ブラジルの映画史を塗り替えた!?映画『アイム・スティル・ヒア』とは?

クリエイティブプロデューサー・三好剛平氏 ©RKBラジオ

8/8(金)よりKBCシネマで公開されているブラジルの映画『アイム・スティル・ヒア』。この作品、昨年のアカデミー賞でも作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞にノミネートされ見事 国際長編映画賞を受賞、ブラジル本国でも歴史的大ヒット映画となっており、そこには単なる映画だけでない現実との結びつきもあると、RKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』に出演したクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんは語る。
 

映画について

まずは本作のあらすじから。

 

1970年代、軍事独裁政権が支配するブラジル。元国会議員を務めたのち現在は土木技術者として生活を営むルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな暮らしを送っていた。しかしスイス大使誘拐事件を機に空気は一変、軍の抑圧は市民へと雪崩のように押し寄せる。ある日、ルーベンスは軍に連行され、そのまま消息を絶つ。突然、夫を奪われたエウニセは、必死にその行方を追い続けるが、やがて彼女自身も軍に拘束され、過酷な尋問を受けることとなる。数日後に釈放されたものの、夫の消息は一切知らされなかった。そこから彼女の何十年にわたる夫の消息を辿り続ける日々が始まるが——、というお話です。

 

ブラジルでは有名な実在の人物たちの実話をもとにした本作は2024年9月にヴェネチア国際映画祭で初上映されるや劇場では10分を超えるスタンディングオベーション、見事その年の脚本賞を受賞します。その後、各国映画祭でも高い評価を集めたのち、ゴールデングローブ賞では主演のフェルナンダ・トーレスが主演女優賞も受賞。そしてついに2025年、ブラジル映画史を塗り替える快挙を実現したのが、冒頭にも触れたアカデミー賞でした。本作『アイム・スティル・ヒア』は作品賞・主演女優賞・国際長編映画賞の3部門にノミネートされましたが、作品賞にブラジル映画が選出されたことは史上初で、結果的にはそのうち国際長編映画賞を受賞。こちらもブラジル映画初の受賞ということで大いに映画界を沸かせたのでした。

 

監督を務めたのはブラジルの名匠ウォルター・サレス。1998年にここ日本でも大ヒットした映画『セントラル・ステーション』の監督といえば、映画ファンの方もピンとくるかもしれません。父親探しをする少年と代筆屋の中年女性の二人による心の交流を描いたロードムービーで、ブラジルの名女優フェルナンダ・モンテネグロの素晴らしい演技も高く評価され同年アカデミー賞でやはり国際映画賞にノミネートもされました。今回の『アイム・スティル・ヒア』ではなんとそのフェルナンダ・モンテネグロの実の娘である同じくブラジルきっての大女優、フェルナンダ・トーレスを主演に迎えたことに加え、なんと母モンテネグロも劇中に登場するという親子2代の国民的名女優の起用も話題となっています。

 

そんな本作はブラジルでは2024年11月から劇場公開されたのですが、これが社会現象級の大ヒットを記録しました。公開初日だけで約5万人を動員し週末興収も国内1位、年末には観客動員400万人を突破し、コロナ以降の国産映画として最大級のヒットになりました。その後のアカデミー賞受賞発表は現地最大の祝祭であるカーニバルと同日だったこともあり、国中が授賞式とその結果を中継し「サンバとシネマの夜」と報じられるほどの熱狂が国中を包んだと言います。

 

しかしこの映画がブラジル現地でそれほどまでに熱狂的に評価されたのはそうした映画賞や祝祭的な理由だけによるものではなく、むしろここからお話しするブラジルの過去そして現在へ続く切実な政治状況を背景にしたものであり、それこそがこの映画のテーマと直結するものになっています。

ブラジルと民主主義

本作は1970年代のブラジルの軍事独裁政権下で消息を絶った夫と、その行方を追い続けた妻の実話に基づいていることを冒頭にご紹介しましたが、ブラジルでは1964年から1985年まで21年間軍事政権が続きました。この軍事体制下では、政府に異議を訴える反体制派、およびその一派だと当局が見なした人々に対して、違法な取り締まり、拷問、殺人といった組織的犯罪が続けられました。その犠牲者は2万人以上、現在も数百人が行方不明となったままという悲惨な歴史として、ブラジルの人々に今なお刻み込まれた苦い記憶となっています。

 

