放送法めぐる“行政文書”で「安倍政権のパンドラの箱がまた開いた」

安倍政権当時の2014年に、放送法の解釈を巡って、元首相補佐官が総務省に働きかけた経緯が記された文書を総務省が行政文書と認めて、全文が公表された。RKBラジオ『立川生志 金サイト』に出演した、元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんは、「過去の政権の『パンドラの箱』がまた一つ開いた」とコメントした。

元首相補佐官のツイートで総務省が文書を公表

まず、簡単に経緯を振り返ります。

発端は3月3日の参議院予算員会。質問に立った総務省出身の立憲民主党・小西洋之議員が、放送法の解釈変更に関わる内部告発文書を示し、「特定の番組名を挙げ問題視するやり取りもある」と追及しました。

この時点では、岸田首相も松本総務大臣も、文書の信ぴょう性に疑問を呈して明確な答弁を避けましたが、総務省とやり取りをした当の礒崎氏自身がツイッターで「首相補佐官在任中に、政治的公平性の解釈について、総務省と意見交換したのは事実」「数回にわたって意見交換し、それらの経緯も踏まえ、高市総務大臣が適切に判断した」と認めたため、ついに政府も7日になって、文書の公表に踏み切らざるを得なくなりました。

では、その中身です。焦点となっているのは、放送法第4条が定めた「政治的公平性」の解釈です。本来は「個別の番組ではなく、放送全体としてバランスが取れているかを判断する」という解釈です。だから例えば、ある政治課題について、短いニュースでは自民党総裁である首相の会見だけを放送しても、別のニュースや番組で野党の意見も取り上げれば問題ない――というような判断がされるわけです。

麻生太郎総務大臣(当時)が「番組全体を見て判断」と答弁

極端な例で言うと、2004年に、ある地方局が自民党県連の広報番組を85分間にわたって放送したことがあり、これを野党・民主党が衆議院総務員会で質した際、当時の麻生太郎・総務大臣は「政治的に公平であるとの判断は、一つの番組ではなくて、その当該放送事業者の番組全体を見て判断をする必要があるという具合に考えております」と答えています。

ところが礒崎元首相補佐官は、個別の番組についても「政治的公平」を判断するよう、事実上、放送法の解釈変更を総務省に迫りました。文書によると「一つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないかということ」「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要がある」などと言ったとされます。

放送法は「政府が番組内容に干渉しないように作られたもの」

このどこが問題なのか? 文書によると、首相秘書官で総務省出身の山田真貴子氏がズバリ指摘しているので紹介します。

「今回の整理は法制局に相談しているのか? 今まで(政治的公平は)『番組全体で』としてきたものに『個別の番組』の整理を行うのであれば、放送法の根幹に関わる話ではないか。本来であれば審議会等をきちんと回した上で行うか、そうでなければ(放送)法改正となる話ではないのか」「政府がこんなことしてどうするつもりなのか。どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」

実に、ごもっともです。

補足すると、そもそも放送法というのは、戦時中、政府に管理されていたラジオ放送が戦争に協力した反省から、終戦後間もない1950年、新憲法に則って、政府が番組内容に干渉しないように作られたものです。大前提には「表現の自由」を保障する憲法21条があり、放送法もその第1条で放送の不偏不党や自律を保障し、表現の自由を確保することを定めています。この自由が保障されていない国が、ロシアや中国です。

ところが礒崎補佐官はその真逆、「けしからん番組は取り締まる」方向に法解釈や運用を変えようとしたわけです。実際には放送法に罰則規定はないので取り締まれないわけですが、山田秘書官が言うように、メディアの萎縮効果を狙ったものでしょう。

礒崎氏「俺と総理が二人で決める話」

では、この強引な申し入れは礒崎補佐官個人の暴走なのか、それとも官邸の意を汲んだり指示を受けたりしての動きなのか。小西議員もそれが「今回の本質的問題だ」としています。

二つのヒントがあります。一つは、礒崎補佐官が動いたタイミングです。

礒崎氏が「放送法の政治的公平についてレクを受けたい」と、最初に総務省に電話をしたのは2014年11月26日。実はこの8日前、当時の安倍首相は、出演したTBSの「NEWS23」の中で、街頭インタビューの声が偏っていると抗議し、2日後に自民党は民放キー局に「番組の公平、中立、公正の確保」を求める文書を送りました。

