リスナーが推薦する「シニアが主役の映画といえば?」に選ばれたのは『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』
RKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』に出演しているクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんによる、月に一度の「リスナー名作劇場」。9月のテーマは敬老の日にちなみ、「シニアが主役の映画といえば?」でリスナーの皆さんからたくさんのメッセージをいただいた。その中から選ばれたのは、冒頭から完璧に引き込まれるイギリス映画だった。
リスナーからのメッセージを紹介
毎月充実したセレクションとメッセージをお寄せ頂いている当コーナーですが、今月はテーマと皆さんとの相性も良かったのか、例月以上に一段と推薦作品も多彩&良作揃いで、メッセージの内容も充実。今までで一番セレクトに悩まされるラインナップとなっており、皆さんの推薦スキルの上達ぶりに圧倒されながらも、同時に大いに楽しませていただく回となりました。本当にありがとうございます!
ということでここから前半は皆さんからお寄せ頂いたものからご紹介をしていきます。まずは常連リスナーさんたちのご推薦から。
【黒井のやたっち】さんは『半落ち』『八重子のハミング』『東京家族』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をご推薦。『半落ち』と『八重子のハミング』は、やたっちさんご推薦ではもはやお馴染みの“推し監督”=下関出身の佐々部清さんによる作品でしたね。
続いて【古賀市のひなたぼっこ】さんは、 『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』『秋が来るとき』『おばあちゃんと僕の約束』『アーサーズ・ウイスキー』『パリタクシー』という5本の映画をセレクト。これについては三好さんからもコメントあるようで。
(三好)ひなたぼっこさんは、ここ1〜2年に劇場公開されたばかりの作品縛りとされながらも、上手にテーマに応える作品をチョイスいただいていました。そのうち『テルマがゆく!』はこの機会に僕もやっと拝見できました。オレオレ詐欺にひっかかっちゃった93歳のおばあちゃんが、そのお金を取り戻すという“ミッション・インポッシブル”に挑む映画で、期待通りにとっても楽しい映画でした。さらにご推薦いただいていたフランス映画『パリタクシー』についても、来たる11月には山田洋次監督・キムタク主演で『TOKYOタクシー』としてリメイクが決定していますから、合わせて見比べ鑑賞するのも良さそうです。
そして【Giオレンジ】さんと【あいだ桃太郎】さんはお二人とも、クリント・イーストウッド監督主演の名作『グラン・トリノ』をご推薦。いずれも想いあふれる長文のメッセージをお寄せくださり、やはり劇中のキャラクターとイーストウッドその人自身が重ねてきた人生が一致する「集大成的な一本」としてこの映画は熱い支持を集めているようでした。
そして当コーナー初参加となるラジオネーム【沖縄のおじさん】さんからは『ハリーとトント』『ストレイト・ストーリー』をご推薦。「高校生の頃、名画座通いで年に4〜50本の映画を映画館で観る映画青年」だったご自身もシニアになった今、このテーマで思い出した2本、とのこと。三好さん、この2本はいかがでしたか?
(三好)いや本当にさすがの素晴らしいセレクトですよね。僕も大好きな名作2本であるうえに、ちょうどこれからの季節に見るのにも良く。改めてこのご推薦を受けて見返したくなりました。またぜひ今後もメッセージお寄せ下さい!
