「コーヒーの木」オーナーになって最高の一杯を!福岡県みやま市・晴れのまち農園

 福岡県みやま市にある「晴れのまち農園」では、九州では珍しいコーヒー栽培をしています。2023年からコーヒーの木ごとにオーナーになれる制度を導入し、収穫体験や自ら焙煎した豆を味わえる体験が人気を集めています。6月12日、RKBラジオ『Toi toi toi』で、中継リポートを放送しました。(報告・スナッピー小島可奈子) 

コーヒーの木のオーナー制度

コーヒーの生産地というと中南米をはじめ、ハワイ、東南アジア、中東・アフリカ…など遠い海の向こうの国々が思い浮かびますが、ここ福岡県みやま市でも栽培されています。 晴れのまち農園のビニールハウスの中へ。完熟した深紅色のコーヒーチェリーが実っていました。この農園では、現在約150本のコーヒーの木の栽培をしています。

2023年からスタートしたオーナー制度は、1本あたり年間5万5千円(税込)。水やりや害虫駆除など日常の管理は農園側が担います。オーナーは、春のコーヒーチェリー収穫や焙煎体験会、コーヒーの花を観賞する花見などに招待されます。全国のコーヒー好きから人気を集め、今シーズンの枠は完売しているそうです。

みやま市に足を運んでもらうために

晴れのまち農園を運営しているのは リサイクル事業や土木工事資材の製造販売などを手がける大坪GSI株式会社(本社・柳川市)です。この農園に近い、みやま市山川町に同社の工場があり「(農園を)人が集まる場所にして、地域活性化に貢献していきたい」と思っていたそうです。「遠くからでも、みやま市に足を運んでもらえるものは何か」と考えた時、熱帯・亜熱帯が主産地で国内では希少なコーヒーの栽培に目をつけました。 
 

農業未経験!若手社員の挑戦

晴れのまち農園でコーヒー栽培を担当しているのは 大坪GSIの社員・菊池祐希さん(34)。大坪GSIでデスクワークをしていた菊池さんは2年前、農業未経験でコーヒーの栽培の世界に飛び込みました。ただでさえ、国内での例が少ないコーヒー栽培、大変な苦労を重ねたそうです。 農薬を使わず、有機肥料で育てる。最初のシーズンは 水を入れるタイミング、ハウスの温度管理に試行錯誤して、植えていた40本の木を枯らしてしまったことも。現在は、地元農家の指導を受けながら工夫を重ね、1本あたり約3キロの果実を取れるようになったそうです。

自社のリサイクル人工軽石を活用

コーヒーは水はけのいい土壌が必要です。その土壌を作るために自社でリサイクルして製造した人工軽石を使用しています。 人工軽石はビンガラスや板ガラスから製造したリサイクル製品です。人工軽石は軽量で多孔質であるので、余計な水を排出すると同時に、土壌中の保水もバランスよく行う資材となります。  

貴重なコーヒーを試飲

オーナーしか飲めないコーヒー豆を特別に分けていただき、試飲させてもらいました。 「びっくり! 今まで飲んだことない! フルーティーで豊かな風味」とリポートでお伝えしました。国産コーヒーの最大の魅力は、生豆の鮮度。外国産のコーヒー豆の多くは船便で、生豆の状態で数か月かけて輸送されます。晴れのまち農園では採れたての新鮮なコーヒーを味わえます。 

農園でイベントも開催

晴れのまち農園では、コーヒーだけでなく、人工軽石を使った車海老の養殖やさつまいもの栽培も手がけています。秋から冬にかけては、それらを使ったイベントも実施予定だそうです。 

10月26日・27日 さつまいもの収穫祭&マルシェ 
11月30日・12月1日 車海老の収穫祭&マルシェ 

晴れのまち農園 
https://www.ogsicfarm.co.jp/ 
住所:福岡県みやま市山川町河原内1448-1 
電話:0944-74-6811(受付時間 8時~17時)

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Toi toi toi
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 9時00分~13時00分
出演者:山口たかし、内村麻美
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※放送情報は変更となる場合があります。

みかんに魅せられた大学生、異郷の地で大挑戦「多くの人においしいみかんを食べてほしい!」

暦の上では春になっても、まだまだ「こたつ」が恋しい時期です。こたつに入ると食べたくなるのが、やっぱり「みかん」。

ただ、どんな方がみかんを作っているのか、あまり知らない方も多いと思います。今回は、果物好きが高じてみかん農家になった、北国出身の若い男性のお話です。

赤山大吾さん

それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

昔、東京と沼津の間を結ぶ電車を「湘南電車」と呼んでいた時代がありました。車両のオレンジと緑のカラーは「湘南色」、俗にみかん色とも云われてきました。今はだいぶ本数も減りましたが、東京駅のホームに、「沼津」と行先が表示されると、何となく、潮の香りと柑橘系の爽やかな香りが漂ってくるような気分になります。

