪の地方政党だった維新の会が全国政党になっていく、あるいは国政政党になっていくなかで、これまでは代表選挙を行って党内で対立するよりも、立ち上げメンバーが引っ張ってきた。そのやり方は決して間違っていなかったと思うのです。

馬場氏の対立候補が出てきたということは日本維新の会が成熟化した証

須田)しかし、その過程のなかで存在感を示すために、悪い意味ではないのですが、トリックスターとしてかなり「目立つ」ことに軸足を置いた党運営をしてきた。しかし、これからは安定期に入り、地に足を着けた形での党運営が必要なのだろうと思います。そういう時期にもう入ってきているのでしょう。

飯田)リーダーの個性よりも、仕組みできちんと統治していくという。

須田)馬場さんは松井さんが後継指名的なことをされた方なので、1人しか出てこなかったら日本維新の会の存在価値が失われてしまうはずなのですけれども、足立康史さん、梅村みずほさんという対立候補が出てきました。きちんと代表選が行われるということも、政党が成熟化した証ではないかなと思います。

飯田)松井さんは、「やるからには本格的な論戦をして血みどろになってでも」という覚悟で出て欲しいというような叱咤激励もされています。

維新の会が大スキャンダルに見舞われても必ず当選する馬場氏 ~自力がある

須田)「日本維新の会」を含めて「維新の会」は、風頼みでやってきている政党ではないのです。きちんと大阪においては府議会議員、市議会議員などが連携を取り、国会議員とも関係性を保ってやっていく。例えば国政選挙になると府議会議員、市議会議員の活動量は大きいですし、きちんと実績を市議会、府議会で出してきたからこそ、有権者からも支持されている政党なのです。

飯田)実績を出してきたから。

須田)馬場さんは、もし維新の会が大スキャンダルに見舞われて、国民が全員背を向けたとしても、必ず当選するでしょう。堺で選挙にとても強いのです。それだけ普段の活動が豊富なのだと思います。それこそが維新の議員の持ち味です。この番組にも何度か登場していただいたことがあるけれども、話を聞いていてもあまり面白くないではないですか。

飯田)いやいや。発言は慎重ではありますね。

須田)あまりエッジの立ったことを言わないでしょう。ただし自力があるという点では、こういう人が次の代なのかなと思います。足立さんが悪いとか梅村さんがダメだというわけではないけれども、やはり松井さんの思うところは、そういう意味で何となく伺えます。

統一地方選挙で問われる維新の会の真価

飯田)2023年は国政選挙はありませんが、統一地方選があります。

須田)そうなのです。

飯田)自力というところを考えると、そこがむしろ重要になってきます。

須田)今後、近畿においては京都や奈良などに進出していく、あるいは東京でどれだけ議席を獲ることができるのかを考えると、日本維新の会、大阪維新の会の真価が問われるのではないかと思います。

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