池上彰「円安のいまインバウンド受け入れれば日本は経済的に潤う」

ジャーナリスト・池上彰さん

日々のニュースを専門家や当事者に聞くRKBラジオ『仲谷一志・下田文代のよなおし堂』のメイン企画「きょうのフカボリ」。6月20日(月)はジャーナリスト・池上彰さんとともに、2022年上半期の新型コロナウイルスと物価高についてトークを展開した。(以下、敬称略)

そもそも日本はマスクを義務化していない

仲谷一志(以下、仲谷):状況次第でマスクを外しても良いと言われてるんだけど、外しにくいなかで、池上さんはどんなマスク生活を送っていますか?

池上彰(以下、池上):質問に応える前に、仲谷さんと下田さんはマスクをしていますか?

仲谷:はい。ラジオのスタジオで、アクリル板越しに、さらにマスクをして喋っています。

池上:マスクをして喋ると声がこもるのに、2人クリアな音で、さすがです。マスクしているように聴こえません(笑)。私は周りに人がいない時には外でマスク外していますが、他人(ひと)とすれ違う時や、電車の中にいる時はどうしてもマスクは外せません。

池上:そもそも日本はマスクを義務化していません。「マスクをしてください」という“お願い”レベルで国民が自主的にしている。例えば、ヨーロッパやアメリカはマスクを“義務化”して、その義務化をやめましたと言えば、みんなぱっとマスクを外せるわけです。日本は義務化されずに自主的にやっていますから、なかなか自主的に外せません。

下田文代(以下、下田):国民性が出ていますね。

池上:“同調圧力”というか、マスクを外してると何か他人(ひと)の目がこわいから、マスクせざるを得ない。こうなると、なかなか皆マスク外すことできません。

仲谷:やはり日本の新型コロナウイルスへの対応は、海外とはかなり違いましたか?

池上:海外からの観光客をようやく受け入れるようになりましたが、これまでは入国者に空港で慎重に検査をしたり、入国者数の上限を決めたりすることを海外から見ると、日本は現代の“鎖国”みたいなことしていると思われていました。

下田:日本の新型コロナウイルス対策は世界からどのような評価を得ているのでしょうか?

池上:重症者数でみれば、日本は義務化していなかったにもかかわらず、かなりよくやってるという評価はあると思う。ただ、諸外国はマスクのない生活してるのに、日本はまだマスクしてるのかと見られています。

物価高でもインバウンド受け入れれば経済的に潤う

仲谷:(博多名物の)長浜ラーメンが700円。私が北九州から福岡に出てきた18歳の頃は350円でしたが、いつの間にか500円、600円になり、とうとう700円。5月1日から値上げされていました。

下田:燃料、材料費が値上がりしているから仕方ないこと。人件費などにも配慮し適正な製造が行われるためには仕方ないと思いますけど。私たちの財布にはこたえます。経済的な打撃、諸外国に遅れをとるようなことにはならないですか?

池上:今、円安が進んでいます。海外から見ると、日本に旅行に行くと何でも安く感じる。ありとあらゆる物が安く感じられる。仲谷さんは長浜ラーメンが高くなったと先ほど言いましたが、海外から見れば、「わずか700円でラーメンが食べられるの」となります。アメリカのニューヨークでラーメン一杯1800円から2000円が相場ですから(笑)。

池上:何でも安いとなれば、観光客を受け入れるようになれば、インバウンドで大勢入って来て、日本は経済的には非常に潤うと思いますが、まだそこまで踏み切っていないから、ちょっとまだ厳しい状況が続きます。

日銀の方針が続く限り円安傾向はこのまま

仲谷:安倍元総理は「日本銀行は子会社だから」と言いました。その考えに立てば、(紙幣を擦り続ければ)国は破綻することはないということになりますか?

池上:実際、そういう理論はあります。MMT(モダン・マネタリー・セオリー)といます。安倍元総理が言うようにそうなんだという人と、いやいやそんなことはない。とんでもないことになるという考え方があります。世界的に見れば、後者(財政は破綻する)の方が圧倒的に多い。そういう方(財政は破綻しない)もいるということは確かです。

仲谷:池上さんはどう考えていますか?

