ゲストは、気象予報士・増田雅昭さんです!
豪雨や台風など、今年の夏は異常気象が続いていますが、なぜ、このような気象になっているのか。そして、豪雨から身を守るためにできることをお伝えしたいと思います。
8月以降、関東だと千葉で豪雨、富山、石川、福井でも大きな被害が出ました。台風の発生、接近数が多いというのも影響していると思います。9月のはじめで24号まで発生していて、55年ぶり(1971年)の早さです。
今回、台風が直接きていない地域で大雨があったようですがなぜでしょうか?
台風が少し離れている、または台風が過ぎ去ったあとに豪雨が起こっています。台風が北上してくると、熱帯から大量の水蒸気を持ち込みます。これが雨の原材料となり、台風から離れた地域でも豪雨が発生しやすい状況に。しかも、今年は台風の数が多く、この状況になってしまいことが多いのです。このメカニズムにより、千葉県で発生した豪雨など、全国各地で予期せぬ災害が引き起こされています。当然、これから9月~10月も台風はまだまだ発生して、接近してきます。
今回の豪雨は、あっという間に冠水してしまった印象でしたが、どうでしょうか?
特に8月中旬に起こった千葉の豪雨。正直、今の科学の限界を超えた豪雨だと思います。気象庁の最先端のスパコンが出している予測データや、海外の気象機関が出しているデータをみても、当日の日中の時点では
どこも予測できていなかった。つまり、今の人類の限界を超えているということ。最終的には、レベル5の大雨特別警報は出ましたが、豪雨になると分かったのは本当に直前です。
なぜこのようなことが起こっているのでしょうか?
ひとつの原因は温暖化です。気温が上がることで、空気中の水蒸気が増えます。その水蒸気がどこかに集中してしまうと、予測以上の豪雨になってしまう。予測技術も年々向上していますが、さらにその上をいく豪雨が起こってしまっています。
沿岸前線というのは、沿岸部、陸と海の境あたりにできる前線で、空気のぶつかり合いです。海は暖かく湿った空気が大量にあるわけですが、一方で、関東平野とか平野部は冷たい、涼しい空気がたまりやすくて、その違う性質の空気同士がぶつかると、上昇気流が起こるんです。つまり、陸にたまった冷たい空気の上に、海から来た大量の水蒸気が次々と乗り上げる。その上昇気流のところで、積乱雲が次々と発生して、なかなか雨が止まない。特に台風が絡むなど大量の水蒸気が乗り上げると、豪雨になりやすいんです。今回の千葉豪雨も、千葉県の陸上と海上で、気温差ができていました。沿岸前線が発生して、そこで積乱雲が発生し続けていたんです。
そして、当然「秋の方が陸には冷たい空気がたまりやすい」ということです。なので、秋は、意外と豪雨の季節なんです。実は、日本国内の豪雨の記録は、1時間あたりだと153ミリが記録なんですが、これが観測されたのが10月なんですね。この時も沿岸前線が発生していました。そして、その豪雨の記録を出したのが、千葉県・香取市です。関東でいうと、沿岸前線が発生しやすいのは、 沿岸部である千葉・茨城・東京23区・神奈川。秋も、まだまだ気を引き締めて、雨に備えないといけません。
対策や心の準備など、私たちにできることを教えてください。
まず最初に「災害に関しては、指示待ちはダメ」です。災害後に「自治体からの避難指示が遅れた」という声も上がりますが、それって、ある意味、自分の命を他人に預けること、自分で命を守ることをやめてしまっているということです。大きな災害は、警報や避難指示が遅れることも、残念ながら、あります。なので、警報や避難指示の、指示待ちをせず、自ら判断するのが重要です。「自分のところは大丈夫だろう」という正常性バイアスをどのように取り除くか、普段からの訓練も大事になってきます。
最後は自分で判断するしかないということは覚えておいてください。もちろん、我々も出来る限り大雨のエリアを絞り込んでお伝えしますが、今回の千葉豪雨でも、同じ千葉市内でも、大きな被害が出た所もあれば、そこまで降らなかった所もある。船橋市内でも同じく、八千代市内でも同じく。極端な豪雨の時ほど、降り方は局地的。同じ市内・町内でも降り方は変わってきます。
身を守るための情報はどうやって手に入れればよいでしょうか?
やはり、「雨雲レーダー」と「キキクル」です。これらを確認する癖をつけましょう。またそれか…と思うかもしれませんが、今どうなっている?が的確に分かる情報です。どんな豪雨でも、直前であれば危険は分かります。
雨が強いなと思ったり、これから降りそうだなと思ったりしたら、「雨雲レーダー」をチェック。雨雲の位置、雨の強さをリアルタイムで示してくれます。「キキクル」は、土砂災害・浸水・洪水について、今の危険度を表してくれます。黒色表示の際はすでに手遅れなので、紫色までには安全な場所へ移動する必要があります。
車の水没の被害が多くなっています。車に乗っているときに豪雨になってきたらどうすればよいでしょうか?
車を停めたうえで、情報をチェックしましょう。さらに豪雨になっている方向に行ってしまってはまずいですよね。車は、30センチの浸水でも走行不能になるリスクがあります。水がたまったアンダーパスに入るのはNG、道路に水がたまっている場合や流れている水に入るのもNGです。前の車が水に入ったから大丈夫と、行ってしまうと、車高の違いなどで自分の車はストップしてしまうことも。
車ではなく、歩いている場合の注意点は?
できるかぎり、水に入らないようにしましょう。濁った水の中では、マンホールの蓋が外れていてはまってしまう、突起物で大けがをするなど、危険です。膝下の水深でも流される可能性があるため、水のある場所を避けて高い場所へ移動しましょう。
このような豪雨が、夜寝ている間に、起こったらどうすればよい?
線状降水帯半日前予測が出ていることもありますが、今回のように事前に出ていないこともあります。ただ、防災情報は線状降水帯だけでなく、警報などもあります。特に土砂災害や浸水のおそれがある場所にお住いの方は、寝る前に「今夜は大丈夫かな?」と、気象情報を見るクセをつけましょう。
今年から適用された防災情報、今回はどうでしたか?
まだまだ浸透していないように思います。レベル5特別警報が出たら、何かしら被害が出ている場合が多いです。なので、レベル5は手遅れと思ってください。レベル4までに危険な場所から離れる、というクセをつけておきましょう。
今回、ハザードマップに示されていないところで被害が起こったようですが、こちらについてはいかがでしょうか?
ハザードマップは、完璧ではない。と認識しておきましょう。災害リスクのある地域で生活している人は当然気をつけないといけないですが、その近くにいる方も油断してはいけません。災害は想定を超えてきます。ギリギリセーフではなく、ギリギリは危ない。と考えてください。
【増田雅昭】
1977年・滋賀県生まれ。大学在学中に気象予報士試験に合格すると、テレビ朝日の報道番組に学生予報士として出演。卒業後も予報士として活動を続ける中で、“天気の面白さ”に気づき、「どうすれば天気に興味をもってもらえるか」を日夜考え続ける、天気が好きすぎる気象予報士です。現在は、TBS朝の「THE TIME」のお天気コーナーでもおなじみです。
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)