順を追うと、18日に首相が怒り、20日に党が文書を送り、26日に礒崎氏が総務省に放送法のレクを求めた――となります。そこにどんなやり取りがあったかは不明ですが、一連の流れにみえます。

もう一つは、礒崎補佐官自身の言葉です。文書によると、総務省側が礒崎氏に、解釈変更について「総理にお話される前に、(菅)官房長官にお話しいただいては」と水を向けたところ、「何を言っているか分かっているのか。この件は俺と総理が二人で決める話。俺の顔をつぶすようなことになれば、首が飛ぶぞ」と、言ったとされます。これも礒崎氏の言葉だけで真偽は判断できませんが、少なくともそう言ったという記録は残っています。

また、最終的に安倍首相に対して行った放送法の解釈変更に関するレクチャーで、山田秘書官と今井秘書官が「メディアとの関係で官邸にプラスになる話ではない」などと説明したにもかかわらず、首相は特定の番組名も上げて「現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき」と、前向きだった旨が文書に残っています。

高市氏「答弁は自らの責任で作った」

そして、結果としてどうなったか――です。

舞台は、2015年5月12日の参議院総務委員会。自民党議員が「一つの番組だけであっても、極端に政治的公平性が遵守されていないものがあると考えますが、いかがでしょうか」と質問したのに対し、当時の高市早苗総務大臣は「政治的公平性」に関する「解釈の補充的説明」として、「選挙の公平性に明らかに支障を及ぼしたり、国論を二分するような政治課題について一方の見解のみを取り上げるような場合は、政治的公平性を確保しているとは認められない」と答弁し、質問した議員は「いち番組だけでも政治的公平に反すると言える場合がある、という答弁をいただいた。放送事業者を十分にご指導いただくようお願いします」と質問を閉じました。

高市大臣は今、総務省が作った文書のうち自分に関する記述はねつ造で、礒崎補佐官と総務省の間で行われたやり取りは一切あずかり知らず、総務省のレクも受けていない――として、この答弁は議員からの質問通告を受けて、自らの責任で作ったと話しています。その真偽は分かりませんが、ただ、結果として高市大臣の答弁は、礒崎補佐官が総務省に求めた通りの内容になったのも事実です。「偶然の一致」かもしれませんが…。

政権に批判的とされるキャスターたちが次々降板

最後に、私の経験を少しだけ。

実は私も、サンデー毎日の編集長当時に、記事内容について自民党から抗議文を送られたことがあります。それも社長宛に。併せて、当時の安倍総裁がフェイスブックに抗議内容を書き込んだので、支持者から脅迫状が届いたり、まあ色々ありました。

2014年に自民党が民放キー局に「番組の公平、中立、構成の確保」を求める文書を出した当時、私は情報番組のコメンテーターでした。当時、現場の萎縮を感じることはありませんでしたが、選挙報道では相当気を使っていましたし、知り合いの局幹部は「圧は感じますよ」と話していました。当時の籾井・NHK会長が「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」と言ったのも、この年です。

そして2015年に先の国会答弁があり、2016年には高市大臣から放送局の停波=放送を止める可能性に言及する国会答弁もありました。それが影響したかは別にして、この間、政権に批判的とされるキャスターやコメンテーターが次々降板していったのも、また事実です。

今、政府は放送法の「政治的公平」について、「番組全体で」という解釈は変わっていないと説明しますが、統一教会問題に続いて、過去の政権の「パンドラの箱」がまた一つ開いた思いがします。

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放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週金曜 6時30分~10時00分
出演者:立川生志、田中みずき、潟永秀一郎
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(監修者:東京・池袋占い館セレーネ所属 小林みなみさん)





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■監修者プロフィール:小林みなみ(こばやし・みなみ)
編集・ライター。出版社、大手占いコンテンツ会社勤務を経て、フリーランスに。会社員時代に占いに初めてふれ、その世界にはまる。現在は、雑誌・Webで占い記事をメインに執筆している。

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