海女アクションが見物!映画「密輸 1970」とは?
7月12日(金)より絶賛公開中の韓国映画『密輸 1970』。海に潜って海産物を獲ってくる女性たち=海女さんが一攫千金の密輸ビジネスに巻き込まれていく、という何とも驚きの海洋クライム・アクション映画で、韓国では500万人を超える動員で大ヒットを記録した本作が、いま日本公開に際してSNSでも大評判になっている。その魅力を、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演したクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんが語った。
『密輸 1970』について
まずは映画のあらすじから。
舞台は1970年代半ば、韓国の漁村クンチョン。このまちで暮らす海女たちは日々海産物を獲って生計を立てていたが、海辺に林立された化学工場の廃棄物によって海が汚染されてしまい、失業の危機に瀕していた。そんな中、海女たちのなかでリーダー格を担うジンスクは仲間たちの生活を守るため、海底から密輸品を引きあげる仕事を請け負うことを決意します。はじめは順調に仕事を遂行していきますが、ある日、作業中に税関の摘発に遭ってしまい、一同は逮捕、収監。グループのなかでただ一人、チュンジャだけがその手を逃れ、現場から逃亡します。それから2年後、ひとり密輸ビジネスを続けていたチュンジャは、刑務所から出所したジンスクに、新たな儲け話を持ちかける。やがて密輸王、チンピラ、税関とさまざまな悪人が入り乱れる争奪戦へと発展するなか、海女たちは人生の再起をかけた大勝負に身を投じることとなる——。
1970年代に実際に行われていたという、海に密輸品を投げ入れて税関を通過しつつ、密かにそれらを引き上げて大金を稼ぐ「海洋密輸」の史実に着想を得ながら、そこに中年女性の海女たちと悪い連中が入り乱れる騙し合いの痛快クライム・アクションとなった本作。韓国では500万人を超え年間興収ランキングで3位につける大ヒット、そして韓国映画賞の中でも権威ある青龍映画賞では最優秀作品賞をはじめ4部門を受賞、同じく“韓国のアカデミー賞”と言われる大鐘(テジョン)映画賞では監督賞を受賞と、作品として高い評価も獲得しました。
本作で主人公となる二人の海女を、韓国映画界屈指の大女優ふたりが演じています。まずは、責任感の強いリーダー格のジンスクを演じたのがヨム・ジョンアさん。数々の映画やドラマで名演を見せてきましたが、なかでも2018年に社会現象級の大ヒットを記録したドラマ「SKYキャッスル〜上流階級の妻たち」でのセレブ教育ママ役では、忘れ難い存在感の演技を披露しました。そして男性にも押し負けないしたたかさで密輸ビジネスを続けているもう一人の海女・チュンジャを演じるのは、韓国を代表する大女優キム・ヘスです。出演作を挙げ始めたらキリがないほどですが個人的にも『10人の泥棒たち』や『国家が破産する日』などの映画での存在感は忘れ難いものがありました。
そんな本作の監督・脚本を務めたのは、リュ・スンワン。誰が見ても抜群に面白いエンターテインメントとアクションを実現して観客の心を鷲掴みにしつつ、同時に社会派な側面も両立させられるような稀有な実力をもった監督。国際映画祭への出品・受賞歴も確かな実績を携えつつも、国内で年間興行収入記録に食い込む大ヒットも連発してきました。これまでのフィルモグラフィから必見作を挙げていくだけでも『クライング・フィスト』『ベルリンファイル』『モガディシュ 脱出までの14日間』など盛りだくさん。なかでも2015年に公開された、正義感あふれるはみ出し刑事と極悪財閥御曹司の対決を描いた勧善懲悪アクション映画『ベテラン』はどれだけ褒めても褒めたりないくらい最高の一本で、当時韓国映画史上歴代5位を記録する特大ヒット。僕も「何か一本スカッとする映画を教えて」と言われたら必ずこれをお勧めしているくらいに大好きな映画です。ちなみにそんな監督の次作はなんとこの続編となる『ベテラン2』!こちらもどうぞご期待ください。
アツい海女さんムービーの結末は?
ということで『密輸 1970』の話に戻りますが、本作が7/12に公開されて以来SNSはかなりの熱狂で盛り上がっています。その声を少し拾ってみるだけでも「こういう作品を見るために映画館に行っています。圧倒的です。面白すぎて死にます」とか「韓国のエンタメ爆発映画、海女ゲリラ殺法もある」とか「全てをぶっちぎる女たちの熱い生き様描かれてて最高に良かった」「私のタイムラインで『密輸 1970』の勢いは、かつての『マッドマックス 怒りのデス・ロード』並み」などなど。
実際僕も劇場で見ても評判に違わぬ作品で、そりゃ気合入った海女さんが密輸王とチンピラと税関とを相手取って陸上と海中で大勝負かける映画なわけで面白くないわけはないんですが(笑)、なかでも推したいポイントは女性たちの連帯、シスターフッドが際立つ映画になっている点です。
それこそ『マッドマックス 怒りのデスロード』の名前も挙げられていた通り、社会のなかで弱い立場に置かれ軽んじられ続けた女性たちが、ときに衝突を重ねながらも互いに気合入れ合って奮起して、ついに彼女たちにしかできないやり方で、自分たちをナメ倒した男たちやその現実に一矢報いていく。最高でしょう。劇中の見せ場となる海女アクションがキマっていく終盤の展開も痛快だし、韓国公開から一年待っての夏公開も納得の清涼感が楽しめます。1970年代のサイケデリックな韓国ロック歌謡が連発するサウンドトラックも含め、誰もが楽しめてサッパリした気分で劇場をあとにできる一本になっていますよ。
『密輸 1970』はユナイテッドシネマほか各劇場で上映中です。ぜひご覧ください。
※放送情報は変更となる場合があります。