池上:まず少なくとも日銀は子会社ではないです(笑)。日銀を独立させるために日銀法を改正し、政府とは全く独立したものにやっとの思いでしたわけですから、それを子会社って言っちゃいけません。確かに日本国内に預貯金などがかなりの金額があるので、今、赤字国債を大量に出したから言って、すぐに破綻することはありません。いつまでも永遠にあのお金を擦り続けるってことはできません。

下田:物価高が続いています。円安も続いています。まだしばらくこの状態が続くと考えていますか?

池上:アメリカにしてもヨーロッパにしても今金利をどんどん引き上げています。日本は金利を上げると、景気が良くならないからって金利を下げたまま。そうなると、海外に投資した方が利益が上がると考える投資家たちが、円を売ってドルやユーロを買うという動きが進んでいるので、日銀の方針が続く限りは、円安は続いていく。

池上:身近なラーメンの話。麺の材料の小麦の価格は、日本政府が4月と10月に価格を決め、市場に卸します。だから今、値上がりしている小麦は4月の値上げ分。この後、10月になると、あのロシアによるウクライナ侵攻の影響がここで出てきますから、10月にはもっと小麦の値段が上がります。

仲谷:じゃあ10月はラーメンが一杯800円ぐらいになりますね。

池上:800円で済めばいい。それぞれの企業努力にかかってくると思います。

「テレビに出なくなるまで投資はしません」

仲谷:岸田総理は「資産所得倍増プラン」個人の投資を進めていますが、池上さんは投資などはしていますか?

池上:一般論としては投資を進めていますが、「これからもっと円安が進みます」「小麦の値段が上がります」と私が言ってます。そう言ってる私が、円を売ってドルやユーロを大量に持ってたらどうですか?(笑)。(専門的には)「ポジショントーク」と言いますが、それは自分の利益につながること言ってるということになると、信頼が一気に失われます。だから私はグッと我慢して、そういうことをやりません。

池上:円安になることは前からわかってましたが、外国為替であれば儲け(られると前からわかってましたけど、「それをやったらおしまいよ」と思ってグッと我慢をしました。基本的に、私は普通預金しかしていません。

仲谷:この国は高齢化社会に向けて、(年金には頼らず)自分で稼いでくれ、高齢者になっても働きなさいと言われている気がします。池上さんはまだ働きますか?

池上:私は71歳ですが、まだ働いています。一般論としては、もしお金に余裕があるなら投資をされた方がいいとは思いますけど、私はこういう仕事をしますので、やらない方がいいと思っています。だから、テレビやラジオで喋らなくなれば、自由に投資できると思っていますいが、今は止めているってことです。

下田:人生100年時代と言われています。だから働ける人は年金をもらわず、働き続けましょうという考え方になっていますけど、池上さんは何歳まで働きたいという希望をお持ちですか?(笑)

池上:テレビあるいはラジオで私の話を聴いている方が「こいつ最近、回りくどいなぁ」「滑舌が悪くなってきたなぁ」とか思われたら、そこでおしまいと思っています。

仲谷:先週と今週お話を伺っていますと、池上さん90歳、100歳まで行けますよ。最長老ジャーナリストとして頑張ってください(了)

仲谷一志・下田文代のよなおし堂
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 16時00分~17時30分
出演者:仲谷一志、下田文代、池上彰
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※放送情報は変更となる場合があります。

“高校1年生”から日本代表メンバーに…竹中七海が考える新体操日本代表「フェアリージャパンPOLA」の強さとは?

藤木直人、高見侑里がパーソナリティをつとめ、アスリートやスポーツに情熱を注ぐ人たちの挑戦、勝利にかける熱いビートに肉迫するTOKYO FMのラジオ番組「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」(毎週土曜 10:00~10:50)。4月13日(土)の放送は、トヨタ自動車所属で新体操日本代表(フェアリージャパンPOLA)の竹中七海(たけなか・ななみ)選手をゲストに迎えて、お届けしました。


(左から)藤木直人、竹中七海選手、高見侑里



竹中選手は、1998年生まれ愛知県出身の25歳。子どもの頃から新体操を始め、中学2年生で新体操日本代表・フェアリージャパンPOLA(以下、フェアリージャパン)の練習生(強化選手)に、高校1年生でフェアリージャパンのメンバーに選出。高校3年生で迎えた2016年リオデジャネイロオリンピックには、リザーブ選手として現地に同行。その後、2021年にトヨタ自動車に入社し、同年に開催された東京オリンピックのメンバーに選ばれ8位入賞。現在はパリオリンピック出場を目指しています。

◆3月のドイツ大会で総合優勝!

