なぜ日本の家は暑くて寒い?国も"断熱"に力を入れ始めた

9月に入っても、まだまだ厳しい残暑が続いています。そんな中、先週、最高気温が37度まで上がった埼玉県・川越市のある一軒家を訪ねました。その名も「エコハウス」。家主の高橋真樹さんに聞きました。

60畳を「10畳用エアコン」1台で冷やす家

田中

一歩足踏み入れました。涼しいですね、ひんやりします。

高橋真樹さん

エアコンは1階はついてないです。2階にある一台だけで家全体を涼しくしてます。だいたい日本では壁の断熱が標準的な家だと10センチぐらい。それが我が家では20センチ、倍。よく誤解されるのが、「断熱」っていうと冬暖かいのはイメージできるけど、夏は暑いんじゃないか? それは誤解。外の熱を断つって「断熱」って書くんで、魔法瓶のように中も涼しくするのを簡単にできるっていう仕組みです。

冬の寒い時期と夏の暑い時期に宿泊体験をして、これは本当にすごいって。こういう家ないかなと思ってたら、「モデルハウスを3年使ったから、誰かに売ろうと思ってるんですけどどうですか?」って言われて、住んじゃったんです。

高橋さんは、体験宿泊したエコハウスが気に入り、購入して住まいにしてしまいました。そして現在は断熱ジャーナリストとして国内外の断熱事情を取材しています。

2階建てで、およそ60畳あるこの家。それを冷やしているのが「10畳用」のエアコン、たった1台です。この日の川越の最高気温は37度でしたが、ロフトまで涼しかった!

この家のヒントになったのが「ドイツ」の住宅。寒さの厳しいドイツでは、暖房をガンガン使わなくても暖かい、断熱性の高い家作りが進んでいて、この家もドイツ在住の方のアドバイスを受けて作られました。

一番の特徴は「壁」の分厚さ。家の外側にも、内側にも厚みのある断熱材を入れていて、屋根も含めて住空間がぐるっと、20~30センチの厚みの魔法瓶に包まれているイメージです。

そして窓も、ガラスが3枚入った「トリプルガラス」で、窓枠は冷凍庫のドアのように分厚いドイツ製。ほかにも、家の温度を一定に保つ特殊な換気装置もついていて、とにかく熱が逃げにくい作りです。

持ち家は「内窓」、賃貸は「すきまテープ」

でも、新築じゃないお宅はどうすればいいのか? いま住んでいる家でも断熱はできるのか、高橋さんに聞きました。

断熱ジャーナリスト 高橋真樹さん

持ち家であれば、窓の内側にもう一個窓をつける内窓、それが一番手っ取り早い。窓の性能によって暑さ寒さの影響ってものすごく大きいので。かといって窓そのものを変えると結構お金かかっちゃう。そうすると、窓の内側に設置するとコストパフォーマンスよく断熱できる。小さい窓でしたら4~5万円とか。大きい掃き出し窓なら10万円以上するんですけど、今補助金が国でほぼ半額ぐらいになる「先進的窓リノベ事業」っていうのをやってるので、今すごくお得。

あと、賃貸の人の場合は隙間テープ、毛がいっぱいついてるような、手を当ててスースーする冷気が流れてくるようなところにつける、そういうのをやるだけでも全然違う。

でも断熱って目に見えないのでケチられちゃうんですよ。見た目の素敵なキッチンがいいとか、そっちに予算をかけたくなっちゃう。でももったいない、逆に言うとね。

まず、お話に出ていた「内窓」。こちら、国の補助金が使えるそうです。「先進的窓リノベ2026事業」というもので、窓の大きさや性能によって金額は変わりますが、1戸あたり最大100万円。たとえば大きな内窓なら、1か所で数万円。リビングや寝室など、何か所か工事した分を合わせて、最大100万円まで補助される仕組みです。

新築の家も去年から変わった

そして、新築の家も去年から変わりました。実はそれまで、新築だからといって、断熱をちゃんとしなきゃいけない、という全国共通の決まりはなかったんです。それが去年4月から、壁や窓の断熱など、一定の省エネ性能を持った家にすることが原則、義務になりました。断熱が弱いと、その分エアコンをたくさん使うので、長い目で見れば、電気代の節約にもなりそうです。

では、なぜ今、国まで「断熱」に力を入れ始めているのか?実は、断熱は私たちの健康の問題でもあると指摘しているのが、東京・板橋区の「今村医院」の院長、今村聡さんです。

断熱は医療費や介護費にも関係する

今村医院・院長 今村聡さん

医療費も増えちゃう。血圧の薬が増えるとか、介護費も増えるとか、だから社会保障に対する影響っていうのもすごくある。昔からヒートショックっていって、温度差が大きいところを移動すると血圧が上がったりして、循環器系の脳卒中とか心筋梗塞を起こしやすくなると言われている。

断熱はエネルギー費用の問題だとか、高齢化した日本社会で社会保障費に対する影響だとか、そういう全てに関わっているのにも関わらず、そこをトータルで見るっていうことがあまりに今までなかったんじゃないか。

「お金のある人はいい家住めばいいじゃないか」「お金のない人はもうしょうがないよね」っていう、個人の問題とするのではなくて、社会の問題として国が住宅政策をどうするかっていうのはすごく大事だとは思う。まあ、単なる街の一医師ですけども、そう考えてます。

医療費や介護費まで考えると、もう家を買う人だけの問題じゃない。高橋さんも取材の中で、「暑さ寒さって、人権問題なんです」と話していて、「お金がないなら、暑さや寒さは我慢するしかない」で済ませていいのか。健康にも関わる住まいの環境は、社会全体で考える問題と言えそうです。

まずは「一部屋だけ」でも

とはいえ、家じゅうを一気に断熱するのは大変。今村さんは、高齢の方など、長い時間を同じ部屋で過ごす人なら、「まずは一部屋だけでも、しっかり断熱を」と話していました。

(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」より抜粋)

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