90年代初めの"サブカル・バンド"にはプレッシャーになった「浪漫飛行」の大ヒット

「宝島」を読んで悦に入っていた青春時代 ©STVラジオ

シンガーソングライターの松崎真人が、'70~'90年代の日本の曲・日本語の曲を厳選かけ流し(イントロからアウトロまでノーカット)でお届けするSTVラジオ『MUSIC☆J』。5月8日は、10曲目~12曲目の「つながり」にフォーカスします。

☆10曲目「浪漫飛行/米米CLUB」

松崎:言わずと知れた1990年度のオリコンで年間2位。米米CLUBの中でも特大級のヒットでございます。クレジットを見ると、アレンジが中崎英也で共同クレジットになってるんですね。作曲が米米CLUBアレンジがで米米CLUBと中崎英也というクレジットなので、こういう場合は往々にして、どこからが作曲でどこからが編曲かあまりこだわらないというパターンが多いんですけど、そうでないと当時、浪漫飛行が出るまで米米CLUBは、16ビートのファンクをやって、同時にステージでは面白いことをやって、シュールな前衛芸術なのか?お笑いなのか?というギリギリを攻めるマニア受けのバンドだと思われていたわけです。でも大所帯のバンドを維持するには、どっかでブレイクというか大ヒットが欲しいとうことで、狙って大トッと言うのはなかなか生まれないんですが、ここは狙って取ったというのはスゴいですね。

松崎:で、これ(浪漫飛行)も"元歌"がある曲でして、次の曲も同じ元ネタです。

☆11曲目「トゥナイト/佐野元春」

松崎:当時、佐野元春さんが自分でやっていた雑誌やFM番組の色んな情報を加味すると、恐らく、米米CLUBの浪漫飛行と同じ元ネタにスゴく触発されてるんじゃないかと思います。きょうは"3段逆スライド"でもう3曲目で元歌に行ってしまいます。「トゥナイト」の2年前のヒット曲ですね。歌詞で描かれている情景を含めて、同じニューヨークを描いている曲です。そこら辺も共通するんじゃないかと思いますね。

☆12曲目「STEPPIN’OUT/JOE JACKSON」

松崎:もうメロディーのどこを取って、どこをパクったとか、そういう次元じゃないんですよね。この単調な割とマシン的なリズムにシンセベースを♪ドンドンドンドンって行く感じ。で、米米CLUBの浪漫飛行が技ありなのは、全然テンポが違うんです、いま聴くと。元春さんの曲もそうですし、音の各要素で少しずつJOE JACKSONの良さを取り入れてるんですけど、やはりメロディじゃないというところと、小技の効かせ方に日本的な遊び、日本語の遊びが高等戦術として使われているところが、それぞれスゴいなと思うところです。

松崎:ちょっとだけ付け足すと、「浪漫飛行」とか「君がいるだけで」で米米CLUBが売れたコトって言うのは、同系統の「劇団系」とか「アート系」「パフォーマンス系」の(いわゆるサブカルチャー系)バンドが、"あなたたちも米米CLUBのように大きく売れて欲しい"というプレシャーを与えられる大きな遠因になっていたんです。例えば、「メンズ・ファイブ」とか、浜田麻里さんがいた「モダン・チョキチョキズ」とか、放っておいてもらえたら面白く活動が続けられたのに、「浪漫飛行」的な成功を、当時、90年代後半とかCDがパカパカ売れていた時代には、そういう面白いことやってるバンドにも大きいヒットを望むみたいな風潮がございまして、その白羽の矢が立ったバンドには、それなりに苦労したということです。これは"実話"込みでございますですね。

<5月8日のプレイリスト>
M01「Get Wild/TM Network」
M02「Dear My Friend/Every Little Thing」
M03「深い森/Do As Infinity」
M04「プリティー・プリティー/石野真子」
M05「恋のバッド・チューニング/沢田研二」
M06「ごはんができたよ/矢野顕子」
M07「五月のバラ/鹿内孝」
M08「飛んでイスタンブール/庄野真代」
M09「ペガサスの朝/五十嵐浩晃」

M10「浪漫飛行/米米CLUB」
M11「トゥナイト/佐野元春」
M12「STEPPIN’OUT/JOE JACKSON」
M13「青空のある限り/ザ・ワイルドワンズ」
M14「忘れ得ぬ君/ザ・テンプターズ」
M15「愛の挽歌/つなき&みどり」
M16「HURRY GO ROUND/hide with Spread Beaver」
M17「恋のマジックポーション/すかんち」
M18「丸ノ内サディスティック/椎名林檎」
M19「君は風/佐々木幸男」
M20「雨が空を捨てる日は/中島みゆき」

M21「ダンシング・オールナイト/もんた&ブラザーズ」
M22「紳士同盟/薬師丸ひろ子」
M23「泣かないで/舘ひろし」
M24「十戒(1984)/中森明菜」
M25「シャツのほころび涙のかけら/NSP」
M26「決められたリズム/井上陽水」
M27「ジュテー厶/坪倉唯子」
M28「ハナミズキ/一青窈」
M29「ホンダラ行進曲/ハナ肇とクレイジー・キャッツ」
M30「もうひとつの土曜日/浜田省吾」

