リスナーが推薦する「平和を考える映画」に選ばれたのは『火垂るの墓』
RKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』に出演しているクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんによる、月に一度の「リスナー名作劇場」。8月のテーマは「戦後80年、平和の大切さを感じる映画といえば?」でリスナーの皆さんからたくさんのメッセージをいただいた。過去最多のメッセージが集まった中から選ばれたのは誰もが一度は見たことがある名作だった。
リスナーからのメッセージを紹介
月に一度の「リスナー名作劇場」。今月のテーマは「戦後80年、平和の大切さを感じる映画といえば?」がテーマ。今月も皆さんから歴代最多の推薦作品に加え、どなたもメッセージの長さが最長級!熱い想いをたくさんお寄せいただきました。本当にありがとうございます!ここから順番にご紹介していきます。
まずはインスタなどでメッセージなしに作品名だけ推薦してくださった皆さん。ここには定番作品が並びます。
【Sh(エス・エイチ)】さんは『火の雨が降る』
【Shogo Tsujita(ショーゴ・ツジタ)】さんは『プライベート・ライアン』
【寿春日(ことぶき・かすが)】さんは『戦場のメリークリスマス』
【maro7679】さんは『サウンド・オブ・ミュージック』
【eishun3(エイシュン・スリー)】さんは『おもひでぽろぽろ』、そして
【磯井真一郎】さんは『日本のいちばん長い日』をそれぞれご推薦いただきました。三好さんはこの中で改めて見返した作品があったということですが…。
(三好)『日本のいちばん長い日』です。日本がいよいよ降伏を決めて天皇陛下による玉音放送がラジオで放送されるまでの緊迫した24時間を描いた作品ですが、今日は8/14ですよね。この映画の舞台もまさしく80年前の8/14正午から8/15正午までを描いた作品ということもあって、改めて拝見しました。名匠・岡本喜八監督の引き締まった演出と、東宝創立35年記念作品として作られただけあって当時の名優揃い踏みのキャスト陣と、それはもう見応え抜群。作り手たちの真剣な反戦の姿勢も伝わってくる気迫の一作です。今日このあと正午から、皆さんぜひ見ましょう。
続いて初投稿のリスナーさんからもメッセージをいただきました。【木村哲也】さんは1979年の日本映画『ガラスのうさぎ』をご推薦。「小学生2年生のとき、生まれて初めてスクリーンで見た映画です。東京大空襲がテーマの映画でした。東京に住んでいる私は、戦争映画というと本作が真っ先に浮かびます。主題歌は、当時『金八先生』でブレイクしたばかりの海援隊が歌っていました。東京大空襲のことを隠喩を尽くして歌っていて、今聴いても凄いです」とのコメント。三好さんこの作品は…?
(三好)この作品、今では配信もレンタルもなかなか見つけづらい状態ではあったんですが、DVDを持ってる知人が見つかりそうなので、ぜひとも近日中に拝見して見たいと思います!ご推薦嬉しいです!
そしてコーナーの常連さんたちからもたくさんのメッセージ。【ビタミンK】さんは『ビルマの竪琴』そして『ライフ・イズ・ビューティフル』の2本。『ライフ・イズ〜』は明日8/15から28日までの2週間KBCシネマでの再映も決まっていますね。
【算数ノート】さんは『この世界の片隅に』『僕の村は戦場だった』そして木下恵介監督1954年の傑作『二十四(にじゅうし)の瞳』、いずれも名作ですね!【老婆の休日】さんは2005年のフランス映画『戦場のアリア』。第一次大戦下ドイツとフランスが戦う戦場でクリスマスイブの夜に「せめてこの夜だけは」と一晩だけ停戦してともに音楽を楽しんだという実話を映画化した作品です。【老婆の休日】さんからは毎度ながらの旦那さんとのエピソードを交えて「寛容」の大切さを説くメッセージを頂きました(笑)。
【古賀市のひなたぼっこ】さんは『はだしのゲン』に加え、当番組「神戸金史のCatchUp」で取り上げた『太陽(ティダ)の運命』そして『黒川の女たち』の3本をセレクト。『黒川の女たち』は敗戦後の満州でソ連軍に差し出された日本人女性たちを追ったドキュメンタリー映画で、現在KBCシネマで公開中です。本作は【篠栗のササグリーン】さんからも「戦争で犠牲になるのはいつも民間人だと改めて感じさせられました」とコメントも寄せてご推薦いただきました。
さらに同じく満州開拓団をテーマにしたドキュメンタリー映画の『鳴呼 満蒙開拓団(ああ、まんもうかいたくだん)』をご推薦いただいたのは【Giオレンジ】さん。幼少期に実際に満州で育った自身のお父様のエピソードにも触れて「生前の父は、満州にロシアが侵攻した8/9がくると毎年機嫌が悪くなっていました。父はほとんど戦争の話はしませんでしたが、私が話を聞いていたら、気持ちも変わったかも知れません」とコメントも。戦後80年のこの時期にこそ、改めてご家族などとこうしたお話をしてみるのも良いかもしれませんね。
その他にも【あいだ桃太郎】さんは1978年公開の『遠すぎた橋』を「戦争はどちらも勝者も無ければ敗者もない」という無常感が胸を打つ作品とご推薦。【黒井のやたっち】さんは『ゴジラ-1.0(マイナス・ワン)』に加え、下関ご出身の佐々部清監督の映画から『出口のない海』『チルソクの夏』の計3本。そして【ベタ踏み坂46(フォーティーシックス)】さんは広島を舞台に戦中から現在まで複数の時間が交錯する新作映画『惑星ラブソング』をご推薦いただきました。皆さんから頂戴した熱量の高いコメントまで全部はご紹介できませんでしたが、しっかりと拝読させていただいております!本当にありがとうございました!!