その静岡県沼津市・西浦地区は、駿河湾の最も奥まった所にあって、海越しの富士山を望むことが出来る、風光明媚なみかんの産地として知られています。看板品種は、寿という字に太郎と書いて、「寿太郎」。この「寿太郎」を、今シーズン初めて作り上げて、出荷した男性がいます。

赤山大吾さんは、2000年生まれの24歳。赤山さんは、北海道・札幌のご出身で、小さい頃から果物が大好きでした。土地柄、みかんはあまり出回らないため、りんごを2個、まるかじりするのが日課。残すのは、わずかに芯の部分だけでした。

赤山さんは新潟の大学に進学しましたが、コロナ禍のために授業はリモートが中心。学ぶ内容も想像していたものと違って、あまり納得がいきませんでした。悶々とした日々を送る中で、赤山さんはたまたま近所のスーパーで「沼津・西浦みかん 寿太郎」と、ラベルが貼られた袋を手に取ります。

『寿太郎? 沼津ってドコ?』

赤山さんは、そう不思議に思いながら、家に帰って、さっそく皮をむいて、みかんの小さな袋を一つ、口のなかに入れると、いままでにない食感に感激しました。

『甘い! でも、甘いだけじゃない、甘みと酸味のバランスが絶妙だ!』

赤山さんは、「寿太郎」を食べて、食べて、食べまくりました。そのおいしさに満たされるうちに、自分でもみかんを作りたい気持ちが芽生えます。

沼津市西浦地区のみかん山(画像提供:JAふじ伊豆)

赤山さんは、居ても立ってもいられずに、寿太郎を出荷している沼津のJAに、直接電話をかけました。

「あの……、みかん作りに興味があるんです。教えてもらうことは出来ますか?」

2022年2月、赤山さんは大学を休学して、沼津にみかん作りの研修にやって来ました。地元の農家の皆さんも、北海道出身の赤山さんの挑戦に驚いたといいます。

その初顔合わせ、農家の皆さんは赤山さんの手を見るなり、思わず目を見張りました。

『おお、彼は本物だ! これだけみかんが好きなら、きっとやってくれる!』

そう、赤山さんの手は、みかんをいっぱい食べた、あの黄色い手になっていたんです。赤山さんは、西浦地区でもとくにおいしいみかんを作ると定評のある、御年80歳の大ベテランの農家の方に付いて、みかん作りを学び始めました。

「いいか、農家というものは、人に言われてじゃなくて、自分から動かないとやれないぞ」

「みかんは手間をかければかけるほど、ちゃんと応えてくれる。手間を惜しむな」

赤山さんは、師匠がかけてくれる言葉を一つ一つ噛みしめながら、その背中を追いかけていきます。厳しい言葉の後には、夕飯のおかずをおすそ分けしてくれたり、地元の皆さんの人柄の温かさも、故郷を離れた赤山さんには大きな励みになりました。

赤山大吾さん

籍を置いていた大学にも退学届を出して、退路を断った赤山さんは、2年間の修業を経て、2024年1月、晴れて独立を果たします。高齢でみかん作りが難しくなった方のみかん山・およそ1.5ヘクタールを借り受けて、自分の力が試される時がやって来ました。

いざ作り始めてみると、農家はみかんを作っていればいいわけではなく、事務手続きや生産計画作り、害虫や猛暑対策、アルバイトの雇用などを、全部1人でこなします。

それでも去年は概ね天候に恵まれ、周りの皆さんのサポートにも支えられながら、およそ1万キロの「寿太郎」が無事に実って、収穫することが出来ました。その出来栄えに、赤山さんも手ごたえは十分! 早速、地元の方に食べてもらうと、「おいしい!」と、味に太鼓判を押してくれました。

自分で収穫したみかんが出荷されていく様子を見て、赤山さんは胸が高鳴りました。

『自分で作ったみかんが誰かの手に渡っていく。ようやく自分で稼ぐことが出来たんだ!』

でも、赤山さんに収穫の喜びに浸っている暇はありません。まだ、みかんの管理に甘い点があったこと。そして、この冬は、越冬しているカメムシが多いため、今年は天敵への抜かりない対策が求められそうなことなど、しっかり気を引き締めています。

「もっとおいしいと言ってもらいたい! 多くの人においしいみかんを食べてほしい!」

その思いを胸に、赤山さんは2年目のみかん山に登ります。

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