アジア映画を福岡で堪能できるイベント「Asian Film Joint」とは?
福岡市総合図書館映像ホール・シネラで10/27(日)より順次開催となるアジア映画の上映&交流プログラム「Asian Film Joint 2024」。2021年から開催されているこちらのプログラムでは、日本初公開や九州初上映を多数含めたアジア映画が今年は総計19本上映されるほか、様々な関連プログラムも実施予定とのこと。「Asian Film Joint 2024」を主宰しているクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんが、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演し、その魅力を語った。
Asian Film Jointとは?
まずはこの「Asian Film Joint」という企画の概要から。このプロジェクトは、2021年から僭越ながらわたくし三好が企画、金集め、上映作品選定、国内外との上映交渉と日本語字幕づけ、全執筆と広報・運営ディレクションまで行わせてもらっている完全自主企画です。先日ようやくここからの広報・運営業務を並走してくれる例年メンバーに合流してもらって2人体制の本番直前モードになりましたが、これほど最小体制で4年目3回目まで開催を続けてみているのには少し理由もあります。それを一旦提示しておくなら「“人間”という単位からどこまで映画の場や状況を耕せるか」という実験という側面もあるのかもしれません。そのことを説明するためにも、この企画の背景をお伝えする必要があります。
Asian Film Joint は、「2021年より活動を開始した、福岡とアジアのあいだで育まれてきた映画資産を活用し、新たな交流や協働を創り出すアジア映画の上映・交流プロジェクト」としています。
ここで言う「福岡とアジアのあいだで育まれてきた映画資産」というのは、特に2つ。福岡の街で1991年から2020年まで開催されてきた「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」が育んだアジア各国の映画人とのネットワーク、そしてそのアジアフォーカスの活動もあって1996年に誕生した福岡市総合図書館の「福岡市フィルムアーカイヴ」のアジア名作フィルム群やその活動という2つを中心に、この街が30年以上の活動を通じてアジアと育んできた多様な映画資産のことを指しています。これらを今後も活用して、映画・文化の歴史に新たな場面を加え、未来へ繋げることを目的とするものです。
それをなぜ誰からも頼まれてもいない三好がやっているかといえば、僕自身がそのアジアフォーカス福岡国際映画祭のなかで実施されていたアジア映画の商談会部門で共同ディレクターを2015年から4年間やったことが関係しています。映画の商談会とは、完成した映画の配給先を決めたり、これから制作する企画段階の映画について一緒に制作を進めていく相手先を見つけたりするための商談が行われる現場なのですが、僕がその場を当時の相方ディレクターと一緒に準備して起こしていくなかで感じたことは、映画は人間と人間が出会って対話や共感を重ねていくことで生まれるものだった、という驚きと確信です。それまで映画というと、多くはTV局や映画制作会社などの人々が何十人も集まって構成される製作委員会などによってつくられるような「大規模」で「ビジネス主導」のもの、というイメージを持っていましたが、実際映画の商談会を自分でやってみるとそれは全く違うものでした。少なくともその現場においては、彼らはビジネスありきでなく、まずは目の前の相手とどれだけフィーリングが合うか。何気ない会話や時間を重ねていく中で、徐々に互いが持っている映画のプロジェクトやアイデアが実際にかたちになっていくようすを目の当たりにしました。それは、人間によって映画が生まれ、流通していく風景でした。
僕はこうした小さな現場のありように非常に可能性を感じました。不必要に大きなプロジェクトにせず、あくまで目の行き届く範囲で、端っこまで愛と情熱というあんこをみっしり詰め込んだような現場にできないか、という思いからこういう形態でやっています。おかげさまで、2021年の初回開催からアジア各国の映画監督やプロデューサー、そして国内の映画監督たちと血の通った上映と交流を重ねてきて、有り難いことに「今年の開催は?」と期待いただけるような現場に育ってきています。
2024年のプログラムは?
ということで、今年はどんなAsian Film Jointになるのか、ですが、10/27(日)から開催されるプレイベントや関連イベント、そして11/7(木)〜11/17(日)のメインプログラムまで、福岡市総合図書館映像ホール・シネラを会場に、日本初公開や九州や福岡初公開を含むアジア映画計19本を上映します。そのすべては紹介できないので、ここではなかでも大注目のものをひとつだけご紹介します。
10月27日(日)、映像ホール・シネラで開催するプレイベントでは、世界でもまだ数える程度にしか実現していないスペシャルプログラムとして、2つの演目をお届けします。
まず午前中は、この番組でも4月にご紹介した濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』という映画の上映です。長野県の自然豊かな高原で慎ましい生活を送る父と娘。彼らが暮らす町に突如降りかかるずさんな開発計画が、徐々にふたりの生活にも及んでいく様子を描いは本作によって、濱口監督は2023年ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞も受賞しました。2023年を代表するこの傑作を劇場で見られる機会にもなります。
そして午後14時からお届けする『GIFT』という作品にご注目です。実は先ほどご紹介した『悪は存在しない』という映画は、濱口監督が以前、アカデミー賞外国語賞も獲得した『ドライブ・マイ・カー』でタッグを組んだ音楽家・石橋英子さんからのお声かけから生まれた映画でした。石橋さんがミュージシャンとして国内外を演奏していくなかで、自身のライブパフォーマンスの際に投影する映像作品を濱口監督に依頼したことがきっかけでプロジェクトが始まり、それが映画になったのが『悪は存在しない』だったのです。では、その際に最初に依頼したライブパフォーマンスの映像は?というのが、この午後に上演される『GIFT』である、というわけです。この演目は、映画作品『悪は存在しない』に使われた映像のフッテージを再編集したものに、石橋英子さんが実際に上映会場へやってきて、即興の生演奏のパフォーマンスを寄せることで完成する、1回限りの映像・音楽体験の作品として完成していました。いわば『悪は存在しない』の姉妹作品でもあるこの演目は、まだここ日本においても数回のみしか上演されていない注目のパフォーマンスで、これを見逃したら今後なかなか福岡では見る機会はないと思います。そんな作品を10/27に、しかも『悪は存在しない』とセットで上演できる、ということで、これはかなり貴重な機会になりますね。
ただいまAsian Film Jointのホームページで、この『GIFT』についてのみ、事前予約を受付しています。すでにご用意したお席の半数に届くお申し込みをいただいており、ここから開催まであと数週間、もし見逃したくないという方は、このあとすぐに「Asian Film Joint」と検索して、お申し込みをしてみてください。
まだまだたくさん紹介したい映画がありますが、ご興味いただいた方はホームページから全上映作品を紹介しているリリースサイトもご覧いただけます。また、「とるにたらない」とでかでかと記したフライヤーも今週から配布を開始しております。ぜひチェックしてみてください。ということで本日は「Asian Film Joint」とプレイベント「GIFT」のご紹介でした。会期中は三好も全日会場におりますので、皆さんとお会いできるのを楽しみにしています!
※放送情報は変更となる場合があります。