民法の嫡出推定見直しで女子の大学進学率にも変化はあるか?

明治時代に制定された民法が変わる。法制審議会は2月14日、子が生まれた時期から父親を決める「嫡出推定」の見直しなどを盛り込んだ民法の改正要綱を決定し、古川法務大臣に答申した。「このニュースから驚くことが読み解ける」と、RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で語ったのは、神戸金史・RKB解説委員。一体どういうことなのだろうか?

※櫻井浩二アナウンサーは休演中のため、宮脇憲一アナウンサーが聞き手を務めています。

神戸金史・RKB解説委員

本田奈也花アナウンサー(以下、本田):今回の法制審議会の答申のポイントは、
    (1)母親の再婚後に生まれた子は、原則いまの夫の子と推定する
    (2)離婚後100日間の女性の再婚禁止期間を廃止する

女性が100日間再婚できないことは初めて知りました。びっくりです。

本田奈也花アナウンサー ©RKB毎日放送

宮脇憲一アナウンサー(以下、宮脇):「女性が」という限定的な表現が気になります。

神戸金史・RKB解説委員(以下、神戸):これは120年以上にわたって残ってきた民法の規定です。「再婚後に生まれた子供は原則いまの夫の子と推定する」というのも違和感がありませんか?子供は離婚後300日以内に生まれたら、別れた前の夫の子とすると推定してきました。これも今の時代に合っていないから改正していこうという機運が2007年頃に高まりました。しかし、当時の自民党保守系の議員の反対で収まってしまったんです。理由は「不倫を助長する」というものでした。基本的に家をベースにした考え方なんです。3世代同居が当たり前だった明治時代の考えで、戦後もそれが残っていたということで問題になっていました。前の夫との血縁関係はないのに、父親を前の夫だと決められてしまったら困る訳です。事実上別居していたり、離婚届を出していないけれど、別の男性との生活をスタートさせていたりする場合だってあります。ところが、離婚したばかりで子供が生まれると、前の夫の子供になってしまいます。

宮脇:その子供にとっては新しい家庭で大きな障害がありますよね。

宮脇憲一アナウンサー ©RKB毎日放送

神戸:だから現実にもっと合わせるために改正しなければならないということで、ようやく答申が出ました。秋の臨時国会で改正案が提出される方向が決まったんです。

本田:遅れすぎていると感じました。

神戸:ところで、気になる記事が昨年12月の日本経済新聞に掲載されていました。タイトルは「若い女性が消えた」です。25歳~34歳の独身の人口比を表した地図があり、そこで明らかになったのが、東日本では東京、宮城、北海道、西日本では奈良、京都、大阪、福岡、熊本、鹿児島、長崎がだいたい男女比がととのっており、主に東日本は男女比に偏りがありました。九州は男女のバランスがととのっているということが明らかになりました。

宮脇:地方で男女比がととのっているのは九州がほとんどですね。

神戸:これについて私がFacebook上で意見を集めたところ、次のようなコメントが寄せられました。
・若い女性がキラキラ輝けて、想像力が発揮できるような職場が少ないのではないか(群馬県・女性)
・男女比がととのっているように見えるのは、男女とも収入が少ないから結婚して共働きしないと暮らしていけないのでは(福岡県・女性)

驚いたのは男女比が1.03と、全国で一番男女比がそろっている鹿児島県についての意見です。それは、

島津藩の頃から教育熱心な地域だけど、物理的な距離と昔ながらの風土で女子は土地を離れさせてもらえない。

というものでした。

もうひとつ、共同通信から「女子の大学進学 東京と鹿児島で格差2倍」という記事が配信されました。東京では74.1%の女子が大学に進学していますが、鹿児島では34.6%と日本で一番低い結果になっています。鹿児島では女子が大学に行かせてもらえない現状があることが分かりました。さらに鹿児島を含む10県が30%台にとどまったとありますが、九州では宮崎や佐賀、大分も含まれています。これらのことから考えると、九州の女子は大学に進学しづらい、または地元に残るように言われていることが多いという流れの中で、男女比がそろってきているのではないかと考えました。

