『男が心配』の奥田祥子、長期取材で男性たちの本音を引き出す

9月7日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに近畿大学教授・ジャーナリストの奥田祥子さんが登場(リモート出演)した。奥田さんは社会における男性の生きづらさを記した新刊『男が心配』も話題となっている。

かつては新聞記者をしていた奥田さん、記者になりたてのおよそ30年前、周囲は「男性ばかりだった」と振り返る。

奥田祥子「男性の先輩は冷静で弱音を吐かない、毅然とした態度で権力に立ち向かっていった。憧れたし、目標でもあったんです。いわゆる『強い男性』という像で。ところが30代で男性読者の週刊誌担当になって、普通のサラリーマンの方が仕事や家庭、いろんなことに悩んで弱り果てている姿を、取材していっぱい見てきたんです。目の前でたくさん取材して、『おや? これが本当の男性の姿なんじゃないか』と思って。新聞に載らないような男性の生きづらさという問題を、私こそ追わなきゃいけないんじゃないか、って。青いですけど……それから20年あまり追い続けています」

壇蜜「『男はつらいよ』って思い出しちゃった(笑)。女もつらいけど男もつらい」

奥田「最初は週刊誌の特集記事だったんですけど、何度も却下されて。男性の生きづらさは問題じゃないんだ、って言われたんです。特集って1回しかできないんですね。そのあとも追いたいな、と思って。休みの週末に取材して夜中から朝、原稿を書いて。というインタビュー、調査を、数年前に近畿大学に来てからも続けています」

大竹まこと「その調査ですけど、いままで1000人以上の方にインタビューされて、そのうち500人以上には、定点じゃなくて継続して話を聴いている、と伺っています」

奥田「そうなんです。もともと意図した手法ではないんですけど、いまはテーマを決めずにいろんな方に話を聴いていて。私も対象者の方と一緒に歳を重ねて。取材は言葉とノンバーバルの観察、とあるんですけど、20年前には言葉で『奥田さん、僕、大丈夫だよ』と言っていても頬がピクピクしている、本心じゃないな、と。でも『本質は苦しいんだ』とは書けなかった。小説ではなく、ジャーナリズムのルポなので。それをそのまま温めていたら、最近になって『奥田さんね、あのときじつはすごく苦しかったけど、男の性(さが)なので言えなかったんだよ』と、ようやく言葉で引き出せて。長期取材だから人間の性、本質が見えてくる、と私自身は思っているんですね」

壇蜜「つい強がるとか、メンツを保とうとするところが男性にもありますか?」

奥田「あります。10倍断られているんですけど(笑)、応じてくれている時点で話す意欲はある方じゃないですか。いざ会うと沈黙が5分、10分あって。男のメンツというのが頭のどこかに出てきて、長いときは5時間、半日、面と向かって休憩とりながらやるんです。本質としてありますね」

対象者の取材期間は最長で21年間にものぼる。著書を読んだ壇蜜も、男性が「ああ」「ふう」と応える描写から、リアルさを感じたという。長期取材の結晶といえる『男が心配』は現在発売中。放送では海外との比較も含め、さらに男性の生きづらさについて語られた。

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