ふらっと こども電話相談室 2024年2月28日放送
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. イカの血はなぜ赤くないんですか?(東京都 みつひこくん 7歳 小学1年生)
(回答した先生)鈴木香里武さん/岸壁幼魚採集家
向井おにいさん:みつひこくんは、将来の夢は何かあるんですか?
― パイロット。
向井おにさん:おお、すごいですね。なんでパイロットになりたいと思ったの?
― 飛行機が好きだから。
向井おにいさん:みつひこくんの質問、イカの血が赤くないことをなにで知ったの?
―お母さんが料理してるところを見たから。
向井おにいさん:何色だった?
― 透明。
向井おにいさん:透明・・・。
― うん、そう。
香里武先生:みつひこくん、よく気づいたね。そもそも、ぼくたち人間の血は赤いよね。なんで人間の血が赤いんだろうって考えたことはある?
― わかんない。
香里武先生:これね、ぼくたち人間が生きるためには酸素っていうものが必要なのね。酸素って聞いたことある?
― ある。
香里武先生:息を吸うときに空気の中から酸素っていうものを体の中に取り込むんだよね。そして全身に運んでいかなきゃいけないんですね。
― うん。
香里武先生:それで、酸素は自分で体の中をめぐることはできないから、酸素を運ぶ乗り物が血の中にはあります。かっこいい名前がついてるんだ。ヘモグロビンっていう名前の乗り物があるんですね。このヘモグロビンは酸素を乗っけると赤くなるっていう性質があります。なんとなくイメージしてね、みつひこくんが好きな飛行機でもいいや。みつひこくんが飛行機に乗ると飛行機が真っ赤っかに変身しちゃう・・・そんなイメージ。これが人間の場合ね。
― はい。
香里武先生:イカもやっぱり酸素を運ぶための乗り物が血の中にあります。だけど、それが人間が持っている乗り物とは違うのね。ヘモグロビンとは違って、イカの場合はヘモシアニンっていう名前の乗り物、別の飛行機に乗ることになってます。このヘモシアニンに酸素が乗っかると青くなるっていう性質があるのね。
向井おにいさん:ほお、青・・・。
香里武先生:さっき、みつひこくんがイカの血を見たときは透明だったって言ってくれたけれども、普段は透明です。酸素を乗っけていないとき、空(から)で飛んでいる飛行機は透明で、酸素を運ぶと青くなるっていう性質があるんです。なかなか難しい話かもしれないけれども、なんでイカの血が赤くないのかっていうと、人間の血と違う乗り物を血の中に持ってるからっていうふうに考えてみるといいかなと思います。たぶんみつひこくんは飛行機詳しいと思うんだけど、飛行機っていろんな色の種類があるよね。みつひこくんはどんな色の飛行機が好き?
― イエロー。
香里武先生:イエロー! 黄色い飛行機があるんだ。ぼくは見たことないなあ。それはどんな飛行機なのかな?
― 小型ジェット。
香里武先生:小型ジェットなんだ。そっか、そっか。ぼくはこの間、沖縄に行くときに真っ白のジャンボジェットに乗ったのね。そんなふうに、どこに何を運ぶ飛行機かによって色が違ってますよね。
― はい。
香里武先生:そんな感じで、血の中に別の乗り物があるから色が違う。これが答えになります。
― よくわかりました。
香里武先生:じゃあ、なんで別の乗り物なのかっていうと、進化の中で変わってきたみたいですね。地球上にあんまり酸素がなかった頃は、青くなる乗り物のほうが有利だったんですって。海の中とかもそうですね、酸素が陸上ほどないから青くなる。でも、陸上でいっぱい運動するようになった人間のような哺乳類とかはたくさんいっぺんに酸素を運ぶために適したヘモグロビンという乗り物を開発するようになったわけなんですね。
向井おにいさん:いやあ、みつひこくんのおかげでぼくも勉強になりました。ありがとうございました!
― ありがとうございました。
香里武先生:考えてみると、ヘモグロビンって鉄が入ってる。鉄は酸素とくっついて錆びると赤くなりますよね。ヘモシアニンには銅なんですって。銅って十円玉が錆びると青くなりますね。その違いなんですね、実は。
向井おにいさん:いやあ、みつひこくんが飛行機が好きだというところを即、取り込んでわかりやすく説明するあたり、まあ~頼りになる先生です!
(回答者プロフィール)鈴木香里武さん。全国の漁港に出かけ岸壁に集まる魚の赤ちゃんを観察・研究している「岸壁幼魚採集家」。たくさんの人に魚の魅力を伝えながら、幼魚ばかりを集めた世界的にも珍しい「幼魚水族館」(静岡県清水町)の館長も務めています。