「グッドバイからはじめよう/佐野元春」野性の勘で自ら流れを変えた"追伸的"シングル曲

佐野元春を聴いてメリークリスマス! ©STVラジオ

ポプコン出身のシンガーソングライター・松崎真人が、'70~'90年代の日本のポップスを中心に厳選してノーカットでお届けするSTVラジオ『MUSIC☆J』(RCCラジオ同時ネット)。1枚のシングルレコードのA面とB面を両方聴きながら、その背景に思いを寄せる「ところでB面なんですが」。この日は、松崎真人自身の思いが詰まったセレクトです。

松崎:自分の中で、A面・B面がすごく重要な意味を持った楽曲って何だろうと考えてみたら「これだ!」というのを思いつきました。佐野元春が「ナイアガラ・トライアングル Vol.2」に参加して、自分の3枚目のアルバム「Someday」が大ヒットして、これからは佐野元春的な言葉使いとか、サウンドの作り方とか、日本語のロックに対する(詞の)乗せ方とか、そういったモノが時代の主流になっていくであろうという頃です。佐野元春を育ててきたスタッフも「よし、この"ナイアガラ・トライアングル Vol.2"から"Someday"の流れで、もう1枚アルバムを出したら、そざかし今までの投資が回収できるだろう」と思っていたし、ファンもそれ(もう1枚のアルバム)を期待していたところがあると思います。

松崎:(ところが)僕もビックリしたんですけど、これからスターダムに登り詰めて、ゲスな話ですけど「儲かる」というところで、佐野元春と言う人は違うんでしょうね、たぶん"野性の勘"で「いま自分がここにいて、同じような"Someday"の続編のみたいなものを作ると言うことは、自分の音楽人生にとって正しいことではない」という野性的な勘が働いたと想像するんです。非常に印象的なシングルを1枚出して、ニューヨークに渡ってしまうわけですよね。
 
松崎:その後、日本語のラップのひとつの源流になっている「VISITORS」という衝撃的な、「Someday」までの流れをぶった切ったかのうように思えたアルバムを出して、ビックリさせたわけです。それまでの「Someday」までの3部作「Back to the Street」「Heat Beat」そして「Someday」までを出した後のピリオドと言うか、P.S.=追伸のような形で出されたのが、このシングルです。まずA面。
 
M13「グッドバイからはじめよう/佐野元春」

松崎:これは佐野元春が元から温めていた曲で、自分をとても可愛がってくれたおばあちゃんが亡くなったときに、偲んで書いた曲だそうです。

松崎:僕なんかには絶対にマネなんて出来ない、全部を言葉で語らない、音楽とかビジュアルで語るという手法が上手く使われているシングルです。雪景色の中を、元春が冬のコートを着込んで歩いている横顔の写真がジャケットなんですけど、ポケットに「インタビュー」という、有名なニューヨークの出版社が発行する雑誌が入ってるんです。そこで「やはり自分は旅立つよ」ということを示唆しているわけです。B面曲、これも名曲です。
 
M14「モリスンは朝、空港で/佐野元春」

松崎:この曲は聴いたことないという方も多いと思います。(中略)この曲は、いかにもキーボードで書いた感じの曲で、僕個人敵には、ビートルズカラーと言うよりも、それをフォローしたトット・ラグレンのカラーを感じる曲で、すごく好きなB面曲です。A面もいい曲、ひっくり返してB面も、ふだん聴けないような、そのアーティストの名曲が入っている組み合わせだと思います。

【編集後記】
「涙をふいて/三好鉄生」 1982年のリリース時には僕の耳がまだ貧しかったので、歌は上手いけれど野暮ったい曲だな……などと生意気にも思っていた。ところがMUSIC☆Jをはじめて数年を経た今、聴いてみると……バッキングがすごーく良い。奇をてらったところはないのだが、渋くてツボをついてくるアレンジ。クレジットを確認したところ、ドゥービーブラザースやスティーリーダンで活躍したギタリスト、ジェフ・バクスターが弾いているではないか!。渋いプレイに渋い声……ぜひ、懐メロとしてでなく、日本人ソウルシンガーのスタンダードとして聴いてみて欲しい。(松崎 真人)

【12月21日のプレイリスト】
M01「flower/L'Arc∼en∼Ciel」
M02「愛をこめて花束を/Superfly」
M03「い・け・な・いルージュマジック/忌野清志郎+坂本龍一」
M04「冬の色/山口百恵」
M05「笑顔のまんま/BEGIN with アホナスターズ」
M06「銀色の波/ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」
M07「むらさきの夜明け/美空ひばり」
M08「約束/新居昭乃」
M09「奈落の花/島みやえい子」

M10「ギザギザハートの子守歌/チェッカーズ」
M11「負けるもんか/BARBEE BOYZ」
M12「ノックは夜中に/メン・アット・ワーク」
M13「グッドバイからはじめよう/佐野元春」
M14「モリスンは朝、空港で/佐野元春」
M15「永遠のパズル/橘いずみ」
M16「この国に生まれて良かった/村下孝蔵」
M17「J.BOY/浜田省吾」
M18「クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)/サザンオールスターズ」
M19「シャンプー/アンルイス」

M20「本日のスープ/大泉洋 with STARDUST REVUE」
M21「あなたを感じていたい/ZARD」
M22「最後のHoly Night/杉山清貴」
M23「何も言えなくて..—WINTER VERSION—/J-WALK」
M24「六本木ララバイ/内藤やす子」
M25「涙をふいて/三好鉄生」
M26「KANのChristmas Song/KAN」
M27「CRAZY!/Birthday Suit」
M28「フライングゲット/AKB48」

STVラジオ『MUSIC☆J』(毎週火曜~金曜 19:00~22:00)/ RCCラジオ 同時生ネット

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MUSIC★J
放送局:STVラジオ 他1局ネット
放送日時:毎週火曜~金曜 19時00分~22時00分
※放送局によって日時が異なる場合があります。
出演者:松崎真人(まつざき・まこと):シンガーソングライター、選曲家。北海道札幌市出身。1984年ヤマハポピュラーソングコンテストで優秀賞を受賞し、85年「たわいないトワイライト」でデビュー。92年、佐木伸誘とユニット「Birthday Suit」結成。現在はソロでラジオパーソナリティやライブを中心に活動。
番組ホームページ

リクエストメール:mj@stv.jp
twitterハッシュタグ:#musicj 

70年代~90年代の日本のポップス・日本語のポップスを中心に"厳選かけ流し"でお届け。パーソナリティは、北海道出身のシンガーソングライター・松崎真人。音楽への深い造詣と知識に裏打ちされた含蓄あるトーク、選曲の幅広さでリスナーの支持を全国に広げている。松崎の"微妙な滑舌"も病みつきになります!。
★RCCラジオでも同時生放送(~21:50)

※該当回の聴取期間は終了しました。

グソクムズが『TOKAI RADIO MUSIC PROGRAM SESSIONS 929』の新DJに!

グソクムズは、東京・吉祥寺を中心に活動する4人組バンド。2021年7月にリリースした『すべからく通り雨』が話題を呼び、12月にファーストアルバム『グソクムズ』、2022年12月にはセカンドアルバム『陽気な休日』をリリース。ロックフェス出演や全国ツアーの成功を経て、2024年4月3日にメジャーデビューする。

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