今月の一本は『火垂るの墓』
そして今月三好さんがセレクトしたのは…?【shunji_kazunoko】さんと【Chang】さんがご推薦いただいた1988年の傑作アニメ『火垂るの墓』です。もはや説明不要とも思われる定番中の定番ですが、改めて今回拝見して、やっぱり恐るべき一作でした。
父の出征中に空襲で母を亡くした14歳の少年・清太が、4歳の妹・節子と共にふたりきりで生き抜こうとした姿を描き出していく。幼さゆえに周囲の人々に頼ることができず、過信から追い込まれていく清太、そしてあどけない妹は徐々に体調を崩していく。幼い子どもたちすらも助けてあげられる余裕を失っていく戦下の大人たちとその現実もあわせて活写されていきます。監督は本作も含めてその圧倒的なリアリズムに根差した表現で世界中から高く評価される高畑勲さんが務めました。
この映画についてはもう皆さんご存知でしょうし、あらゆるところで語り尽くされているので特に僕が付け加えることもないかとも思いますが、今回見直してみて、つくづくこの映画に圧倒されたのは、この物語を作品として世に出すにあたって作り手たちが引き受けた覚悟や責任感のようなものです。
あらゆる映画でも物語でも、2時間なら2時間その物語に没入して、どれだけ手に汗握るなり号泣するなりしたとしても、作品が終わりひとまず物語が完結してさえしまったら「ああ良いもの見たね」とその体験に区切りを入れて、すぐに忘れて日常生活に戻ってしまうわけです。いわば「感動のパッケージ」としてだけ消費されていく宿命があるわけですが、そのことに徹底的に抗うのが本作です。
それは劇中の清太や、彼らを厄介者扱いするおばさんなど一人一人のキャラクター造形にも明らかです。彼らはみな時に思いやりがあり、ひとしく不憫な存在でもありますが、同時に愚かでずるくて、誰もが間違う存在として登場します。「ただ感動させる物語」をつくるなら彼らはもっと類型的な「良い子どもたち」と「悪い大人」にだって描けたはずなのに、作り手たちは絶対にそうはしなかった。それはやっぱり前に述べた通り、この映画を徹底的に割り切れないものとして届けること、「感動のパッケージ」として「消費」させてはいけないという覚悟だったのだろうと思います。
映画を見た私たちの胸に、やり場のない傷を残すこと。そしてそれを鑑賞後の人生にまで持ち帰り、その後もずっとずっと自分の痛みとして抱きつづけること。本作のラストカットがどのような光景で幕を引いたかを思えば、作り手たちがこの物語を「80年前に起きた出来事」としてではなく、今この私たちの時代にまでずっと終わりきれない現実として届けようとした意志は明確です。どうか改めてご覧いただきたい作品だと思います。
「火垂るの墓」は現在Netflixでジブリ初の配信作品として公開中なので鑑賞しやすいうえに、なんと8/15の金曜ロードショーではTV放映も決定、放映されました。既に見たことあるよという人も、どうかこの終戦80年のこの機会にこそ、改めてご覧になって見てください。ということで今月セレクトさせていただいたのは『火垂るの墓』でした。
※放送情報は変更となる場合があります。