まだまだあります。
【kaz.0522(カズ・ゼロゴーニーニー)】さんは『トップガン マーヴェリック』、
【na_kanana(ナ・カナナ)】さんは『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』、そして
【あさかぜ4号】さんは『ベスト・キッド』。
【算数ノート】さんは『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』『裏切りのサーカス』と、いずれも思わず作品が今すぐ見たくなるような上手な推薦文もお寄せいただいておりました。
さらに邦画の推薦作品も充実しておりまして
【老婆の休日】さんは『メタモルフォーゼの縁側』『阪急電車 片道15分の奇跡』
【南のしんちゃん】さん『帰ってきた あぶない刑事』
【あ~ちゃん】さんは『最高の人生の見つけ方』『梅切らぬバカ』というラインナップ。
最近は作品のご推薦だけでなく、当コーナーや三好さん、そして番組自体への温かいコメントまで添えてメッセージをお寄せくださる方も多く、毎回その全文を読み上げられないのが惜しいところですが、有り難くスタッフ一同で拝読させていただいております。
(三好)本当に! 添えてもらった僕へのメッセージも、本当に毎回読みながらニヤニヤしちゃうくらい喜びながら拝読しているんですよ。みなさんと一緒にこのコーナーやれて本当に嬉しいです。
今月も、皆さんたくさんのメッセージを本当にありがとうございました!
さて、ということでそんな中から三好さんが選んだ今月の一本は…?
今月の一本は『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』
今月はラジオネーム【nekochamicarp(ねこちゃみかーぷ)】さんがご推薦いただいた『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』という2022年のイギリス映画をチョイスしました。
まずは映画のあらすじから。
定年退職し、妻とふたりで平穏な日々を過ごしていたハロルド・フライのもとに、ある日思いがけない手紙が届く。差出人はかつて工場で一緒に働いていた同僚女性のクイーニー。その内容は、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ終わりを迎えそうである、というものでした。親友であった彼女からの思わぬ知らせに心を痛め、手紙の返事を書いたハロルドは近所のポストへ向かって家を出ますが、そのうち途中で考えを変え、800キロ離れたホスピスに入院するクイーニーのもとまで歩いて会いに行くと決意。そのまま手ぶらで歩き始めます。そこにはハロルドがクイーニーにどうしても会って伝えたいある思いがあった——、というお話です。
もうこのあらすじだけでも良い映画になりそうな予感が伝わってくる一本ですが、加えてこの映画、とにかくその物語を「映画」にするにあたっての演出がきわめて的確で上手いんですね。何といってもまずはその冒頭です。
先ほどのあらすじの通り、平穏な日々に突然一通の手紙が届き、返事を書いた主人公がポストに向かい、投函するかどうか逡巡しながら近くのコンビニに立ち寄ると、そこで接客してくれた若い女性の一言が後押しになる。途端に想いがあふれ、いてもたってもいられなくなり、着の身着のまま800キロ歩いて会いに行くことを決めてしまう。そこまでの心の動きと成り行きを、この映画はわずか作品の冒頭8分程度で、完璧な手際で引き込んでしまいます。本作は老人が主役の映画でこそありますが、まずこの映画としての圧倒的な運動神経の良さに驚かされてしまいました。
そうして思いつきと成り行きのまま800キロの距離を歩いて会いに行くことになるこの物語は(ちなみに福岡から考えると、愛知県豊田市までが約791キロ。それを歩いて行くというのだから、やはりなかなかの決断です)、やがて一人の老人による旅先の人々との出会いやその出来事ひとつひとつ、さらには自分の重ねてきた人生、そしてこの旅の本当の理由とも向き合うものへとなっていきます。
映画の原題は「The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry(ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅)」とあるように、それは一人の老人が、かつて共に過ごしてきた大切な親友、そしてこれまでの自らの過ちによって失ったり・失いかけている大切な誰かへの“祈り”を果たしていくような、まさしく「巡礼」の旅となっていきます。
想定もしていなかった旅へ繰り出すことになる冒頭から、思いもよらぬ出来事が盛りだくさんの旅を経て、ついに辿り着くラストまで、過不足ない演出と美しい映像で見せ切ってくれる素晴らしい一本です。公開当時見ていたら間違いなく年間ランキングに入れていたくらいの「必見の一作」だと推薦したいと思います。
ということで今月の「リスナー名作劇場」は『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』でした。ぜひ皆さんもご覧になってみてください!
※放送情報は変更となる場合があります。
