「スター誕生/ルー・フィン・チャウ」谷村新司の筆が乗った壮大なリアルストーリー・ソング

「和田アキ子を懐メロ歌手にしない!」 ©STVラジオ

STVラジオ『MUSIC☆J』。土曜・日曜の18:00~、'70~'90年代の日本の曲・日本語のpopsを中心にイントロからエンディングまでノーカットでお届けする3時間のライブ・プログラム。ポプコン出身のシンガーソングライター・松崎真人が、ご案内しています。この日は、いま欧州の一角で起きている悲惨な事態が、後にどのようなことを引き起こすのか、爪痕を残すことになるのかを、楽曲を通して少しだけ思いを馳せてみる選曲だったと思われます。
 
M07「いい日旅立ち/山口百恵」【18:36頃】

松崎:山口百恵さんも、日曜の昼11時からやっていた『スター誕生』という番組から旅立った大スターですけど、この「いい日旅立ち」が出たのが1979年です。『スター誕生』は長い歴史があるので、スタ誕の誰々を見て自分もスターになりたくなったと言う連鎖が起きていました。

松崎:山口百恵の武道館公演を観ていたひとりのベトナム人少女がいました。当時のベトナム戦争終結に伴うサイゴン陥落によって、(中略)多くの方が祖国を脱出したわけですけど、その中でも船で各国へ逃げて行った方々を通称「ボート・ピープル」と当時、言っておりました。そのボート・ピープルの人たちの中に、ルー・フィン・チャウという少女がいたわけです。

松崎:ルー・フィン・チャウは元々、富裕層のお嬢様だったらしいんですけど、日本に来て、山口百恵に出会って、やがて自分も『スター誕生』に出ることになるわけです。彼女のデビュー曲は「いい日旅立ち」と同じ、谷村新司が手がけることになります。「いい日旅立ち」から経ること3年、1982年12月24日デビューです。ベトナムからやって来たルー・フィン・チャウのデビュー曲。
 
M08「スター誕生/ルー・フィン・チャウ」【18:42頃】

松崎:谷村新司の作詞・作曲なんですが、すごく筆が乗っている感じがしますね。リアル・ストーリーが真芯にあるので、馬飼野康二の壮大なアレンジと相まって名曲になっていると思います。(ルー・フィン・チャウは)意外と活動期間は短くて、3枚のシングルと2枚くらいのアルバムを出して、いまはまた海外に渡っています。

松崎:先ほど、ベトナム戦争の話をしましたが、きょうの洋楽はそれです。僕は最近、ずっと休日に動画サイトでアメリカのテレビドラマを見たりしているんですが、どうやら一般的なアメリカ合衆国民の間では「ベトナム戦争は間違いだった」という認識は共有されているようだと、ドラマの筋立てなどから見て判るんです。

松崎:もうずっと前の話ですが、1982年にアメリカの社会的な目を色々と切り取って歌ったビリー・ジョエルの問題作「NYLON CURTAIN」というアルバムが出るんですが、その中でベトナム戦争のことが描かれています。長尺ですが、曲自体は素晴らしい曲なので、聴いてもらおうと思います。

M09「GOODNIGHT SAIGON/BILLY JOEL」【18:48頃】

松崎:先ほど海外ドラマの話もしましたが、そういうドラマから伺い知れるアメリカ国民の識共通認識として「あのベトナム戦争に深入りしたのは間違いだった」っていうのはあるんじゃないかなと予測できるんです。あと、9・11テロを許せないっていう気持ちもあって当たり前。だけど、その後のテロとの戦いに於けるイラクでアメリカがやったこととか、その前に湾岸戦争でアメリカがやったこととか、つい最近ではアフガニスタンにも駐留しましたよね。そういうものも結構、ドラマでは取り上げるんです。そこに、傷を負った自国の兵士とか、受けたトラウマとかに関する記述とか描写とかもたくさん出てきていて、アメリカではそれなりに「自分の国はかつて何をしていたか」について、向き合う文化はあるんだなとは思うんです。

