笑福亭仁智、再開の天満天神繁昌亭「安心して笑っていただくのが最低条件」『#ラジぐぅ』

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため3月3日から閉館していた天満天神繁昌亭が、7月1日から再開します。6月29日(月)放送のラジオ大阪(OBC)の昼のワイド番組『OBCグッドアフタヌーン #ラジぐぅ』には、落語家で上方落語協会会長を務める笑福亭仁智さんが出演し、自粛中の苦悩と繁昌亭再開に向けた意気込みを語りました。

久しぶりのスタジオゲスト

緊急事態宣言発布以来初めてのスタジオゲストに笑福亭仁智さんを迎えた出演者の西川かの子さんと桂三語さん。隣に座る仁智さんと三語さんは少し距離を取り、向かいの西川さんとはアクリル板を挟んでの会話ですが、それでも久々のゲストを迎え、スタジオは高揚した雰囲気です。

仁智さん「うん、いいですね、私もzoom会議とか、その前はメールとか電話とかありましたけど、やっぱり駄目ですね。近い距離は(感染防止のために)ダメですけど、根本的に顔見てしゃべらんと。(自分も)メールしますけど、メールは情報を伝えるのはまぁええけども、気持ちを伝えるのはダメ。言葉の上手い下手で どう伝わるか分からへんから」

西川「ニュアンスって大事ですよね」

仁智さん「大事でしょ。相手はどう取るか分からないわけですからね。私らはね、たいがい怒ることのほうが多いですよね。文章見て、何を考えとんねんという(ふうに思って怒ってしまいます)」

そんな仁智さんに、三語さんが「師匠、(落語ができなくて)ストレスたまってますか?」と聞くと「たまってるねぇ、ホンマたまってる」とうなずきました。

仁智さん「私の場合は、最後に高座に上がったのは3月3日でしたね。そこからずーっと休みで、4・5・6(月)。で、この前ね、東京の末広へ呼んでいただいて。東京が6月から寄席が始まったんですよ。(そこで)2日間出して頂いて、そっからまた、(大阪でも)いよいよ繁昌亭が(始まります)。(予定どおり7月1日に再開できれば)数えたら121日ぶり」

長い自粛期間とようやく見えてきた活動再開に想いを巡らせました。

上方落語は「休業要請対象外」?

活動自粛期間中、自治体の休業要請外支援金の申請について妻と協力してまとめ、上方落語協会に共有したという三語さんを、仁智さんが「えらいもんやね、この子はすごいですよ。支援金の書き方とか全部教えてくれましたから」と評価すると、本人は「あんまり覚えてないですね。奥さんが僕がやってるように見せかけてくれてますわ」と笑って謙遜しました。

この支援金について、仁智さんは抱えている思いがあるようです。

仁智さん「3月からずっと121日間落語してへんのやで。ホテルも居酒屋さんも確かに大変だったよね。そやけど(お店は)開いてたやん。私らずっと休んでて、でも、休業要請支援金の枠外やねん。上方落語協会は、天満天神繁昌亭を3月3日からずっと閉めてましたわ。去年の7月にリニューアルオープンしてこれからやーいう時に、ライブハウスでクラスターが発生して、もう自粛ムード(になってしまった)。3蜜(を避けるようにって)言うたから、そういう意味で言えば、劇場もお客さんが集まってそういう(3蜜になる)空間ですから「やめましょう、自粛しましょう」の先駆けやと思って、先鞭をつけたいう気持ちで(自粛を)啓蒙の一助になるようにやって、(新型コロナが)早く終息すればと言う気持ちでやって。ところがこの休業要請支援金の対象外やねんて、上方落語協会は。繁昌亭休んでるのに(支援金を)くれはれへんねんて。なんでしょうね。 本当にがっくりしてるんです」