<松崎真人の編集後記>
「恋のバッド・チューニング/沢田研二」。あの「TOKIO」の次のシングルとして制作陣のプレッシャーは大きかったと思うが、それを聴き手に悟らせない遊び心溢れる楽曲。女性コーラスにあのパタパタママで有名な「のこいのこ」さんを起用していたことは今回初めて知った。男と女は「ズレてる方がいい」というコンセプトは2021年にも通用するかも。

STVラジオ『MUSIC☆J』(毎週土曜 18:00~21:00)
 

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MUSIC☆J
放送局:STVラジオ
放送日時:毎週土曜 18時00分~21時00分
出演者:松崎真人(まつざき・まこと):シンガーソングライター(北海道出身)
番組ホームページ

70年代~90年代の日本のポップス・日本語のポップスを中心に"厳選かけ流し"でお届け。パーソナリティは、北海道出身のシンガーソングライター・松崎真人。音楽への深い造詣と知識に裏打ちされた含蓄あるトーク、選曲の幅広さでリスナーの支持を全国に広げている。松崎の"微妙な滑舌"も病みつきになるかも。

※該当回の聴取期間は終了しました。

タクシー会社廃業で住民の足をどう確保するか。千葉県いすみ市で新たな一手

5月11日(火)はタクシー会社が廃業してしまった地域の住民の足の確保について。以前から社会問題となっていましたが、新型コロナがさらにタクシー会社の廃業の動きを加速させ、車を運転できない人がとても困る事態となっています。こうした中きょう取り上げるのは、千葉県いすみ市内で4月から始まった取り組み。TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で中村友美ディレクターが取材報告しました。

★タクシー空白地帯を自家用車が有償で運送

いすみ市内で始まったタクシー空白地帯対策とは?一般社団法人ツーリズムいすみの山内絢人さんに聞きました。

一般社団法人ツーリズムいすみCMO・山内絢人さん
この旧夷隅町エリアは2019年8月に地元のタクシー業者が廃業され、その結果としてタクシー事業者が一人もいない状況となりました。平日は市が行っているデマンド交通があるんですけども、土日祝日の足がまったくない状況で非常に皆さん困ってらっしゃいました。私どもは、自家用有償旅客運送という、白ナンバーでの有料送迎サービスを開始してます。土日祝日の9時~5時で初乗り1.27kmで320円、さらに272mごとに60円。これは通常のタクシー料金の概ね6割程度の料金です。

ツーリズムいすみは観光地域づくりを推進する一般社団法人。そちらが所有している8人乗りの自家用車が、運輸局に許可を取った上でタクシーの役割を果たしています。安全面の担保のため、去年の道路運送法改正で、自家用車の有料送迎に対しタクシーやバスの事業者が安全管理・車両整備の協力をした上で運用する制度が始まりました。今回のケースでは離れたエリアにある浪花タクシーが協力をしています。

運転はタクシーの運転に必要な第二種免許ではなく第一種免許を持っている人でも講習を受ければ可能となっています。当初はツーリズムいすみの職員数名が担っていましたが、廃業したタクシー会社の運転手もこの取り組みに賛同しドライバーの一人として働いています。

料金は営利目的ではないのでドライバーに報酬が払える程度の安めの額に設定され、さらに、いすみ市内で配布されている高齢者、障害者用の福祉タクシー券も使えるので対象者は実質ただで乗ることもできます。

★これまでは客の送り迎えを店側が担っていた

今回の取り組みについて地元ではどう受け止められているのか。夷隅商店会会長の吉田優さんに聞きました。

夷隅商店会会長・吉田優さん
私ども衣料品業をやってまして、お客様がとにかく何が欲しいんだから迎えに来てっていう電話等が多かったですね。店側で場所を聞いて、迎えに行って送っていくということを私たちサービスとしてやっておりました、個人的に。ですからタクシーができることによって、非常に商店街としてもメリットが大きいと思います。

タクシー空白地帯にもバスは一応ありますが、本数が少ないです。また、いすみ市といえばいすみ鉄道も走っていますが市内各地を行き来できるものではありません。商店街のお客さんは特に車が運転できない地元の高齢者が多く、タクシー会社廃業後は店側に送り迎えを求める電話がかかってきて、それに対応していたといいます。他にも、この地域には病院、スーパー、役所など生活の要となる場所が多くあるのに、自由に行き来できない状況となっていたため、今回の自家用車の有料運送にはとても期待できると吉田さんは話しています。

★新型コロナワクチンの接種会場への輸送にも活用へ

このいすみ市内の自家用有償旅客運送サービス。近々さっそく重要な役割を果たしそうです。

一般社団法人ツーリズムいすみCMO・山内絢人さん
今後、高齢者の方々を対象としたコロナワクチンの接種がいすみ市内でも始まるんですけども、最近市役所からもご連絡頂きまして、高齢者でコロナワクチンの接種会場まで行く足がないという方々にこのサービスを使って頂けるというような話になってます。これは非常に私としても、高齢者の役に立っているという観点で非常に嬉しいなと思ってます。」

いすみ市のワクチン接種は地域の文化会館となっていて、こちらもやはり不便な場所にあるため、市役所から直接協力の要請があったといいます。

なお今後の展望としては平日も運行したり、車の台数を増やしたりしてより利便性を高めていくほか、地域活性化のためにこのサービスを活用した観光ツアーなども考えていきたいということです。

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