藤木:フェアリージャパンは、3月2日(土)・3日(日)にドイツでおこなわれたインターナショナルトーナメント「新体操 Fellbach-Schmiden大会」で、団体総合1位、種目別フープ1位、種目別リボンボール1位! すごい成績ですね。

竹中:ありがとうございます。久々の表彰台で、優勝はとてもうれしかったです。

藤木:演技そのものはミスが少なかったですか?

竹中:演技自体にミスはあったので、ちょっと悔しい内容だったんですけど、それでも“ミスからどう対処するか”というところまで練習を積んでいたので、そこは(今大会で)良かったところの1つかなと思います。

藤木:オリンピックシーズン第1戦で優勝するというのは、縁起がいいですよね。

竹中:そうですね。チームみんなの自信になりましたし、やっぱり、ここからが勝負だと思うので、これを糧にまた頑張りたいと思います。

◆フェアリージャパンの強み

藤木:現在25歳で、中学2年生でフェアリージャパンの強化選手に選ばれているということは、フェアリージャパンで10年以上も過ごされているんですね!

竹中:そうですね。昔から憧れていたチームで“フェアリージャパンに入って活躍したい!”と思いながらずっと(新体操を)やってきたので、あっという間に10年が経ったなと感じます。

藤木:ただ、去年の世界選手権(第40回世界新体操選手権大会)では、メンバーに入ることができなかったのですか?

竹中:はい、このときはメンバーから外れてしまって本当に悔しい経験だったんですけど、そのときにほかのチームの良さと日本チームの良さを比較しながら客観的に見れたり、地元で練習したときに、改めて私のことを応援してくださっている方がたくさんいることに気付くことができたりと、あの経験があったから今があるなと感じています。

藤木:外から見たフェアリージャパンの強みというのは、どんなところでしたか?

竹中:動き一つひとつのきれいさとか“(演技を)正しく魅せる”というところは日本チームの強みだなと感じました。その反面、海外チームのエネルギーというか“どんなものでも魅せきる”というところが強みだなと感じたので、日本チームのきれいさがありつつ、強さも活かせたらより良いのではないかと感じました。

藤木:新体操はどうしてもミスがついてくる競技ですけど、試合前や試合中は緊張しますか?

竹中:もう心臓バクバクです(笑)。ミスがないことが一番なんですけど、1つ危ないところやミスがあった後は、試合中なんですけど“どうしよう”とか思いながら……でも、すぐに次の技がやってくるので、そこに集中して、しっかり(力を)出し切れるようにやっています。


竹中七海選手



高見:フェアリージャパンは、5月にウズベキスタンの首都・タシケントで開催される大陸別予選(第15回アジアシニア新体操選手権大会)でパリオリンピック出場権獲得を目指しています。

藤木:現在のフェアリージャパンのなかで、竹中選手はどのような立ち位置ですか?

竹中:これまでいろいろな試合を経験させていただいたぶん、試合のなかでも練習のなかでも、その経験を下の子たちに伝えていくことだと思います。あとは“安定感を持って演技をする”ということが、自分の大事な部分かなと思うので“どんなことがあっても対応できるように”“(失敗しても)すぐに修正できるように”というところは意識してやっています。

藤木:年齢的に(チームを)引っ張っていかなければいけない立場だと思いますが、その辺りはいかがですか?

竹中:キャプテン(鈴木歩佳選手)がもう1人いるんですけど、彼女がサポートしきれない部分を私が補佐役としてサポートしたり、大事なことは伝えていくということを意識的におこなっています。

藤木:最後に、パリオリンピックにかける意気込みを教えてください。

竹中:“パリオリンピックでメダル獲得”が目標なんですけど、そのためにも、まずは5月のアジア選手権でしっかり優勝を目指して、出場枠を獲得できるように頑張りたいと思います!

次回は4月20日(土)の放送です。

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4月13日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月21日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:SPORTS BEAT supported by TOYOTA
放送日時:毎週土曜 10:00~10:50
パーソナリティ:藤木直人、高見侑里
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/beat/

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