「お金の力、今、すごく大きいです」アメリカ中間選挙の行方を大竹まことが聞く

お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜11:30~15:00)。11月2日の放送は、竹下隆一郎さんとの共著『日本人が知らないアメリカ 福音派、AI、ジャズ、テック右派、そして選挙』(文春新書)を発売中の、立教大学文学部キリスト教学科教授、加藤喜之さんを招いて話を聞いた。

大竹「今回は、『日本人が知らないアメリカ』というご本をお書きになりました。もう明日選挙」

加藤「そうですね。11月3日」

大竹「ということですよね」

加藤「日本時間だと夜すぎからですけど」

大竹「私たちの知らないアメリカのことがたくさん、このご本には書いてありそうですが。じゃあ、今の話からしていいですか? 中間選挙が行われるわけですけど、加藤さんは、この中間選挙をどんなふうにご覧になっていますか?」

加藤「そうですね。トランプさんが中心に出ていて、トランプさんがあたかも選挙に出るかのように見えますけどそうではなくて」

大竹「はい」

加藤「しかも上院下院。上院100議席ある中の全部が変わるわけじゃないですね。その一部の35議席が変わって、下院は全て435議席が変わるので」

大竹「はいはいはい」

加藤「ただ、トランプさんも今回はかなり熱心にいろんな地域を回って、あたかも投票用紙に私の名前が書いてあるかのように言って」

大竹「はい」

加藤「彼の支持層のMAGA(マガ)派をすごく焚きつけるような感じでやってるので、そういう意味では、その一つの、2年間の評価にはなるんじゃないかなと思います」

大竹「なるほど。でも、今のところの情報では、あまり優勢だとは伝えられていません」

加藤「そうですね。基本的に世論調査だけ見ると、かなり民主党優勢だし、本来だったらレッドステート=共和党が優勢な州においても、かなり接戦になっていて」

大竹「はいはい」

加藤「そこに多くのお金を移したりですね、その集会に行かざるを得ないような状況になってますね」

大竹「激戦区が7つぐらいあって、そこがどっちが取るか、という感じになってますよね」

加藤「そうですね。上院で4議席、民主党がプラスで取れれば51対49になって」

大竹「はい。上院も」

加藤「過半数を取れるので。50-50だと上院の――基本的に――議長は副大統領バンスさんなので共和党優勢なんですけど」

大竹「はい」

加藤「なので、「51取ると」っていうことですよね」

大竹「加藤さんの予想は?」

加藤「難しいところですね。下院はおそらく比較的民主党が優勢になるだろうとは思っていますけど。上院は本当にまだまだ最後まで見れないというか、激戦州でも例えばテキサスなんかは、比較的最初は、民主党優位でリードしてたんですけども、9月後半、10月になってからかなり接戦になっている。というのも、相当なお金がテキサス州に流されて、この1ヶ月の間で相当なネガティブキャンペーンというかね。広告が流されてたりするので、その影響も出てて、相当接戦にはなってるので、今、まだちょっとどちらとも言い切れないですね」

大竹「ああ、そうなんだ。金の力が」

加藤「お金の力、今、すごく大きいです。特にイーロン・マスクさんなんかは」

大竹「イーロン・マスクは、ものすごい金額の寄付をしてますよね」

加藤「はい」

大竹「トランプ大統領自身も、もしも共和党に入れてくれたら、5000ドル払うとか」

加藤「ああ、言ってましたね。共和党の党大会でそういう話もしてたりとかして。(笑) 本当にこれは大丈夫なのか。選挙法的に大丈夫なのか、という気にはなりますけど」

大竹「いやいや、どうですか? ダメでしょ、これ。違うの? 金配るって言って」

加藤「バラマキも直接的すぎますよね」

大竹「ダメだよね。と思うんだけど」

加藤「はい」

大竹「アメリカ、こういうの平気なんだ?」

加藤「いや、ちょっとかなりこの5000ドルに関しては。でも、5000ドル配ってしまうと、本当にそれをやるとなると、かなり不可能なので、いつもながらのちょっと大げさなお話なのかなっていう感じで聞いてますけど。問題は2010年に――最高裁の判決で――結構、無制限なお金が政治資金として使えるようになったんですね。そこで、今回も、例えばマスクさんなんかが莫大な資金を全国の接戦州に投じてたりするので、それが選挙を左右してしまうということが、一番今、問題になっているんじゃないかなと思いますね」

大竹「いや、でも、そんなあからさまな金の力みたいなことで、もうアメリカって国は平気なんですか? それは?」

加藤「間接的っていう意味ではCMになったりするので、そのお金が直接配られるわけではない」

大竹「ああ~」

加藤「民意に影響を及ぼすっていう意味で、マスメディアを通して、ネットを通してネガティブキャンペーンを行い、論点を経済問題から例えば文化問題にずらすことで、例えば「民主党の支持者っていうのは全員トランスジェンダー支持者で」みたいな、そういうような形で流れを変えようとはしてるんですよね。経済問題で真正面からぶつかってしまうと、2年間の間に一体、あなたたちは何をやってたんだってことになるので。そういう形で広告などを使ってずらしてる感じです」

