90年代の政変は理屈の世界ではなかった

ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時~17時、火~金曜日15時~17時35分)、10月16日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演。公明党の連立離脱、今後の政局について解説した。

常井健一「(公明党の連立離脱について)私はあまり驚いていなくて。2月の『(長野智子)アップデート』で、埼玉県八潮市の道路陥没事故を地盤とする公明と創価学会の我慢はピークに達している、という話をしました。なぜなら公明党は清潔政治を掲げていて、『大衆とともに』をモットーにしていた政党ですから。自民党の悪しき体質を根っこから改善させようと、もがいていた。それが60数年の歴史でもあるんですね」

長野智子「はい」

常井「最近の国会論戦を聴いていても、安倍政治との決別と言い切ってはいませんが、そうしたことをしかけたくてウズウズしているように見えました。そこで『公明党は時代の変化に合わせて、いまこそ原点回帰すべき』ということを2月に問題提起しましたね」

長野「いま聴くとすごく味わい深い」

常井「あのとき話した怒りというものが今回、連立離脱というところまで至ってしまった、ということです。当時の放送では連立組み換えや政界再編があるとしたら、斉藤(鉄夫)総理もありうるんじゃないか、という仮定の話をしました。それぐらい政治改革、夫婦別姓の方向性など、福祉・平和の理念というのは、いまの立憲や国民民主に近いんです」

長野「はい」

常井「じつは斉藤さん、新進党という1994年から1997年まで存在した非自民・反共産の保守中道政党が原点ですから。同じく自民党を変えようという思いで新進党に参加した野田佳彦さんと組んでもあまり違和感がないんですね」

長野「はい」

常井「あるいは昔の公明党とともに新進党に合流した、民社党の流れを汲む国民民主と組んでも不思議じゃない、とみています。実際にそこで一緒だった、東京都知事の小池百合子さんとも、いまの総理の石破茂さんとも、公明党ってすごく親和性がありますよね」

長野「新進党ばっかりなんですね」

常井「じつは高市さんも、その夫も新進党だったんですけど。要するに、いまの国会の主要プレイヤーを確かめていくと、じつは新進党だらけで。新進党政局なんですよ」

長野「すごい」

常井「『アップデート』でも何回か、少数与党国会が起きている異例の事態を、30年ぶりですよ、といった感じの解説をしてきました。実際に国会を回している政治家やスタッフも、みんな90年代の少数与党国会を振り返って、自社さと新進党が対決した時代があった出来事を振り返りながら動いているわけです」

長野「なるほど」

常井「たとえばあのころは自民党、さきがけ、社会党が組んで社会党の総理が生まれる。小沢一郎さんが創価学会と民社協会をくっつけて新進党ができる、という想定外の自体が続いた。少数与党の時代というのは呉越同舟のウルトラCに出口を見出すほうが、かえって自然な発想なんですね。いま言われている自民と維新が組む、立憲と国民が組むかどうかというのは、もともとの兄弟同士ですから、私に言わせれば想定内の話で」

長野「うん」

常井「政治が想定内で動いているとき、サプライズは起こりません。90年代の政変ってすごくて。理屈の世界じゃないんです。理屈を超えた何かがなければ、政治のダイナミズムは起きないんですね」

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自動車修理工場の女性社長が「自動販売機のハンバーガー」を開発

トラックなどのドライバーさんのなかには、昭和の頃は、よく幹線道路沿いにあった自動販売機のハンバーガーで、お腹を満たした経験がある方もいらっしゃることでしょう。じつは最近、令和版の「自動販売機のハンバーガー」がじわりじわりと増えているんです。今回は、この自動販売機のハンバーガーを手掛けている自動車修理工場の方のお話です。

ハンバーガー自販機と小林さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

東京・新宿から中央道の高速バス、または新幹線と飯田線の特急「伊那路」を乗り継いで、およそ4時間の長野県飯田市に「ガレージいじりや」という自動車修理工場があります。敷地内には、トヨタ・パプリカ、マツダ・シャンテをはじめ、昭和の車がズラリ。しかも、工場の前にある懐かしい自動販売機コーナーが目を引きます。