宮脇:たしかに家は出ても「九州にいてね」と言われている人結構多いですよね。

本田:長崎出身である私の同級生も「地元に残って」と親から言われてそうしている人が多いです。

神戸:明らかに適齢期の女性の比率が多いということは、男尊女卑の風土が影響しているのはないかと思います。民法改正案が出たことで九州の風土も変わっていけばよいなと思います。

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櫻井浩二インサイト
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:宮脇憲一、本田奈也花、神戸金史
番組ホームページ
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公式Instagram

※放送情報は変更となる場合があります。

「日本の役に立つなら住んでもいい」意識は間違い? 外国籍の人と入管に今なにが起きているのか

ヘウレーカから発売されている『それはわたしが外国人だから? 日本の入管で起こっていること』を著した、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが4月19日の『大竹まことゴールデンラジオ』に出演。本に書かれた内容について伺った。

大竹「安田菜津紀さんがこの本を書くことになった理由はなんですか?」

安田「副題にも入っているので、皆さんお察しかと思うんですけれども、この本のテーマは日本の入管政策なんです。入管は読んで字のごとく、出入国を管理して、入管庁としては監視によって治安を守っているということを打ち出してます。それは必要な仕事ではあるんですけれども、一方で生活者の視点とか、あるいは人権の主体を考えた時に、外国籍の人たちは必ずしもその権利が守られていないという現状があって、私たちの隣人のことのはずなのに、私たちはどこまでそれを知っているのだろうか、ということが出発点です」

室井「ウィシュマさんのあの事件、ほんとに泣いちゃった」

室井「2021年に名古屋入管で、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなったことですよね」

室井「なんか怖いんだよね。管理してる人たちが『頑張れ』とかって。ウィシュマさんはすごい辛そうなのに、普通に明るく声かけちゃってんだよね」

安田「ウィシュマさんは体が弱って動かせない状態に追い詰められて亡くなったわけですけれども、『私たちも頑張って体を動かすけど、あなたも自分の体頑張って動かすのよ』っていう風に呼びかけていたりするんですよね」

室井「明らかな悪意じゃないところが余計怖いと思っちゃうんですよね」

安田「これはウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった後に出された調査報告書でも指摘をされているんですけれど、ウィシュマさんが体調を悪そうにしているのは、外に出たいから病気ですと偽っているんじゃないかと最後まで疑っていた職員がいました。外国人は嘘をつくんじゃないかとか、ごまかすんじゃないかとか、そういう視点が組織の中で暗黙の了解のように共有されるようなことがあったのではないでしょうか」

室井「でもそれはおかしいよね。ナニ人でもあっても嘘つく人は嘘つくもんね」

安田「そうなんですよね。だから国籍とか外国人だからといって分けるのは間違ってるということも、この本の中では大事にしていたところです」

大竹「安田菜津紀さんは、この本の中で大切にしていることが2つあるとおっしゃってます。それは何ですか?」

安田「1つは今、室井さんがご指摘くださったことに重なるんですけれども、例えばナニナニ国籍の人が犯罪をしたというニュースが流れたとします。日本のニュースって国籍と一緒にそういう情報を流しがちなんですけれど、じゃあ『ナニナニ人は危険なの?』と大きな主語でくくって危険視したり排除するのは間違っているということ。もう1つは、今たくさんの外国人労働者たちに、私たちの生活は支えられていますよね。私はよく牛丼屋さんに入ったりするんですけれども、店員さんが外国ルーツの方なのかなっていうことも多いですし、目に見えているところだけではなくて、工場で働いている人もいるでしょう。でも『そうやって日本社会を支えてくれている人なんだ。だからその権利守ってあげなきゃね』って、上から目線ではなく…」

室井「今この時代に一緒に生きてる人たちだよね?仲間だよね」

安田「そうなんです。だから、上から目線で『日本を助けてくれるんだったら住んでもいいよ』ではない方向で、社会を築けないだろうかと。日本に役に立つ人だから守ろうという視点はすぐ、役に立たない人は追い出そうという視点に切り替わってしまう、表裏一体のものだと思います。でも人権ってそういうものではなくない?っていうところが出発点ですね」

大竹「本の中で紹介している、日本で暮らす外国の方は、色々な…なんて言うんだろうね。不具合って言ったらいいかね? 大変な目に遭ってます」

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