一気にそう話した仁智さんは一息つくと「まぁ、これはもういいんですよ、またなんとかなるでしょう」と話題を7月1日の天満天神繁昌亭の再開に戻しました。

「安心して笑っていただくのが最低条件」趣向を凝らしての再開

121日ぶりに再開予定の天満天神繁昌亭。8月末までは、時間を短縮して、日替わりで6組の演者が出演するといいます。

仁智さん「今までみんな、家でたまってる落語のパワーをぼーんとぶつけてもらおうと(思っています)。きっとみんな一生懸命稽古してるはずですから。とりあえず、生きてたよー元気でっせーって。生存確認みたいなもんですわ。」

仁智さんの声からは再開を心から喜ぶ気持ちが伝わってきます。

もちろん、感染症防止対策にも万全を期し、216席をガイドラインにしたがって102席に減らし、館内は昨年7月に行った設備のリニューアルにより常時換気されるそうです。また、府の大阪コロナ追跡システムの導入や、手指の消毒、検温も徹底しておこなうといいます。

仁智さん「検温がね、また楽しみです。(笑福亭)鶴笑君に人形作ってもらってね、これがまた面白い。可愛らしい。もう何回でも検温してもろて。来ていただいて、安心して笑っていただくというのは、もう最低の条件ですからね」

随所に来場者を楽しませるための趣向を凝らした繁昌亭は、来場できない人も楽しめるよう、オンライン配信も行うそうです。

詳しくは天満天神繁昌亭のホームページをご覧ください。

今やすっかり定着した噺家のオンライン配信については、可能性も感じるという仁智さん。

仁智さん「若い噺家さんがテレワークいうて、2月ぐらいから(オンライン配信を)始めました。その時は全然思えんかってんけど、4月5月と自粛が長くなるにつれて、これからアフターコロナはちょっと変わるんじゃないかと(思い始めた)。転んでもただ起きんと(ただ起きるだけではなくて)、ピンチをチャンスに変えなあかん。落語ファンの方もそういうライブ配信に慣れてきたっていうか、配信ってひょっとしたら新しいビジネスのチャンスなんじゃないかと、やってみる価値はあるなと思いまして。(オンラインなら)どこからでも見れるねん。」

西川「本当にそう。通常216席しかないけど500人でも1000人でも見れるって事なんですから」

「1万人見たらどないしようかしら思ってね。」と笑う仁智さん。

最後にファンに向けて、「ライブ、生が一番やなと(やっぱり思います)。出るほうもそうなんですが、見ていただくお客さんもそうだと思います。ですから、リアルの繁昌亭も是非とも見ていただいて、来れない事情のある方はオンライン繁昌亭で(ご覧ください)。一粒で二度おいしいという落語。今後ともよろしくお願いします。 」とメッセージを送りました。

OBCグッドアフタヌーン! #ラジぐぅ
放送局:OBCラジオ大阪
放送日時:毎週月曜~木曜 11時30分~14時00分
出演者:(月)西川かの子、桂三語、(火)高山トモヒロ、池田淳子、(水)石田靖、森川由香、(木)浅越ゴエ、松本雅子
番組ホームページ
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※該当回の聴取期間は終了しました。

自動車修理工場の女性社長が「自動販売機のハンバーガー」を開発

トラックなどのドライバーさんのなかには、昭和の頃は、よく幹線道路沿いにあった自動販売機のハンバーガーで、お腹を満たした経験がある方もいらっしゃることでしょう。じつは最近、令和版の「自動販売機のハンバーガー」がじわりじわりと増えているんです。今回は、この自動販売機のハンバーガーを手掛けている自動車修理工場の方のお話です。

ハンバーガー自販機と小林さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

東京・新宿から中央道の高速バス、または新幹線と飯田線の特急「伊那路」を乗り継いで、およそ4時間の長野県飯田市に「ガレージいじりや」という自動車修理工場があります。敷地内には、トヨタ・パプリカ、マツダ・シャンテをはじめ、昭和の車がズラリ。しかも、工場の前にある懐かしい自動販売機コーナーが目を引きます。

お店の代表・小林由季さんは、埼玉県出身の41歳。小さい頃、ちょうどミニ四駆が大人気だったこともあって、クルマに興味を持ちました。19歳でオートマチック車限定の運転免許を取ると、街を颯爽と駆け抜けていった、白い「マツダ・RX7」に心躍ります。