大竹「でも、トランプ大統領の、トランスジェンダーなんか認めないと。男と女しかいないんだとか、それ以外のいろいろ」

加藤「同性愛の問題であるとか」

大竹「同性愛もそうだしね、言ってますよね。それをこのトランプ支持者は、みんな、中絶反対とか、そういうのを信じてるっていうか」

加藤「一部の層には、それがすごく響くと言われていますね。いわゆる白人福音派――ワタシの前回の本で書いた内容ですけども――白人福音派の支持っていうのは、共和党の割合で言うと6割ぐらいいる。いろいろな変数があるので、その辺は分からないんですけども、3割から6割ぐらいいて相当な影響力を持つ時もあったりするんですよ。これは州によってなんですけども」

大竹「はい」

加藤「そうなってくると、とりわけテキサスとか南部州では、そういった白人福音派が強いので、その点を強調することで、やっぱりこの民主党候補っていうのは、我々とは相容れないリベラルな価値観を持っていて、経済は確かに辛いけど彼らには入れられないね。とはいえ、でも、共和党もトランプさんも支持できないから、今回はちょっと棄権しようかっていう層もいたりするんですよね。民主党に入れられないから、じゃあ、共和党に入れるってわけではなくて、その辺が今、ちょっと揺らいでるところが、問題なんじゃないかなと思います」

大竹「でも、キリスト教福音派、一つの宗教じゃないですか」

加藤「はい」

大竹「宗教は、政教分離みたいなことはアメリカはないんですか?」

加藤「あります、もちろんあります。それは、憲法修正条項第一条で認められていることなので、明確に、それは問題ではありますが、ただ、ギリギリの線をいっているところはあるわけですよね。例えば、教会に行って、福音派の教会で、牧師があからさまに「この候補者に入れろ」っていうことは当然できないわけで。それをしてしまうと非課税待遇とかが取られてしまうのでできないんだけども。でも、例えば、「トランスジェンダーを認めてる候補には絶対入れられないね」みたいな話をすると、当然、選択肢は一つしか残らなくなるので、そういう点に関しては、誘導的な言説っていうのは展開されてると思います」

大竹「それにしても、キリスト教福音派、何十パーセントいると。これが全員トランプの方に傾いてると。傍から見たら、宗教色もかなり強いなと」

加藤「そうなんですけど、実際は、例えば2024年11月のトランプさんが当選した時の選挙では、白人福音派の84%ぐらいが投票してた。トランプさんが政権を取ってから、2025年1月以降も、支持率は最初は78%ぐらいでかなり高かったんです。でも、10月中旬ぐらいに入ってからは58%ぐらいに落ちていたので、白人福音派もそろそろ、トランプさんは支持できない、支援できないってなってる。ただ、そういった中の彼らも、共和党か民主党かって言われたら、やっぱり共和党だなっていう方なので、渋々ながらっていうところもあるし、問題は、福音派だけでもなくて保守的なカトリックの人たちも当然いるし、主流派って言われるプロテスタントの中にもMAGA派支援の人たちもいるので、必ずしも全部が全部、福音派が問題ってわけではないんですけども」

大竹「民主党はどっちかというと宗教でいうとプロテスタント?」

加藤「民主党には多様な、プロテスタントもいるしカトリックもいるし」

大竹「ここは、あんまり宗教色が強くないってことですか?」

加藤「そうですね。従来よく言われてたのは、この民主党と共和党の間に、神の格差――ゴッドギャップ――があると。つまり、神を信じる人たちは共和党に入れる傾向があって、神を信じない人たちは民主党に入れる。あるいは宗教色が弾かれてる。ただ、近年、特に今回の選挙で面白いのは、神を前面に押し出しながらも民主党候補者たちが結構健闘してるっていうところが面白いんですよね」

大竹「一部で伝えられるのは、MAGA派の中にもいろんな動きが出てきてると。今までみたいに一枚岩じゃないよっていう話も聞いてますね」

加藤「MAGA派の中でもそうだし、民主党の中でもその多様な動き。一部では新世代左翼って言われるような、ある意味、社会主義的な傾向を持つ左派も出てきたりとか、派の中でも、キリスト教を謳いながらも経済的平等を唱えるような人たちが出てきているという意味では、新しい動きですね」

大竹「今言ったお話は、主要メディアの――日本に流れてくる――情報だけでは、アメリカというのは、ちょっと理解できないんじゃないかという気がしますね」

加藤「そうですね」

大竹「それは、今の話にも関わっているんですけども、中西部や南部や南西部、ここは広大なエリアですけど、ここには、アメリカのどんな情報が飛び交ってるんですか?」

加藤「中西部南部、我々があまりにも聞かない。ようやく最近になって注目されてきて、とりわけ、やはり、テキサスで今、何が起きてるのかというようなことで、注目はされるようにはなってきてますけど、従来、我々の情報っていうのは、ハリウッドであったりとか、金融のウォールストリートであったり、ワシントンDCであったりとかっていうところが中心だったんですけど、大部分のアメリカ人っていうのは、多分、それ以外の場所に住んでいて、一度もニューヨークに行ったことないような人たちがいるので。そこでの文化とか、食であったりとか、ファッションっていうのも、ある種の政治性があったりするので、そういうものから、我々が知らない、日本人が知らないアメリカを読み解いていくことが、この本の趣旨ではあるわけですよね」

大竹「テキサスの人は、みんなテンガロンハットかぶってる」

加藤「そういうわけでもないんですよ。それもまたちょっと複雑で、テキサスはテキサス内部のリベラル派がいるし。でも、おっしゃる通り、テンガロンハットをかぶってる人も少なくないし…」

この記事を読む