お店の代表・小林由季さんは、埼玉県出身の41歳。小さい頃、ちょうどミニ四駆が大人気だったこともあって、クルマに興味を持ちました。19歳でオートマチック車限定の運転免許を取ると、街を颯爽と駆け抜けていった、白い「マツダ・RX7」に心躍ります。

『カッコいい!あのクルマに乗りたい!!』

そう思った小林さんは、知り合いの自動車関係者に相談すると、軽くあしらわれました。「RX7? アンタ、あのクルマ、マニュアルだし、ロータリーエンジンって知ってるの? 乗りたいなら、自分で自動車が整備出来ないと、まず無理だよ」

愛車のマツダ・シャンテと小林さん

マニュアルもロータリーエンジンも、全くチンプンカンプンだった小林さんですが、乗りたい思いが高まって、マニュアルで免許を取り直し、自動車整備士を目指します。男社会の自動車修理工場で、厳しい試練を乗り越えて、見事、整備士資格を取得。縁あって信州に移り住むと、趣味で借りたガレージで、ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへの履き替えを請け負ったことをきっかけに、2010年、自ら自動車修理工場を立ち上げました。

やがて、工場のスタッフが昭和43年製・スバル360の修復を成し遂げたことから、小林さんも古い車に興味を持ち、旧車が続々持ち込まれて、車雑誌にも注目されます。あれよあれよと、旧車好きならまず知らない人はいない工場に成長。小林さんは雑誌連載企画で、旧車でレトロな自動販売機巡りをすることになりました。

ところが、ここで小林さんは大変なことが起きていたことに気付くんです。

『大きな道路沿いにたくさんあったハンバーガーやうどん・そばの自動販売機コーナーがどんどん無くなっている……』

24時間営業のコンビニエンスストアが増えた一方で、自動販売機は経年劣化、オーナーさんの高齢化も進んで、自動販売機コーナーは次々と姿を消していたんです。そんな折、小林さんはお祖父さまを亡くしたことで、小さい頃、自動販売機のハンバーガーをなかなか買ってもらえなかった記憶がよみがえりました。

『あの思い出の、自動販売機のハンバーガーを残したい。ならば、ハンバーガーを作っている食品メーカーを助けよう!』

自動販売機コーナー

そうひらめいた小林さんは、さっそく自動販売機用のハンバーガーを仕入れます。自動車工場の前に冷蔵機能付きの自動販売機と電子レンジを設置して販売を始めると、ちょうどコロナ禍と重なったことで、テイクアウトのニーズをつかんで大繁盛。各地のレトロ自動販売機で売れたハンバーガーのおよそ4倍を1台で売り上げました。

小林さんはもうイケイケドンドン、自動販売機を増やして各地で大人気となりますが、あまりの売れ行きにハンバーガーメーカーのほうが悲鳴を上げてしまいます。安定した納品が出来ないので、もう勘弁してくれませんか、と言われてしまったのです。代わる製造業者も無く、困り果てた小林さん、思い切りました。

『ハンバーガーを作ってくれる会社が無いなら、自分の会社で作ってしまおう!』

もちろん、小林さんは自動車整備士ではありますが、食品の知識は全くゼロ。体当たりで、様々な食品製造に関する許可や食品衛生を、片っ端から学んでいきます。食品部門の「いじりやフードサービス」も立ち上げ、ハンバーガーを作ってみましたが、パンはパサつき、肉の脂は溶け出し、レタスなどの生野菜は安全性の面で使えません。しかも、自動車修理工場と食品工場の二刀流で、睡眠時間3時間の日々が続きました。

ふんわりバンズのチーズバーガー

それでも試行錯誤を繰り返し、味やソースにもこだわったチーズバーガーに辿り着いて、安定した製造、出荷も出来るようになりました。今は、全国で39台の自動販売機が元気に稼働中。自動車修理工場生まれの自動販売機とハンバーガーは、各地域で話題になっています。

「気合と根性でやってきました」と笑う小林さんですが、やりたいことはいっぱいです。

「レストランもやってみたいですし、クルマのテーマパークがあっても面白いですよね。ハンバーガー片手にみんなに巡ってもらって。夢は大きく持てば、きっと叶います!」

「RX7に乗りたい」から始まった小林さんの夢、今はまだ、その途中です。

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