『カッコいい!あのクルマに乗りたい!!』

そう思った小林さんは、知り合いの自動車関係者に相談すると、軽くあしらわれました。「RX7? アンタ、あのクルマ、マニュアルだし、ロータリーエンジンって知ってるの? 乗りたいなら、自分で自動車が整備出来ないと、まず無理だよ」

愛車のマツダ・シャンテと小林さん

マニュアルもロータリーエンジンも、全くチンプンカンプンだった小林さんですが、乗りたい思いが高まって、マニュアルで免許を取り直し、自動車整備士を目指します。男社会の自動車修理工場で、厳しい試練を乗り越えて、見事、整備士資格を取得。縁あって信州に移り住むと、趣味で借りたガレージで、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えを請け負ったことをきっかけに、2010年、自ら自動車修理工場を立ち上げました。

やがて、工場のスタッフが昭和43年製・スバル360の修復を成し遂げたことから、小林さんも古い車に興味を持ち、旧車が続々持ち込まれて、車雑誌にも注目されます。あれよあれよと、旧車好きならまず知らない人はいない工場に成長。小林さんは雑誌連載企画で、旧車でレトロな自動販売機巡りをすることになりました。

ところが、ここで小林さんは大変なことが起きていたことに気付くんです。

『大きな道路沿いにたくさんあったハンバーガーやうどん・そばの自動販売機コーナーがどんどん無くなっている……』

24時間営業のコンビニエンスストアが増えた一方で、自動販売機は経年劣化、オーナーさんの高齢化も進んで、自動販売機コーナーは次々と姿を消していたんです。そんな折、小林さんはお祖父さまを亡くしたことで、小さい頃、自動販売機のハンバーガーをなかなか買ってもらえなかった記憶がよみがえりました。

『あの思い出の、自動販売機のハンバーガーを残したい。ならば、ハンバーガーを作っている食品メーカーを助けよう!』

自動販売機コーナー

そうひらめいた小林さんは、さっそく自動販売機用のハンバーガーを仕入れます。自動車工場の前に冷蔵機能付きの自動販売機と電子レンジを設置して販売を始めると、ちょうどコロナ禍と重なったことで、テイクアウトのニーズをつかんで大繁盛。各地のレトロ自動販売機で売れたハンバーガーのおよそ4倍を1台で売り上げました。

小林さんはもうイケイケドンドン、自動販売機を増やして各地で大人気となりますが、あまりの売れ行きにハンバーガーメーカーのほうが悲鳴を上げてしまいます。安定した納品が出来ないので、もう勘弁してくれませんか、と言われてしまったのです。代わる製造業者も無く、困り果てた小林さん、思い切りました。

『ハンバーガーを作ってくれる会社が無いなら、自分の会社で作ってしまおう!』

もちろん、小林さんは自動車整備士ではありますが、食品の知識は全くゼロ。体当たりで、様々な食品製造に関する許可や食品衛生を、片っ端から学んでいきます。食品部門の「いじりやフードサービス」も立ち上げ、ハンバーガーを作ってみましたが、パンはパサつき、肉の脂は溶け出し、レタスなどの生野菜は安全性の面で使えません。しかも、自動車修理工場と食品工場の二刀流で、睡眠時間3時間の日々が続きました。

ふんわりバンズのチーズバーガー

それでも試行錯誤を繰り返し、味やソースにもこだわったチーズバーガーに辿り着いて、安定した製造、出荷も出来るようになりました。今は、全国で39台の自動販売機が元気に稼働中。自動車修理工場生まれの自動販売機とハンバーガーは、各地域で話題になっています。

「気合と根性でやってきました」と笑う小林さんですが、やりたいことはいっぱいです。

「レストランもやってみたいですし、クルマのテーマパークがあっても面白いですよね。ハンバーガー片手にみんなに巡ってもらって。夢は大きく持てば、きっと叶います!」

「RX7に乗りたい」から始まった小林さんの夢、今はまだ、その途中です。

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