さらにこの映画がつくられた重要な背景は、本作が制作されたブラジルの近年の政治的状況にあります。1985年に軍事独裁政権が収束したあと、ブラジルは順調に民主化を進めていきますが、2010年代後半より再び保守層が台頭し、2019年からは元軍人であるボルソナロ大統領に政権が移ります。ボルソナロは軍政を肯定的に語る言動や報道機関への圧力などで国際的にも物議を醸し、1970年代当時のような、国家による言論弾圧や暴力が再び目前まで迫っていたこと、さらに自身が落選となった22年には、その選挙結果を覆すべくクーデターを企てるにまで及びました。こうした直近の政治的背景によって、かつて自身たちがこうむった国家による過ちと、再びすぐそこにまで迫り来た危機感となって本作が完成されたこともあり、この映画は現地の人々にとっても一層実感を持った特別な作品として多くの観客に届き、社会現象級の大ヒットとなったのでした。

 

さて、ここまでお話を聞いた皆さんには、この作品が訴える国家による言論弾圧と暴力の予感が、遠いブラジルだけのものでなく、私たちにとってもまた「すぐそこにある危機」であると感じられたのではないかと思います。映画では誰も予想していなかったほどの呆気なさで彼らの穏やかな日常を奪い去る出来事が訪れたように、その瞬間は私たちにもまたすぐにやってきます。だからこそ、一人ひとりの個人という存在を蔑ろにした国家の暴走とそれがもたらす悲劇を遠いいつかのこととせず、いつでも現実に起こり得るものと自覚し続けているためにも、一人ひとりの記憶は、私たちの歴史は、そして映画は何ができるのか? この作品を通じてぜひ皆さんと一緒に考えてみられたらと思います。

 

映画『アイム・スティル・ヒア』は8/8(金)よりKBCシネマにて公開中です。「名作」と呼ぶに相応しい風格と強度を携えた見応え十分な一本であり、私たち日本を含むどの国でも起こり得る「すぐそこにある危機」との戦いを描いた作品です。くれぐれもお見逃しなきよう、ご覧ください。

映画『アイム・スティル・ヒア』

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、三好剛平
番組ホームページ
公式X

出演番組をラジコで聴く

※放送情報は変更となる場合があります。

大注目お笑いコンビが登場『春とヒコーキのオールナイトニッポン0(ZERO)』

7月からスペシャルなパーソナリティが週替りで担当している月曜日のニッポン放送『オールナイトニッポン0(ZERO)』。7月20日(月)は、お笑いコンビ・春とヒコーキが生放送で担当することが決定した。

春とヒコーキはぐんぴぃと土岡哲朗によって2017年に結成された、タイタン所属のお笑いコンビ。YouTubeチャンネル『バキ童チャンネル【ぐんぴぃ】』は登録者数200万人超えを誇り、コンビとしても今春に3回目の単独ライブ『モンキービジネス』を4都市4会場で開催するなど、大きな注目を集めている。

今回、春とヒコーキが『オールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティに初挑戦。コーナーなどの詳細は、追ってオールナイトニッポン公式X(@Ann_Since1967)にて発表される予定。

『春とヒコーキのオールナイトニッポン0(ZERO)』は7月20日(火)27時から、ニッポン放送をキーステーションに全国ネットで生放送。「17LIVE」ではスタジオの様子を映像でライブ配信、放送後には「17LIVE」限定のアフタートークの配信も予定している。

■コメント

【ぐんぴぃ】
ビタースイートサンバをバックにお喋りできるなんて夢のようです。
1967年〜2013年までのANN全パーソナリティのラインナップを見て、気持ちを鼓舞しています!
ミスターDJ、糸居五郎さんの分も頑張ります!

【土岡哲朗】
ニートだった頃、深夜にラジオをリアタイすることで一日を取り返してました。無駄に夜しっかり寝て、翌日radikoで聴く贅沢もしてました。
これを聴いてる間は全員平等に意味がない。そんなラジオをお届けします!

 

ニッポン放送 『春とヒコーキのオールナイトニッポン0(ZERO)』
■放送日時:2026年7月20日(月)27時~28時30分 (7月21日(火) 午前3時〜4時30分)
■パーソナリティ:春とヒコーキ(ぐんぴぃ・土岡哲朗)
■メールアドレス:haruhiko@allnightnippon.com
■番組X:@Ann_Since1967
■番組ハッシュタグ:#春とヒコーキANN0

◆この番組は、radikoのタイムフリー機能で、放送1週間後まで聴くことができる。
http://radiko.jp/share/?sid=LFR&t=20260721030000

 

Facebook

ページトップへ