松崎:ただ1つだけ、ドラマを見ていて絶対に出てこないのが、東京大空襲と広島・長崎に原爆を落とした事実です。これをモチーフにしたドラマを見たことないです。やっぱり、それだけ認めるのが恐ろしいんだと思います。誠実じゃないとか、騙されているとか、そういうことじゃなくて、認めるのが恐ろしいんだと思います。でも、やっぱりそこは謝ってもらわないと「新しい何か」が始まらない気も、僕はしてるんですけどね。
 
戦争は映画に於ける最大のテーマと言われることがありますが、映画やドラマに限らず、音楽でも戦争・紛争をテーマとした楽曲は枚挙にいとまがありません。大切なのは、その映画でも楽曲でも、それに込められた制作者の思いを感じ取ることかも知れません。この日のラストチューン「大陸の花嫁にあこがれて/松崎真人」も是非、聴いて下さい。

 【今宵の一曲入魂】
「だってしょうがないじゃない/和田アキ子」  作詞:川村真澄・作曲:馬飼野康二・編曲:矢島賢という布陣の1988年作品。ちなみに矢島賢は山口百恵「プレイバックPaat2」など数々の名フレーズをレコーディングしたギタリストであり、80年代に入ると夫人の矢島マキと「LIGHT HOUSE PROJECT」を立ち上げ、フェアライトCMIという最新デジタル機器を駆使してTOM☆CATの「ふられ気分でRock’n Roll」などを制作した編曲家・プロデューサー。このことからも、和田アキ子と周辺スタッフは「和田アキ子を懐メロ歌手にしない!」という強い意志を持っていることがわかる。また元気にステージに復帰してナニワ・エキスプレスあたりをバックに歌いまくって欲しい。今のソウルを。(松崎 真人)

4月10日のプレイリスト M29「大陸の花嫁にあこがれて/松崎真人」パーソナリティ渾身のメッセージソング

【18:00~18:59】
M01「今夜だけきっと/STARDST REVUE」
M02「my sweet darling’/矢井田瞳」
M03「花咲く旅路/原由子」
M04「スマイル/ホフディラン」
M05「伝説の少女/観月ありさ」
M06「日曜日はストレンジャー/石野真子」
M07「いい日旅立ち/山口百恵」
M08「スター誕生/ルー・フィン・チャウ」
M09「GOODNIGHT SAIGON/BILLY JOEL」
【19:00~19:59】
M10「唇をかみしめて/吉田拓郎」(Bill Schneeのリミックス)
M11「中央フリーウェイ/荒井由実」
M12「化粧/中島みゆき」
M13「縁切寺/さだまさし」
M14「ロンド/オフコース」
M15「うわさのカム・トゥ・ハワイ/小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド」
M16「ハワイへ行きたい/大江千里」
M17「フラガール-アコースティック・ヴァージョン-/ジェイク・シマブクロ」
M18「あこがれのハワイ航路/岡晴夫」
M19「雨あがりのダウンタウン/アグネス・ラム」
M20「だってしょうがないじゃない/和田アキ子」
【20:00~20:59】
M21「花束(ブーケ)/八代亜紀」
M22「愛をこめて花束を/Superfly」
M23「花はおそかった/美樹克彦」
M24「SEA SIDE WOMAN BLUES/前川清」
M25「夜桜お七/坂本冬美」
M26「家路/浜田省吾」
M27「ベステン ダンク/高野寛」
M28「瀬戸内行進曲(IN THE MOOD)/クリスタルキング」
M29「大陸の花嫁にあこがれて/松崎真人」

MUSIC★J
放送局:STVラジオ
放送日時:毎週日曜・土曜 18時00分~21時00分
出演者:松崎真人(まつざき・まこと):シンガーソングライター、選曲家。北海道札幌市出身。1984年ヤマハポピュラーソングコンテストで優秀賞を受賞し、85年「たわいないトワイライト」でデビュー。92年、佐木伸誘とユニット「Birthday Suit」結成。現在はソロでラジオパーソナリティやライブを中心に活躍中。
番組ホームページ

★リクエストメール:mj@stv.jp
★twitterハッシュタグ:#musicj 
 70年代~90年代の日本のポップス・日本語のポップスを中心に"厳選かけ流し"でお届け。J-popの源流を築いた往年の名曲を毎日30曲前後も紹介するパワー・プログラム。いまの10代~20代にも聴いて欲しい、日本の音楽がわかる番組!ブームの"シティ・ポップ"、その源流や背景、エピソードは「MJ」の最も得意なフィールドです。
 
 パーソナリティは、北海道出身のシンガーソングライター・松崎真人。音楽への深い造詣と知識に裏打ちされた含蓄あるトーク、選曲の幅広さでリスナーの支持を全国に広げている。

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※該当回の聴取期間は終了しました。

クリエイティ部最終回!ブルボンヌ、重藤暁が「ラジオとの縁」を語る!

女装パフォーマーのブルボンヌと、伝統芸能研究家の重藤暁を迎えた3月29日放送「西川あやの おいでよ!クリエイティ部(文化放送)」。
「きょうのクリエイティブ」では「ラジオとの縁をクリエイティブ」というテーマでお届けした。

本日の放送で最終回を迎える「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」。今週は「ラジオとの縁をクリエイティブ」と題して、スタジオ部員の「ラジオとの縁」を掘り下げていった。

西川あやの「『金曜日のスタジオ部員とラジオ』ということで、ブルボンヌさんは初めてのラジオ出演は大体いつ頃だったんですか?」

ブルボンヌ「いわゆる“オネエタレントブーム”的に2010年くらいからテレビの情報番組みたいなのは出させていただけたので、そこからラジオにもお呼ばれはちょいちょい単発ではあったんですよ。それこそ文化放送さんの『夕やけ寺ちゃん活動中』も3回か4回くらいは出てるんじゃないかな?レギュラーとしてはNHKラジオ第1さんで2013年の春に始まった『午後のまりやーじゅ』っていう帯番組の木曜パーソナリティに抜擢していただいて2年間務めたんですね」

重藤暁「へぇ〜!」

ブルボンヌ「当時、プロデューサーさんに『NHKでオネエタレントさんがレギュラーで起用されたのは初めてなんですよ』って言われて。しかもお昼の番組で、農作業とかもされてる高齢の方もいっぱい聴いてる時間帯だったから、むちゃくちゃ最初緊張したチャレンジでしたね」

西川「そうだったんですかぁ〜!」

重藤「そこからがきっかけでラジオ好きになったって感じなんですか?」

ブルボンヌ「そうなの!前にちょびっと『クリエイティ部』でも話したんだけど、いま話したように緊張があって『こんな人が出てきたら嫌だ』って思う人がまだ多い時代だって私も感じちゃっていて。本当にへりくだるというか、ちょっと今思うとみっともないくらいに『いやぁ、昼間からこんな薄気味悪い声聞かせてごめんなさいねぇ〜』みたいなピエロ感を自分から追い込んでやっちゃってたのよ。で、だんだんそれがほぐれてはいったんだけど、みなさん優しかったから。でも特に前半はそういうギャグをいっぱいやったから、2年後の最終回の公開生放送の時に、今日みたいに直筆のお便りがいっぱい届いて嬉しかったんだけど、高齢のおばあちゃまからの『ブルちゃんは自虐っぽいギャグをいっぱい言ってたけど、素敵な人なんだからそんなにそんなことしないでね』っていうお便りを読んで大号泣しちゃって。あたしは勝手に『この人たちはあたしなんて受け入れてくれない』って思い込んでたけど『壁を作ってるのは自分の問題でもあったんだな。もっとちゃんと自分を信じよう』と思って。そんなことをやりとりができるって『ラジオってすごいメディアだ!』って気付かされた。そこからラジオ大好きになりました」

西川「今週は毎日、スタジオ部員の皆さんに『ラジオをやっててよかった瞬間』を聞いてるんですけど、重藤さんはどうですか?」

重藤「なんかあの……田舎のおばあちゃんから『あなた、そんなに卑下しなくていいよ』って」

ブルボンヌ「もーう、被せるんじゃないよ(笑)」

西川「しかもそんなに卑下してなかったし(笑)」

ブルボンヌ「そうだよ!強気だよ、暁ちゃんは」

西川「金曜は『浜祭』で直接リスナーの皆さんとお会いできたのでね。対話できたのがよかったですね」

ブルボンヌ「浜祭はほんとよかった!」

重藤「楽しかったですねぇ。すごい楽しかったぁ〜」

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